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463:スコルさんの反対と決戦準備

「そりゃ~おっさんも似たような事を考えはしたけど…沖合(南側)に流されていった状態から戻って来るだけでも一苦労だったのよ?しかも大森林の近くは接岸しづらそうな崖ばっかりだったし…そんな場所にどうやって乗り込むつもりなの?」

 処女航海を終えたスコルさん達(フィッチさん達)が『イースト港』に戻って来ていたので早速魔導船の貸し出しについての交渉をする事になったのですが、「やっぱり気がついちゃったのね~」みたいな顔をしているどこか乗り気ではないスコルさんが問題点を指摘してきて……。


「そんな状態で敵地に乗り込むのは危険よ?仮に乗り込めたとしてもユリちー達が戻って来るまでの間その場に船を留めておかないといけないし、帰りの船が撃沈された時の対策もちゃんと考えているの?」

 今までなら不利となったら撤退する事が出来ましたからね、スコルさんは私達の安全を考え(やられたら凌辱)実質的な片道切符の特攻になってしまうこの作戦には反対のようで……しかもフィッチさんが作り上げたリヴァイアサン(魔導船)は100人乗りとそれなりの人数が乗れるような気がするのですが、相手にしなければいけないのはアーティファクトを装備した十数人の熊派に加えて無限湧きする大森林のモンスター達で、そして確実にレイドボスクラス(集団専用ボス)であろうデファルセント(エリアボス)などが待ち構えている訳ですからね、手練れを集めたからといってそれで安心が出来るという相手ではありません。


「ああもう、五月蠅いわね…聞いていたら出発する前からあーだこーだと…船なんて沈んだらまた作り直したら良いんだから、やるだけやってみたらいいのよ」


「そうだぞ、やる前から…っておい、よくよく聞いてみたら俺達が作った船が簡単に沈むって言いてーのか?」


「あの~ドゥリンさんが作ったというより我々が作った船ですし、出来たら沈めない方向でいってくれると助かるのですが…まあそれは良いとして……苦節数十日、我々の船が戦況に貢献できるとなれば貸し出すのはやぶさかではないのだが」

 そうして援護射撃を入れてくれるのがまふかさんであり、魔導船に対する絶対の信頼があるドゥリンさんとフィッチさんなのですが……。


「とにかくおっさんは片道切符の特攻なんて許しません!あんなのは馬鹿のする事です、どーしてもっていうのならおっさんを説得するだけの交渉材料を持ってきなさい!」

 駄々をこねながら大の字に寝転がり断固拒否を表すようにバタバタと暴れているスコルさんなのですが、わざわざ寝転がったのは上着を羽織っただけのまふかさんのハミ乳をローアングルから眺めたいという理由ではないのですよね?


「そう感情的になるものではないと思いますが…現実問題として勝算が少ないというのは憂慮すべき点では?」


「そ、そうですよ、あれだけ流される海を渡って上陸するのは流石に危険かと!」

 そうして慎重論を唱えるのは駄々をこねているスコルさんと眼鏡を直すような仕草をしているカナエさんと全身鎧(フルプレートアーマー)から革製の鎧下に胸甲(きょうこう)とガントレットにグリーヴ(脛あて)サバトン(鉄靴)と部分部分を補強するスタイルになっているリッテルさんで……因みに何故細工師のカナエさん達がいるのかというのはフィッチさん繋がり(リアル親子)でカナエさんが助っ人として呼ばれていて、その護衛にリッテルさんがという流れのようですね。


 後はどちらにも肩入れする事が出来ないグレースさんがオロオロしていたりと意見が綺麗に分かれた訳なのですが……やられてしまったら凌辱ルートに入ってしまいますからね、本気で私達の事を心配しているスコルさんの忠告を無視して『ディフォーテイク大森林』に特攻をしかけるというのも気が引けるような気がしますし、いったいどうしたら良いのでしょう?


「ああもう、まどろっこしいわね…行きたくないメンバーは放っておけば良いんじゃない?…ッひぃんっ!?」


「けけ喧嘩は…駄目、ひゃん!?」

 そうして「やれやれ」というように息を吐きながらジリジリと距離を詰めて来ていたスコルさんを蹴っ飛ばそうとしていたまふかさんの腰に素早いタックルをみせていたグレースさんなのですが、オートで発動する【狂嵐】の影響を受けた2人はピリッとしてしまったようですね。


「だ、だからあんたはちゃんと名前を…ちょ、んんッ!?っていうか、離れなさいよ!」

 とはいえ折角新しいジャケットを着たばかりですからね、燃え尽きないように出力を調整しているまふかさんは微細な【狂嵐】に反応してしまった『ヴィーヴルメタル(生きた金属)』によって敏感な突起を容赦なく責め続けられていて……。


「はっ、あぁああん…っ!?」

 そうしてグレースさんと一緒に崩れ落ちていたのですが……そのおかげで少しだけ変な空気になりましたし、皆が何とも言えない顔になってしまったのですが……今の内に確認すべき事を確認しておく事にしましょう。


「それで…スコルさんはどうしたら良いと思うのですか?」

 色々な事を考えているスコルさんが何の対策も考えていないという事は無いと思いますし、改めてどうしたらいいのかを聞いてみたのですが……スコルさんは渋々といいたげな渋面を作ってから胡散臭げな笑みを浮かべてみせました。


