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464:ここには居る筈の無い人?

 『ディフォーテイク大森林』の攻略に向けて動き出した私達なのですが、魔導船(リヴァイアサン)の改良を行うフィッチさんとカナエさんとドゥリンさんと多くの船大工さん達以外のメンバーがそれ以外の準備をする事となり……まずメイン武器を研ぎに出すシグルドさんは町の外での活動が難しいという事でリッテルさんと一緒に船大工さん達のフォローや雑務を行う事になりました。


 そうして交友関係の広いまふかさんとスコルさんが戦力の勧誘を行う事となり……因みに強さという点ではシグルドさんの友人である十兵衛さんやその妹である桜花ちゃんもなかなかの強さなのですが、この2人はゲームにログインしていないので誘うのは難しいのだそうです。


「その…プレイしている身で言うのもなんだけど、流石に桜花には刺激が強いんじゃないかなっていう話になってね」

 まるでブレイクヒーローズを続けている私達の方が変な人だというような戸惑い方だったのですが……私も癖の強いゲームである事は理解していますからね、少しだけ恥ずかしかったものの軽く頬に両手を当ててから息を吐きます。


「そう、ですね…その方が良いと思います……ただそうなると…シグルドさんは大丈夫なのですか?危険性という意味では男性でも似たり寄ったりですよね?」

 女性でも男性でもエッチな攻撃をしてくるモンスターはエッチな攻撃をしてきますし、その事を聞いてみるとシグルドさんは苦笑いを浮かべていたのですが……。


「これだけリアルな動きを再現してくれるゲームがブレイクヒーローズだけだからね…消去法っていう奴かな?それに耐性を固めておけばあまり問題は…なくはないけど、精神修行の一環だと思う事にしているよ」

 との事で、当たらなければどうという事はないを地で行く可笑しな戦い方をしているのだそうです。


 ただ桜花ちゃんにも同じ事をさせるのはどうかという事で十兵衛さん()からストップがかかり……そういうあまりにも真っ当な理由なので無理強いは出来ませんし、2人の参加は見送った方が良いのでしょう。


「ほらそこ、くっちゃべっている暇があったらキリキリと働く!っていうかあんたはこれから『クリスタラヴァリー(レナギリーの拠点)』に行くんでしょ?本当に1人で大丈夫なの?」

 そんな事をシグルドさんと話していると、別行動を取る事になったまふかさんが腰に手を当てながら聞いて来たのですが……私の役割はレナギリーから橋を作る為の蜘蛛を借りる事と魔導船の燃料となる魔素を集めて来る事ですからね、わざわざ他の人に手伝ってもらわなければいけないような事でもありません。


「はい、人の手を借りなければいけないような強敵を狙うのは効率が悪いですし…レナギリーの説得も大勢で押しかけたらどうにかなるというものでもありませんので」

 男の人も居るので「まふかさん達が協力してくれたら質の高い魔素が手に入るのですが」という言葉は飲み込んでおくのですが、単純な移動速度を考えると私達だけの方が速いと言いますか……他の人を連れて行けば連れて行くほど到着が遅れるのですよね。


「あんたがそれで良いって言うのなら良いんだけど…この作戦は橋を架ける事が出来るかにかかっているんだからね、ちゃんと説得して来るのよ?」

 なのでまふかさん達とは別行動をとる事になっていたのですが、そんなまふかさんは「本当に大丈夫なのかしら?」みたいな様子で息を吐いていて……これがまふかさんなりの激励なのだと思いますし、私は「大丈夫」だという事を伝える為にも微笑みを返しておきましょう。


「そ、そんな事…は!ゆ、ユリエルさんなら大丈夫かと!」

 そうして慌ててフォローを入れてくれているグレースさんなのですが、最終的にはまふかさんやスコルさんと同じ人材勧誘チームに入ってもらう事となり……あからさまな人選ミスのような気がしてこなくもないのですが、船大工チームからは居ても邪魔になるだけだからと言われてしまったのでこの配置なのですよね。


「そうそう、ユリちーが困った時にはおっさん達が駆けつけるから…大船に乗ったつもりでドーンと当たって砕けて来なさいな」


「ちょっと、砕けちゃダメでしょ?はぁ…ったく、でも本当に何かあったらすぐに連絡を入れなさいよ?いい?勝手に美味しいところを持っていくんじゃないわよ?」

 まふかさんからはまるで手柄を何度か奪われた事があるというような剣幕で詰められてしまいましたし、グレースさんは最後の最後まで一緒について来たがっていたのですが……移動速度の問題がありますからね、後の事はスコルさんとまふかさんに任せて出発する事になりました。


(それでは早速…と言いたいのですが)

 到着後に何かしらのクエスト(問題解決)が発生する可能性がありますからね、最低限の準備くらいはしておきましょう。


 そういう訳で『イースト港』に居る間に消耗品の買い出しを行う事にしたのですが、まずは収納量が増えた隙間にポーションを5本ずつ追加(定数12本に+5本)し、投げナイフは定数(40本)からプラス10本増加、それ以外の消耗品もプラス3個ずつ購入しておきます。


(後は…)


(ぷっ!)

