364:ひと段落とムラムラ
レイブンさんとカイトさんを撃破した事によって中央から北部にかけてのエリアを安定させたのですが、魔力を使い果たしたアルディード女王とその護衛の兵士達は『歪黒樹の棘』の生えていない北側へ離脱していってしまいました。
それに伴い戦力的な空白が生まれてプレイヤーサイドが押し込まれる事になるのですが、私達がリーダー役を担っていたカイトさんを撃破した事によって熊派にも混乱が生じているのか侵攻が止まり、いよいよ混戦の様相を呈する乱戦にもつれ込みます。
なのでここが頑張りどころ……というより正直に言うと敗戦処理に近い状況なのでグレースさんと一緒にそろそろ撤退した方が良いのですが、キリアちゃんを戦場に引きずり出す為にはエリアボスの居る所まで攻め込まないといけませんからね、このまま『隠者の塔』が陥落してしまうと『イースト港』まで押し込まれてしまうのでもうひと踏ん張りする事にしましょう。
「すまない、我々も一緒に戦いたいのだが……陛下の安全を考えなくてはならんからな」
そして熊派の動きが止まったと言っても通常のモンスターは襲い掛かってきていますからね、アルディード女王の撤退を援護する為に最後まで残っていたエルフの兵士が戦場に残る私達に対して心配そうな視線を向けてくるのですが……私達はもう少し足搔いてみようと思います。
「あまり気に病まないでください、あの茨を斬り倒したら大きく戦況も変わると思いますし…何とか頑張ってみようと思います」
折角熊派の動きが鈍くなっている状態ですからね、アルディード女王の安全も確保できたのでそろそろ『歪黒樹の棘』の伐採に挑戦してみる事にしましょう。
(なかなか無謀な試みだとは思いますが)
南西方面から押し寄せて来ている『ディフォーテイク大森林』のモンスター達がジリジリと戦線を押し上げて中央付近に迫っていますし、エルフの兵士達が撤退した事によって東からもハーピー達の攻撃が止まらず……すでに2人と3匹が特攻したからと言ってどうなるという状況でも無いのですよね。
「行きますか?」
そんな事を考えながらポーションを飲んでスタミナやMPを整えているとグレースさんが戦闘後の興奮が冷めやらぬといった顔で鼻息荒く聞いてくるのですが……流石にこのまま無策で突っ込むのはただの無謀だと思います。
「そうしたいのはやまやまですが……まずは他の人達にも手伝ってもらえないか連絡を入れてみましょう」
私はやる気に満ち溢れたグレースさんにホッコリしつつこれからの事を考えるのですが……押されて数を減らしたと言ってもまだ多くのプレイヤーが戦っていますからね、まずは南西方面で戦っているリンネさんに『歪黒樹の棘』の伐採を手伝ってもらえないか聞いてみる事にしましょう。
『ユリエルか?どうした?今こちらは『隠者の塔』で戦っているので用件は手短に頼む』
暗に『こちらはこちらで忙しいのだが』と言われてしまったのですが、リンネさん達も無事に生き残っているようですね。
『お疲れ様です、私もいま『隠者の塔』に居るのですが…』
『おお、ユリエルが居るのは心強いな…という事は何か起死回生の手でも思いついたのか?』
わざわざこんなタイミングに連絡を入れて来た訳ですからね、何かしらの良い作戦でもあるのだろうかというようにリンネさん声の調子が上がります。
『策と言う程の物ではありませんが…リンネさんの位置から西か南西の『歪黒樹の棘』を攻撃する事は出来ますか?』
もしあの巨大な黒い茨さえ伐採する事が出来たら熊派を弱体化させる事が出来ますし『イースト港』からの援軍が来るまでの時間を稼げるかもしれませんからね、挑戦する価値はある筈です。
『それは…』
そんな私の提案にリンネさんは息を飲むのですが、反応から考えるとあまり乗り気ではないのかもしれません。
『確かにあれを斬り倒す事が出来たらこちら側が有利になるかもしれないが…すまない、今は大剣持ちの骸骨男が暴れていてな、今はそっちの対応で手いっぱいなんだ』
『そうですか』
大剣持ちの骸骨男……我謝さんでしょうか?というより彼を含んだ大森林から溢れ出て来たモンスターの大軍を相手にしているという感じなのだと思いますが、リンネさんのクランは人間や亜人系が多いですからね、『歪黒樹の棘』に近づくリスクが私達より高いので攻撃を躊躇っているというのもあるのだと思います。