「そりゃ~……レナたん(レナギリー)に協力を頼むしかないんじゃない?船で行くのが難しいのなら橋を作っておけば良い訳だし、ユリちーなら頼み込めるでしょ?」

 との事なのですが、糸の橋を作っておけば何かあった時の撤退もしやすくなりますからね、船も沖合に停めておく必要がないので安全に撤退が出来るという事なのでしょう。


「それは…頼めば来てくれるのかもしれませんが…全員は無理ですよ?」

 『精霊の幼樹』の防衛があるのでレナギリーの参加は見送ってもらう必要がありますし、毀棄都市の時のような全軍出動というのは頼む事が出来ないのですが……『セントラルキャンプ』や『蜘蛛糸の森』から『ディフォーテイク大森林』に向けて糸の橋を作る程度の協力はしてくれるのかもしれません。


「って、ちょ、ちょっと…ッ!?そういう案があるのなら最初からそう言いなさいよ!なんでいちいち反対したの!?っていうかあんたは何時までへばりついてんのよ!」


「す、すみま…し、痺れて動けなくてぇ…!」


「ああもう、鬱陶しいわね!」

 無駄に言い争う事になったまふかさんが怒鳴り声を上げながら覆いかぶさって来ていたグレースさんを剥ぎ取ろうとしていたのですが……この調子なら「最初から橋を架けてもらった方が早かったんじゃないの?」なんて言い出しそうなのですが、流石に対岸まで(100メートル先まで)糸を飛ばすのは難しいと思いますし、大森林側で待ち構えているトレント系のモンスターを何とかする(排除する?)必要がありますからね、魔導船による移動や運搬は必須になってくるのだと思います。


「スコルさんは慎重論を述べていただけだと…?」

 誰かがブレーキを踏まないといけない時もありますからね、ノリと勢いで突っ走ろうとしていた私達を諫める損な役回りをこなしてくれたスコルさんはヘラリと舌を出しながら目を細めるのですが……。


「おっさんが片道切符の特攻が好きじゃないっていうのは本当の事だし、ユリちーの事が心配っていうのも本心よ?だから教えたくなかったんだけど…まあそれでも、ユリちーが何とかするところを見てみたいっていうのはあるのかな?」

 つまり「これくらいのトラブルなら何とかするでしょ?」という信頼をした上での問題の提起だった訳なのですが、手ごろな着地地点を探っていたスコルさんはパチンとウィンクをしてきて……スコルさんがそんな仕草をすると途端に胡散臭くなってしまうのが不思議ですね。


「何ですか…それは」

 とにかく基本方針(魔導船を使った橋作り)は決まったのですが、船大工チームによるとまだまだ問題が山積みなので改良する時間が欲しいのだそうです。


「このままだと出力が不足しているからな、少しでも馬力を上げておかねーと…つー訳でもう少しだけ…あれ、なんだっけ?ほら魔石みたいな…魔素、だったか?を用意できねーか?後は外海の波が思ったより荒かったからな、走破性をどうにかしねーと危なっかしいにも程があるぞ?」


「ふ~む、流石にエンジンをオーバーホールするには時間が…ブースト圧を上げるだけなら風の魔石(ハーピーの魔石)を改良すればいいし、復元性についてはバルジを取り付ける方法を試してみては?」


「おと…お2人は改良する事ばかりを考えているようですが、まずは痛んだ箇所の修理をしませんか?このままだと沖合に出ただけでも船体がへし折れますよ?」

 との事で、問題点の洗い出しを行いながら船大工チームが動き出したのですが、彼らは大森林の攻略というわかりやすい課題が出て来て燃え上がっているようですね。


 そうしてなし崩し的に準備が始まったのですが、このまま『ディフォーテイク大森林』に攻め込むにしても色々と準備をしなければいけなくて……消耗品の調達にスキルの調整にレナギリーの説得、そして何より圧倒的に足りていない戦力をどういうふうに掻き集めるかという問題が立ち塞がっていました。


(ナタリアさんとヨーコさんが戻ってきたら相談してみるとして…)

 失礼ながら船大工さん達の中から戦える人を加えたとしても純粋な戦力としてはカウントする事ができませんし、もう少し戦える人が欲しいのですが……。


「ドゥリンさんがここに居るって聞いたんだけど…お取込み中かな?」

 そんなタイミングで日本刀を片手(研ぎをお願いしようと)シグルドさん(金髪の剣豪さん)がやって来たのですが……流石の嗅覚と言いますか、決戦の空気を嗅ぎ取りやって来たのかもしれませんね。


「良いところに来てくれました…実はシグルドさんにもお願いしたい事があるのですが」

 このまま大森林の攻略を始めたら袋叩きにあってしまうのは目に見えていますからね、作戦の決行については『隠者の塔(正規ルート)』や『エルフェリア(別の懸架チーム)』側から攻め込むプレイヤー達との足並みを揃える必要があるのかもしれません。


「それが楽しい事だったらいいのだけど…まずは話を聞いてもいいかな?」


「勿論です、少なからず思う存分刀を振り回せる内容ではあると思うのですが」

 ニッコリと笑うシグルドさんは相変わらず凄みのある笑みを浮かべていたのですが……こうして少しずつ戦力が集まり希望が見えて来たところで、『ユリエルユニオン』主動の『ディフォーテイク大森林』攻略戦に向けての準備が開始される事になりました。

※少しだけ修正しました(11/10)。

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