490:作戦の概要と制約と強襲
第一エリアのボスを倒す時は騎士団の協力があったり準備をする時間があったのですが、デファルセントの場合は連続したイベントや熊派の暗躍のせいでアルディード女王が前線に出て来れるような状況ではなくなってしまいましたし、なし崩し的に討伐クエストが始まってしまったのでプレイヤー側の戦力も前線に到着していないという状況で……不幸中の幸いとしてはデファルセントの成長速度が微々たるものなので準備をする時間がある事なのですが、樹高600メートルの触手を振り回すイソギンチャクのような巨木に捕らえられているキリアちゃんを助け出す為には攻略を急ぐ必要がありました。
だからといって私達だけでは大規模レイドバトルのエリアボスの攻撃を突破する事が出来ませんでしたし、攻撃を分散させる為にも攻略組の協力を仰ぐ必要があるのですが、その為にはディルフォレスやデファルシュニーや『歪黒樹の棘』が犇めく『ディフォーテイク大森林』の踏破をしてもらわなければいけなくて……。
「ようするに~キリアちゃんを探す時の肉盾になる生贄をデファルセントの元に送り込めれば良いのよね~?だったら熊派っていう連中が使っていた移動経路が使えるんじゃないのかしら~?」
そんな問題に対してラディが解決方法を提示するのですが、どうやらニュルさんと大森林の偵察を行っている時にポータルのような魔力の流れがある事に気が付いたようで……確かに熊派もプレイヤーではありますし、スーリアさんも使える事を考えるとキリアちゃんだけが使える特殊な技能という訳ではないのかもしれません。
「それは…」
他のプレイヤーの事を肉盾というのはどうかと思うのですが、その辺りの仕様がどうなっているのかという事を攻略チームに居る元熊派の人達に確認してもらうと、祭壇を調べた事がないのでよくわからないという答えでした。
ただリスポーン地点を動かしていない人が死んだ場合は『ディフォーテイク大森林』の奥地にある熊派の拠点に飛ばされるようで……と、いうより、そもそも熊派への勧誘を行っていたキリアちゃんはシステム的なアプローチはしていなかったようで、熊派という括りは私達が所属しているクランやPTのようにシステムに保証されているものでは無いのかもしれません。
つまり“自称熊派”という括りで転送装置が使えていたという事で、祭壇側の条件を満たすか揃える事が出来たら大森林の奥地にあるという熊派の拠点に人を送り込む事が出来るようになるのかもしれないという事ですね。
『それで、祭壇の起動…っていうのかしら?何かしらの細工をしなければいけないみたいなんだけど、それさえ出来たら…って、え、なに?あー…ごめん、ちょっと横から話しかけられて』
なんてまふかさんが間に入って情報を纏めてくれていたのですが、懸念点としては移動した後のデファルセントとの距離感だったのですが、人質を救出する為に潜入していたジョンさんが言うには「少し遠い」との事で……近すぎる場合はリスキルされる可能性がありますからね、多少距離が離れていた方が拠点にするには丁度良いのかもしれません。
因みにその時は何処に繋がっているのかがわからなかったので使用しなかったのですが、ジョンさんが言うには「意外と簡単に動かせそうだった」との事で……『エルフェリア』と隣接している『ギャザニー地下水道』の祭壇から熊派の拠点にある祭壇に飛ぶ事が出来たら一気にデファルセントのお膝元に戦力を送り込めるようになり、モンスターが犇めいている『ディフォーテイク大森林』を踏破しなければいけないという問題を解決できるようになるのかもしれませんね。
問題があるとすれば、大森林側に上陸しているまふかさんやシグルドさん達が使える祭壇が埋まってしまっている事なのですが……『ギャザニー地下水道』側も崩落しているので地上からの侵入が可能ですし、ラディの思い付きのような作戦の割には意外と実現可能な作戦なのかもしれません。
(後は…)
早々に離脱するような人達はいちいち拠点の周りを歩き回ったり調べたりしていないようですし、ジョンさんの情報もどこまで正しいのかは不明だという事なのですが……ラディが言うにはサングデュールを抜ける時に送り出していた偵察用の幼女スライムが潜入しているので細かな誘導も出来るのだそうです。
(意外と…何とかなるのかもしれませんね)
