表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/527

39:採掘場前に集合します

 ロックゴーレムのいる採掘場前までやってくると、予想していたより多くの人が集まっていました。精々10人か20人集っていれば良いと思っていたのですが、パッと見た限りではだいたい100人くらいの人がいますね。この中の何人が参加者で、何人が見物客なのかはわかりませんが、かなりの大所帯での討伐になりそうです。普通(他ゲームだと)掲示板の一言だけでこれだけの人が集まる事もありませんので、ブレイクヒーローズのプレイヤー達はお祭り気質と言いますか、ノリがいい人が多いのかもしれませんね。


 角に腰翼、右手には『純鉄のロッド』、左手にはツルハシ、黒い大型犬(スコルさん)を連れた私が到着すると、その姿を見慣れていない一部の人達からどよめきが上がります。私はどちらかと言えば早く見慣れてスルーして欲しいと思うのですが、スコルさんは目立つ事が好きなようで、逆に鼻高々と言った様子です。


「あら、貴女も参加してくださるのですね。火力として期待していますわ」

 話しかけてきたのはモモさんですね。彼女はレミカさんと一緒に集団の中心にいて、簡単な作戦の説明と質疑応答の受け答えをしていました。とはいえ寄せ集めの集団ですからね、厳粛な作戦会議というよりも、実態はただ周囲がモモさんをからかって遊んでいるだけのようですね。「彼氏はいるのー?」とか、関係の無い質問が飛んでいます。モモさんはそういう質問にもいちいちしっかりと答えるものだからか、時々ドッと湧き上がるような歓声があがっていました。まあモモさんは忙しそうだったので、私は簡単な挨拶を済ませた後、少し離れて辺りをゆっくりと見まわします。


 皆から離れた場所にいるのはアヴェンタさんですね。彼は面倒くさそうに壁に寄りかかって時間をつぶしていました。こういう集まりにあまり興味がなさそうな人だと思っていたので、少し意外です。

 そして頭一つ抜けて(身長190センチ)見えるあの人は、十兵衛さんですね。その横には人ごみに埋もれるようにして桜花ちゃんもいるようです。その隣にいるのは金角兎の時にいたシグルドさんでしょうか?3人は知り合いなのか、何か談笑をしながら時間を待っているようですね。こうして見ると意外と知った顔が多く参加している事に驚きます。


「おお、エイジ(スコルさん)じゃないか、ちょっとこっちに来い!なんか話がよくわかんねーんだが、ちょっくら説明してくれないか?」

 ノシノシと集団から抜け出してきたのは、ドゥリンさんですね。どうやら拘束(投獄)期間は終わったようで、ちゃんとギルドカードも手に入れたようですね。そして何気に討伐メンバーの中に混じっていますが、大丈夫でしょうか?スコルさんに聞いた限りではかなり怪しい感じなのですが、本人はやる気満々ですね。


「おやっさん、なんでここに!?」


「はぁ?なんでってお前…俺達の鉱山の事だろうが、参加しないでどうする!!」

 ドゥリンさんは「何あたり前の事を言っているんだ?」みたいな事を大声で捲し立てており、その大声に周囲の人が驚いたように振り返ります。


「ちょっとちょっと、わかったから。おやっさん声の大きさ下げて。しーしー…ボスが反応しちゃうから」


「てめぇ俺を馬鹿にしているのか!?」


「あーもう、だからぁ…」

 ドゥリンさんは素の声がかなり大きいですからね、そしてここは閉鎖空間でかなり響きますし、かなり距離を取っているとはいえボスの前でもありますからね、周囲の迷惑そうな視線がドゥリンさんとスコルさんに突き刺さります。そんな騒ぎを聞きつけて桜花ちゃんが不快そうに眉を寄せて二人を見たのですが……私の姿を見つけると、目を輝かせました。


「っておい、まて、こんな所(ボス前)で喧嘩吹っ掛けるなよ!?」


「は?わかってるって、そんな事しませんよーだ。てか苦しい、掴むなお兄!」

 十兵衛さんが今にも駆け出しそうだった桜花ちゃんの首根っこを捕まえました。それを見てシグルドさんは苦笑いを浮かべ……私の顔を見ると「ああ、あの時(金角兎)の」みたいな顔をしています。

 私の隣ではドゥリンさんとスコルさんが何か言い合っていますし……この2人からは、少し離れておきましょう。


「皆さんも参加するのですね」

 そっと二人から離れて、桜花ちゃん達に話しかけます。


「折角だから腕試しに、ね」

 答えたシグルドさんは本当にいい笑顔ですね。意外とこの人も戦闘狂タイプなのかもしれません。


「まあそんな感じだ。こいつらは強敵が相手に出来るってんでちょっとはしゃいでいるが…あんま気にしないでくれると助かる」


「はぁ?お兄何様?それよりさ、ユリエル凄かった!空中で体を捻ってナイフ叩いたのってどうやったの?やっぱり羽使ったの?」

 あの戦闘動画(ロックゴーレム戦)を見たのか、桜花ちゃんは興奮した様子で手をワキワキとさせていますね。動きを再現するように腕を振っている桜花ちゃんは年齢(中学生くらい)を考えると少し幼く感じますが、無邪気に目をキラキラとさせている所は可愛らしいですね。


