84:魅了の条件
「検証するにしても1人じゃ色々と大変じゃない?その点おっさんは色々と買いよ?ちゃんと検証しておかないとユリちーも困るでしょ?」
協力者が必要な事も、検証が必要な事も事実なのですが、その事をヘラヘラと笑いながら言うからスコルさんは胡散臭いのですよね。まあ背に腹は代えられないので、私はスコルさんと一緒に魅了の効果について検証する事にしました。
町の中はちょっとゴタゴタしていたので、フィールドに移動してから検証をする事になったのですが、自分で言うだけあって、スコルさんは怖いくらいに有能でしたね。私の周りをグルグル回ったり、距離をとったりして、次々に条件を割り出していってくれました。
「原因の一つはユリちーの声ね、たぶん色っぽい声がアウト。あと見た目というより、フェチ?一回両腕をぐーっと上に伸ばしたまま背筋を伸ばしてもらっていい?」
「こう、ですか?」
スコルさんに言われるがままに腕を伸ばすと、ドレスの蔦が伸ばされて、下が擦れました。少しピリッとしたのですが、気持ちよくなっている事を誤魔化しつつ、そこからさらにグっと伸ばすと、蔦が食い込み体がピクピクと震えます。そんなちょっと頬が熱くなってしまった私を見て、スコルさんは鼻の下を伸ばしながら「へっへっへっ」と舌を出していました。
「ペロペロしていい?」
「…駄目です」
「ちぇーケチー折角おっさんも検証に協力してあげているのにー」
「ふざけるのならもういいですよ?」
時々ふざけてくるのが玉に瑕ですが、検証の結果、突き止めてくれた魅了の発動条件は“相手に声をかける”事と“セクシーポーズを見せる”事の2つのようですね。
わかってしまえば【扇動】と【テンプテーション】の効果が暴発しているという事がわかったのですが、これに『レッサーリリム』的な要素と他の色々なスキルが混ざった結果、プレイヤーにも魅了がかかってしまうなんていう状態になっているようですね。
ただここでいうセクシーポーズと言うのがかなり厄介で、スコルさんが言うには「その人セクシーだと思うポーズでしょ」との事です。
つまり特定のポーズをとると発動するというより、その人が性的興奮を覚えるようなポーズの場合効果が発動するらしいのですが、その条件は人それぞれなので、スコルさんにもよくわからないとの事でした。
それこそただ歩いているだけとか、立っているだけでもツボにはまる人ははまると言われてしまい、私には予防する事ができない条件なのですよね。
ちなみに人間形態の時より『レッサーリリム』状態の方が効果が高いのですが、発動条件が対象が私を認識しているかどうかにかかっているので、見ている人の認識範囲が広がらない以上、効果が上がっても魅了のかかる範囲は広がらないとの事ですね。なのでここで言う効果が上がると言うのは、強くかかるか弱くかかるかの違いと言う事です。認識が関係してくるので【隠陰】も条件に入ってきているとの事で、これは勿論解除している時の方が魅了の効果が高くなります。
そして肝心の『魅了』状態になった場合なのですが、スコルさんが言うには、敵対者の“戦意の低下”と、“敵味方の誤認”と、あとは“理性の蒸発”の3つが主な効果のようですね。基本的に味方と思い込むという効果が強く出るようで、一種の催眠術にかけられているような状態らしく、精神力さえ高ければ対抗は可能だそうです。
精神攻撃に近いので副次的な効果が色々ありそうなのですが、流石にそれに関しては「状況や相手によって変わるんじゃない?」との事ですね。たしかにゴブリンに魅了がかかった場合はその下半身が凄い事になっていたのですが、他のモンスターはと検証のために周囲にいた角兎達を魅了してみると……。
「ユリちーモテモテねー」
沢山のモフモフに絡まれる事になりました。
「少し熱いくらいですね」
うさぎの体温は40度近いですし、角兎にもその体温が適応されているのでしょうか?とにかく私を味方だと思い込んでいるのか、何時もなら逃げるか襲ってくる筈の角兎達がワラワラと寄ってきていました。テイマーを目指してスキルを探している人からすると羨ましい状況なのかもしれませんが、ちょっとこれは鬱陶しいですね。
人間形態の時は「あれ、何だろう?」みたいな様子で遠くから窺っているだけだったのですが、レッサーリリム形態だと「仲間だー」みたいなノリでワラワラと寄ってきて、体を摺り寄せてきました。どうやら角同士をすり合わせるのが角兎の挨拶みたいなものらしく、盛んに角をこすりつけてくるのですよね。可愛らしくはあるのですが、数が多いのでちょっと怖いです。
