383:振動と亀裂
ハーピーに見つかってしまった私達は巨大な『ベルクストーン』の隙間に逃げ込もうとしたのですが、押し合いへし合いしている内に後ろに倒れ込むように転倒してしまったシノさんに胸元を掴まれ引っ張られてしまい、踏ん張れば踏ん張るほどドレスの裏地が乳首にギューッと絡みついて来る事となり、それだけで全身にビリビリとした甘い刺激が走って子宮が疼いてしまいました。
『相変わらず面倒臭い奴だな!』
(そんな事を…言われましても!)
自分の意思とは関係なく弄り回されるのは奇妙な感覚なのですが、何だかんだと文句を言いながらも淫さんがつっかえ棒のようにスカート翼を地面に突き刺して支えてくれましたし、乳首を捻り上げている力を抜いてくれて……それはそれで胸元が広がって大変な事になってしまうのですが、これはもうどうしようもないですね。
(っと、今は…それより)
胸が露出してしまった解放感に気が取られてしまい【魔翼】を展開するのが遅れてしまったのですが、下手に浮かび上がるより軟着陸した方が良いと思ってシノさんの後頭部を守るように手を回してからゆっくりと倒れ込んだのですが……こうして抱き合っていると自然とシノさんのささやかな胸に私の胸を押し付ける事になりますし、薄いタイツ越しにぷっくりと大きくなってしまったシノさんの乳首が擦れてしまってモジモジしてしまいます。
「ちょっ、そっ…もう!世界をめぐりし優しき風よ、その澄み渡りし…」
そしていきなり抱きしめられる事になったシノさんは目を白黒させていたのですが、今はハーピー達に襲撃されている真っ最中ですからね、すぐさま魔法の準備に入り……こういうピンチの時こそしっかりと呪文の詠唱に入れるところがベテランゲーマーであるシノさんらしいところなのかもしれませんね。
(とか言っている場合ではないですね)
起き上がろうにも胸がおもいっきりはだけてしまっていますし、脚には牡丹とノワールがくっついたままですし、耳朶を擽るような掠れた詠唱と共に埃っぽい汗の匂いを感じているとシノさんの身体から魔力が流れて来て気持ちよくなってしまいそうになるのですが……まふかさんとグレースさんがどうなっているかの確認をしなくてはいけません。
そう思い振り返ってみると、まふかさんは持ち前の運動神経を発揮して踏み留まっており、グレースさんは持っていた盾が壁に引っかかったおかげで転倒に巻き込まれずに済んだようですね。
「グレースさん!」
『大…丈夫です、任せてくださいっ!!』
そして私が振り返った時には群がって来ていたハーピー達に向けて『藤甲の盾』を構えるグレースさんの背中が見えたのですが……横穴は成人男性が1人から2人くらいが通れる大きさで、グレースさんはその横穴を塞ごうと『藤甲の盾』に力を注いでいる最中でした。
「KYUUIIIAAAAA!!!」
「ッ!!?」
そうして逃げ切りを計ろうとする私達と阻止しようとしているハーピー達のどちらの行動が速いかという勝負になっていたのですが……ハーピー達が今まさに振動波を放つというギリギリのところで、勢いよく広がった『藤甲の盾』が通路の壁にめり込み横穴を塞ぎます。
(これで何と…か!?)
