表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

466/527

447:まふかさんの新装備

『っとうに!何で肝心な時に繋いでいないのよ!!』

 お昼ご飯を食べてから戻って来ると入れ違いでログインしていたまふかさんからの()()()()()()が入ったのですが、何故か物凄い剣幕で怒鳴り散らされてしまい……もしかしてもう皆が集まっているのでしょうか?


『すみません、お昼ご飯を食べていました…すぐに向かいますね』

 そういう事も考えある程度余裕をもってログインしたのですが……そんな事を言ってもただの言い訳にしかならないですからね、これ以上皆を待たせているのも何なので急いで集合場所である『隠者の塔』に向かおうとすると、何故かまふかさんがゴニョゴニョと口ごもってしまいました。


『その事…なんだけど…その…『隠者の塔』に行く前に『リヴェルフォート』の方に来てくれない?』


『『リヴェルフォート(最北端の拠点)』…ですか?』

 アルディード女王達(エルフ勢)が『エルフェリア』の奪還と『精霊の幼樹』の防衛のために『隠者の塔』に進出している事もあって重要度が下がっている場所が『リヴェルフォート』なのですが、何でそんな場所を指定したのかがわからなくて……。


(戦況に変化があって集合場所が変わったのでしょうか?)

 そう思って移動をしながら情報サイトに目を通すのですが……まず熊派の動きとしては直接的な戦闘を避けて『エルフェリア』に秘蔵されていたアーティファクトを『ディフォーテイク大森(熊派の本拠地)林』に運び込んでの持久戦を狙っているようで、これと言って緊急を要するような情報は出てきませんでした。


(ここで引いても無駄に戦いを長引かせるだけだと思うのですが…逆転の一手でもあるのでしょうか?)

 『エルフェリア』の放棄ともいえる動きをみせている熊派は数的不利を補うためにアーティファクトでの武装を始めており、折角集まったのだからと順次攻勢を開始しているプレイヤー達との間で小競り合い(P v P)が起きているのですが……全面対決とは程遠い状況ですし、慌てて参加しなければいけないという戦況でもないのですよね。


 むしろこのまま押し切ってしまいそうなレベルでプレイヤー側が押しており……因みに情報サイトの情報だと『ギャザニー地下水道』から出て来たゴブリン達や『ディフォーテイク大森林』から溢れ出して来ているモンスター達が立ち塞がっているようですし、熊派の本拠地である『ディフォーテイク大森林』側には『エルフェリア』に設置されていたような生きた柵などの防衛用のアーティファクトが設置しなおされているのですが、『歪黒樹の棘(デバフを振り撒く茨)』のような厄介なステージギミックはないので攻略自体は順調に進んでいるのだそうです。


『その、ちょっと装備について相談したい事があるんだけど…って』

 そうして私が考え込んでしまうと無言に耐えきれなかったまふかさんが声を震わせながらそんな事を言ってくるのですが、どうやらまふかさんも熊派との対決の為に装備を新調したようですね。


『それは構いませんが…?』

 ただそんな事をいちいち報告して来るような人でもない(好きな物を装備する)ですし、相談だけならこのまま話せばいいだけですからね、本当にどうしたのでしょう?


『詳しい話は会った時に話すから!とにかく『リヴェルフォート』の西…あんた達が乳繰り合っていた崖の辺りまで来て!』

 そうしてまふかさんは一気に捲し立てると会話を一方的に終えてしまい……事情はよくわからないのですが、口頭では説明しづらい内容なのかもしれませんし、あまり時間もないので急いで指定された場所に向かってみる事にしましょう。


『あ、ゆっ、ユリエルさん!お、おかえりなさい…です!』


『やっほ~ユリエルちゃん…確認なんだけど、集合場所って『隠者の塔』で合っているのよね?』

 そんなタイミングで私のログインに気が付いたグレースさんとナタリアさんが連絡を入れてきたのですが、グレースさんはクラン会話経由での挨拶でしたし、ナタリアさんからはフレンド経由での確認で……集合時間までもう少しだけなら時間がありますからね、2人には少しだけ雑談した後に用事がある事を伝えておきました。


『すみません、集合時間には間に合わせますので』

 わざわざまふかさんがフレンド通話(1対1)での連絡を入れて来たという事は大ぴらに公言したくない内容なのだと思いますし、2人にそんな断りを入れてからポータルで『リヴェルフォート』に飛んで指定された場所に急ぐのですが……。


(よし、これで…)

 時間が無いと言っても寄り道をする(会いに行く)くらいの時間はありますからね、牡丹のレベルキャップも解除しておかなければいけないので襲って来たモンスターを魔素に変えていく事にしましょう。


 まあ下手に引き連れたまま崖際まで行ったらまふかさんにモンスターをぶつける事になりますからね、殲滅しながら進む事になるのは仕方がないという事にしておいたのですが、移動中の狩りと納品分の余りで何とか牡丹のレベルの上限を17(16/17)まで上げる事が出来て……これも少しずつ魔石や魔素を与えていた結果ですからね、これ以上あげる場合は本格的な狩りが必要なのかもしれません。


(ぷ~うーいー?)

