390:旅は道連れ世は情け?
ビークリストゥとレイブンさんに追われて亀裂の隙間に逃げ込んだところまでは良かったのですが、別の横穴から潜り込んで来たと思われる6匹のジェリーローパーが無数の触手をウネウネさせていて……ウネウネさせているだけでした。
(どういう事なのでしょう?)
ビークリストゥの封印が解かれている関係で逃亡モードになっているのかもしれませんが、その割には伸ばした触手を私の腕に絡みつけて通せんぼをするようにウネウネとさせていたりと邪魔をしてくるのですよね。
しかもジェリーローパー達は何かを伝えようとしているかのように私の腕ごと上下に触手をブンブンと振っていて……淫さんが身構え牡丹も私を守るように間に入ってくれたのですが、そのあまりにも友好的な仕草に首を傾げてしまいます。
「危ねー逃げられたかと思ったが……ははっ、そっちはそっちで楽しそうな事になっているみたいだな」
そうして追いついて来たレイブンさんが亀裂の隙間から……どうやら適当に振り回していた時に生じた氷柱や棘ミサイルによって出入口が中途半端に塞がってしまっていたようで、氷と結晶に覆われている隙間から中を覗き込みながらニヤニヤと笑いました。
まあレイブンさんの視点では足を負傷した私が触手系のモンスターに囲まれている訳ですからね、これから起きる事を想像してニタニタと笑っているという事なのかもしれませんが……私は状況が良くわかっていないので沈黙を保ちます。
「俺がそっちに行くまでそいつらに遊んでもらって…っと、そうだな…確か少し戻った所に迂回路があったよな?お前はそっちから回って退路を塞いで来い」
そして右足の状態を見て1対1でも大丈夫だと確信したのか、それとも一か八かジェリーローパー達を突っ切り反対側に逃げられた方が面倒な事になると判断したのかはわかりませんが、嬲り殺しにしたいレイブンさんは私達が逃げられないように二手に分かれて挟み込むつもりのようですね。
(棘ミサイルを撃ち込まれなくて良かったと言いたいのですが…)
どのみちこの足ではレイブンさん達と正面切って戦う訳にはいきませんし、何とかこの場を切り抜けないといけないのですが……。
「さーて、それじゃあこの邪魔くせえ塊を壊したらお楽しみの始まりだぞっと…待ってろよー天使の姉御ーすーぐ気持ちよくしてやるからな~」
そうして作り出した氷を攻撃し始めるレイブンさんなのですが、どうやら自分が作り出した氷は任意のタイミングで解除する事が出来ないようで……それともジワジワと恐怖を味合わせたいだけなのかもしれませんが、油断してくれているのは大いに助かりますね。
(今のうちに逃げ出したいのですが…)
ビークリストゥが回り込んでくる前に逃げ出す事ができたらまだ何とかなるのかもしれませんが、私が移動しようとするとジェリーローパー達が必死に止めるように蠢いて……本当にどういう事なのでしょう?
因みにジェリーローパー達の見た目は全体的に黄色みが増している特殊個体達で、体高は1メートル程度、橙色に近いヌメヌメとした本体には『サンハイト』にも似た結晶がついていたりと属性が変化しているような感じですね。
名前はジェリーローパー(亜種)という身もふたもない名前で、レベルは36~41、毀棄都市周辺の個体より少し強いくらいのレベルなのですが……その体からは砂色の程よい太さで長めの触手が生えていて、特に危害を加えてくる様子もないまま必死に何かを訴えかけてきているのですが、相変わらず触手の伝えたい事はよくわかりません。
(何が言いたいのでしょう?)
流石に触手の肉体言語はよくわからないので牡丹が間に入ってくれたのですが、その間にレイブンさんがガキーン!ガーン!と氷を削っていき……焦燥感を煽るような掘削音を聞きながら、目の前では「ぷぃぷぃぷー」とポヨンポヨンと揺れている牡丹と触手をウネウネさせながら必死に何かを訴えているジェリーローパー達が話し合っているという不思議な光景が広がっていました。そして時間も無いので手早くジェリーローパー達の要望を纏めてもらった結果……。
(精液がもっと欲しい…ですか?)
