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449:合流してからのワチャワチャ

 淫さんが剥がした前張りに関しては水洗いしてからまふかさんに返しておきましたし、渋るラディとニュルさんを【招集】で仕舞い込んでから『隠者の塔』に……より正確に言うと熊派との小競り合いが起きている南側ではなく『リヴェルフォート(最北端の拠点)』との間にある小道から外れた場所だったのですが、比較的移動距離が短かった事もあって何とか遅れずに済んだようですね。


(とはいえ、本当にギリギリでしたね)

 元は岩山だった場所には『精霊の幼樹』の力で『リュミエーギィニー(退魔の針葉樹)』が生い茂っていたのですが、これだけ生えていると魔力による探知も出来ないのでMAPのマーカーを頼る事になり……。


「ゆ…ユリエルさ~ん!こ、こっちで~す!!」

 真っ先に私の事を見つけてくれたグレースさんが手を振ってくれましたし、のんびりと雑談をしていたナタリアさんとヨーコさんと……なぜか居るスコルさんが尻尾をブンブンと振っていたのですが、突進して来たグレースさんが私の目の前で急ブレーキをかけたかと思うと地団太を踏みながらクルクルと回転してから手を差し伸べて来ていたので握手をしておきました。


「すみません、お待たせしました…のですが、なんでスコルさんが居るんですか?」

 この集会はクラン単位での行動指針を決める会と言いますか、言ってしまえば私が主催している『ユリエルユニオン』の作戦会議ですからね、部外者であるスコルさんには声をかけていなかったのですが……。


「酷い!?おっさんとは遊びだったのね!昨日はあれだけくんずほぐれつの熱い戦いを繰り広げあった仲だというのに!」


「いかがわしい言い方をしないでください!それにそもそも……スコルさんはクランメンバーでもその候補でもありませんよね?」

 私は「遊びも何もブレイクヒーローズはゲーム(遊び)なのですが」と言いかけたのですが、人生を賭けているような人やまふかさんのように配信でお金を稼いでいる人もいますからね、その事をわざわざ伝える必要が無い事に気が付いたので口を閉じました。


 むしろそれよりドゥリンさんの事をお願いしようと思った時に繋いでいなかった事が引っかかるといいますか、このタイミングで繋いでいる事に対して納得が出来ないような気持ちが湧き上がってきてしまうのですが……これは完全な八つ当たりですからね、ヘラヘラと笑っているスコルさんのする事にいちいち腹を立てていても仕方がないですし、この人の事は放っておく事にしましょう。


「まあまあ、ここまで来ておいて仲間外れにするのも悪いし…それよりお姉さんとしては何でユリエルちゃんとまふまふが一緒にやって来たのかが気になるんだけどな~?」

 そうしてニヤニヤと笑うナタリアさんが見ていたのは少し遅れてついて来ていたまふかさんなのですが、身体の曲線を見せつけるようなピッチリした衣装の下では乳首がプルプルしているのでいつもの強気も鳴りを潜めているのですよね。


「それは、装備についての相談を受けていまして…」


「そ、そうよ!たまたま見かけたユリエルに声をかけて…」

 エッチな装備に関する相談だったと言うのも恥ずかしくて何とか誤魔化そうとするのですが、『ヴィーヴルメタル』で出来たニップレスが発する魔力のうねりがただただ静かにまふかさんの身体を蝕んでいて……火照って汗ばんだ肌や潤んだ瞳では大変な事が起きている事が丸わかりですし、その様子を見て何事かを察してしまったスコルさんはニマニマと笑いながら舌を出していますし、グレースさんは何故か「ぴゅいッ!?」っと跳びはねてから握っていた手をブンブンと強く振り続けていますし、流石にこのままだと気まずい空気になりそうだと察したヨーコさんが咳払いをしてから話題を変えました。


「そ、装備の相談と言えば~…ナタリーと『ペネストレイト(侵徹徹甲榴弾)』の改良についての話をしていたのだけどー」

 そうして真っ赤になってしまったまふかさんから視線を逸らしながら改良版の『ペネストレイト』を見せてくれたのですが……方向性としては小型化による携帯弾数の増加と準備の簡略化(連射能力UP)といった感じでしょうか?


