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455:赤黒い薔薇

 予想もしていなかった場所(大森林との境界線)でジョン・ドゥさんと出会ったのですが、どうやら熊派に捕まってしまった人達を助けて欲しいと頼まれていた(大金を積まれていた)ようで……そういう(酷い目にあっている)人達が居るという事は知っていましたし、救助に向かっている人達の内の1人がジョンさんだったという事なのでしょう。


(それより気になる事があるのですが…)

 そんなジョンさんを見ていると違和感を覚えてしまうといいますか、妙に気配が薄くて……この違和感の元が何なのかという事を考えながらタクティカルジャケットに軍用ブーツといういつもの装備を身に着けているジョンさんを眺めているのですが、風景に溶け込むような半透明のバンダナを首元に巻いている事に気が付きました。


(どうやらこの装備(半透明のバンダナ)と大森林に漂っている魔力のせいで感知が難しかったようですね)

 ジョンさんという存在を認識していれば偽装効果も薄いのですが、一度意識を逸らすと朧げな存在感になるような気がして……勿論隠密系のスキルも併用しているのだと思いますが、妙な気配の原因はこの認識阻害系の装備を身に着けているせいなのかもしれません。


 なので仕方が無いのかもしれませんが、魔法を撃たれるまでジョンさんの存在に気が付かなかったという事は少しだけ悔しくて、同意見であるニュルさんも触手をウネウネとさせていたのですが……因みに媚毒や状態異常についてはまふかさんの【狂嵐】の水バージョンといいますか、水の膜を張るアイテムがあるようですね。たぶんそんなアイテムを使ってハーピー達の振動を軽減していたのだと思いますし、そういう色々な準備をして大森林に潜入して来ているのだと思います。


「細かなところは端折るが…」

 そんな風にジョンさんから感じる違和感を分析していたのですが、装備品に関する種明かしをする気のないジョンさんは話しを進め……サングデュール(赤黒い茨の塊)を突破し凌辱の限りを尽くされていた要救助者を助け出す事には成功したのですが、その人達は酷い仕打ちを受け続けていたのでまともに動く事ができない状態になっていたのだそうです。


「帰りは足手まといが多すぎてな…どうしようかと悩んでいたんだ」

 外傷や疲労についてはポーションを使ったのですが、色々なデバフや状態異常を受けている人達は境界線にもなっているサングデュールを越える事が出来なくて……そんなタイミングでいつもとは違う動きをしている事に気付いたジョンさんが周囲の様子を調べに来た先に居たのが私達だったという訳ですね。


「それで改めて協力して欲しい事だが…要救助者が逃げ出す時間を稼ぐためにサングデュールのヘイトを稼いでもらいたい」

 そうして話を締め括るようにそんな事を言ってくるのですが、ジョンさんが言うにはサングデュールはかなり機械的な反応をするようで……それでいて総エネルギー量ともいえるリソースには限りがありますからね、具体的に言うと単位時間当たりの再生量や出せる茨の数も決まっているのでその特性を利用するのだそうです。


「そちらの事情はわかりました…が、私達が手伝ったところで何の利益があるというのですか?」

 私達からしたらこのまま脱出した方が安全ですし、そもそもジョンさんが熊派に連れ去られた人達を助けようとしているのはお金の為ですからね、使命感や慈悲の心でもないというのはその冷淡な反応の端々から感じる事が出来るのですが……そんなジョンさんは私達が足手まといだとわかった時点で切り捨てにかかると思いますし、そんな人の為にタダ働きをする気はありません。


(私だけなら協力するのもやぶさかではないのですが…)

 まふかさんからしたらここで逃げ出す方が問題(撮れ高が無い)なのかもしれませんし、人助けに関する事ならグレースさんも反対はしないと思うのですが、クランマスター(皆の代表)としてはタダ働きを強要する訳にはいかないのでそれなりの報酬やら見返りを要求する必要はあると思います。


「救助報酬の半分をそちらの取り分にしても良い、後は…そうだな、そいつ(ラディ達)の事を詮索しない事と俺達が奥地で入手した情報を提供しよう、この状況だと値千金の価値があると思うが?」

 淡々と事実を述べているようなジョンさんはなかなか思い切った提案(途中参加に報酬の半分)をしてくるのですが……ラディとニュルさんの詮索しないでいてくれるだけでもかなり嬉しい(説明が面倒臭い)ですね。


「それは……わかりました、皆もそれで良いですか?」

 大幅な譲歩と報酬を引き出せたような気がするのですが……乗りかかった船ですからね、大森林の情報は欲しいですし、ラディ達の事を黙っておく代わりに何ていうふざけた提案が出なかっただけでも十分誠実な内容なので私は協力しても良いと思います。


「仕方がないわね、困っている奴を放っておけないし…だけどこいつの言っている事って当てになるの?あたし達を嵌める為に嘘をついている可能性もあるんでしょ?」

 そうしてまふかさんが腰に手を当てながら手厳しい事を言うのですが、観察して出した結果にケチをつけられたジョンさんは面白くなさそうに眉を寄せていて……とはいえここで下手に言い争っていても仕方が無いですし、ジョンさんの方から頼み込んでいるという事もあって聞こえよがしに大きな舌打ちを打つだけで済ませていました。