(ぷ!)
との事で、どうやらここにいるジェリーローパー達は私達が途中で破棄してきた大量の疑似精液を啜って「これは美味い!」と感動した個体のようで、その粘り気や魔力の含み具合がデリシャスなのだそうです。
(もしかして疑似精液で餌付けした扱いになっているのでしょうか?)
何がデリシャスなのかはよくわからないのですが、触手系のモンスターでもあるジェリーローパー達と『搾精のリリム』の親密度が最初から高かったようで、そんな相手に餌付けをしてしまった結果、テイミング条件を満たしてしまったのかもしれません。
まああくまでシノさん謹製の疑似精液を“気に入った”のがこの6匹という事で全ての触手系モンスターに餌付けが出来るという感じでもないのですが、牡丹が言うには「もっとくれるのなら手下になってやらんでもない」といった感じでウネウネしているようでした。
「そうですか」
予想外の展開すぎてうっかり生返事を返してしまったのですが、今はジェリーローパー達に構っている余裕がありませんからね、相手の言い値で交渉するのもやぶさかではないと残りの疑似精液を出しながら『YES』ボタンを押して……。
「お、逃げないのかー?ヒヒッ、どーやら天使の姉御も覚悟を決めたようだな~すーぐにこのカリ高チ〇ポでヒーヒーいわせてやるからなー」
そしてジェリーローパーとの交渉に時間をかけてしまっている内に掘削を終えたレイブンさんが隙間に体を押し込み滑り込んでくるのですが、もどかしそうに剣を持ったままズボンのベルトをカチャカチャ弄ってツルリとした何もついていない股間を露出させました。
「凄げーだろ?リアルだとこんな事できねーからな、射精も何十発と可能だし、ブレイクヒーロー様々だぜ」
そんな事を言いながら見せびらかせているのは蛇腹のように筋の入った下腹部ですからね、最初は何がしたいのだろうと思って見ていたのですが……どうやらトカゲ系の人外種らしく半陰茎持ちだったようで、やや下側についている総排出腔から長さ60センチくらいのカリ高でイボイボしている自慢の一物がウネウネと生えてきて……。
「にしても…?おい、お前達!しっかりと天使の姉御を縛り上げとけよ!」
ある程度レイブンさんの意思で動かす事が出来るのか、2本の陰茎をみせびらかしながらキヒヒと笑うレイブンさんは私達がジェリーローパー達に襲われていない事に対して一瞬だけ不思議そうな顔をするのですが……目の前にニンジンがぶら下げられている状態では「まあそういう事もあるか」みたいに都合よく解釈してしまったようで、剣を片手にだらしなく近づいて来ました。
「へへ、って…おおっ!?」
レイブンさん的にはもうどうする事も出来ないと思っていたのかもしれませんが、残念ながらこの子達は私の支配下に置かれているのですよね!
