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444:グレースさんと合流しました

 集合時間ではなかったのですが、グレースさんからお話があるという事で『イースト港』付近の森の中で集まる事になり……。


(思ったより幼女スライム達がやられているようですが…逃げ遅れたのでしょうか?)

 時間的にも切りが良かったという事もあり、索敵に出かけていた牡丹や幼女スライム達には帰還命令を出していたのですが……10体のうち4体が何かしらの理由で未帰還になっているというのはなかなかの損耗率ですね。


『そうね~…意外と敵が強かったのかしら~?』

 だというのに幼女スライムの生みの親でもあるラディは興味が無さげな様子で戻って来た子達を取り込み纏めて(【合体】して)いるのですが、心配ではないのでしょうか?


(何があったのですか?)

 【分裂】した幼女スライム達の指揮(【指示】)はラディが執っていましたからね、私からはどういう指示が出ていたのかはよくわからないのですが……問われたラディは何かしらの企みがあるように「フフフ」と笑い、素知らぬ顔で嘯きました。


『さあ~?逃げている時に茂みにでも引っかかったのかしら~?って、冗談よー…もーユリエルは心配性なんだから~』

 笑うラディは問い詰めても種明かしをするつもりは無いようですし……ここで私達を裏切る理由も利点も無いですからね、一旦ラディの事を信じる事にしましょう。


(わかりました、幼女スライムの件に関してはラディにお任せしますが…)

 因みに牡丹達が戻って来る間にアイテムの整理を行っていたのですが、最終的に集まった魔素の数は53個で、戦闘後の休憩も兼ねて1人2個ずつ食べると残りが45個とまずまずの数が集まりましたね。


ノルマ(30個)は越えていますし…そろそろポーション代でも稼いでおきましょうか)

 グレースさんがやって来るまでは最低限の金策でもしておこうと思い……こういう事が出来るようになったのは【マジックバッグ】の効果で収納量が増えているからなのですが、太腿のポーチも余裕が生まれているので中身を見直しておくべきなのかもしれません。


(出来たらハイポーションなどの緊急用の回復薬を入れておきたいのですが)

 そんな事を考えていると、ガサガサと茂みをかき分けながら誰かがこちらに向かって走って来ているような気配があって……「GAW!!」「GUW!」「GAU!」というフォレストウルフ達の鳴き声も聞こえて来ていますし、なかなかのっぴきならない状況に陥っているようですね。


(周囲のモンスターは倒し切ったと思っていましたが)

 リポップしたのか別の場所からトレインして来てしまったのか……MAPのマーカーを見ている限りではグレースさんの反応がありますし、戦いやすい場所で待ち構えて迎撃する事にしましょう。


「あ、あぁああのぉおお!!ユ、ユリエルさん!!」

 そうして音のする方に意識を向けていると、グレースさんと数匹のフォレストウルフが茂みから飛び出して来て……無理やり茂みを突っ切って来たからなのか薄水色のフード付き膝丈ローブと厚手のタイツには無数の引っ掻き傷や葉っぱがついていたりと、よほど急いできたのか何かもういきなりボロボロですね。


「大丈夫です、これくらいな…らッ!?」

 グレースさんを追いかけ回していたフォレストウルフの数は3体、早速【淫気】の投げナイフで先制攻撃をしかけようと思ったのですが……体当たりをするように突っ込んで来たグレースさんを受け止める事になった私はその勢いを殺し切れずに押し倒されてしまいます。


「ぷ~ぅ…い、ぷっ!!」


「GAUUUx!?」

 そんなタイミングで容赦なく襲って来たフォレストウルフAとBとCだった、結晶のような羽に魔力を込めた牡丹が木々の間をピンクパールのゴム毬のように跳ね回ったかと思うと、襲撃を仕掛けて来ていたフォレストウルフAの側面に全速力の体当たりを入れて吹き飛ばしていました。


 そうして手痛い先制パンチを受けたフォレストウルフAを尻目にフォレストウルフBがもつれ合うように倒れ込んでいる私達に襲い掛かって来ていたのですが、フォローに入ってくれていたニュルさんが強化されている【触腕】で受け流すように【パリィ】した(進路を変えた)かと思うと、すぐさま体を柔軟に伸ばした牡丹がフォレストウルフBの首筋に投げナイフの一撃を叩き込み……そんな牡丹達を脅威と思ったのかはわかりませんが、少し後ろを走っていたフォレストウルフCがターゲットを変えたのですが……。


「GU…!?」

 フォレストウルフCが牡丹に跳びかかった瞬間、【魔力増強(中)】と眷属化の恩恵で上昇している魔力を集めて薄い【マジックシールド】を張って受け流すと……返す刀と言わんばかりに遠心力を付けた投げナイフの一撃を叩き込んでフォレストウルフCにも致命傷を与えていました。


(これは…)

 遊撃をお願いしていたので戦っているところを見ていなかったのですが、なかなか侮れない強さになっているようですね。


「2人ともありがとう…ございます、助かりました」

 転倒の影響で息が詰まってしまったのですが……ワンテンポ遅らせ力を溜めているような動きは【剛力】によるチャージ攻撃だと思いますし、【蜿々長蛇(自分を鞭と定義した)】による体捌きはなかなか圧巻で……。


(【マジックシールド】に関してはあまり効率がいいようには思えませんが、咄嗟に張れるというのが良いところですね)