そして私の近くには、彼らからすると敵であるスコルさんがいますからね、まるで「ここは任せろ!」というようにスコルさんに挑んでいく者が居たり、「危ないから逃げろ!」と私を押して逃がそうとしたり、私のドレスを噛んで引きずって行こうとしているのですが、ドレスの強度が脆すぎて、引っ張られると毟られ放題と言いますか、まるでキャベツかレタスのようにプチプチと薄布がちぎられていってしまっています。中には興奮しすぎて腰を打ち付けてくる困った子や、蔦を齧って引っ張って行こうとする子もいて……。
「あの、ちょっと…待ってください、待っ…あッ…」
10匹近い角兎に囲まれて、もみくちゃにされているうちに、ふらついた拍子に押し倒されました。角を合わようとしているのか顔に突撃してくる子が多く、視界は白い毛玉に埋め尽くされます。
太陽と干し草の匂いに包まれながら、全身をモフモフした毛で擽られ、大事な所に絡まる蔦が何匹もの角兎に引っ張られたり、打ち付ける振動が伝わったりして、声が漏れます。
オートスペルの【ルドラの火】が発動し、左手近くにいた角兎を焼いたのですが、まるで味方にいきなり攻撃されたかのように「Pi!?」と小さい鳴き声を上げられました。どうやら魅了中の角兎を攻撃すると「同士討ちされた!?」みたいな反応をするようですね。何か罪悪感が生まれそうなのですが、いつまでも埋もれている訳にもいかないので、上に乗っている角兎を退かしていったのですが、ボロボロになったスカートの中に入って来た好奇心旺盛な1匹の角兎がいて……その奥にある大事な蔦を角でこすりあげました。
「ふぁあッ!?」
ピリピリした感触に、体が跳ねます。滴る汁を舐める様にペロペロされると、反射的に足に力が入り、股の間に入って来ていたエッチな角兎を締め上げます。
「そんな、ばぁしょ、あっ…うごか、ないで、くだ…んぅーーっ!!?」
締められた角兎は「PuI!」と抗議の鳴き声をあげて逆に暴れ出してしまい、その衝撃がモロに下半身にかかります。
そんな私の姿を見ていた角兎達は「PuI!!」「PxuI!!」と何かスイッチが入ったのか、【ルドラの火】にも怯まずにワラワラと突撃してきました。体のあちこちに角を擦りつけ、中には木の実か何かと勘違いしたのか、胸の先端をカリカリとしてくる子もいて、一番感じる所からの刺激と全身から擽りと刺激によくわからない状況になります。
空気を求めるように口を開けると、そこにも角兎がペロペロしてきて、お日様の匂いと全身からの責めに体が小刻みに痙攣し、ゾクゾクと這い上がってくる感覚に頭が真っ白になりかけたのですが……。
「ふぉぉおおおおお!!」
そこにスコルさんが突撃してきました。
「ふぁ、に…ぐっ…」
涎が垂れて呂律が回らなかったのですが、いきなりのしかかってきた1.3メートルの狼に角兎達は蹴散らされ、私は押しつぶされて肺から空気が漏れます。
「…す、スコルさん!?」
背中の毛はベタベタで硬いのですが、お腹側の毛はバサバサしている感じですね。耳元で囁くような体勢になってしまった呼びかけに、スコルさんはビクリっと体を振るわせた後、いきなりブルブルと震え始めました。え、大丈夫でしょうか?まるで物凄い精神力を発揮しているという様子なのですが、その振動が胸とか、その、下にも伝わって来て声が漏れてしまいます。
「っンン…」
「おっさん必死に耐えているのに!?今時の若い子ってちょっと敏感すぎない!!?」
「どぅ、いうこと、ひゃんッ、ですか…」
何かおもいっきり失礼な事を言われているような気がするのですが、私の抗議を聞いている余裕はスコルさんには無いようですね。
「もう何でもいいからおっさんをおもいっきり攻撃して!!」
「?は、はい!!【ライフドレイン】!」
【ルドラの火】でもよかったのですが、体の力が上手く入らなかったので、ここは信頼と安定の【ライフドレイン】です。
「ふべはらぁっ!!!??」
全身触れているスコルさんに【ライフドレイン】が直撃し、スコルさんは何かよくわからない叫び声を残しながらリスポーンしていきました。何て言うか、最近こういう事が多いような気がするのですが、厄日なのでしょうか?
とにかく、スコルさんが蹴散らしてくれた角兎がまた寄ってこないうちに態勢を立て直し、群がってくる角兎を何とか倒すと、私は一息入れました。何とも言えない体の疼きにモヤモヤしながら、両頬を押さえ、次スコルさんに会った時にどういう顔をしたらいいかを考える事にしました。
※次回の更新は30日の9時予定です。詳細は活動報告にも上げていますので、詳細はそちらをご参照ください。