「KYURUAAAxx!!」
「って、おい!?何で俺を…くそっ、どうなってやがるっ!?」
味方だと油断しきっていたという事もあり、いきなり触手を伸ばして来たジェリーローパー達に対して混乱気味に剣を振るうレイブンさんなのですが、1匹あたり10本前後の触手が伸びてきているので攻撃回数はトータル60本、いくら回避スキルがあると言っても完全に回避しきる事は不可能です。
「おい!ふざけんな!だから俺は敵じゃねーぞ!?あっちに…って…うひぃっ!!?」
そして半陰茎を丸出しという弱点をぶら下げた状態で戦っている訳ですからね、ジェリーローパー達がそんな見え見えのウィークポイントを狙わない訳がなくて……ニュルリとした触手が絡まると情けない声を上げながらレイブンさんの動きが硬直してしまいます。
「ふ、ふざけんな!どれだけこのチ〇コで女をヒーヒーいわせたと…こ、これくらいで俺様がっ……ウッ!?」
強がるレイブンさんなのですが、この子達は『搾精のリリム』の眷属にクラスチェンジしていますからね、半淫魔ともいえるジェリーローパー達に二つある半陰茎をニュルニュルと扱かれて尿道を弄るようにジュポジュポされるとあっさりと射精してしまい、吐き出した精液をジュルジュルと吸われて膝がカクカクと震えてしまっているのですが……まあヌルヌルした体液に含まれている媚毒は濃度を高めていますし、魅了関係のスキルの乗った手こきはレイブンさんには特攻が入っているのでしょう。
『どうする、今のうちに止めを刺すか?』
(そうですね……いえ、やめておきましょう)
そうしていっその事ひと思いにと淫さんがとどめを提案してくるのですが、ここで倒したとしてもリスポーンされるだけですからね、私と牡丹のように遠隔から指示が出来るのならビークリストゥにしつこく狙われるという事でもありますし、少しでも時間を稼ぐためにもこのまま放置していく方がいいのかもしれません。
「では私達は先を急ぎますので」
このままレイブンさんの禍々しい半陰茎や射精ショーを見せつけられるというのも頬が火照ってしまいますからね、ビークリストゥがやって来る前にさっさとこの場所から離れる事にしましょう。
「ちょ、待て…本当に…くそ、なんで…こいつらッ!?」
そして射精を続けるレイブンさんは必死に触手を振り切ろうとしながら困惑と懇願が混じった顔をするのですが、穴という穴を責められながらヌルヌルした触手に手こきをされている状態ではまともに動く事が出来ないようですね。
「ソレは好きにしていいので、後は…どうしました?」
ビークリストゥが戻って来る前にもと居た通路に戻ろうと思ったのですが、6匹いるジェリーローパーのうちの1匹が左足にへばりついて来ていて……もしかしたらこの子はシノさんが吐き出した疑似精液に未練たらたらなのかもしれませんが、このまま押し問答しているのも時間も勿体ないですからね、1体くらいならここから連れ出しても問題ないかと尻尾に絡めて連れだしておく事にしましょう。
「は?ふざ、けんな!?ッ…これ゙、お゙!?」
そうして居残り組になった5匹のジェリーローパーに拘束をお願いしておくと、レイブンさんは何度目かの射精と怒鳴り声を上げながら触手に埋もれていくのですが……いくら連続発射ができる人外種だからといっても触手に無理やり絞り出されているのと自分のペースで好き勝手に出来るのは違いますからね、徐々に声が弱々しくなっていきます。
(これでまともな指示は出せないと思いますが)
そんな弱々しい罵詈雑言を並べるレイブンさんとジェリーローパー達を残し、氷を削って出来た隙間を通ってもと居た通路に戻って来たのですが……。
『いったいお前はどこに行こうとしているのだろうな』
ビークリストゥが戻ってくる前に一刻も早くここから逃げ出さないといけないのですが、淫さんだけはどこか遠くを見つめているような様子で現実逃避をしていて……そんなのは私自身が聞きたいくらいなのですが、ここで哲学的な事を議論している余裕はありません。
(何処と言われましても…まずは出口だと思いますよ?)
現実的な問題として、逃げ場のない地下通路で棘ミサイルの乱射を受けたら距離を取る事すらままなりませんし、まふかさん達やシノさん達とも合流する必要もあるので早々にこの場から離脱した方が良いと思います。
『いや、それはそうなのだが…我が言いたいのは…』
「ぷっ!」
(それよりビークリストゥに追いつかれる前にこの場を離れますよ)
そして私が意図的に誤魔化そうとしているのは淫さんも気づいているのですが、今はのんびりと語り合っている余裕はありません。なので黄昏た雰囲気を醸し出している淫さんに対してそっけなく返事を返し、新しく仲間になったジェリーローパーを抱えなおしながら、私達は地上部に出る事が出来る横穴か亀裂が無いかと周囲を確認しながらその場を離れる事にしました。
※襲われない事もあります。
※誤字報告ありがとうございます(3/21)訂正しました。




