426:眷属化
カナエさん達が捜しているファントムジェリーが毀棄都市に居た事にも驚きましたし、いきなり眷属にして欲しいと言われたのも驚いたのですが……。
「突然の事で驚いているとは思うけど~眷属にして欲しいっていうのはとっても深~い理由があるのよ~」
シクシクと泣きマネをするファントムジェリーは私の胸に顔を埋めながら何故こんな所に居たのかを説明するのですが、まずアシッドジェリーに怨霊が宿って生まれたのがファントムジェリーという存在で……つまり毀棄都市はファントムジェリーにとっての生まれ故郷であり、カナエさん達との戦いを避けるために地元に帰って来ていたという感覚のようですね。
後は湿度があったり中堀の中に身を隠せたりするのがここに居る理由なのですが、のんびりと休憩しているところにやって来たのが『精霊の幼樹』の問題で……。
「いきなり光がパーって広がったと思ったら~…自我の弱い子は消えちゃうし~私の体も徐々に溶けて無くなっちゃって~…」
言いながらウソ泣きを続けるファントムジェリーの全体像は水に浸かっているのでわかりづらいのですが、言われてみると大きさが半分以下になっているような気がします。
とにかく弱体化を受けて動けなくなっていたところに通りがかったのが私達で、牡丹達やレナギリー達に弱体化が入っていない事に気づいたファントムジェリーは渡りに船にと絡んで来たのですが……確かに牡丹達には弱体化が入っていないようですし、何かしらの個体差があるのでしょうか?
『そうだな、確かに言われてみれば動きが鈍くなっているような気がするが…それくらいだな』
淫さんはよくわからないという事を言っていて、ニュルさんも頷いているような気配があるのですが……牡丹達やレナギリー達はプレイヤー側と判断されていて、ビークリストゥやミューカストレント、そしてファントムジェリー達は敵側と分類されているのかもしれません。
「もうお腹がすいて~すいて~…このまま私も消えてなくなるのかな~って時にやって来てくれたのが~ユリエル達なのよ~」
それから「運命ね~」なんて笑うファントムジェリーなのですが、常に幼女スライムを通して私達を監視していたようで……全然運命的な出会いではないようですね。
しかも内部に取り込まれて媚毒を吸わされていますし、的確に私の弱い所を弄り回すファントムジェリーの愛撫にパチパチと頭の中が弾けて甘いきが止まらない状態で言われてもただただ困惑してしまい……。
「空腹…だったらッ、その辺りにいるゴーストでも食べ…ッ…ん゙っ!?」
私達は足りない魔力をそうして補っていますし、ファントムジェリーもそうすれば良いのでは?と提案してみたのですが……「そんないけずな事を言わないで~」と溢れ出している母乳を長い舌で舐めとられてしまい、身体が震えました。
「嫌よ~だってアレはパサついているし~…ユリエルの方が好きー…こうやって~優しく~優しく~長~い舌でチュパチュパしてあげると~段々と甘い声になっていくの~」
「そん…ッ!?こっ、ぁあっ、あ゙ッ!?だから…や…ぁ、あ゙…吸っ…ちゃ!?強く、吸うのは…ぁッ!?」
何故か似たような感性をしているファントムジェリーはゴースト達の魔力が気に入らないようで……「こっちの方が良いから~」と媚毒が滴るお口で乳首をトロトロに蕩けさせながらしゃぶられると、お腹の奥が疼いてしまってたまらなくなってしまいます。
「だめよ~?勝手にいっちゃうのは~…今は~大事なお話し中~」