次の瞬間『藤甲の盾』に振動波が激突してきて大きく揺らぎ、隙間から漏れ出して来る振動波が空気を揺らすのですが……指向性がある訳でもないので空気がプルプルするくらいですね。それくらいなら『魔嘯剣』を掲げて【淫気】で身体を覆っていれば何とかなるのですが、どうやら次から次へとトラブルがやって来てしまうようですね。
『え、あれ?ユリエルさん!止まら…盾が止まらないんですけど!?』
『音晶石』の鉱脈に『精霊樹の枝』を突き刺したら樹が生えてくるという話ですし、もしかしたら『音晶石』と植物的なアイテムの間には何かしらの親和性があるのかもしれません。そして『音晶石』の鉱脈があるという『クリスタラヴァリー』の地質には微量ながら『音晶石』が混じっているようで……。
「ちょっと、何してんのよ!それ以上広げたら崩れるわよ!!って、これ!?」
慌て始めるグレースさんに対して自由に動けるまふかさんがフォローに入ってくれるのですが、盾に含まれている『エルダーリーフ』が無尽蔵に伸びて成長していってしまい……構えていたグレースさんや駆け寄ろうとしていたまふかさんを飲み込み広がります。
「グレースさん!まふかさん!…ッ!?」
しかもそんな状態でハーピー達の振動波を受けている訳ですし、天井や地面に突き刺さった『藤甲の盾』が超振動をおこしてしまい、岩肌に亀裂が入りパラパラと欠片が降ってきました。
あと『ベルクストーン』は構造上横方向からの力にはめっぽう強いのですが、筋に沿うような力を入れると意外と簡単に割れてしまうようで……つまりどういう事かと言うと……。
(落ち…ッ!?)
振動が一際強くなったと思った瞬間、ビキッという音と共に床が崩れ落ちるように亀裂が入ってしまい……この辺りは軟弱な地盤だという事だったのですが、どうやら私達が居た場所の地下には魔力溜まりの名残である巨大な空洞があるようですね。そんな空洞と『ベルクストーン』の裂け目が繋がってしまい、私とシノさんは飲み込まれるように転がり落ちてしまうのですが……飛んで復帰しようにもスカート翼を思いっきり広げられるような空間はありませんし、シノさんを抱きかかえつつ両足に牡丹とノワールをぶら下げている状態では【魔翼】による滞空もままなりません。
(淫さん!)
『くそ、次から次にだな!』
ほとんど身動きが出来ない私の代わりに淫さんが壁面にスカート翼を突き刺し落下を防いでくれるのですが、突き刺した岩場の何割かが割れて外れてパラパラと落ちていきます。
(でもなんとか…止まりました?)
伸ばす触手の数を増やす事によってなんとか固定を安定させるのですが……。
(ぷぃー?)
そんなタイミングで右足にしがみついている牡丹が「手を離そうか?」何ていうとんでもない事を言い出したのですが、そんな自己犠牲を発揮されるより【招集】を使って異空間に退避してくれていた方が助かるのですが……とか考えていたら「ぷっ!?」みたいな反応をされてしまい……まあ最近覚えたばかりのスキルだったので忘れていたようですね。
(もう大丈夫ですよ…それより上は完全に塞がれてしまったようですし、このままゆっくりと下に降りてみましょうか)
見上げてみると私達が落下して来た穴はウネウネと動いている『藤甲の盾』によって塞がれてしまっているようですし、底の方はキラキラと輝いていたりと如何にも何かありそうな雰囲気ですし……とまあその前に、まずはPT経由でグレースさんとまふかさんに連絡を入れておきましょう。
『グレースさん、まふかさん、そちらは大丈夫ですか?』
向こうは向こうで大変な事になっているのかと思い声をかけたのですが、どうやらウネウネする『藤甲の盾』に閉じ込められている以外は大丈夫なようですね。
『す、すみません…何かずっと大きくなったまま戻りません!!』
『あたしも無事よ…って言いたいんだけど、そこの金髪!自分の装備くらいちゃんと使いこなしなさいよね!!ああもう!完全に閉じ込められちゃったじゃない!!』
『ひぃーすみませんすみません、すぐに元に戻しますんで』
『って、ちょっと待ちなさい…今解除したらハーピー達に襲われるのよね?』
『そう…なりますよね?』
私がチラリと見た時は2匹だけだったのですが、上で戦っていた先行PTがやられてしまった場合は残りのハーピー達も私達の方に来る訳で……。
