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465:知っている人達

「ヒィーハハッ、流石にバレたみてーだが…あっちの姿だと有名になり過ぎてな、味方からも裏切り者扱いされるしでいい加減鬱陶しいから心機一転つー訳なんだが…どうだ?イケてるだろ?」

 言いながらレイブンさんは……今はキャラクターを作り直しているのでバットジャークさんというのですが、胸元の開いた紫色のシャツの上に黒系統のジャケットを羽織って下は同系色のスラックスという何とも言えない恰好だったのですが、趣味の悪いゴールドメッキのネックレスをジャラジャラと首から下げているのはどうかと思いますね。


(一応ベルトのポーチがマジックバッグになっているのですが…本当に作り直したばかりという恰好ですね)

 装備品らしい装備は腰から下げている幅広のブロードソードとマジックバッグ化しているポーチくらいで……何かしらのスキルやアーティファクトを使って熊派が潜入して来ている事も考えたのですが、【弱点看破】の結果は別人と出ていますし……内包している魔力もごく普通の人間と同じでした。


「イケているのかはノーコメントとさせていただきますが…裏切者扱いされるのは仕方がないかと?」

 ビークリストゥの封印を解いた後の動き(離反して勝手に動く)は批判されてしかるべきだと思いますし、こうしていけしゃあしゃあと笑っていられる胆力の方が凄いと思ってしまうのですが……。


「ハハっ、ちげーねぇ!が、そのおかげで天使の姉御と楽しめた訳だからよー…文句を言われる筋合いはねーよな?」

 そうして私の指摘を一笑に付すバットジャークさんなのですが、要するにバットジャークさんも元熊派と言いますか、離反したグループの内の1人という事なのでしょう。


(それでも疑ってしまうのはキリアちゃんの方針転換(防御持久戦)とアーティファクトを大量に抱え込んでいるという情報があるからなのですが)

 因みにアカウント周りの仕様なのですが、ブレイクヒーローズのアカウントは基本的に1人1アカウントで……ここで“基本的に”という注釈が付くのは規制をガチガチに固めてしまうとG M(ゲームマスター)などを務めた社員が別のF D C(フルダイブカプセル)でゲームに入る事が出来なくなってしまうからで……結局のところゲーム会社の方針によってマチマチなのですが、キャラクター毎の変化の大きいブレイクヒーローズのようなゲームだとそもそも取得できないように出来ており、サブ垢取得者には要注意人物としての監視が付いた上での垢BAN処分が下される事が多いですね。


 つまりレイブンさんの転生(作り直し)正規の手段(普通に作り直し)に則っているのか、HCP社が把握している仕様の範囲内(アイテムを使った?)という事になるのですが……。


(気にしすぎ…でしょうか?)

 レイブンさんに潜入任務を言い渡すのは人選ミスだと思いますし、一度やらかしてしまっている人にアーティファクトを託すのかという問題もあって……色々と迷惑を被り過ぎていたので疑り深くなっていたのかもしれません。


「まあそういう訳だからよ、これからは仲良くやっていこう…やぐっ!?」


「ぷーいっ!!」

 そんな事を考えていると、何だかんだと言いながら私の胸を鷲掴みにしようとしていたバットジャークさんが牡丹の体当たりで吹き飛んで行ったのですが……それだけで瀕死のダメージを受けているようですし、レイブンさんの代名詞ともいえる回避系(残像系)のスキルが発動していませんでした。


(本当に弱体化しているのですね)

 蹲るバットジャークさんを見下ろしているとそんな感想が浮かんで来たのですが、レベル的(レベル8)にも最低限の装備系のスキルといくつかの主要なスキルを取ったところなのでしょう。


「敵対すると言うのでなければ好きにしたらいいと思いますが…他人に迷惑をかけるプレイはどうかと思いますよ?」

 転生するのも転生しないのも人それぞれですし、色々な問題を抱えてしまったキャラクターを作り直すというのもよくある話ですからね、これ以上は考えていても仕方がないのかもしれません。


 なので私は自分の考えをハッキリと伝えておくに留めて、バットジャークさんがさり気なく送り付けて来ていたフレンド登録を拒否しておくのですが……今のところは脅威になる事もなさそうだと肩の力を抜きました。


