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467:『クリスタラヴァリー』の様子とレナギリーの説得

 『精霊の幼樹』関連のイベントが終わった後の『クリスタラヴァリー』は初めてだったのですが、地面から飛び出して来ている大きな水晶や深い渓谷の奥にある巨大な穴(崩落跡)からはキラキラと光る樹冠が覗いていて……多分それが『音晶石』の鉱床からはみ出している『精霊の幼樹』なのだと思いますが、周囲の魔力を吸い取り輝く粒子を放出していたりとなかなか幻想的な風景を醸し出していました。


 それだけで大半のモンスターは『クリスタラヴァリー』を避けていたのですが、レナギリー達が『精霊の幼樹』を頂点とした蜘蛛の巣を張り巡らしていますし、ここだけでしか取れない珍しいアイテムを採掘する為に多くのプレイヤーが犇めいていて……ネットの情報だと『音晶石(増幅石)』や『サンハイト(太陽の水晶)』などの鉱石類、それ以外にも群生している『リュミエーギィニー(魔除けの針葉樹)』やいくつかの素材を採取する事が出来るようですね。


 因みに地下空洞に潜った方が品質の高い物が採掘できるという話なのですが、そちらには蜘蛛の糸が張り巡らされているのと蜘蛛達の繁殖場になっているようで……迷い込んでしまった不運なプレイヤーは糸に絡め捕られて大変な事になってしまうのだそうです。なので多くのプレイヤーは安全に採掘ができる地上部での活動を行っていたのですが、これだけ多いとリポップして来るモンスターもすぐに狩られてしまう事となり……。


(何て言いますか…かなり安全な場所になってしまったのですね)

 時折『クリスタラヴァリー』を根城にしていたハーピー達が飛来して来ていたのですが、蜘蛛の巣があちらこちらに張り巡らされているのを見ながら忌々し気な様子で遠巻きに飛んでいるのが見えるだけで……むしろプレイヤーの方が犇めいているような山の中からレナギリーを捜す方が面倒臭そうだと思ったくらいなのですが、私が『クリスタラヴァリー』に足を踏み入れるとノワール(子蜘蛛)がひょっこりと現れて右前脚をブンブンと振っていて……これは私達を待っていたという事でいいのでしょうか?


「丁度いいところに、レナギリーを捜しているのですが…」

 そうして「案内をお願いしたいのですが」と言いかけたところで、複数の蜘蛛達を引き連れた白いアラクネ(レナギリー)が歩いて来て……。


「チョウド、イイ…トコロニ」

 奇しくもレナギリーも同じような言葉(「丁度良いところに」)を放っていたのですが、何かしらの頼み事(クエスト)でもあるのかと身構えていると……戦況が大きく動いているので「どうなっているのだ?」という事が聞きたかっただけのようですね。


「そうですね、何処から話せばいいのかはわかりませんが…」

 ノワール経由で色々な事を伝えていましたし、レナギリーも周囲に諜報用の蜘蛛を放っているのだと思いますが……プレイヤー同士のあれやこれを説明してもチンプンカンプンですからね、出来るだけ嚙み砕いて熊派が『ルミエーヌ(光龍結界、今は黒い幕)』を奪取して『ディフォーテイク大森林』に結界を張ろうとしている事などを説明して、大森林に攻め込む為の橋を作りたいのでレナギリーのところにいる蜘蛛達を貸して欲しい事を伝えてみるのですが……。


「ソレクライ、ナラ…モンダイナイ」

 との事で、拍子抜けするくらいあっさりと力を貸してくれる事になったのですが……これは『蜘蛛糸の森(元の拠点)』の『精霊の幼樹』を枯らしたのが熊派(キリアちゃん達)という事で敵対関係になっているのも関係しているのだと思いますし、私達が色々なイベントを通してレナギリー達との友好値を高めて来たからこその即決だったのでしょう。