「そう、ですね…軽量化は良いと思いますが……ここまで(半分近くまで)小さくしたら威力が下がりませんか?」

 接近武器(ナイフ)として使える大きさをしていた『ペネストレイト』なのですが、ナタリアさんのスキル構成では使うべきボスクラスの敵には近づく事が出来ないという問題がありますからね、それならいっその事遠距離攻撃に全振りしようという考えなのかもしれませんが……ここまで小さくしてしまうとボスクラスの敵にダメージが通らなくなるという本末転倒の結果になってしまいそうなのですよね。


「そうなのよね~…小さくしたら小さくしたらで貫通力が無くなっちゃって…色々と形状を変えたり大きさを変えたりしているのだけど、こうなったら別の素材で一から作り直した方がいいのかしら~?」

 との事なのですが、私の手持ちにはまふかさんから【晶析】化した高品質な魔素がありますからね、ヨーコさんには見せておこうと思っていたのでこのタイミングで見せておく事にしましょう。


「そうですね、素材については丁度良い物を持っているのですが…」


「これは~…?魔石とも違うし…鉱石?とも違うし、何かしらのエネルギーの結晶なのかしら?」

 そうして錬金術師であるヨーコさんが興味深げに魔素を眺めながらその内包魔力を測定していたのですが、その様子を横から眺めていたナタリアさんも口を挟んで来て……。


「私も見た事が無いアイテムだけど…これは何処で手に入れたのかな?」

 素材などを集めたりするのが好きなナタリアさんが入手経路を気にしていたのですが、スキルによる入手なので何処で手に入れたという物でもないのですよね。


「すみません、これは【晶析】というスキルで精製できるアイテムなので何処というのは…質が低い物で良ければモンスターから回収できるのですが、利用方法が無くて困っているのですよね」


「じゃあそのスキルの事を詳しく教えてもらうー…っていう事も難しいのかな?」


種族由来(『搾精のリリム』)のものだと思いますので、私も詳しくは」

 ナタリアさんには粘られたのですが、親しいからといって何でもかんでも教えなければいけないという事もないですし……そもそも【晶析】の元となったスキルは【解体】というごくごく普通のスキルですからね、ネットに情報が出ていない以上かなり特殊な条件を経て生えて来たスキルなのだと思います。


「そっかー…それじゃあ似たようなスキルを作れるように…うー…ブレヒロのスキルツリーは難しすぎて訳が分かんない!パッと見た感じだと魔力関連のスキルが関係しているのよね!?」

 そもそも狩人であるナタリアさんも【解体】くらいは持っていますし、上級スキルである【同時解体】に進化しているのですが……これは獲物を大量に解体できるという純粋進化系の時短系のスキルですからね、私のスキルツリーとは全然違った伸び方をしているので教えたからといって参考になるとは思えないのですよね。


「ねえ~2人で盛り上がっているところ悪いのだけど~…流石に一つだけだと大した実験も出来ないし、もう一つか二つくらいコレと同じ物を手に入れる事は出来ない?」

 魔素をしげしげと眺めていたヨーコさんがそんな事を聞いて来たのですが、余っていた魔素は牡丹に渡してしまいましたからね、今はまふかさんから【晶析】したその1つしかありません。


「すみません、今はそれだけで…また入手したらお渡しできると思いますが」


「そう~…そうねー…因みにこれは使ってしまっても良いのかしら~?あ、もちろん相応の代金は支払うつもりなんだけど…」

 言いながらお金を支払おうとするヨーコさんなのですが、現時点では値段をつける事ができないアイテムですし……ヨーコさんに何かしらの利用方法を探ってもらった方が私としても助かる(価値が出る)のですよね。


「特に集めるのが難しい素材でもありませんし、出来た物を見せてもらうか…そうですね、何かしらのアイテムとの物々交換と言うのはどうでしょう?」

 その方がどんなアイテムが出来たのかを知る楽しみがありますし、ヨーコさん印のポーションか何かと交換できるのならその方がお得なのかもしれません。


「いいの?疑似魔石ともいえる物だからそれなりに…そう、そうね…それじゃあお言葉に甘えさせてもらう事にするわ…何か面白い物が出来たら見せに行くから楽しみにしていてね~」

