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70:レベルアップ

 ヨーコさんは生産作業、ナタリアさんもヨーコさんに話があるという事なので、私は1人工房棟を後にしました。グレースさんに連絡を入れて清算を終えた事を伝えようとしたのですが、少し考え込みます。


 私はこれから素材集めのためにミキュシバ森林を通ってウェスト港を目指す予定なのですが、グレースさんはどうするのでしょう?ミキュシバ森林がトラウマ(触手まみれ)になっていると思われるグレースさんに「一緒に行きますか?」と言うのも何かおかしい気がしますし、それに万が一「一緒に行きます!」と言われた場合少し困った事になるのですよね。勿論それはグレースさんの能力に不満があるとかではなくて、このドレス姿で戦うところを見られてしまう気まずさといいますか、体力の消費が激しいので度々休憩を挟みたいといいますか、その状況を考えるだけで頭に血が昇ってしまいそうになるのですが、とにかく、色々と不味い事になるのですよね。


 その対策という訳ではありませんが、取得可能スキルに【感度低下(微)】という直球なものがあったのですが、私はそれより隣にある【感度上昇(微)】と言うのが気になりますね。なんでこんなスキルがあるのでしょう?どこ需要ですかと言いたくなるスキルなのですが、喉が鳴り、目が離せなくなりました。間違っても押したら駄目だと考えれば考えるほど肌がじわりと湿り、蔦の感触がもどかしいですね。

 私はちょっとモジモジしてしまったのですが、口元を隠すようにして、目を閉じました。ま、まあ、どのスキルを取るにしてもスキルポイントはちょっとずつ貯まってきていますし、何かしらのスキルは取得しておきましょう。

 【感度上昇(微)】の事は一旦横に置いておき、気になるスキルは【隠陰】という認識されづらくなるというスキルですね。


 私はどちらかと言うと戦士タイプで、前に出てヘイトを稼が(ターゲットを取ら)ないといけないので隠れる系のスキルを取るつもりはなかったのですが、周囲の視線も気になる事がありますし、そろそろこういう(人から見られなくなる)スキルも取得しておきましょう。


 【隠陰】スキルを取得するのは確定として、種族スキル(人外スキル)も取れるようになっていますし、便利そうな【尻尾】を取る事にしましょう。攻撃力と言う点では【腕】や【爪】と言ったスキルの方が良いのかもしれませんが、腕が異形化して剣を持てなくなったら大変ですからね、【収納/展開】のスキルが成長して、問題なく人間の姿に変身出来るようになってから取得する事にしましょう。まあ【尻尾】スキルは【尻尾】スキルで、ちゃんと動かせるのかとか、感覚がどうなっているのかとか気になる事は多いのですが、魔狼であるスコルさんが尻尾をブンブン振っていましたし、きっと何とかなるのでしょう。

 あと他に気になるのは【高揚】というパッシブスキルですね。これはプレイヤーの気分が高揚している時にバフがかかるというスキルで、どのような(エッチな)気分でも一定以上であればいいみたいですし、ステータスの上昇倍率もいいので取得してみる事にしましょう。

 この3つのスキルをとればSPは残り1ですね。このポイントは何かあった時に残すとして、私はスキルの調整や練習もあるので、アルバボッシュに移動する前にスキルを取得してしまう事にしました。


 まず最初に取得したのは【隠陰】で、これは影が薄くなるスキルなのですが……ハッキリ言うと効果は微妙ですね。ある程度離れた人からは認識されていないような気がするのですが、近くにいる人には普通に見られているような気がします。まあON/OFF出来るスキルのようなので、見られている状態でスキルを発動してもあまり効果がないのかもしれません。この辺りは後々検証するとして、とりあえず町中ではON、フィールドではOFFにしておく事にしましょう。

 続いて取得したのは【尻尾】ですね。スキルを取得すると【腰翼】と同系色のスラリとした【尻尾】が尾てい骨の辺りから生えてきました。

 ちょうどドレスの背中側から出る形になり、真下に伸ばせば地面に届いてなお余りある長さで、太さは指3本分くらいですね。根元は少しだけ太くなっており、先端はクローバーのような平たい形をしていて、動かそうと思えば手のひらのようにグーパーできました。

