394:ハーピークィーン戦
上手く逃げる事が出来たのだろうかという心配と、少しでも戦力が欲しいという打算で作戦を開始する前にシノさんに連絡を入れてみたのですが……連絡した時にはノワールに連れられる形で『クリスタラヴァリー』から離脱したところだったようで、今から合流するのは難しいのではないかという事でした。
『蜘蛛は戻りたがっていたから戻したけど…』
しかもハーピー達が辺りを飛び交っているので引き返すのも危険で……ミイラ取りがミイラになってもしかたがないですからね、シノさんの助力は諦める事にしましょう。
『わかりました、何とか手持ちの戦力で何とかしてみますので』
そうしてお互いの状況を話している内にハーピークィーン達が戻って来たので通話を終了し……後は上手く罠に引っかかってくれるかどうかにかかっていますね。
(大丈夫だと思いますが)
因みに罠を仕掛けている通路の入り口は狭いけど中はそれなりの広さがあるという……私達なら問題なく通れるけど翼を広げて移動しなければいけないハーピー達からすると通りづらいという場所で、地震の影響なのかあちらこちらに罅が入っていたり崩れて窪みが出来ていたりと隠れる場所が多いところも評価が高いポイントです。
しかも出入り口付近には数十センチ幅の目立つ亀裂があるので間違えて別の横道に駆け込んでしまうという事もないという……そんな場所に最初から隠れている私はともかく、横撃を入れるために外で待機しているまふかさんとグレースさんが見つからないかとドキドキしてしまうのですが、岩陰に隠れている2人の前をハーピークィーン達が何事もなく通過していった事に対して私は詰めていた息を吐き出しました。
どうやら索敵能力はこちらの予想通り低く……改めて物陰から覗いたハーピークィーンはまふかさんが言っていた通り背中に羽がある緑髪の翼人で、両腕は人間ながら膝下辺りから鷲の足になっているというなかなかの美人さんですね。
しかもハーピー達が可愛い寄りの顔立ちをしているのと比べるとあからさまに美人寄りの造形をしており、身体つきも成熟した大人の色気を振りまいているのですが……一糸も纏っていないのでどこか視線のやり場に困ります。
(あんなに揺れて痛くないのでしょうか?)
そして翼が羽ばたく度にボヨンボヨンと大きな胸が揺れ動いているので他人事ながらどうでもいい心配をしてしまったのですが……とにかくそんなハーピークィーンと4体のハーピー達が戻って来たかと思うと崩落現場の周りをウロウロとしていたのですが、まずは追加の『MP回復ポーション』で体調を整えたまふかさんが仕掛ける事になっていました。
『いくわよ!』
『お願いします』
そしてハーピー達がどこかに飛んで行ってしまう前にまふかさんが戦闘開始の合図を発し、グレースさんは呪文を詠唱中だったので私が代わりに返事を返したのですが……結晶化が残る右足は自然回復待ちの状態ですからね、初動はハーピークィーン達の死角となる場所に潜んで戦いを眺める事になっています。
『まずはお手並み拝見だが…あれではキツそうだな』
(そうですね、自力操作だと少し難しいかと)
カメラ系のスキルで自分の魔力を飛ばすというアイデアは良いのですが、淫さんなどの外部的な補助がないまま複数の魔力球を制御するのは難しいようで……。
「おなじテは…くらわないわよ?」
まふかさんが準備した電撃球は5発、規則的な軌道で動いている事に気づいたハーピークィーン達はクスクスと笑いながらあっさりと回避し、お返しと言わんばかりに振動波を放とうとするのですが……呪文を唱え終わったグレースさんが防御に入りました。
『…無垢なる者たちを守る光の盾を我が手に、【ホーリーウォー…!?』
「それも…ミた」
そうして半透明の盾が生まれる瞬間、ハーピークィーンが放つ巨大な風の刃でグレースさんのシールドが打ち砕かれて吹き飛ばされるのですが、流石に相手も色々と対応はしてくるようですね。
『っの…撤退するわよ!!』
『は、はい!』
作戦の骨子はひと当てした後にこちら側が有利になる場所まで相手を引きずり込む事にありますからね、横穴に逃げ込みやすい場所から攻撃を仕掛けていた2人は後退してくるのですが……。
「ふふ…ツギはどんなスガタをみせてくれるのかしら?」
あまりにもあっさりとした撤退にやや怪訝そうな様子で追撃をかけて来るハーピー達が振動波を放ち……グレースさんを庇うような立ち位置で【狂嵐】の出力を上げて魔法防御を高めたまふかさんが振動を防ぐのですが……。
『あんたは先に…ん゙っ!?はっ…ぁ?あっ!?』
軽く揺すられただけで身体の方が振動の味を思い出してしまったのか、まふかさんはビリビリと痺れたようにのけぞるように潮を噴いて崩れ落ちてしまい……初動の時点でかなり不味い状況になってしまいました。
「ほーら、ここをユすられるのはどう?」
「やっ…ひぁ!?ふっ、ぐぅぅぅ…ッ!?ん゙ぐ゙ぅ゙ゔゔゔ!!?」
何とか振動に耐えて立ち上がろうとしているまふかさんを嬲るように振動を当て続けるハーピークィーン達によって弄ばれてしまい……カクカクと震える足では立ち上がる事も出来ないようですね。
『不味いな』
(ええ、仕方がありません!)