「ありがとうござい…どうしたのですか?」

 それでも拠点を作り直しているというタイミングで快く力を貸してくれた事にお礼を言おうとしたのですが、白いフカフカの毛に覆われた巨大な蜘蛛の上に乗っている人間の部分……腰上80センチ程度の少女の姿をしたレナギリーにギュッと抱きしめられてしまいました。


「ムスメニハ、メイワクヲカケル」

 そんな事をいきなり言われたので戸惑ってしまいましたし、小柄な見た目の割にはなかなかの胸の大きさなのでプニュンとした感触があって不思議な気持ちになってしまったのですが……たぶんこれは私ばかりが最前線に出ている事を母?として心配しているという事なのだと思います。


「気にしないでください、好きでやっている事ですから」

 純粋な心配と好意に胸の中が温かくなるのですが……スリスリと撫でて来る前脚が擽ったいですし、周囲の視線もあるのでそろそろ離して欲しいですね。


 とにかくすんなりと蜘蛛達を借り受ける事が出来たのですが、『精霊の幼樹』の守りもあるので全勢力という訳にはいかなくて……一番個体数が多くて糸を吐くのに適しているフォレストスパイダー(巨大ハエトリグモ)を20体、斥候と細かな糸操作が得意なダークスパイダーを10体借り受ける事が出来ました。


「よろしくお願いします」

 そうしてダークスパイダーの中にはまだまだ子蜘蛛と言ってもいいようなノワールが居たのですが……これは私達との連携を考えた上での蜘蛛選(人選)なのでしょう。


「ぷっ、ぷっ、ぷー!」

 そうして気心の知れたノワールの参加に牡丹も喜んでいますし、マイペースに触手をウネウネとさせているニュルさんも何処か嬉しそうで……意外とあっさりと借り受ける事が出来たまでは良いのですが、このままゾロゾロと引き連れているとどんな噂を立てられるのかがわかりませんし、連絡役のノワールを残して残りの29体には周囲の偵察をお願いする事にしました。


(後は魔素をのんびりと集めていたらいいのですが…問題はこの辺りが平和すぎるという事なのですよね)

 『精霊の幼樹(アルバボッシュ)』の力があるとはいってもある程度のモンスターが居るものだと思っていたのですが、レナギリー達が周囲のモンスターを狩りまくっていますし、何とか生き延びたモンスターも多すぎるプレイヤーに狩られてしまっていて……のんびりと魔素を集めておくという状況でもないのですよね。


(どうしましょう?)

 なんて事を考えていると、ノワールが身振り手振りで何かを伝えて来ていて……。


(ぷ、ぷーい、ぷー?)

 それを牡丹が翻訳してくれたのですが、どうやら「多少なら餌を融通しようか?」と言っているようですね。


「そうですね……いえ、今は大事な時期ですし…別の場所に行ってみようかと」

 『エルフェリア』まで行ってみれば『ギャザニー地下水道』から溢れ出して来ているゴブリン達が犇めいていると思いますし、『ディフォーテイク大森林』側の亀裂や黒い幕(『ルミエーヌ』)がどこまで広がっているのかを見ておいた方が大森林攻めの時の参考になるのかもしれません。


『無事に蜘蛛達を借り受ける事は出来たのですが、少しだけアクシデント(敵が居ない)がありまして…』

 とはいえ勝手な行動をしたらまふかさんが怒り出しそうですし、事前にレナギリー達の助力を得る事が出来たものの魔素にすべき敵が居ない事を伝えて『エルフェリア』に向かってみる事を伝えておく事にしました。


『あんたはまた勝手に…いいけど、何かあったらすぐに連絡を入れるのよ?』


『あ、あの!『エルフェリア』に行くのならお手伝いをしましょうか!?』

 そうして魔素を集めに行く事を伝えたらまふかさんには呆れられてしまいましたし、グレースさんには合流したがられてしまい……。


『別に1人でも大丈夫だと思いますが…『クリスタラヴァリー』でもイベントは起きなかったですし、『エルフェリア』も主要なイベントは終わっている頃かと』

 今のところ手伝って欲しい事もないですし、制圧したてで移動用のポータルが繋がっていない場所に向かう事になりますし……このまま単独行動をしている方が効率的なのですよね。


