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432:陣取り合戦の進捗

 昨日はイベントが盛りだくさんだったという事もあり『精霊の幼樹』の防衛がひと段落したタイミングでログアウトする事になったのですが、私達がのんびりと休んでいる間にも戦況が動いていたようですね。


 まず一番大きな出来事としてはアルディード女王達と『リヴェルフォート』に居たプレイヤー達の頑張りによって『隠者の塔』が奪還されていた事で……これは『クリスタラヴァリー(『精霊の幼樹』)』を巡る戦いにおいてプレイヤー勢力が勢いに乗って攻め込んだからなのですが、『精霊の幼樹』の影響で『歪黒樹(わいこくじゅ)の棘』が引っ込み熊派の強みであるモンスター達が弱体化しているとなっては防衛するのが難しいとキリアちゃん(熊派首魁)達が判断して撤退したからで、熊派は『エルフェリア』の防衛のために戦力を集めているのだそうです。


 この撤退によって第二エリアの中心ともいえる『エルフェリア』は押さえられているものの北部(『リヴェルフォート』)から東部(『イースト港』)がプレイヤー勢力になり、『精霊の幼樹』の力の及ばないか拮抗している中央(『エルフェリア』)南部(『蜘蛛糸の森』)西部(大森林)が熊派の勢力という第二エリアが東西で分けられる形となりました。


 因みにここまで押し返されると熊派の中にも日和見を決め込む人達が出て来て瓦解気味なのですが、熱心な一部の熊派がノリと勢いだけでプレイヤー勢力と戦っている状態のようですね。


 なのでもう一押しのような気がするのですが、デファルセントの影響力が強い場所だとモンスターが犇めいているのでなかなか攻め切れない状況ではあるようで……今プレイヤー達の間ではこういう時こそ一致団結しての『エルフェリア(拮抗している場所)』攻めを成功させようという動きがみられました。


 勿論そんな情報が広がっているという事は熊派の待ち伏せが危惧されるのですが、ここで下手に慎重になるより浮足立っている間に速攻を仕掛けようという意見が大多数で……あえてこれらの情報が流されているのは瓦解しかけている熊派にプレッシャーをかけようとしているのかもしれません。


(まあ…あまり深く考えていない可能性もありますが)

 『隠者の塔』が落ちたからその次という勢いと短絡的な思考の結果なのかもしれませんが、それでも同じ轍を踏まないよう(先手を打たれた)に昼過ぎ辺りからの波状攻撃をしかけるという数の有利を利用した作戦を立てているようで、私達もその情報をもとに13時ごろに集まれる人は集まってみようという話になっていたのですが……私は色々と準備をするために午前中からログインする事にしました。


『遅いわよ、今日は熊派を殲滅する日なんだから…ちゃんと準備は出来ているの?』

 そういう訳でいつものルーチンワークを済ましてからログインをするとクランメンバーでもあるまふかさんが連絡を入れてきたのですが、今日は弱体化している熊派に攻勢をかけるという事もあって朝からやる気に満ち溢れているようですね。


『おはようございます、実はあまり出来ていませんね…昨日の戦いで武器が壊れそうですし、集合時間までに修理やスキルの調整をしておこうかと』

 因みに私がログインしたのは『クリスタラヴァリー』なのですが、これはレナギリー達が友好寄りの中立NPC扱いとなった結果であり、彼女達が『クリスタラヴァリー』を制圧して拠点としての機能を持ち始めたからでした。


 他の蜘蛛達も敵対的な行動をとらなければプレイヤーを攻撃する事がなくなり、ワールドクエスト時に稼いでいた友好値はそのまま引き継いでいるのか友好的なプレイヤーとは物々交換などの取引が成り立つようですね。


 とはいえ、流石に武器の修理やポーションの購入が出来るほど整っている訳ではありませんし、ミューカストレントとビークリストゥという2大ボスを倒すのに武器を使い潰してしまった私達は別の町に移動してからアイテムの補充や修理をしなければいけないのですが……。


『ねえ、何であんたはそうやって出鼻を挫くような事を言うのよ…そこは準備万端ですくらい言いなさいよ』


『すみません…っと、装備の話で思い出したのですが、何でまふかさんがスコルさんの水着を着ていたのですか?』

 昨日はバタバタしていて聞きそびれたのですが、『イースト港』でスコルさんに薦められていた紐の水着をまふかさんが着ていた事を思い出し……なかなか刺激的な格好ではあったのですが、どういう流れでそんな物を着ていたのでしょう?