祭壇の操作方法も「簡単に動かせそうだった」との事ですし、元熊派の幹部であるバットジャークさんが言うには「拠点の祭壇はリスポーン地点になっているからな、誰かしらはいるんじゃねーか?」との事で……デファルセントの暴走のせいであちこち地形が変化してしまっていますからね、とにかく一度様子を見に行ってみようと思います。
『ねえ、ここまで話しておいてなんだけど…あんたはまた1人で行くつもりなの?』
『その方が速いですし…その、今は別行動を取った方が良いと思いますが?』
デファルセントに近づくのは難しくても熊派の拠点までなら何とかなると思いますし、場所はラディが把握しているので様子を見に行くだけならすぐに到着する事が出来る筈です。
『そ、う、じゃ、な、く、て…だからあんたはまた美味しいところを掻っ攫おうとして!!』
その事を伝えたら怒鳴られてしまったのですが……同行するにしても色々と問題がありますし、そもそも私の目的はキリアちゃんを助け出す事ですからね、下手に共同歩調を取ろうとした場合は熊派の首魁である彼女の事を倒そうともくろむ人達が出てこないとも限りませんし、それなら最初から別行動を取った方が良いような気がします。
『が、頑張ってください!私もすぐに追いかけますので!』
『どうなるかはわかりませんが…グレースさん達も突入の準備をお願いします』
『話は終わってないわよ!だから…待ちなさいって!?』
私はグレースさんの声援とまふかさんの怒声を受けながらデファルセントのヘイトを切るために一度距離を取り……まふかさん達の上を飛ぶと嫌でも地上の混乱が見えて来ました。
(これは…色々と厳しそうですね)
まず目につくのが瓦礫の中から船尾だけが飛び出している魔導船なのですが、近くで発掘作業をしているのはカナエさんやフィッチさん達なのでしょうか?ウネウネと伸びて来ているディルフォレスやトレント達との戦闘をこなしながらの作業となるのでなかなか大変そうで、中には捕らえられて大変な事になっている人もいるようですね。
それでもローゼンプラムさんの的確な指示で組織だった反撃が出来ているようですし、ナタリアさんやシノさんなどの後衛チームが救助に動いていて……途中参加のジョンさんやリンネさんも参戦していますし、『ギャザニー地下水道』の祭壇も近いので転送作戦が開始された場合はすぐに移動が出来る位置に居るのでしょう。
そうして別の場所に視線を向けると、ワールドアナウンスを聞いて『ルミエーヌ』の消えた北東ルートからやって来たと思わしき人達が『ディフォーテイク大森林』から溢れ出したモンスターと戦っていたのですが……流石にデファルセントの居る場所までの距離があり過ぎますし、このままでは突破できずに敗退してしまうのかもしれません。
なので一度引き返して『エルフェリア』経由で地下水道にある祭壇前まで移動をしておいて欲しいのですが、その辺りの連絡は情報の拡散を行っているまふかさんやスコルさん達の手腕に期待する事にして……次は突出しすぎて身動きが取れなくなってしまっているまふかさんやシグルドさんの上陸チームの行方なのですが、突破力だけはある人達なので方針が決まれば一気に動いてくれると思います。
(それより、問題なのが…)
地上に居る人達は一定の被害を出しながらもボス戦までこぎつける事が出来た人達ですからね、まだまだ十分な戦力を残しているのですが……こんな事を考えている場合では無いのかもしれませんが、上空を飛んでいるワイバーンに乗っているのが私だという事を認識した人達の視線が絡みついて来るようになってしまい、息が上がってしまうのですよね。
(これが『色欲の巫女』の制約…ですか)
物理的に視線の圧力を感じてしまっているといいますか、下腹部に魔力が集まって来るのと同時に身体が熱くなってしまい……。
「ひぃぁ!?あっ…ン」
複数の視線を感じると指で突かれて弄り回されているようで……身体中を舐められているような感じがしてしまうのですが、よろめきへたり込みかけると視線の圧力が増したような気がして……多分皆の意識や視線が集中してしまったのだと思いますが【エっロ!】とか【なんだあの爆乳、揉みしだきてえ】なんていう情念がダイレクトに伝わって来てしまい、このままだと見られる事への気持ち良さに目覚めてしまいそうなのですよね。