「はい、補助的に、ですけど」

 7割方は体の捻りです。


「凄ーい、アタシもそーいうの生やしたらああいう動き出来るのかなぁ?」


「それは、どうでしょう?似た動きは出来るかもしれませんが…」

 桜花ちゃんがどこまで動けるのかわかりませんからね、再現できると言い切る事は出来ません。その辺りを確認するように知り合いのお二人に視線を向けると、シグルドさんは軽く肩をすくめ、十兵衛さんはため息を吐きました。


「桜花の場合はもう少し練習しないと難しいかな?でも頑張れば出来ると思うよ」

 とはシグルドさんの評価です。


「手打ちなら、だろ?桜花の腕力であれだけめり込ませようとしたら少し難しい…ってぇ!?」

「うっさいお兄!シグ兄が出来るって言っているんだから出来るの!」


「わかった、わかったから蹴るな!あーもう、これからゴーレム倒すっていうのに無駄に体力使うなよ」

 兄妹でじゃれ合っている二人を見ながら、私とシグルドさんは顔を見合わせて笑います。


「ああそうだ、今度桜花と手合わせするみたいだけど……」

 手合わせの事は桜花ちゃんから聞いたのでしょう、シグルドさんは軽い調子でそう切り出してきたのですが、その目は笑っていませんね。何でしょう、止められたりするのでしょうか?


「どうかな、時間がある時でいいから、僕とも手合わせをしてくれないかな?」

 どうやらシグルドさんも桜花ちゃんと同じタイプの人間のようですね。いえ、むしろ桜花ちゃんがシグルドさんに似ているのかもしれません。桜花ちゃんに蹴られていた十兵衛さんだけが「お前もか」みたいな感じで天を仰いでいます。


「はい、是非」


「ってやっぱり受けるのか。まあこいつ(桜花ちゃん)は良いとして、シグルドは強いぞ?」

 桜花ちゃんを摘まみ上げる事によってキック攻撃を無効化した十兵衛さんが「危ないからやめておけ」と言ってきたのですが、そう言われると逆に挑みたくなりますね。


「望むところです」

 その言葉が私からの挑戦状と受け取られたのか、シグルドさんの笑みが深まります。シグルドさんはただ笑っているだけなのですが、圧が凄いですね。角の感知能力が全力で危険を知らせてきているような感じで、背筋がゾクゾクします。


 そんなやり取りをしている間にも、モモさん達の簡単なミーティングは続いていました。とはいえ作戦はそれほど難しいものではありません。私達はただ今日のために集まっただけの集団ですからね、細かな作戦を言われても実行はできません。なので簡単な流れと、役割分担だけが決められていました。


 まず大まかな流れですが、何より阻止しないといけないのがあのストンプ攻撃なのですが、あれを防ぐ手段は今のところ私達にはありません。もう少しレベルが上がってスキルが揃えば、タンク役が壁になったり、遠距離攻撃で削り切ったり、即座に離れて障害物を利用したりする方法もあったかもしれませんが、そこまで成長している(プレイヤー)が今のところいませんからね。なので作戦としてはまず、全員で削りに行って、攻撃パターンが変化するかしないか辺りで全力攻撃に移り、撃たれる前に残りのHPを削りきるという何とも大雑把な作戦でした。まあ即席集団にはそれくらい簡単な方がわかりやすいでしょう。もし倒せなかったとしても、前回と比べると人数がかなり多くなっていますからね、生き残った人が何とかしましょうという行き当たりばったりの作戦です。


 役割分担としては、前衛で攻撃を担当する“アタッカー”。ロックゴーレムの攻撃やピットの攻撃から他のプレイヤーを守る“タンク”。弓矢などの遠距離攻撃や魔法で牽制する“支援”の3つに分けられるようです。


 私が知っている人で言うのなら、アタッカーが私、スコルさん、桜花ちゃん、十兵衛さん、シグルドさん、アヴェンタさんで、タンクがドゥリンさんとレミカさん、意外な事にモモさんは魔法を覚えているらしく支援に入っていました。後は各自振り分けられていて、大体の参加人数は60人くらいになるそうです。ちなみにPTを組むかどうかは任意のようですね。人数制限的に同一PTに纏める事が出来ず、役割ごとに組めば火力の多いところが経験値を持っていく事になりかねません。個人戦績がそのまま反映された方が良いでしょうとの事でした。まあそうは言っても完全に支援寄りの人もいますからね、そういう人が知り合いと組むのは任意だそうです。とにかく、そういう布陣で一気にロックゴーレムを倒す事となりました。

※次回ロックゴーレムと再戦します。

※誤字報告ありがとうございます。10/1訂正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