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78:対策とレベル上げ

 ウェスト港を目指していた私達は、結局他のプレイヤー達と同じように、オーガビーストにやられてしまいました。デスペナ(ポータル使用不可)明けに合流してからアイテムを清算し、時間的にもきりが良かったのでその日は一度PTを解散する事になりました。

 グレースさんは「今度は足を引っ張らないように頑張ります!」と燃えていたのですが、私の方はと言うと、色々と失敗が多すぎて恥ずかしくなりますね。

 何故素材を回収した時点で引き返さなかったのだとか、【ルドラの火】の発動タイミングだとか、咆哮攻撃はグリフォンがしてきていたのでブレス攻撃は予想して然るべきだったとか、とにかく反省点が多いですね。思い出すと体が火照って落ち着かなかったのですが、私はまだ工房に残っていたヨーコさんとナタリアさんにバタバタと迎え入れられながら素材を納品して、その日はログアウトする事にしました。


 次の日、ゲームにログインする前に何か良い攻略情報がないかと調べてみたのですが、キャラクター強化について真偽不明の噂話があったくらいで、目ぼしい物はありませんでした。まあ西側は元から情報量が少ないですし、プレイヤーの話も「よくわからないうちにやられた」というものが多くて、オーガビーストの攻略に役立ちそうな情報はありません。結局独力(どくりょく)であの麻痺攻撃とスピードを何とかしないといけないのですが、それがなかなか難しそうです。


 一番簡単なボス対策としてはPTを組む事で、運営もそれを推奨しているようなレベル設定なのですが、私の場合あまり人と一緒に戦いたくないのですよね。どう考えても碌な事にならないでしょうし、そもそも私の戦闘スタイルは高機動からの高火力タイプと、ブレイクヒーローズでは一般的な戦法である、陣形を組んで詰めていくという戦い方とは合っていないのですよね。

 たぶんこの戦闘スタイルに一番合わせられるのはスコルさんで、後はシグルドさんかアヴェンタさん辺りも連携できると思うのですが、能力的に釣り合う人が全て男性と、それはちょっとどうなのでしょうという人しかいないのが困りものです。


 そんな訳でPTについて考えるのは一旦保留にしておき、私はゲームにログインしました。ちなみに真偽不明の情報というのは、ブレイクヒーローズには『進化』と言うものがあるという噂ですね。まあ人外系の種族が選べるゲームによくある仕様なので、ブレイクヒーローズにも実装されているのではないかという話が発端なのですが、今のところ『進化』した人はいないので真偽は不明ですね。ただ言われてみれば人外種のプレイヤーは下級種族みたいな人が多く、レベルアップの余地を残しているという話には頷けますね。とはいえ進化条件も方法もわかりませんし、そういう事があるかもしれないという事にして、別の対策を講じていきましょう。


 まず麻痺攻撃に対してですが、これは状態異常攻撃を受けたからだと思うのですが、スキルに【麻痺耐性(微)】や【電気耐性(微)】といったものが出てきていました。ただ正直な所、耐性については『サルースのドレス』でカバーできているので、今すぐSPを振らないといけないという問題でもないような気がするのですよね。むしろいかに攻撃を当てるかと言う、スピード対策の方が重要な気がします。

 カウンターを入れる前にブレスを吐かれ色々と手順がくるってしまいましたが、爪の攻撃に【ルドラの火】を合わせられていたらと仮定しても……たぶん普通に腕を引っ込めて足払いか別の攻撃に切り替わっていただけだと思います。それくらいの速度差がありましたし、そもそも片腕を負傷してもいいのでしたら、両手で攻撃するだけで私は手も足も出なくなります。

 やはりスピード対策の方が急務ではあるのですが、手軽にスピードアップするようなスキルはまだないのですよね。一応【跳躍】がそれっぽいスキルになりますが、これ以上ピョンピョンしてしまうと、普通に移動するのにも問題が出るかもしれません。まあ対策とかは別にしても、SPが余り気味ですし、新しいスキルを取得していく事にしましょう。耐性に関しては防具に頼る事にして、新しく取得したスキルは【短剣】【アピール】【ダブルアタック】【扇動】の4つですね。残りSPは3なのですが、もしかしたら耐性スキルを取得する事があるかもしれませんから、このポイントは残しておく事にしました。


 【短剣】ですが、これは名前の通りナイフを強化するスキルですね。投げナイフを多用していますし、ある意味やっと取得したと言えるかもしれません。使っているのが効果のない無属性の投げナイフなので、それ程使用感が変わった感じはしませんね。少しだけ刺さりやすくなった気がするといった程度です。

 続いて【アピール】なのですが、これはどちらかと言うとタンク(盾役)寄りのスキルで、敵の注意を引き付けると言うものですね。PTを組んだ事のある人が後衛寄りの人が多かったというのもありますが、これはオーガビースト対策でもありますね。ボスクラスに効くのかどうかはわかりませんが、相手のヘイトをこちらに向ける事が出来たら、色々と楽になると思います。

 ちなみにこのスキルはアクティブ兼パッシブスキルという不思議なスキルで、手動で使う事も出来るのですが、常時敵に狙われやすくなるという効果もあるようですね。まあ敵を挑発してこちらを向かせると言うより、敵から目立って視線を集めるスキルといった感じなのでしょう。

 そして【ダブルアタック】は、私の攻撃手段が通常攻撃か【ルドラの火】かという0か100かみたいな所があったので取得した、攻撃スキルです。

 これはスキルを宣言した後、一定時間以内に攻撃した次の攻撃に追加ダメージが発生するというもので、スキルレベルが1の場合、追加で入るダメージ倍率は0.1倍ですね。かなり低いような気がしますが、タイミングさえ見誤らなければスタミナ消費なく攻撃力を1.1倍に出来る訳で、スキルレベルをMAXにすればその倍率は2倍という有能スキルです。まあスタミナ消費がない分タイミングがかなりシビアらしいのですが、その辺りは実際に使ってみて徐々に慣れていく事にしましょう。