「ち、ちがい…ます!?だって貴女が……変な所を吸う…ぅうう、か…ら、でっ!?」
無意識に腰が動いてしまい、自分から気持ち良い所を擦り付けようとしている事を指摘されると羞恥心でのぼせてしまいそうになるのですが……真剣な話し合いであるというのは本当なのか、ファントムジェリーはさんざんいたぶるだけいたぶった後に胸への愛撫を止めました。
「もう~ちゃんと話を聞いてくれなくちゃ駄目よ~?」
「だ、だったら…ぁ…は…ッ!?」
どの口がそんな事を言っているのかがわからないのですが、とにかくファントムジェリーの言いたい事を纏めると……眷属化した事による弱体化の回避と、安定した魔力の共有を求めているといった感じですね。
(正直に…言うと…っ)
単純な戦闘力の他にも魔力回収班として幼女スライムの有用性といいますか、幼女スライムを各地に派遣するだけでもそれなりに役に立ってくれそうなのですが……この提案に関する答えは決まっていました。
「眷属にするメリットとデメリットが釣り合っていませんから、貴女は多くの人の恨みを買いすぎっ……てっ、ひゃぁ…の、だから…って、ち、乳首を強くぅ…っ、ひっ、引っ張ろうとしないで…くだっ…ぁああッ!?」
多くのプレイヤーから恨みを買いすぎているファントムジェリーを仲間にするというのはリスクが高すぎますし、カナエさん達に連絡を入れた方が良いような案件ではあるのですが……私が断ろうとした瞬間、問答無用というように伸びて来た触腕が乳首を捻り上げて無理やり言葉を途切れさせられてしまいます。
「そんな意地悪な事を言わないで~私達の事を助けると思って~?」
「だ、だって…たくさっ、ん゙んっ!?はあ゙…めっ、人を…はっ、ふっ…ぐぅぅうッ、んぐうぅぅうう!!?」
言いながら乳首をほじられてしまうと身体がガクガクと震えるのですが、カクカクと浮いてしまう腰の動きに合わせてブラシ型の触腕が割れ目をなぞり上げて……。
「ねえ~?本当に駄目~?」
ギリギリのところで理性を保っていられるようにしてくれているのですが、このままでは不味いと多少無理矢理な事を承知の上で牡丹に合図を送る事にしました。
「だかっ、だから…私達の答え…ぁっ、変わり…ませんっ!」
それから手に持っている『アイシクルコフィン』の出力を最大まで引き上げるとファントムジェリーのスライムボディーが冷やされ凍りついて行くのですが、そんな事をしたら当然のように内部に取り込まれている私の下半身まで氷漬けになっていきます。
「ん?んん?そんな事をしたらユリエルも~…って」
「ぷっ!!」
ファントムジェリーが首を傾げたタイミングで、外に放り出されていた牡丹が『ベローズソード』を振り……凍結していなければただただスライムボディーに無効化される攻撃ではあったのですが、凍り付いている所を叩けば砕く事が出来て……勿論その一撃だけでは砕ききる事が出来ないのですが、その斬撃の跡に【魔水晶】を詰め込み【ルドラの火】を叩き込んで被害を拡大化させました。
『本当に…無茶をする!?』
自分達への被害を顧みない自爆攻撃に翠皇竜のドレスもボロボロになってしまうのですが、そのまま牡丹が伸ばしてきていた『ベローズソード』を掴んで一本釣りされるように引き上げられて……淫さんがすかさず『HP回復ポーション』を振り撒き回復をしてくれました。
勿論私達を逃がさないようにとファントムジェリーが触腕を伸ばして来たのですが、半身をこちら側に出したニュルさんが触手を使って叩き落としてくれて……。
(ビークリストゥは!?)