 とにかくこれで一息付けると思って牡丹のスキル欄を眺めていると、牡丹から【ルドラの火】の発展形である【バースト】が使えないかという質問が飛んできて……確かに【秘紋】で付与しておけばスキルのレベル的には使用する事が可能なのですが、このスキルは全MPを消費するのでなかなか試してみる機会がないので効果がよくわからないのですよね。


(出来たら熊派と戦う前に試しておきたいのですが)

 収束と圧縮の段階でこのスキルの危うさに気が付いてしまい……魔素を集めている最中にMP切れで動けなくなるのは不味いですからね、その後も用事が重なりバタバタしていて……まあ熊派の動きが鈍かったのですぐさま決戦という事にもならないと思いますし、検証できていないスキルに関しては後で試してみる事にしましょう。


(何が起きるかわからないですからね、検証が終わるまでは牡丹も使用しないようにしてください)


(ぷっ)

 そんな会話をしながらまふかさんの言っていた『リヴェルフォート』の西にある崖際の窪みを探していたのですが、ある程度の距離まで近づくとMAP上にクランメンバーのマーカーが出て来て……グレースさんがこんな所に居るとは思えませんし、たぶんこれがまふかさんですね。


「お待たせし…」


「遅い!!」


「ぷっ!?」

 そうして謝罪を口にしようとする前に腕を強く握られて崖際の窪みの中に引きずり込まれてしまったのですが……まふかさんは微かに汗ばみ涙目でプルプルと震えていますし、本当にどうしたのでしょう?


「ッ!?とに…」

 そうして私達を引きずり込んだ後は荒い息を吐きながら口元を押さえていたのですが、何か変わった事があると言えば宝石のついた金属製の黒いニップレスと前張りを身に着けている事でしょうか?


「まふかさん…」

 そんなメタリックなニップレスと前張りについている宝石が鈍い銀色の輝きを発する度にまふかさんの身体が震えているのですが、何でこんな所まで呼び出されてエッチな装備を見せつけられているのかがわからなくてついつい目を細めてしまいました。


「違うわよ!!あんたと違ってそんなっ…ッ!?ふっ、ぅぅうう…」

 そうしてまふかさんが怒鳴り声を上げようと力を入れると【狂嵐】が発動してしまい、パチパチと弾けた電撃に合わせてニップレスと前張りに嵌っている宝石の輝きが強くなり……プルプルと震えたまふかさんは全身から汗を拭き出しながらその場に蹲ってしまいました。


「っとに…こ、これは色々と…その、色々と事情があるのよ」

 股間から滴るトロリとした液体は見なかったフリをするとして……まふかさんが言うには【狂嵐】で毎回毎回服が焼け落ちるのは問題があるのでアルディード女王から焼け落ちない装備を報酬として受け取る事にしたのですが、そうして渡されたのが『ヴィーヴルメタル』という生体金属で出来ているニップレスと前張りだったのだそうです。


 効果としては着用者のエッチな所に張り付き魔力を受け取る代わりに特殊なフィールドを形成してその身を守ってあげるという一種の共生関係を築く生命体で、その動きが活性化すると核ともいえる宝石の部分が着用者の魔力色(鈍い銀色)に光り輝き力を発揮するようですね。しかも生命体だからなのか魔力さえ与えておけば自己再生していきますし、シールで覆っていない部分も守ってくれるという便利な装備品ではあるのですが……。


「だからといって、身体に密着するような物を選ぶのは悪手ではないでしょうか?」


「仕方がないでしょ!あたしはあんたみたいに同じ服をずっと着続けるっていう訳にもいかないんだから!!」

 どうやらまふかさんとしては多少の不利益よりも映えを意識してしまったようで……まあニップレスや前張りだったらその上に好きな装備を身に着ける事が出来ますからね、際どい衣装を着たりする時の感覚で使い慣れている物(ニップレス等)を選んでしまったのだと思いますが……今私達がプレイしているゲームは妙に意地悪な事で定評のあるブレイクヒーローズですからね、特殊な力場を発生させる時の振動がまふかさんの敏感な所を刺激してしまい……『ヴィーヴルメタル』からすればそういう場所を刺激する事によって魔力を絞り出そうとしているのかもしれませんが、とにかくまふかさんの身体を蝕んでいるのはそんなエッチな装備なのだそうです。


「そ、それで…あんたはどうしているかっていう事を聞きたくて…」

 まあ確かに口頭で説明されるより実際に見てみた方がわかりやすかったのですが……どうやら私は助けを求めて来たまふかさんに残酷な事実を告げなければいけないようですね。


「私の場合は淫さんが何とかしてくれていますからね、あまり参考にならないかと」

 『イビルストラ』や『翠皇竜のドレス』や『蒼色のサンダル』などのエッチな装備は【淫装】に宿っている淫さんの力で制御してもらっていますからね、そういうスキルが無いまふかさんが自力で制御する事は難しいと思います。


「じゃあどうしたらいいのよ!?」


「ご愁傷様ですとしか、ああでも…そんなに身に着けているのが嫌なら使わない時は剥がしておけばいいだけでは?」


「剥がそうとしたわよ、それで剥がせなかったからあんたに頼っているの!」

 そうすれば変な所を刺激される事も無いと思ったのですが、どうやらそう簡単には解決できない根深い問題があるようですね。

※変な装備がまた一つ。


※誤字報告ありがとうございます(4/1)訂正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