このままでは罠にかけるどころかまふかさんがやられかねないですからね、私は後ろを気にしながら横穴に駆け込んできているグレースさんが次の呪文を唱えているのを確認しながらすれ違うように飛び出すと、『音晶石』を掘り出すために持ってきていたツルハシに【ルドラの火】を纏わせてハーピークィーンの頭上目掛けて投げつけます!
「あら、アタラしいコね…でもどこを…!?」
言いながら舌なめずりをするように目を細めるハーピークィーンは私が投げたツルハシの行方を目で追い……それが天井にぶつかり大爆発、2人が落ちてきた所の近くという事で脆くなっていた天井が崩落してくるのですが……ガラガラと岩とか土砂が降って来るとハーピークィーン達は忌々し気に後退しました。
『まふかさん…立てますか?』
『え、ええ…大丈夫よ』
その間に倒れているまふかさんを回収して撤退に入るのですが、ヴンッ!と空気が揺れるような音が響き渡ったかと思うと振動波によって土砂崩れが吹き飛ばされてしまい……この程度では足止めにすらなりませんね。
仕方が無いので私は残り少ない魔力で【魔水晶】を作り出して振動を防ぎ、カウンターのように【淫気】のナイフを投げつけるのですが……ハーピークィーンを覆っている風の膜によって簡単に弾かれてしまいます。
(投げナイフが無くなったのが痛いですね)
【淫気】のナイフだと物理的な突破力が劣っているようで、魔法防御が高い相手にはてんで役に立ちません。
「ウフフ…今日はなんていいヒなのかしら、こんなにもオイしそうなコがたくさん」
そうして風の魔力で砂煙を吹き飛ばしながら近づいて来るハーピークィーンがニッコリと笑い、「美味しそうな子が」と言っているのですが……その視線はまふかさんを捉えているようですね。
『モテモテですね』
『あんなのにモテても仕方がないと思うけど…あたしってなかなか罪な女でしょ?』
まふかさんを狙うのは好みや相性的なものなのかもしれませんが、とにかく振動に嬲られていたまふかさんも冗談が言えるくらいには余裕があるようで……グレースさんは窪みに入ってラウンドシールドで蓋をするように隠れているようですし、私もさっさと所定の位置につく事にしましょう。
『では手筈通りに』
『ええ、任せなさい…足の震えは気合で何とかするわ』
そうして打ち合わせ通り横道に入った所にある横の窪みに身を潜めると、淫さんを展開して振動に対する蓋を作るのですが……ハーピー達がこの横道に入るためには1体ずつ入って来る必要がありますし、頑張っても2体が精一杯という広さしかありません。なので順番に入って来るというのなら1体ずつ削っていっても良かったのですが、流石にそんなマヌケな罠には引っかからないようですね。
むしろ待ち伏せを警戒するように主根路側から側根路側に向けて振動波が連続で飛んできて……この戦闘音を聞きつけてビークリストゥがやってくるかもしれないのであまり猶予はないのですが、慌てず騒がず少しずつ詰めていく事にしましょう。
(意外と震えますね)
ここまで執拗に振動波を撃ち込まれていると身動きが取れないのですが、盲目撃ちに近い振動では上手く特定の部位を震わせる事は難しいようで……快楽波を含んでいるので肌が震えるだけでもそれなりに気持ち良いのですが、ピンポイントで特定の部位を振るわせられるよりかはマシですね。
(ずっと続いていたら厳しいのかもしれませんが)
反響した振動が蓋代わりの淫さんと壁を揺らし、それだけで頭の奥と子宮がジンと震えるような感じがしますし、胸の奥からはむず痒くなるような奇妙な感じが広がって来てしまいます。なのでこのまま振動波を撃ち続けるだけで私達を無力化する事ができるというヌルゲーではあるのですが……盲目撃ちのままではとっくの昔に逃げ去ってしまっているかもしれないという懸念が付きまといますからね、いつまでも振動波を撃ち続けている訳にもいきません。
なのである程度撃ち込んだところで私達が逃げたかどうかを確認する為に振動波を止めて覗き込む必要があって……道の真ん中で倒れているまふかさんを発見してニヤリと笑いました。
「あらあら…もうニゲないの?」
囮役を務める事になるまふかさんは凹みに伏せているだけなのでかなり厳しそうなのですが、収束していない振動波を【狂嵐】で何とか耐えてもらい……その安否を確認する為に2体の通常ハーピーを先に入らせた後、ハーピークィーンが勿体ぶった動作で横道に入って来るのですが……。
(牡丹!ニュルさん!)