 流石にレベル1だと上手く動かせず、また動かすのに慣れていないのですぐにダランと垂れて地面に擦ってしまうのですが、【尻尾】にはちゃんと感覚があるので地面をザリザリ擦る感触が直接骨盤に響きます。まるでお尻の奥をほじられているような斬新な感覚と、人間が本来持ちえない刺激を脳が持て余しているような何とも言えない気持ちに満たされ、気が付けばずっと擦っていたくなってしまうのですが、ひとしきり擦り付けて満足すると、固定する意味でも腰に巻いてベルトのようにしておきましょう。【尻尾】でベルトポーチや剣を支えると、何か最初からこうした方が良かったというくらいしっくりしますね。ゆっくりと【尻尾】を動かせば、剣を抜く事は……まだ難しいですね。プルプルと【尻尾】が震え、お尻が攣りそうになりました。要修練ですね。

 そして最後に取得したのが【高揚】です。これは自分の気持ちが上がるとバフがかかるというスキルなのですが、取得してから気づいたのは【隠陰】とのシナジーの悪さですね。いえ、どんな気分になっているかとか、露出癖があるかとかは無いのでちょっとアレですが、そんな事を考えてしまった事に頬が火照ります。私は落ち着こうと深呼吸をしようとしたのですが……。


「ん…あっ!?」

 そのドキドキに【高揚】の効果が発揮され、体が跳ねました。あらゆる感覚が急に鋭くなり、体のあちこちから襲ってきた新たな刺激に、視界が揺れました。周囲の人達が訝し気にこちらを見てくるその視線、囁き声が耳元から聞こえてくるようなほど感覚が研ぎ澄まされ、体の奥から熱い物がこみ上げてきたのですが、止めようと思っても体は痙攣するように跳ね、不規則な刺激に声が漏れます。


「は…ひっ!?」

 とうとう足から力が抜け、ふらついてしゃがみ込んでしまったのですが、漏れた嬌声に訝し気な声が近づいてきているのがわかります。しゃがみ込めば食い込みがますます激しくなり、腰が無意識に動きそうになったのですが、恥ずかしくて顔から火がでそうと目をギュッと瞑ると……本当に火がでました。


「え、え、え…?」

 【ルドラの火】が暴発して、左腕が燃えています。ショートマントとドレスが燃え始めているので早く解除しないとと思ったのですが……解除できません。


(な、なんで?)

 このままだとMPが尽きると焦ったのですが、どうやらMPは減っていないようですね。まるで漏れた感情を燃料にしている様に燃え続けているのですが、とにかくいきなり悶えてしゃがみ込み燃えていると、男性3人組が話しかけてきました。


「ねえ君、大丈夫?何ならちょっと休憩できる所に連れて行こうか?」

 その視線は思いっきり私の胸や股を見ており、後ろの2人はニヤニヤと卑し気に笑っています。


「だ、大丈夫です!」

 たぶんついていったら大変な事になる事だけはわかります。その事を考えると体の奥がキューっとなったのですが、私は何とか全力でその場を離れる事ができました。


 本当ならグレースさんと合流するためにアルバボッシュに行かなければならないのですが、今こんな状態で会う訳にも行きませんし、とりあえずはぐれの里の外、フィールド(人の少ない場所)に向かうことにしたのですが……。


「ふぃっ!?」

 軽く【腰翼】を使ったつもりなのですが、思いのほか跳び上がり、家の屋根を越えました。着地の衝撃で胸がブルンと揺れて、全身を貫く刺激に、私はその場にへたり込みます。


「フッ…つ…」

 汗が滴り小さなシミを作り、体が震えたのですが、私は何とか呼吸を整え、零れた涎を拭って辺りを見回しました。いきなり家の上にジャンプしてきましたからね、周囲のざわめきや追いかけてくる気配はまだあるのですが、なんとか距離は離れたようです。何とか追いつかれる前にその場から離れたのですが、足元がおぼつきません。

 どうやら【高揚】の効果はステータス上昇とスキルの発動の2つがあるようですね。いえ、それなら『バフ』と書かずにちゃんとオートスキルの事もちゃんと書いて欲しかったのですが、人によっては上昇するスキルを一つも取っていない可能性がありますから、クレーム対策のためにフワッと書いたのかもしれませんが、不親切すぎます。


「んッ……」

 私は何とか人気のないところまで逃げ込み、時間をかけて体を落ち着けると、【ルドラの火】は消え、身体能力も少し上昇するくらいで落ち着きました。

 どうやら【ルドラの火】に関しては常時発動という訳でもないようですね。もしかしたらステータスアップ、スキルの効果上昇、上昇系スキルのオート使用という風に段階的に上がっていくのかもしれません。ただ最初のステータスアップだけで充分感覚が鋭くなっており、呼吸の揺れでさえ色々な所に響いてしまい、私は真っ赤になった顔を押さえどうしようと蹲りました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] このゲーム作ったところはアホだなぁ(褒め言葉) [気になる点] もう帰れないところまできている気がする [一言] 世界観好きよ
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