表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/527

50:ポータルの開放と合流

 「おおおぉぉぉおお!!!」と、地鳴りのようなプレイヤー達の歓声があがりました。どうやら南側での(グリフォンとの)戦闘が終わったようですね。勝利を叫ぶ人の声が聞こえてきました。

 

『すみません……折角運んでいただいたのに……』


『こちらこそすみません、もう少し丁寧に運べればよかったのですが』

 私はそんな喧騒を、町の中央にある、ポータル兼セーブ広場で聞いていました。というのも、グレースさんの出血が途中から増えたのが響き、救護テントに向かうまでにHPが尽きてしまいました。これはもたないとポータルの開放を優先した結果、ポータルの開放には成功したのですが、セーブポイントを更新する前にグレースさんはリスポーンしてしまいました。なので今グレースさんが居るのはアルバボッシュで、デスペナがあるのでポータルが使えるのは30分後ですね。

 位置のセーブができていればよかったのですが、ポータルの開放は自動で、位置のセーブは手動なので、開放したけどセーブは出来ていなかったという状態になったみたいです。

 私がアルバボッシュに戻れば合流出来たのですが、何故かグレースさんに『今はちょっと』と言われてしまい、よくわからないのですが合流は断られました。すぐに追いかけるので待っていてくださいとの事です。


『では先に清算しておきますね』


『はい、わかりました』

 『グリフォンの爪』も売っていいとの事でしたので、素材はすべてお金に換えておきます。ウミル砦にブレイカーズギルドは無いのですが、兵士達を指揮する隊長の指揮所がクエスト受注の受付となっており、そこに納品すればギルドポイントもつけてくれるようですね。やはりグリフォンの素材が高価買取してくれていてポイントも高く、倒したグリフォンの【解体】が出来ていればまとまったお金になったのかもしれないのですが、戻った時にはルート行為(後から来て奪う)にあっており、影も形もなくなっていました。通報しても良かったのですが、触れ(優先権の主張)忘れたのは私の失敗ですからね、諦める事にしました。

 そんな感じで大幅に減収してしまったのですが、売ったお金の半分はグレースさんの取り分として、待っている間に残ったお金で装備を新調しておきましょう。


 まず武器ですが、ウミル砦は軍事拠点という色合いが強いからか、売っている物はどこか画一的で、その辺りの兵士が持っているようなシンプルなデザインの物ばかりですね。細かな好みや要望には対応していないラインナップなのですが、その代わり品質は【B】となかなか良い物が並んでいます。ただ、薄手の投げナイフが売っていないのは私からするとマイナスポイントですね。店主が言うには「順次入荷中」との事で、何かしらの補充イベントがあるのかもしれません。

 今から別の町に買いに行く事も出来ましたが、グレースさんに「待っていてください」と言われた以上、他の町に買いに行くというのも何か悪いような気がします。入れ違いになっても嫌ですし、その辺りの物(消耗品)は、本格的な金策の後に順次補充していく事にしましょう。とりあえず今は品質【B】の鉄のショートソードと、同じく品質【B】の普通の鉄のナイフを1本購入しておきます。


 武器はこれくらいにして、続いて防具ですね。爆発が収まってからグリフォンを蹴ったので、ロックゴレームの時のような事(半裸)にはなっていないのですが、それでもよくよく見てみれば服のあちこちがボロボロですね。

 特に酷いのが胸の部分で、妙に周囲の男性が胸元を見てくると思ったのですが、ナップサックの紐が当たっていた部分に、手のひらが入るくらいの裂け目(谷間ホール)が出来ていました。【ランジェリー】スキルの効果が適用されているブラが無事(直接見えていない)なのが不幸中の幸いですが、スキルを取得していない部分の耐久度が低すぎますね。

 確かにこんな胸(Kカップ)なのでブラはよく壊すのですが、服がここまで破れるのは、珍しいです。買い替えましょうと言いたいところなのですが、胸の揺れで服が破けたようですし、またすぐ破れそうなのですよね。そうなりづらいように体に合った立体裁断加工をしてもらっていたのですが……無理そうですね(耐えない)

 最初に買った服はこんなにすぐ破れなかったような気がしたのですが、どうやら【ランジェリー】スキルを取得すると胸の揺れが大きくなるみたいで、服にかかる負荷が倍増するようですね。本当に意味が分からない仕様なのですが、【ランジェリー】スキルを取ると現実の下着より少しフワフワするというか、浮いて胸の形を維持してくれているというか、固定が甘くなって揺れが大きくなるみたいですね。