「ぷっ!!」
「KYURURURU!!」
私は今まさにハーピークィーンが通過した場所、横道の出入口の亀裂に潜ませていた2人……軟体生物に近い2人なら無理やり押し込める事が出来た亀裂から跳び出して来た牡丹とニュルさんがハーピークィーンの背後から襲い掛かります!
「なっ!?」
そして牡丹とニュルさんが意図的に上げた声に対してハーピークィーンが振り返るのですが、後ろは後ろで別のハーピーが常に付き従っているので範囲攻撃である振動波を叩きこむ事が出来ません。代わりに風の力を纏わせた手刀で跳び出して来た牡丹達を迎撃しようとするのですが……。
『【招集】!』
ハーピークィーンの気が逸れた瞬間に私も飛び出して……ドレス化が間に合わないので半裸に近い状態での全力疾走となり胸がブルンブルンと揺れて重心がブレるのですが、風の手刀が2人を襲うギリギリのところで私の手元に戻って来た2人を改めてこちら側に呼び出すと、迎撃しようと振り返る事になったハーピークィーンの背後を取る形となり……眷属化したニュルさんには改めて【搾精】と【ルドラの火】を付与しておいたのですが、ジェリーローパーが持つ魔力吸収も利用して四肢を拘束しながら振動波を放つための魔力を吸い取ってもらい、跳びかかった牡丹もハーピークィーンの無防備なおっぱいにしゃぶりついて全力で魔力を吸い取りにかかります。
「KYURU!?」
この間ほんの数秒程度、この頃になると周りに居る取り巻き達も反応し始めるのですが……下手に攻撃をすればハーピークィーンを巻き込んでしまうという事で手が出せず、その混乱の隙間を縫うように『魔嘯剣』を中腰に構えた私が突撃するのですが……。
「この…ていど!!」
『ぐっ!?』
ここまでお膳立てしたにも関わらず、無理矢理風の力を爆発させたハーピークィーンは取りついていた2人と駆け寄る私を吹き飛ばし……流石に周囲に気を配る余裕が無かったのか周囲のハーピー達ごと吹き飛ばしていましたし、快楽波ではなく単純な風魔法による吹き飛ばしだったのですが、引き剥がされてしまった私達は受け身を取りながら転がりました。
『…聖なる祈り、御使いたり得る加護をここへ…【セイクリッドブレス】!!』
そこに【ホーリーウォール】が破られてから詠唱を続けていたグレースさんの強化バフが完成し、色々と垂れ流したままのまふかさんを包みます。
『相変わらずタイミングバッチリね!』
単純な支援能力だとトップクラスであるグレースさんの全力支援ですからね、気休め程度ながらやや足取りがしっかりとしたまふかさんが今までの鬱憤を晴らすように【狂嵐】を爆発させると、『デストロイアックス』を構えながら突っ込み……。
「ッー…!!?」
当初の予定では私達が拘束している間に叩き込むつもりだったのですが、細かな段取りの違いはまふかさんのセンスで埋めてもらい……相手は振動波を出し終わって完全に体勢が崩れた状態ですし、妨害に入るべきハーピー達も吹き飛ばされた後となってはフォローに回る事も出来ません。
「まだ、まだマケ…やられるワケには…ッ!?」
まともに飛び上がる事も出来ない空間、完全に無防備になってしまっているハーピークィーン目掛けて銀色の雷となったまふかさんが斬り込み……それでも対応してみせたのは数多のハーピー達を束ねる女王であるという最後の意地だったのかもしれませんが、ほぼ全魔力を右手に集めてバフにバフを重ねたまふかさんの一撃を弾いて致命傷を避けていました。
「グゥゥウいいいッッ!!?」
それでも防御に使った右腕は吹き飛びスリップダメージが入り、『デストロイアックス』が掠った横腹は大きく裂けて大ダメージを受け、左腕で傷口を庇うようにしながらバランスを崩すと血走った目で致命傷を与えてきたまふかさん睨みつけるのですが……。
「油断大敵です」
一撃で終わらないというのは想定済みですからね、いきなり吹き飛ばされて壁に叩きつけられたハーピー達より先に復帰した私と牡丹とニュルさんが距離を詰めなおし、今度こそ全員を殺傷するつもりで魔力を集めていたハーピークィーンのお腹を『魔嘯剣』で貫くと……そのまま3人同時の【ルドラの火】を叩き込みます。
「グゥ、イイィアアアアアアア!!!?」
使用している魔力はハーピークィーンが反撃に使おうとしていた膨大な魔力をも利用した四人分の最大火力ですからね、いくら格上のボスモンスターとはいえ青白い炎に包まれ燃え尽きていき……そのまま酷い叫び声を上げながらハーピークィーンは絶命しました。
※誤字報告ありがとうございます(3/27)訂正しました。