「ひでぇ…今まさに俺様をぶちのめした天使の姉御がそんな事を言うのかよ?今は弱体化しているっていうのに…いきなり暴力を振るわれたって通報しちゃおうかな~?」

 勿論警戒は続けないといけないのですが、これ以上バットジャークさんに関わっているのも時間の無駄なのですよね。


「ご自由に…その場合は胸を触ろうとしてきた事を伝えるだけですよ?」


「冗談だよ、冗談…おー痛ぇ…」

 そうして「通報」という発言自体が冗談だったというようにキヒヒと笑うバットジャークさんなのですが、冗談としては面白くもないですし質が悪いですからね、これ以上の会話を続ける必要があるのでしょうか?


(頭の痛い問題が増えただけなのかもしれませんが…仕方がありませんね)

 色々なプレイヤーが居ますからね、合う合わないはあるのですが……なかなか面倒臭い事になってきたような気がします。


『そ~お~?なかなか活きの良い人間だと思うのだけど~?』


(そう思うのならラディが何とかしてください…と、いうより…ですね)

 頭の痛い問題だった事もあって何故かウキウキとしてきているラディに対して()()()()()を打つのですが……そうこうしている間に人垣に囲まれていたバットジャークさんに絡まれていた女性PTの方に視線を向ける事にしました。


 するとボリュームのあるこげ茶色の髪を白いヘアバンドで止めている白いワンピースを着た女幽霊のH M(ハム)さんがはにかむように頭を下げて来ましたし、腰まで届くプラチナブロンドの髪を3つ編にしている体長20センチ程度の透明な羽が生えている妖精の……ティータさんは柔らかい針金で編んだような耐火耐性が高そうなチェーンメイルタイプのワンピースを着ていたり、毛先に赤色が混じって羽の先が燃え上がっていたりするので炎系の種族に進化したのでしょうか?


「ユリエルか、久しぶりだな…話を聞いている限りだとなかなかの活躍しているみたいで何よりだ」

 そうして一時期妖精のロールプレイを頑張ろうとしていたティータさんの口から飛び出してくる男勝りの言葉にやや面を食らったのですが、結局演技に疲れて素の方を出す事にしたようですね。


「はい、お久しぶりです…ティータさんも進化したのですね」

 その(妖精サイズ)だとレベル上げも大変だったと思うのですが、無事に進化が出来たようなので安心しました。


「ああ、苦労したが…やっとの事でな」

 との事で、ティータさんが言うには属性を選んだ後にそれぞれの精霊に進化していくというチャートのようで、仲間の火力不足を補うためにも一番攻撃力の高そうな火属性を選んだのだそうです。


「なるほど…と、そういえば他の人達は?」


「ん、ああ…ノア(ラミアの女性)の奴は最近見かけないからよくわからないが…エルゼはそこに…居る筈なんだが?」

 なんて事を話していると、人垣を掻き分けるように足先が溶けて自分の影の中に沈んでいる体高30センチくらいのエメラルドの複眼を持つ真っ黒な蜘蛛がやって来て……こちらは影を操り簡易な刃物のように扱えるようになったエルゼさんのようですね。


「ふ~…やっと人混みを抜けたっすね…って、あ、本当だ…やっほー天使ちゃん、お久しぶり~」


「はい、お久しぶりです…エルゼさんも進化する事が出来たようでなによりです、が……そちらの人は?」

 ハムさんだけはレベルが足りなかったのか変化がなかったのですが、エルゼさんはシャドウハンターという影を操る上位種になれたようで……そんな懐かしい顔ぶれと一緒に居たのがローゼンプラムという15レベルの女性プレイヤーだったのですが、見た目は左右に分けた海老色(渋い赤色)の三つ編みを前に垂らしている可愛らしい文学少女といった感じで、垂れ目気味のアンバー色の瞳には意志の強さが見え隠れしていたりと敢えてリアルとは真逆の見た目にしてみましたという感じのキャラメイクをしている人のようですね。


 身に着けている物も地味さを強調する為なのか素材の色合いを大事にした品の良い物で……武器はシンプルな細剣で、簡易な盾として使えるような革製の大型ガントレットで防御を補うタイプの近接スピードタイプなのでしょう。