 消費MP的に盾やら何かしらの物体に魔法防御を付与するスキルですからね、『搾精のリリム』や魔力タンクとなりつつあるニュルさんとの直結(眷属繋がり)を生かして無理やり魔法の盾を作り出していたとしても脆く……まあ防御を固めるより攻撃をしかけた方が良いという判断なのかもしれませんが、そろそろ市販品(『鋼の盾』)を卒業する事にして、実用的な盾を持たせておいた方が良いのかもしれません。


(力もついて来たようですし、丁度良いプレイヤー産の盾が有れば良いのですが)

 実際に戦ってみると色々と補充したい物が浮かんでくるのですが……とにかく今はフォレストウルフに止めを刺してから素材を回収し、救助したグレースさんの安否も(怪我の有無も)確認しなければいけないのですが……胸元に顔を埋めてハスハスしているグレースさんが抱きついて来ているのでまともに身動きを取る事が出来ませんでした。


「あの…もう大丈夫ですよ?」

 全力疾走後のジットリとした体温とグレースさんの柔らかさにムラムラしてしまうのですが、私は私で戦闘後の汗とか色々な事情がありますからね、そんな状態で顔を埋めながら深呼吸されるとかなり恥ずかしくて……。


「す、しゅみま…っ!」

 そうして一連の行動(タックルからの深呼吸)を無意識で行っていたのか、我に返ったグレースさんが顔を真っ赤に染めながら視線を彷徨わせていて……その視線がラディの上で止まり、首を傾げていました。


「ぼ、牡丹さん()…成長中、ですか?」

 ラディ(ファントムジェリー)の事はほとぼりが冷めるまで隠し通す事も出来たのですが、クランメンバーであるグレースさんとまふかさんには伝えておかないとややこしい事になりそうですからね、最初から紹介しておこうと思っていたのですが……。


「いえ、こちらは…」


「そうよ~?あのチンチクリンが成長したら私のような可愛い可愛いスライムが生まれるの~」

 だというのに、私が口を開く前にグレースさんの勘違いに悪乗りしたラディが通常会話で自己紹介をし始めてしまい……勘違いされた牡丹はすぐ近くで生き残っていたフォレストウルフに止めを刺していたのですが、「ぷいっ!?」とショックを受けてオーバーリアクションで振り向いていたりと……こういう嘘はややこしくなるので止めて欲しいですね。


「違います、こちらはラディさんで…牡丹はあちらです」


「ぷぅ~い!」


「す、すみまっ!?そ、そう…ですよね、何か変だなー…とは?」

 そうしてポヨンポヨンと怒りを露にする牡丹にぺこぺこと頭を下げるグレースさんなのですが……どうやらグレースさんはファントムジェリーの事をよく知らないのか幼女スライムに対して特に思う事も無いようで「新しくテイムしたんですね~」くらいの反応を示していました。


 まあグレースさんの場合は何かしらの被害を受けていたとしても他人を責めたり恨んだり(尾を引く人では)する人ではないですし、わざわざユニークモンスターの情報を集めたりもしていないので初対面みたいな反応になってしまうのかも知れません。


(流石にまふかさん達はファントムジェリーの事を知っているとは思いますが)

 知っていたら知っていた時の話ですし、なるようになれの精神でいく事にしましょう。


「そ、う…なんですね…あ、あの…私はイ……グレースと言いますので、ユリエルさん、のッ!()()…なのですが!よろしくお願いします!」

 そうして何故か゛友人”というところを異様に強調していたグレースさんなのですが、言った後に何故か私の顔をチラチラと横目で見て来ていて……その反応がよくわからなかったので笑って流すと、何故かグレースさんは安堵したように息を吐きました。


「それより…そろそろ?」

 牡丹達がフォレストウルフが消えないように確保してくれているのですが、死体を放置し続けているというのも何ですからね、そろそろ解体をしたいのですが……グレースさんはいつまで私の上に乗っかっているのでしょう?


「す、すみません!しゅ…ぐに離れますので!!」

 指摘されたグレースさんは慌てた様子でギューッと()()()()()来るのですが、言っている事とやっている事がチグハグで……だからといって突き飛ばすのもおかしいので抱きしめ返すとアワアワされてしまい、そんな私達を見ていたラディがニヤニヤと笑っていました。


「ん~ふ~ふ~…やって来た金髪ちゃんがユリエルと仲良しさんで良かったわ~…これで心置きなく精気から魔素を作り出せるのかを確かめる事が出来るのよね~?」

 別にそういう目的(イチャイチャしたくて)で抱きついている訳ではないのですが、私を押し倒している格好になっているグレースさんのお尻の上に覆い被さったラディがウネウネと卑猥な動きをしながらそんな事を言っていたのですが、この子はいきなり何を言っているのでしょう?


「ふ、ひぃっ!?」

 ただいきなりそんな所(お尻の上)でモゾモゾされてしまったグレースさんは変な声を上げてしまい……抱きつかれている状態でそんな声を上げられるとムズムズしてしまうので止めて欲しいですね。


「あ、あの…そん…んっ、いったい?」


「簡単な話よ~…今私達はとある人達に頼まれて魔素を集めているのだけど~…実験の為に貴女の精気が欲しいの~」

 ラディがこんな事を言い出したのはなし崩し的にエッチな事をしたいだけで、お尻を撫で回されているグレースさんは状況がよくわからないという様子で目を白黒とさせていて……そんな2人に押し倒されてしまっている私はどういうリアクションを取るのが正解なのでしょう?

※戦闘後の休憩も兼ねて1人2個ずつ食べると = ユリエル、牡丹、ニュルさん、ラディの4人で食べていました。淫さんは装備品扱いですし、空腹度が無いのでわざわざ魔素を摂取する必要がありません。

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