『う、ううう…そ、そにょ、でも、ですね…』

 それでもグレースさんが粘っているのはどうやらプレイヤーの勧誘時にとんでもないコミュ障を発揮してしまったようで……。


『ああもう、鬱陶しいわね…いきなり奇声を発して訳の分からない動きをしたくらいでしょ?っていうか別にあんたがいちいち喋らなくても良いのよ!少し離れた所でぼんやりとした顔でつっ立っているだけでいいんだから!んひっ!?って、ちょっとくっついて…ああぁああ、もう、だから!!』


『で、でもぉ~…ひぃう!?』

 なんて通話の向こう側で2人がイチャイチャしていたので少しだけ焼きもちを焼いてしまいそうになったのですが、どうやら反射的に抱きついてしまったグレースさんに対して【狂嵐】と『ヴィーヴルメタル(生きた金属)』が反応してしまったようで……とにかくそういうバタバタとした一幕があったのですが、本気で嫌がっているのならスコルさん辺りがフォローを入れてくれると思いますし、ここは心を鬼にしてグレースさんの成長を見守る事にしましょう。


『何かありましたら必ず声をかけますので…人を集める事に関してはお任せしますね』


『は、はい!頑張ります!!』

 頑張っている事は十分伝わって来ていますし、グレースさんにも役割を振って信頼している事を伝えておくのですが……現時点での成果(戦力)はレナギリー達から借り受けた蜘蛛達が30体、まふかさん、グレースさん、スコルさん、シグルドさん、カナエさん、リッテルさん、ドゥリンさん、H M(ハム)さん、ティータさん、エルゼさん、ローゼンプラムさんにフィッチさんを加えた魔導船を動かす10名の船大工さん達に私を加えた計52名という事になります。


 これにほぼ確定でナタリアさんとヨーコさんが加わる事となり、残りの40名~50名をまふかさん達が集める事になるのですが……。


『凄腕っていう訳じゃないけど…んっ、っとに…こ…っちの指示には従順なのを集める予定だから、何とか…っ、なるんじゃ…ないかしら?ま、まあ…あの犬っころ(スコルさん)が集めて来るメンバーの事は良く知らないのだけど』

 との事で、まふかさんは元クランメンバー(ファンクラブ)を中心に声をかけていて、スコルさんは大森林に乗り込むという博打のような作戦に対してノリの良さそうな人達を中心に声をかけているのだそうです。人数についても今のところ問題は無いようで……むしろ厳選しないとオーバーしそうだというのがまふかさん達(顔の広い有名人)の凄いところですね。


『わかりました、では戦力についてはこのままお任せするとして…私は予定通り魔素を集めておきますね』

 一応フィッチさん達も『エルフェリア』攻めで出て来た魔石の確保に動いているのですが、魔素はあるだけあった方が良いですからね、頑張って集める事にしましょう。


『わかった、けど……その、ほんとーに…何かあったらすぐに連絡を入れるのよ?すぐに駆けつけるから』


『そ、です!わ、私もすぐに駆け付けますので!そ、それまでは…が、頑張ります!』

 そうして何かしでかすのではないかと疑わし気なまふかさんとやる気が出たらしいグレースさんなのですが、クラン通話で会話をしていたので仲間外れにあっていたスコルさんが混ざりたそうにしていたらしくて……それはそれですね。


 とにかく混乱冷めやらぬ『エルフェリア』に到着するまでは比較的落ち着いているようですし、のんびりと狩れるモンスターを探しながらスキルの調整でもしておく事にしましょう。

※公式のイベントという訳ではないのでまふかさんやグレースさんとはクラン経由、ローゼンプラムさん達と会話をする場合はPT経由と送り先が違います。それ以外のメンバーについてはフレンド経由の個別での通話をしていたりと、この辺りは公式イベントではない不便さが出てしまっている感じです。


※少しだけ修正しました(11/18)。

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