『そ、れは…あんたには関係ないでしょ!』

 ふと気になっていた事を聞いてみると『恥ずかしいから聞かないで!』というようにまふかさんが叫ぶのですが、何だかんだと言いながらも誰かに愚痴を言いたかったのかその理由を教えてくれて……なんでもサンハイト地下空洞(クリスタラヴァリー)に生息しているモンスターにヌチャヌチャにされた時に強めの【狂嵐】で反撃をしてしまい、着る物がなくなってしまったのだそうです。


 そこで出てきたのがスコルさんの持っていた紐の水着で……というのも商品を運ぶ時に口で咥えていた事もあって買い取らなくてはいけなくなったようで、捨てるのも何だからという理由でそのまま所持していたようですね。


 なぜスコルさんがそれを売り払わずに持ち歩いていたのかは謎のままなのですが、とにかくまふかさんの衣類が無くなったタイミングで出されてしまい……戦闘中で選んでいる暇が無かったというのと全裸よりかはマシだという事でエッチな水着を装備し戦い続けていたのだそうです。


『それは…大変でしたね』


『そうなのよ!動くと食い込むし!気を付けていないとすぐにズレるし!』


『………』

 スカート翼で覆っているとはいえ似たような下着を穿いている私からは何ともいえないのですが、とにかくそんな装備のままでは戦えないのでこれから色々と購入しに行くのだそうです。


『手伝いに行った方がいいですか?』

 人気者のまふかさんがそんなエッチな水着を着たまま移動していたら大変な事になってしまいますし、装備品の補充であれば目的地が同じだったのでそう提案してみたのですが……。


『そう、ね…じゃあ折角だか……あ…ううん、大丈夫よ、装備についてはあてがあるから』


『そう…ですか?』

 『良い事を思いついた』というように途中で言葉を変えたまふかさんが笑うのですが……親切の押し売りをしても怒られてしまいそうですし、まふかさんの場合はリスナーさんとかにも生産職の人がいますからね、その辺りの人脈を辿ってみるのかもしれません。とにかくそういう訳で個別に準備をする事となったのですが、私は確認しておかなければいけない事がもう一つあった事を思い出しました。


『ナタリアさんとヨーコさんがクランに入りたいと言っていた件なのですが…どうしましょう?』


『あー…あのバカップル達ね』

 あまり気を持たせてもなんですし、クランとしての活動をするのなら本格的な攻防戦が始まる前に加入させておいた方がいいと思います。


 そう思ってまふかさんに聞いてみる事にしたのですが、渋っているような言い方ではあるものの好悪の感情が出やすいまふかさんが拒否の言葉を発しないという事はなかなかの好印象を持っているのかもしれませんね。


(昨日は『精霊の幼樹』の防衛で一緒に戦いましたし、その時に2人の実力を知った…という事でしょうか?)

 そもそも3人だけのクランだと何をするにしても人手が足りませんし、狩人としてのナタリアさんや生産職としてもヨーコさんは有能ですからね、戦力の増強を考えると断る理由がありません。


 それにまふかさんは『バカップル』と言っていますが、クランを大きくしていく上で問題になって来るのは誰と誰の相性が良くて誰と誰の相性が悪いかという人間関係がややこしくなっていく事ですからね、最初からラブラブである事がハッキリしているナタリアさんとヨーコさんに関してはトラブルになる確率も低いと思います。


『あんたはどう考えているの?』

 そんな事を考えていた私に対して話を振って来るのですが、私の答えは決まっていました。


『実力的には問題ないですし、後は相性だけかと…なので昼過ぎに集まった時に多数決を取ろうかと思っていますが』


『多数決って…まあいいわ、あたしもそれまでに考えておくから』


『わかりました』

 もしまふかさんとグレースさんが強い拒否感を示すのなら加入を見送るつもりだったのですが、まふかさんの様子を見ている限りでは大丈夫なのだと思います。


(後はグレースさんがどう思っているかですが)

 やや人付き合いが苦手なグレースさんがラブラブカップルに気圧されてしまうという可能性もあるのですが、なんだかんだいってまふかさんとも仲良くやっていますし……それにナタリアさんとヨーコさんならグレースさんの事を変な色眼鏡で見る事も無いでしょう。


『それじゃああたしはあたしで準備をしておくから、あんたもしっかりと準備しておくのよ』


『わかりました』

 そうして業務連絡を終えた私はこれからの事を考えるのですが、優先事項は武器の修理ですし、『リヴェルフォート』に行くより『イースト港』に向かった方が良いのかもしれません。


フィッチさん(船大工さん)達が繋いでいてくれたら助かるのですが)

 居なければ鍛冶スキルを持っている人に頼むか武器屋のNPCに修理を依頼する事になるのですが、魅了持ちとしては対人トラブルを懸念しなければいけなくて……因みに繋ぐという単語で思い出したのですが、『精霊の幼樹』の勢力圏ならポータルで移動できるようになっていました。


 そのおかげで『リヴェルフォート』と『隠者の塔』と『イースト港』がポータルで繋がっており、開通させていれば一瞬で移動する事も出来るのですが……スキルの調整などもしておかないといけないですからね、のんびりとフィールドを移動していこうと思います。


(色々と確認しないといけない事もありますし)

 牡丹のレベルもカンストしていますし、レベルアップやボス撃破の報酬(+6ポイント)もあって私のSPが15ポイントも余っている状態で……合流していない幼女スライムの件も心配ですし、のんびりと『イースト港』に向かいながら色々と調整していく事にしました。

※誤字報告ありがとうございます(4/1)訂正しました。

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