 流石にどういう事なのかと服の耐久度の件も併せて運営に問い合わせてみると、胸の揺れに関しては『全体の衝撃を周囲に逃がす事で痛みや衝撃を軽減する保護が付く』との事でした。服の耐久度に関しては『調査中』との事ですね。反応からして何か皆さん似たような苦情や要望を上げているようで、その辺りは運営を信じる事にして、公式の発表を待つ事にしましょう。

 破れる事に関しては、もういっその事【服】スキルを取得したほうが早いのかもしれませんが、効果の低さがネックなのですよね。それならいっそ【軽鎧】スキルに手を出しても良いのかもしれませんが、スキルを取得しても鎧を買うお金がありませんし、SPが残り2と結構カツカツです。レベルの上りもだんだん鈍くなっていっていますし、出来れば無駄な(効果のない)スキルには振りたくないのですよね。

 まあ鼻の下を伸ばしている男性の視線を別にすれば実害は今のところありませんし、ギリギリ見せブラや何かのファッションと言い張れる間に収まっているという事にして、この件は一旦考えない事にしましょう。


 それでは買い物を続けます。まずはHP回復用ポーションを1つ買っておき、後は空腹度回復のための食事ですね。町の中にいますし、携帯食料に手を出すのも何ですし、適当な所で食事する事にしましょう。どうやらウミル砦では売店やレストランが並ぶという感じではなく、兵舎の食堂と言った場所で食べるようですね。


 食堂には長机と丸い木椅子が並び、テーブルの上には調味料が乗せられたトレーが置かれています。衛生的にどうなのでしょう?と思わなくもないのですが、レトロスタイルと言うやつなのでしょうね。カウンターで注文をしたら、後は空いている席に座って食べるようです。

 メニューは肉体労働をする人(兵士達)をメインターゲットにしているからか、ガッツリした物が多いのですが、あまり濃い味の物を食べようという気分ではなかったので、無難にサンドイッチを頼んでおきます。


 パサパサのパンとしなびたレタス。バターをメインにした何かよくわからないソースが変な感じに混ざり合い、香辛料がガツンと舌と鼻にぬけてきます。何とも言えない味がするのですが、量だけは無駄に多く、空腹度回復のためと割り切って頑張りましょう。そして食べながら、これからの事を考えます。


 当初の予定としては、この辺りの敵を倒しつつ、クエストをこなしてお金を貯めて、余裕ができたら王都方面に行ってみようと考えていたのですが、グレースさん(PTメンバー)はどうするのでしょう?何かこのままずっとついてくるような感じなのですが、どう考えてもグレースさん向けの難易度ではないのですよね。確かにヒーラー(回復役)が居てくれたら攻略の幅が広がるので助かるのですが、ずっと連れまわすという訳にもいきません。どうしたものかと考えていたのですが、グレースさんはグレースさんでやりたい事があるでしょうし、清算のお金を受け取ったらあっさり解散という可能性もありますからね、考えるだけ無駄なのかもしれません。


(まあ……)

 一人で考えても仕方がありませんし、グレースさんと合流したら相談してみましょう。私も今すぐ王都に行こうと思っている訳でもないので、のんびり行きましょう。


「さて」

 待ち合わせの時間までまだまだあったのですが、何時までも食堂の席を占領していても何ですので、ポータルのワープ地点に移動しておきましょう。そう思って席を立つと、連絡がきました。

 グレースさんからかと思ったのですが、どうやら一旦ログアウトしているようですね、名前がグレー表示になっていました。代わりに繋いで連絡してきたのは桜花ちゃんで、用事で落ちるとの事でしたが、その用事が午前中で終わったのでしょうか?


『ユリエルー知ってる?今ウミル砦にグリフォンが出たんだって!時間があるのなら一緒に退治しに行かない?』

 どうやら前回戦いそびれたグリフォンの事を知って、急いでログインして来たようですね。その強敵に挑もうという情熱はなかなかのものだと思うのですが、残念ながらそのグリフォン、倒されてしまっているのですよね。


『ん、あれ?忙しかった?』


『いえ、そういう訳ではないのですが』

 物凄く楽しみにしている桜花ちゃんに何て言えばいいのかわからなかったので、私はこめかみに手を当てて、少し考え込みました。


『んー?』

 まあ黙っていてもすぐにバレる事ですし、私は「残念ですが」と前置きを置いて、グリフォンが倒されてしまった事を桜花ちゃんに伝えました。

※誤字報告ありがとうございます(1/29)訂正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