(こ、これは…意外と、きつい…ですね)
私とエッチな事をしたいと思っている事が形になっているといいますか、挿入したいという思いを向けられ続けると本当に挿入されているような感触があって……何もない所から肉棒が現れ無理やり擦りつけられているような感触に背筋がゾクゾクと泡立ち、私が気持ちよくなれば気持ちよくなるほど周囲に魅了の力を広げて精気を吸収する状態になってしまい、その影響を受けた人が股間を押さえながら膝をついてしまいました。
『ちょ、ちょっと…何してんのよ!!行くならさっさと行きなさいよ』
それが上空を旋回している私の影響だという事はバレていないのですが、変なスキルを持っているという事を知っているまふかさん達からするとバレバレなようで……どれだけ我慢しようと思っていてもエッチな想像を向けられてしまうと身体が反応してしまい、頭と身体がフワフワしてしまいます。
『イクって、何を言って…ふぁ、ぁああ!?』
そんな状態なので事情を知っているまふかさんから注意が飛ぶのですが、改めて指摘されると恥ずかしさで身体が内側から熱くなってしまって……MAPのマーカーを頼りに見下ろしてみると怒鳴り声を上げているまふかさんと一人でお楽しみに突入しそうな火照ったグレースさんが居て、ナタリアさんとヨーコさんがモジモジしているのが見えたりと向こうは向こうで盛り上がっていそうな気配があるのですよね。
『………』
(待ってください!?今そんな風に蔑むような目で見られたら…ッ!?ぁ、ぁああ!?)
それはそれで一緒に気持ちよくなりたくなってしまったのですが、いきなり悶え始めた私に対して淫さんが冷ややかな目をしていて……牡丹や淫さん達のような眷属達の視線はあまり影響がないのか刺激が少ないものの、穴が開くようにジーッと見つめられていると奇妙な感覚でフワフワしてきてしまいますし、そんな状況で舐め回すような視線やあやふやな挿入感が続いてしまうと頭の中が真っ白になってしまい、身体にキューっと力が入ってしまいます。
そうして軽い絶頂に身体がフワフワするのですが、とにかくエリアボスであるデファルセントは『ディフォーテイク大森林』の中央から見てやや西側という奥地に居るようですし、私達が目指すべき熊派の拠点というのはデファルセントから見て東南東にある石造りの広場のようですね。
(あれが…そう、なの…でしょうか?)
ラディの誘導を頼りに飛行を続けていると石造りの祭壇らしき物が見えて来たのですが、雰囲気的にはデファルセントに貢物を捧げる場所と言った感じで……近くには誰かが持ち込んだと思われるテントなどの宿泊道具や製作者の頑張りが見て取れるボロボロの掘立小屋があったりと、何とか拠点として使えるように整備をした跡が見えてきました。
それは暴れ回っているデファルセントの近くにある割には被害が少なかったのですが、祭壇の周辺にはデファルセントの暴走に巻き込まれたと思われる熊派の人達が肩を寄せ合いオロオロとしていて……彼らに事情を話して協力を仰ぐ事が出来たら祭壇の使用方法がわかるのかもしれませんね。
『話をするのは良いが…会話が出来るような連中なのか?』
(そ、の場合は…ん、っ…多少暴力的な手段を使う事もやむを得ないかと?)
淫さんは呆れたように息を吐いてから確認して来てくれたのですが、余韻を抜くために一度熊派の拠点の上を通り抜けて……この時点で離反していない熊派は根っからの熊派と言いますか、暴れるのが楽しいからとかプレイヤーの邪魔をしたいからという理由で熊派に所属している人達ですからね、こちらのお願いを素直に聞いてくれるとは思えなくて……その場合は拳による説得も辞さないという覚悟で挑むべきなのでしょう。
「や、やはりワイバーンが敵に…って、天使ちゃん!?ああもう、なんでこんな時に!?」
『大森林側の祭壇を発見しました…が、周囲に熊派を発見、制圧を開始します!』
どうやら地下空洞からリスポーンして来たハイオークのカイトさんが拠点に戻っていたようで、彼らの視線が私の胸に釘付けになった瞬間に胸を強く鷲掴みにされたような感触があって息が詰まり……カクカクと足が震えてしまったのですが、時間もないので迎撃しようと武器を持ち出した熊派の人達目掛けて強襲という名の説得をする事にしました。
※誤字報告ありがとうございます(4/24)訂正しました。