『だがこのまま戦っていてもじり貧だからな、一矢報いてみるというのも悪くないか……わかった、皆と相談してみない事には確約は出来ないが…出来る限りの事はしてみよう』
『お願いします』
『それで…ユリエルはどれを狙うのだ?因みに私達から一番近いのは西側の物だが』
『そうですね…私達のいる場所から狙いやすいのは中央からやや南側に生えた物なので、それを狙ってみようと思います』
『わかった…ではお互いに最善を尽くす事にしよう』
『ええ、健闘を祈ります』
こうして話し合いが纏まりリンネさん達も出来る範囲で頑張ってくれる事になりましたし、西側の『歪黒樹の棘』の討伐は任せる事にして……出来たらシノさんやジョンさんにも手助けして欲しいのですが、スキルが封印されている状態のシノさんは残念ながら戦力外ですし、連絡先がわからないジョンさんも臨機応変に動いてくれていると信じるしかありません。
(生き残っていそうな知り合いといえばそれくらいでしょうか?)
私の交友関係の狭さが浮き彫りになってしまったような気もするのですが……思い悩んでいても仕方がないですからね、あの後どうなったのかが気になるのでまふかさんにも連絡を入れる事にしましょう。
『調子はどうですか?』
『え?あ、はい、大丈夫で…す?』
作戦会議的に3人で会話をしようとクラン会話に流しておいたのですが、自分に話しかけられているのかとグレースさんがよくわからないまま答えてくれました。
『あ~こっちもなんとか…今向かっている最中なんだけど……それよりそっちはどうなっているの?生配信している連中も次々飛ばされていくし、状況がよくわからないのよね』
そしてまふかさんの治療の方は何とか落ち着いてきたようで、別の配信者の実況を見ながら戦況を確認していたようですね。
『アルディード女王達が撤退してしまいましたが、今は何とか北部を押さえて反撃に出ようとしている状態ですね』
私は簡単に戦況を伝えておいたのですが……まふかさんはそのあまりの劣勢具合に対して溜め息を吐きました。
『結構押し込まれているのね…って、大丈夫なの?まあ呑気に喋っていられるんだから無事なんでしょうけど…そういえばあの子もそっちに居るのよね?まだ生きているの?』
『え…あ…は、はい!元気に生きてます!』
『…元気だっていう事は伝わるんだけど…あんたは時々煩いのよ、もう少し声の大きさを落としたら?まあでも…無事に生き残っているだけでもあんたにしては上出来なんでしょうね』
とかいきなりツンデレ具合を見せつけているまふかさんの発言にグレースさんが赤くなりながらパタパタしているのですが……とにかくまふかさんはもう少しで到着するという事なのですが、到着を待っている時間はないですね。
『いい?あんた達は前座なのよ?あたしが到着するまでちゃんと場を持たせなさいよ?』
つまり『死なないで』と言いたいのだと思いますが、そんな事を言いながらまふかさんは自分で言っておいて照れたのか黙り込んでしまいます。
『わかりました、まふかさんが来るまで生き残っておきますので…援護をお願いします』
『わ、私もユリエルさんの足を引っ張らないように…が、頑張ります!!』
そうしてまふかさんとの連絡を終えてから一息ついたのですが、気が抜けたところで大きな問題に直面する事になりました。
(物凄くムラムラしてきているのですよね)
戦闘に集中している時は【ポーカーフェイス】で誤魔化していたのですが、戦闘時の興奮やら勝利後の安堵感に空腹時のムラムラが重なってなかなか大変な事になっているのですよね。
勿論今はそれどころではないと思うのですが、駄目だと思っても抗えない昂りに頭の中がエッチな事で占められていき……激しい動きでビンビンになった乳首がドレスの裏地が絡まり擦られていきますし、それだけで身体が跳ねて腰にピリピリとした甘い刺激が走り息が漏れてしまいます。
胸が揺れる度に焦らされされた乳首が引っ張られてキューっと締まりいきそうでいけないギリギリの刺激は性感を高め続けている状態ですし、割れ目に食い込んだ下着ともいえない紐のようなパンツは溢れた愛液を吸ってぐっしょりと濡れていたりと大変な状態で……。
『お、おい…大丈夫か?』
(あまり大丈夫ではありませんが…というより、心配する気があるのなら胸を吸うのを止めて欲しいのですが?)