 との事で、買おう買おうと思っていた牡丹の盾も合わせて見て回る事にしたのですが……プレイヤー産の物でピンとくる物が無かったので『エルフェリア』からの流出品だと思われるレアリティが『R(レア)』で品質が『D』のラウンドシールドを購入しておく事にしました。


 これは直径60センチ程度のアボブルという特殊な木材で出来た木製の盾を金属で補強した物と言いますか、『藤甲の盾』を手に入れる前のグレースさんが使用していた物の品質劣化版……と言うとアレなのですが、どうやら私達が魔導船についての話をしている間に『エルフェリア』を巡る戦いは一段落していたようですね。


 というより熊派が『ルミエーヌ(大森林)』の中に引っ込んだ事もあって『エルフェリア』では大規模な戦闘が発生しなかったようで……勿論熊派が嫌がらせ程度のモンスターを残していったので今なお掃討戦が続いているのですが、私達が手に入れたのはそういう戦闘が始まる前の火事場泥棒品といいますか、とりあえず拾った大量の装備品を持ち歩くのも難しいのでさっさと売り払ってしまおうとした物の内の一つという事になります。


 なのであちらこちらに傷が残っていたり耐久度が低くなっていたりで品質が下がっているのですが……魔力伝達率とでもいうのでしょうか?牡丹の持っている【マジックシールド】とも相性が良かったので当面の間はこの盾で我慢しておいてもらう事にしました。


『あまり重い盾を持たせるのも可哀そうだしー牡丹ちゃんにはこれくらいの中古品がお似合いだと思うわよ~?』


(ぷい!?)


(ラディはいちいち煽らないでください…牡丹もよろしくお願いしますね)


(ぷ~っ!)

 ラディの挑発に対して膨れっ面をしていた牡丹の頭を撫でてあげると機嫌が良くなったのですが……機嫌といえば淫さんが黙り込んだままなのですよね。


(何かがジワジワと漏れてきているような気もしますし)

 時々身じろぎするようにドレスが揺れた時には緑色混じりの黒い靄が立ち上っているのですが、漠然と感じるイメージは何かの卵っぽい感じで……眷属仲間でもある牡丹やラディやニュルさんは気にしている様子がないのですが、本当に大丈夫なのでしょうか?


『そうね~大丈夫だと思うわよ~?』


(ぷー…)

 との事で、ラディや牡丹は「よくわからない」と言いつつ心配はしていないようですし、ニュルさんもウネウネとしているだけなので意外と大丈夫なのかもしれません。


(わかりました…何かあったら言ってくださいね?皆も…何か気づいた事があったら言ってください)

 眷属が増えて来ましたからね、混線を避ける為のセーフティーが働いているだけなのかもしれないとか考えていると、『翠皇竜のドレス』がドクンと揺れてビックリしてしまったのですが……皆が大丈夫だと言うのならその言葉を信じる事にしましょう。


 とかいう会話をしながら色々と準備をしていたのですが、最低限の準備を終えてから『クリスタラヴァリー』に向かおうとしたところで誰かが言い争いをしている事に気が付きました。


(どうしたのでしょう?)

 どうやら大通りの方で護衛と言う名のナンパをしたいだけの男性とお嬢様っぽいプレイヤーを中心とした幽霊と妖精と蜘蛛という異色の女性PTが揉めているようで、「頼んだ覚えはありませんわ!」だとか「貴方が付きまとっていただけ」とか言い争っているのですが……装備を一瞥した限りでは第一エリアからやって来た物見遊山のプレイヤー達と言った感じでしょうか?


 周囲の人達もやいのやいのと言いながら「断られているんだから諦めろー」だとか「しつこい男は嫌われるぞー」とか女性プレイヤー側についているので放っておいても大きなトラブル(無理矢理襲い掛かる)には発展しなさそうなのですが……。


『あら~…あの人は~…?』


(ぷい!?)

 それだけならよくある光景だと思ってスルーしたのですが、よくよく見てみると()()知っている人達だったので足を止めてしまいました。


(あれは…?)

 そうして遠巻きに眺めていると今まで軽薄そうな笑みを浮かべていたナンパ男が私達の事に気が付いてしまい……大げさな身振り手振りで両手を広げると引き攣ったような音程でキヒヒと笑います。


「おー…そこに居るのは()使()()()()じゃねーか、こんな所で会うなんて奇遇だね~って事で~一発やらせてくれねーか?こっち(プレイヤー)側だと好き放題に襲うつー訳にもいかないから溜まって溜まってしかたねーんだよ」

 なんて最低な事を言い出したのがやや緑色がかったボサボサの黒髪にひと房だけ砂色の髪を混ぜた金色糸目の肉体労働系の筋肉のついた170センチ前後の男性で……いえまあその言動にも色々と言いたい事はあるのですが、あまりにも聞いた事のある声だったので容赦なく【弱点看破】を打ってみるとバットジャーク(蝙蝠野郎)というレベル8のプレイヤー(敵味方識別は白色)だったのですが……。


「お断りします…それより何でこんな所に居るんですか?」

 その言動から推測するまでもなく中身はレイブンさん(熊派のトカゲさん)だと思うのですが……何でこんな所(PLの勢力圏)にいるのでしょう?

※誤字報告ありがとうございます(4/1)訂正しました。

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― 新着の感想 ―
このゲームサブ垢あったっけ? 作り直し? あと常識人?の淫さんの闇落ちフラグかな❔
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