『はぁー…まあいいわ、それよりそっちは大丈夫なの?』
『はい、何とか…ただこのままぶら下がっていても埒があきませんし、下に空洞があるようなので一度降りてみようとは思っていますが』
『だから何でまたあんたはすぐそうやって独断専行を…ていってもこの状況だと仕方がないのよね……まあいいわ、あたし達も落ち着いたらすぐに追いかけるから、あんた達は露払いをすましておきなさい……あんまり先に行っちゃ駄目よ?』
『わかりました、まふかさんとグレースさんも無理をしないように』
とは言ったものの、時折盾やら壁やらがヴィィイイイと震えているのはハーピー達の攻撃が続いている証拠ですし、まふかさん達が下りてくるまでにはそこそこの時間がかかりそうですね。
『なあおい、どうやらまだまだ悪い知らせがあるようだが』
そうして何とかひと段落……といきたかったのですが、淫さんに促されるように呪文の詠唱をしているシノさんを見てみると、何故かその呪文の詠唱が途切れ途切れで……改めて言うまでもなくブレイクヒーローズの魔法というのは暴発の危険と隣り合わせですからね、魔力の流れも何かおかしくなっていますし、このままだ色々と不味い事になってしまいそうです。
とはいえ戦闘中に詠唱する事が出来なければブレイクヒーローズの魔法職にはなれないですからね、一発二発くらいならモンスターから殴られても平然と詠唱を続けられる筈のシノさんがモジモジしている理由が甚だ謎だったのですが……よくよく見てみると咄嗟にシノさんが着ていた全身タイツの腰の部分を掴んでしまっていたようで、引っ張られた股の部分がキュッと割れ目に食い込んでしまっているようでした。
「わが身に…はっ…集いて…あっ、ちょっ…だから…」
しかも軽く擦っただけでひとりでに捲れあがった包皮から大きな陰核が顔を出してしまい……シノさんの身体はとても感度が良いようですし、もしかして意外とエッチな事をしている人なのでしょうか?
『あー…たぶんお前が【淫気】を全開にしているせいだな、それだけ至近距離で浴びせ続けているのだ、かなり大変な事になっているんじゃないか?』
(なるほど)
確かに淫さんの言う通り『搾精のリリム』の【淫気】を全身に浴びているシノさんの瞳は潤んでいて、ぷっくり膨らんだ人より大きな乳首がクニュクニュと私の胸に押し潰される度にピクンピクンと可愛らしく震えて甘い吐息を漏らしているのですが、とにかくこのまま放置していると大変な事になってしまうのは目に見えていますね。
「すみません…っと」
「おおいなっ…るぅ…うぅッ!?」
咄嗟の事とは言え何て事をと衣類から手を離すとシノさんが落下しかけてしまい……慌てて掴みなおした衝撃がシノさんの股間に伝わりグニンと揺れて余計に大変な所に食い込んでしまいました。その衝撃だけで軽くいってしまったのかシノさんは変な声を漏らしながらのけぞり涙目で睨みつけてくるのですが……これはこれで暴発一歩手前といった状況なのかもしれません。
というより無理やり呪文の詠唱を続ける事によって自爆を先延ばしにしているようなのですが、呂律がまともに回っていない状況では遅かれ早かれといった感じなので早々に手を打つ必要がありました。
「出来るだけ詠唱を続けてください、暴走しそうな魔力は私達が吸い取りますので」
とにかく少しでも爆発の範囲を狭めようと即席の作戦を耳元で囁くと、シノさんは「ふわぁあああ」とか変な喘ぎ声をあげてしまい魔力が暴走しかけるのですが……それを必死に押さえ込んだシノさんは涙目のままコクコクと頷くのですが、シノさんはシノさんで撮れ高もないまま自爆する事がいち配信者でもありゲーマーでもある彼女にとっては許せない事のようでした。
(その心意気に報いる必要がありますし、仕方がありませんね…緊急的処置としてシノさんには色々と諦めてもらいましょう)
私もこのままシノさんの自爆に巻き込まれるのは嫌ですし、こんな閉鎖空間で大爆発なんて起きたら上に居るまふかさんやグレースさん達にもどんな影響があるかわかりませんからね、暴走しそうなシノさんの魔法を鎮めるためにも色々と頑張ってみようと思います。
※グレースさんのセリフが全部『』なのは会話を適時切り替えていないからです。なのでPT会話が聞こえていないシノさんからすると、やけに無口な子だなーって思われています。