 そして最後に取得した【扇動】は種族スキルで、所謂統率系(メンバー補助)スキルで、味方にバフ(強化)をかけるものですね。

 基本私はソロ仕様のスキル構成や装備なのですが、なんだかんだといってPTを組む事が多いですし、味方が動きについてこれないと嘆く前に、サポートするスキルを取得しておこうという感じです。それに昨日の敗戦からグレースさんもやる気になっていますし、少しでもサポート出来ればと思い取得する事にしました。しかもこのスキルは味方プレイヤーに声をかけるだけで発動可能と、発動条件も軽かったのが取得した理由の1つですね。戦闘前に「気を付けてください」と声をかけるだけでバフがかかるらしいので、取得しておいて損はないでしょう。


 ここまでが新しく取得したスキルで、レベルの上がったスキルは【隠陰】と【キック】と【ランジェリー】の3つですね。


 【隠陰】は注目度がそのまま経験値になるらしく、何かものすごい勢いで伸びていったのですよね。なぜ周囲から注目されたのかは、あまり気にしない事にしておきましょう。スキルレベルが上がると更に影が薄くなったような気がするので、このスキルに関しては徐々にレベルを上げるのが困難になりそうですね。

 【キック】は順当強化という感じで、移動の仕様にも慣れてきたのでこのまま成長させていきたいと思います。

 【ランジェリー】に関してですが、どうやら耐性を発動させても経験値が入るようですね。あの電気攻撃を受けて急激に成長し、レベルが上がっていました。【ランジェリー】装備である『サルースのドレス』の耐性強化と、修復コスト削減、あと纏う蔦が少し動かしやすくなっていました。もう少しレベルが上がれば相手の攻撃に合わせてその部分に蔦を集めて攻撃を防ぐという方法もとれそうですが、それをするとドレスが解けてしまい裸になってしまうので、あくまで出来そうという感じですね。そして動かせるという事は動くという事で、うっかりクニクニコリコリしてしまいそうになる確率が高くなるという事なので、ちょっと気を付けないといけません。


 とにかくスキルに関してはこんな感じなのですが、これではまだオーガビーストには届きませんね。後は地道にレベルを上げていく事にして、私は装備を調え、フィールドに出ました。レベル上げに選んだ場所は、経験値効率も考えてミキュシバ森林ですね。


 イビルローパーを退治してからローパーの姿を見なくなりましたし、もしかしてまた(坑道魔物消失)何かやってしまったのかと様子を見に行くついでだったのですが、どうやら杞憂だったようですね。

 イビルローパーが率いていた時ほどの大群ではないのですが、森から少し入った所でウネウネしている元気なローパー達に、私は胸をなでおろします。流石に何度もモンスターの配置を変えてしまっていたら他のプレイヤーに申し訳なくなるところでした。


 私はとりあえず昨日上げそこなったレベルを上げるつもりだったのですが、うっかりローパー達に掴まってしまい、1レベル上げるのに物凄い時間かかってしまいました。


「っーー~~~……」

 とにかく、凄かったです。1匹1匹微妙にAIが違うらしく、その触手遣いに個性があるという誰得な仕様で、あるローパーは激しく突いてきて、あるローパーは優しくソフトタッチ、そうかと思えばいきなり強く扱きあげられたりと……これは色々と不味いですね。


 私はフワフワとした多幸感に包まれ、粘液まみれの地面の上にだらしなく寝そべっていたのですが、少し冷静になると物凄い羞恥心に襲われます。ドッドッドッと心臓が大きな音を立てているのがわかります。ちゃんと周囲に人が居ない事は確認していたのですが、涎とか汗とかで汚れた顔を拭ってから、小さく唸りながらモゾモゾしてしまいます。ただそう地面でモゾモゾしていると【高揚】スキルの効果で感覚が鋭くなっているというのもあり、敏感な体の上を蔦がワサワサと動いて……。


「ふっ…んん……」

 1人で居るのもタガが外れるので色々と危険かもしれませんね。私は何とか全精神力を動員して気持ちを落ち着けると、改めて【ルドラの火】で焼いたローパー達の死骸を確認して……視界内に確認ウィンドウが出ている事に気づきました。

 結構目立つ場所に出ていたのですが、色々な事に気を取られていて気づいていなかったようですね。その事が恥ずかしくて悶えそうになるのですが、と、とにかく、私は改めて表示されている内容を読んでみる事にしました。


レッサーリリム(下級淫魔)への進化条件を満たしました、進化しますか?<YES><NO>』


 私はそのシンプルな文字列に首を傾げながら、頬に手を当てました。

※ちなみに現在のユリエルのスキルは以下の通りです。これからちょっとスキルレベルを上げたり新しいスキルを覚えたりもしますが、参考程度にどうぞ。


『レベル3』

【魔人の証明】【腰翼】【魔力操作】【片手剣】【解体】【筋力増加(微)】【飢餓耐性(微)】【見切り】【魔力視】

『レベル2』

【収納/展開】【暗視(弱)】【鞄】【ランジェリー】【投擲】【キック】【隠陰】

『レベル1』

【ルドラの火】【召喚言語】【高揚】【尻尾】【短剣】【アピール】【ダブルアタック】【扇動】


※誤字報告ありがとうございます(2/5)訂正しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] … しかたないね どうしてもリリムだしね [気になる点] このゲームは健全ですね 健康的な肉体という意味で
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