 といった事でワイワイと喋っていた私達なのですが、そんな様子を眺めていたラディが我慢できずにひょっこりと顔を出してしまい……。


「ふ~ん、ユリエルの知り合いってなかなか粒ぞろいなのね~…美味しそうな子達が揃っていて嬉しいわ~」

 そうして満面の笑みを浮かべながら両手をニギニギしているラディなのですが、私のスカートの端から覗いている幼女スライムを目ざとく見つけたスコルさんが目をぱちくりさせていました。


「ん?んん?ユリちーが出産した…じゃないわよね?おっさんの目が可笑しくなったのかしら…何か小さいファントムジェリーが見えるんだけど…?」


「っと、本当ね~……敵…という訳でもないのよね?」

 身構えようとしたヨーコさんがモソリと動くのですが、特に襲ってくる事が無いとわかるとまじまじと眺めてから「どういう事なのかしら?」と首を傾げます。


「これもユリエルちゃんのテイムモンスターなの?」


「は、はい…ラディちゃん、です!ですよね?ユリエルさん!」


「気をつけなさい、こう見えても手癖が悪い奴だから」

 そうして指先で突こうとしているナタリアさんがヨーコさんに止められ、何故かずっと私の手を振り続けていたグレースさんが代わりに紹介をしていたりまふかさんが忠告を入れてくれたのですが……私は慌てて他に目撃者がいないかを確かめる為に周囲に視線を走らせました。


「じゃあ試しにおっさんが挨拶を…あー…ないすちゅーみーちゅー、あいあむ…おっさん」

 そんな事をしている間に胡散臭い笑顔を浮かべながらスコルさんがファーストコンタクトをとろうとしていたのですが、そんな人達を見ながらラディはクスクスと笑っていて……。


「本当に可笑しな人達なのね~…ご主人様には逆らえない身体にされてしまった雌奴隷のラディですがどうぞよろし…って、あ、ちょ…っ!?」

 初手からいかがわしい事を言い出したラディが居たらややこしい事になりますからね、無理やり【招集】して引っ込んでおいてもらったのですが……そんな一連のやり取りを見ていた皆の視線がおもいっきり突き刺さって来て痛いですね。


「違いますよ?今のはラディが勝手に言っているだけで!?」


(ぷぅ)

 何とか弁明しようとしていると牡丹が何とも言えない顔で溜め息を吐いていたのですが……私は【グリモワール】で性感帯を付与してお灸を据えた事はあっても雌奴隷なんかにはしていません!


「え、えーっと…うん、なんていうか、また凄いのをテイムしたのね…というか、幼女スライム…ね、ユリエルちゃんってスライム系統のモンスターと相性がいいのかしら?」


「そう、ね~…牡丹ちゃんもスライムだし…まあそれ以外もテイムしているようだけど~…」


「おっさんとしてはユリちーがエッチなモンスターばっかりテイミングしているのが気になっちゃうのだけど~?そしてこの流れなら言える!おっさんもユリちーの下僕にして欲しいワン!!」


「折角私達が濁して言ったのに!っていうかなんて言うセクハラ発言をかましているのよ!」


「ゆ、ユリエルさんはエッチじゃ…その…ユリエルさんの魅力は万国共通で色々なモンスターに慕われているだけです!ですよね、まふまふさん!」


「なんでそこであたしに話を振るのよ!?」

 何ともワチャワチャしているのですが、あまりそういう事を気にしていないグレースさんはともかくまふかさんが赤くなっていますし、スコルさんが胡散臭い顔をしながらニヤニヤしていますし、ナタリアさんとヨーコさんがエッチなモンスターばかりテイミングしている事やスコルさんのセクハラ発言に何とも言えない顔をしていたのですが……。


「皆さん落ち着いてください!ラディの事よりこれからの事とナタリアさんとヨーコさんのクラン入りの話ですが!」

 このままでは話が進みませんから、私は大声を張り上げて強引に話を打ち切る事にしました。

※少しだけ修正しました(10/12)。


※誤字報告ありがとうございます(4/1)訂正しました。

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