何とか水上まで戻って来た私達はビークリストゥが飛んでいた場所を確認するのですが……ファントムジェリーに時間を使いすぎてしまっていた事もあり、その姿はありませんでした。
「もー無茶をしすぎよ~?」
どうやらミューカストレントの方に飛び去ってしまった後だったのですが、視線を戻すと爆破の影響でやや歪んでいたファントムジェリーが周囲の水分を吸い上げるように体を作り直しながらプンスカと怒っていて……。
「無理をしなければ…脱出させてくれませんから」
本当に堕とすつもりで拘束されていたら危なかったのですが、お話をしようと中途半端に弄っていたのがファントムジェリーの敗因ですね。
(ですが、今はそれより…)
ビークリストゥの方を何とかしないといけないと思い、私は震える足腰に気合を入れながら貴族街……ミューカストレントの本体がある方向に向かうのですが、スカート翼が破損しているので速度がでませんでした。それでも【魔翼】を使って何とか崩れ落ちている内壁まで辿り着く事が出来たのですが、瓦礫の中からひょっこりと現れた幼女スライムが立ち塞がり……。
「とぉう!!」
「は…?」
そうして通せんぼをしている幼女スライムに気を取られてしまい、斬り払おうとした瞬間に猛追して来ていたファントムジェリーが私達の背丈を越えるという意外な身軽さをみせたのですが……体が小さくなった分だけ機動力が上がっているのでしょうか?回避が間に合わないですし、淫さんやニュルさんの抵抗も虚しくファントムジェリーの巨体を使った押し潰しによって押し倒されてしまいます。
「今回は~…逃がさないわよ~?」
「くっ…!?」
俯せに押し倒されてしまい、背中側から馬乗りになっているファントムジェリーがそんな事を言うのですが……確かに今まで何度も何度も私達を取り逃がしていますからね、逃げ出す事も考慮した上での伏兵を潜ませていたのでしょう。
「だからと言って、悪名高い貴方達を仲間にする訳にはいきませんっ!」
私だけだったら仲間にしても良かったのですが、クラメンであるまふかさんやグレースさんにも悪名がいってしまうかもしれませんし、クランマスターとしてはそういう事態は回避しなければいけません。
「言う事を聞いてくれなかったら~…コレをユリエルの中に入れちゃうよ~?」
「ひッ!?」
スリスリと頬ずりをしながらお尻をモニュンモニュンと揉まれると押し潰されている胸が地面に擦れて気持ちよくなってきてしまうのですが、止めと言わんばかりにファントムジェリーがただただ気持ちよくなってしまうスライムの核をお尻の穴に入れようとムニムニしてきてしまい、それだけで全身に電気が走ったように痺れて硬直してしまいました。
「そ、それ…は、んっ!?」
そんな物を押し付けられたら酷い事をされた記憶が蘇って嫌な汗が流れてしまうのですが、スライムの核なんて入れられてしまったらビークリストゥを追いかけるどころではなくなってしまいますし、だからと言ってファントムジェリーを仲間にする訳にもいかなくて……。
「じゃーあ~…そーうーね~…んーー……ユリエルは~私達の悪名が無くなったらいいのよね~?」
「そう…ですけど…?」
何が言いたいのかがわからなさすぎてやや引き気味に聞き返してしまったのですが、ニコニコと笑うファントムジェリーには何か腹案があるのかゆっくりと身体を離してくれて……いったいどうしたというのでしょう?あまりにも聞き訳が良すぎて逆に不気味なのですが、ファントムジェリーは「良い事を思いついた」というように手を合わせます。
「わかったわ~…それじゃあ~一芝居をうってこようと思うのだけど~…ユリエル達と連絡をする為に~この子を眷属にしてもらってもいい~?あ~…深い意味はないんだけど~…離れちゃったら探すのが大変だから~?」
そうして持ち上げて見せるのは足止めの為に出て来ていた幼女スライムで……下半身が溶けた黒っぽい半透明の幼女が「やふ~」と元気よく手を上げていました。
「それ…くらいなら?」
駄目な気もするのですが、問題があったらテイムしているのを解除すればいいだけですし……このままファントムジェリーと言い争っている時間も勿体ないのでその提案を飲む事にしましょう。
「ありがと~これで助か……ゲフンゲフン、種を残す事が出来るわ~…じゃあ何かあったらその子を通して連絡をするから~」
そうしてスキルを発動して幼女スライムを眷属にすると、何故かファントムジェリーの身体まで光り輝いたような気がするのですが……その理由を聞く前にファントムジェリーが立ち去ってしまいましたし、私達もビークリストゥを追いかけなければいけないのでその場を離れる事になりました。
※ファントムジェリーの中にある大量の核から生まれたのが幼女スライムで、例外(人間に寄生させてから出産した場合)を除けば基本的には同一個体扱いとなっております。