 防具としてはベストタイプのレザーアーマーの下にスカート丈の短いタイトワンピースを着込んでおり、露出している下半身は編み上げのロングブーツを履いて誤魔化しているのですが……これだと少し動いただけで下着が見えてしまいそうなのですが、その辺りは大丈夫なのでしょうか?いえまあ、それより気になる事があるのですが……。


「モモさん…ですよね?」

 ロックゴーレムの時やゴルオダス戦(第一エリアボス)の時にも多くのプレイヤーを率いながら戦っていたので印象に残っているのですが、第二エリアに入った(エッチな敵が増えた)辺りで引退したという話を小耳に挟んでいて……モモさんも転生していたのでしょうか?


「な、何の事かしら?モモさんなんていう女性の事は知りませんが?」

 他のメンバー(H Mさん達)が私達の方に来たからなのか、一応やって来ましたというローゼンプラムさんが私の顔を見た瞬間に冷や汗をかきながら視線を外して下手な言い訳をしていたのですが……多少声色を変えているといっても声質がモモさんのままですし、細かな動きがモモさんそっくりなのですよね。


 なので十中八九中身はモモさんなのですが、ローゼンプラムさんは一瞬私を路地裏か何かに連れ込もうと視線を動かした後に周囲の視線に気づいて足を止めて……フレンド登録が飛んで来ました。


『何でバレましたの!?』

 許可をするとフレンド通話(1対1の通話)が繋がったのですが、やっぱり中身はモモさんだったようですね。


『それは、特徴的な言動(口調)をしていますし…それよりレミカさんやダンさん(モモさんのP T M)はどうしたのですか?お二人とも転生したのですか?』

 モモさんのR P(ロールプレイ)は特徴的ですからね、見る人が見たらすぐにわかるのですが……ブレイクヒーローズをプレイする時に素面のままプレイするのが恥ずかしいというわかるようなわからないような理由でお嬢様風のRPを続けてしまっているのだそうです。


『そ、それは…その、ワタクシ達にも色々ありまして…』

 との事で、男女混合PTだったモモさんのPTは第二エリアのエッチなモンスターの前に亀裂が入って瓦解してしまい、邪な思惑を持って近づいて来る人達から逃げるように有名になり過ぎていたキャラを作り直す事にしたのですが……残念ながらモモさんは単独でも強いというタイプでは無いですし、どうしようかと思い悩んでいる時にハムさん達のPT(女性P T)と合流する事になり……協力してレベルを20台前後まで上げたところで折角ワールドクエストが発令中なのだからと船旅を満喫しながら物見遊山気分で第二エリアにやって来たという事ですね。その間に酷いナンパ男(バットジャークさん)に捕まる事になったのですが……。


『それは…』

 つまりモモさんだけがブレイクヒーローズに“嵌った”という事なのかもしれませんし、顔を真っ赤にしながら短すぎるスカートの裾をモジモジと弄っている姿を見ていると何かしらの思惑(エッチな事がしたい?)を持った上で“残った”のではないかと勘ぐってしまうのですが……その辺りはお互い様なところがあるので言葉にするのは止めておきましょう。


『も、もう…ワタクシの事は良いのですわ!それより貴女はこんな所で何をしているのですか?ただ海を眺めにという訳ではないのでしょう?』

 そうして羞恥心や色々なものを誤魔化すようにモモさん改めてローゼンプラムさんが訊いてきたのですが……レベルは低いもののローゼンプラムさんの強みは指揮能力といいますか、物応じない精神力と広い視野角ですからね、皆をまとめ上げるムードメーカーとしてはこれ以上うってつけの人はいないのかもしれません。


『そうですね、今は大森林を攻略する為に動いているのですが…ローゼンプラムさんも一緒にどうですか?』

 なので私はローゼンプラムさん達を『ディフォーテイク大森林』の攻略チームに誘ってみようと思い、ニッコリと笑いかけました。

※HMさんの名前を間違えていたので修正しました。表記のブレ(HM or ハム)につきましては、フルネームでは「HM」、呼びかけているような時には「ハム」となります(11/16)。

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