「…信じる気がないのならそれでもいい」

 ジョンさんからしたまふかさんというのは【狂嵐】の影響でボロボロになっている服からニップレスを付けた巨乳がまろびでている美女ですからね、「何でこんな奴に説教されているんだ?」と言う感じで呆れているのかもしれません。


「っ!?何よ、その言い方!?」

 そうして「こんな状況で嘘をつく必要はないのがわからないのか?」みたいな呆れ顔をしているジョンさんにまふかさんが噛みついていたのですが……この2人は相性が悪そうですからね、グレースさんもよく知らない人に対して挙動不審になりかけていますし、赤黒い茨の再生を終えたサングデュールが動き出しそうなので2人の間に入っておくべきでしょう。


「まあまあ、それより…ヘイトを稼ぐといってもどの程度の行動を求められているのですか?ある程度のダメージを与えていくのか逃げ回っているだけでも良いのかで大きく難易度が変わると思うのですが」

 私達にヘイトを向けるだけならある程度の距離を取ってからの適当な牽制だけで良いのですが……。


「そうだな…ある程度の攻撃を加えてもらいたい、一点突破に備えているのだと思うが、強く攻撃をすればするほどそこに茨を集める習性がある」

 歩くだけでも精一杯と言う人達をいつまでも待たせておく訳にもいかないという事で、ジョンさんは短期決戦がお望みのようですね。


「わかりました、出来るだけ努力をしますが…」

 ここで少しだけおさらいをしておくのですが、まずサングデュールは一定の間隔で突き刺さっている灰色の木(20m)とその間を繋いでいる赤黒い茨で構成されており、獲物が感知範囲に入ると活動を開始するのだそうです。


 そして強大な敵が居たらそちらへと戦力を集め……この辺りはかなり柔軟な対応をするようで、柔軟過ぎて過密している場所と過疎っている場所を作ってしまうところを突こうというのがジョンさんの作戦ですね。


 因みにジョンさんが言うにはサングデュールは機械的な動きをするという事なのですが、これは一定の行動をとっている間に他の事が疎かになるという事が無いという事で……つまり下手な陽動などは意味が無いという事を示していました。


「端だからといって反応が鈍いという訳でもないからな、特定の場所に強敵が居ると思わせる為に攻撃をしかける方が良い」

 との事で、これはこれで面倒臭い相手なのかもしれません。


「つまりある程度粘っていると()()()()()()集まって来る…という事ですね」

 そんな会話をしている間に風の魔法で吹き飛ばされていた茨の再生が終わり、初めから生えていた灰色の枯れ木の近くに別の木が生えて来て……これが近くのサングデュールが集まって来るという現象なのかもしれませんが、茨の数も2倍になっていたりと捌き切れるかが疑問になって来る(しげ)り具合ですね。


「ああ、そうだ…わざわざ遠くから呼び寄せる理由も無いからな…左右2本分をこの場所に集める事が出来たらあいつらでも逃げ出す事が出来る隙間が開く筈だ」

 淡々と説明するジョンさんは持っていた円柱形のナイフを確かめてからベストに挟み込み、大型のククリナイフを取り出すのですが……この2倍に増えた手数(赤黒い茨)を凌ぎながらもう一本の枯れ木が生えて来るまでの時間を稼がなければいけないというのはなかなか大変な事なのかもしれません。


「ねえ、さっきの魔法…ほら、風の渦みたいなの、あれをもう一度使う事は出来ないの?」

 茨だけなら私の【淫気】でも斬り払える程度の強度しかないですからね、風の魔法を連打する事によって時間が稼げないかと聞いてみるまふかさんなのですが……そんな事が出来たらわざわざ私達に協力を申し込む必要が無いですからね、使用するにしても何かしらの条件があったりチャージするのに時間がかかったりするのでしょう。


「使えたら使っている」


「はっ…偉そうにしておきながら肝心なところで使えないのね」

 「そんな事もわからないのか?」と馬鹿にしたようなジョンさんにまふかさんが食ってかかるのですが……今は喧嘩をしている場合ではないので挑発し合うのは止めて欲しいですね。


「あああの、そ、それより!何か凄い事になっていますよ!?」

 最初にサングデュールの変化に気が付いたのは目の良いグレースさんだったのですが、どうやら最初から生えていた方の幹が巨大化しているようで……先端が割れていったかと思うと赤黒い巨大な薔薇の花が咲き、禍々しい毒の霧を辺りに噴き出し始めました。


(これは…?)

 そんな赤黒い霧に包まれた場所から小さな茨が生え始めているのですが……本当に面倒な事が次から次にやって来ますね。


「集まって来たら強化されるのですか?」


「いや……これは予想外だ」


「何でいきなり自信なさげなのよ!?さっきまでの自信満々な様子は何だったの!?」


「ひっ…き、来ます!!」

 そうして次々と生えて来る茨が蠢き私達を絡め捕ろうと伸びて来るのですが、赤黒い霧が辺りを包んで視界が悪く……これは少しばかり気合を入れないといけないのかもしれません。


(いくつか試そうと思っていた事はありますが…)

 ジョンさんという部外者が居る場所で切り札をきるのは悪手なのかもしれませんが、そういう事も言っていられない状況なので【グリモワール】を開かせて(使用させて)もらいましょう。

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