モジモジしている私に声をかける淫さんなのですが、溢れた母乳が零れないように乳首をしゃぶってくれていて……軽く吸い取るように吸引されると頭の中が真っ白になって膝をつきそうになってしまいました。
『これは我もエネルギー補給をする必要があってだな…その、別に嫌らしい考えがあって吸っている訳ではないのだぞ?』
そんな風に何だかんだと理由を付けている淫さんなのですが、乳首をペロペロしながらだと何を言っても信憑性に欠けますね。
(それは、わかって…んっ、いますが)
そんな全身を苛む嫌らしい刺激に対して胸やら股間に手が伸びそうになるのですが……流石にモンスターに囲まれている状況で始める訳にはいきませんからね、必死に我慢して耐える事にしましょう。
「ぷい」
そんな煩悩と戦っているとすかさず牡丹が携帯食料を口の中に放り込んでくれるのですが、経口摂取だと人から精気を吸うより効率が悪すぎて焼け石に水ですし、だからと言って熊派から精気を奪うのは恥ずかしいですし、据え膳食わぬはというように変に躊躇うのも私らしくないような気がしますし、この場合はどうするのが正解なのでしょう?
「ユリエルさん?」
そうして昂った気持ちを抑えるように携帯食を咀嚼していた私に対してグレースさんが心配そうな顔をしながら近づいて来るのですが、今そんな顔をしながら見つめられるとグッときてしまいますね。
「大丈夫です、ただ燃費が悪いだけですから…安心してください」
「あ…は、はい…んっ」
安心させるように笑みを浮かべながら伸ばしてきていた手を握って指を絡めるのですが、触れた部分から無意識に精気を吸い取っているのかピリピリして気持ち良いですね。
こうしてグレースさんの手のひらを握っているだけで幸せが伝わって来るようで……指先の温かさが全身に広がっていくようにポカポカしてきて、グレースさんの柔らかい身体を確かめるように抱きしめてしまったのですが……このままだと本当に色々と不味いような気がします。
(一旦落ち着かないといけないのですが)
ゆっくりと深呼吸をしながらグレースさんの身体をまさぐるのですが、グレースさんとエッチな事をするのはグレースさんの純粋さに付け込んで手籠めにしているような罪悪感があるのですよね。
「あ、あの…ユリエルさん!?ちょっと、今は…はふぅん!?」
求めたら応えてくれるという安心感があってついつい無茶な事をしたくなりますし、軽く唇を重ねるようなスキンシップの後に赤面しながらキラキラと輝くグレースさんの無垢な瞳を見ているとこのまま押し倒したくなるのですが……こんなところを熊派や他のプレイヤーに見つかってしまったら恥ずかしいどころの話ではないですからね、ひと段落するまでは色々と我慢しなければいけません。
(楽しむためにももうひと頑張りする事にしましょう)
それに泣いている女の子を引きずり出す為にも戦況を押し返さないといけませんからね、『歪黒樹の棘』を斬り倒して戦況をひっくり返す事にしましょう。




