358:外れた予想
※少し時間が遡ってのスタートとなりますが、だいたいep.372~ep.373の熊派が襲撃を仕掛けて来た後くらいの時間軸の話となります。
熊派が動いたという情報を見てから急いでゲームにログインしたのですが、どうやら同じタイミングでまふかさんも繋いできて……いきなり通話越しに怒鳴りつけられる事になりました。
『ねえ、どうなっているの!?何で熊派が攻めてきているのよッ!?』
『わかりません…が、たぶんこちらの動きを読んだうえで押し切るつもりだと』
正直に言うとその辺りの事情を私に聞かれても答えようがないのですが、感情が高ぶっているまふかさんは一通り捲し立てた後に『あー』とか『うー』とイライラしたように呟いてから、少し冷静になったのか勢いがトーンダウンしていきます。
『怒鳴って悪かったわね…そうよね、あんたを問い詰めても……それより薬は手に入ったの?』
勝手にヒートアップして勝手にシュンとなるのはどうかと思ったのですが、その辺りを指摘しても面倒くさい事になりそうなのでこのまま流す事にしましょう。
『はい、それは大丈夫です…まふかさんの現在地は『臨時キャンプ地』のままですか?』
『そうだけど…ちょっと待っていなさい、今外に出るから…』
言ってからまふかさんは移動をしているようで、その間に私も近くに積み上げられていた木箱の上に乗って視界を確保します。
(牡丹)
(ぷっ!)
そうしてまふかさんを探している間に頭の上に乗っていた牡丹から『精霊樹の枝』を受け取りちょっとした事をお願いしておくのですが、牡丹はジーっと私の顔を見てきているノワールに飛び乗るとポヨンポヨンと揺れながら指示を出していて、しばらくすると2人の間で話し合いが終わったのかノワールは牡丹を背中に乗せたまま右前脚を振って離れていったのですが……何だか2人がとても仲良くなっているような気がするのですが、私の見ていない間に友情を深めるような事でもあったのでしょうか?
(と、今はそれどころではないですね……まふかさんは…いました)
監視役が居なくなった事で改めてまふかさんの姿を探すのですが……ちょっとした倉庫に使われていた小屋からまふかさんが顔を出しているのを発見したのでさっさと合流する事にしましょう。
「早かったわね…って、それは良いんだけど…蜘蛛達に見つかったら大変な事になるんだから、あんたも少しは隠れなさいよ」
まふかさんは状態異常のせいで情緒が不安定になっているのか落ち着きなく視線を左右に向けているのですが、見つかったら面倒になるというのはその通りなので必要なアイテムを枝から毟り取って渡しておきましょう。
「それじゃあ私はこのまま『隠者の塔』に向かいますので」
熊派の蹂躙が始まっていますからね、ネットの情報ではプレイヤー側が苦戦しているようなのでアイテムを渡したら急いで向かう事にしましょう。
「ちょっと待ちなさいよ、またあたしを置いていく行く気なの?治ったらすぐに……この葉っぱを食べればいいのよね?」
言いながらまふかさんは受け取った葉っぱをまじまじと見てからパクリと口の中に放り込むのですが、このタイミングで治療を開始して大丈夫なのでしょうか?
「何よ?あたしが居たら…不味い事でもあるの?」
そうしてモシャモシャと葉っぱを食べながらまふかさんは聞いて来るのですが、『精霊樹の葉』の効果は膣や子宮内の異物を排除すると言う感じなので色々と垂れ流しになってしまうという結構大変な状態になってしまうのですが、まふかさんはその辺りの事情を把握した上で葉っぱを食べたのでしょうか?
「そういう訳ではないのですが…治癒が始まったら結構大変な事になりますし」
私の場合はパワーアップした影響でより酷かっただけなのかもしれませんが、ネットの情報を見ている限りだと普通の葉っぱを食べた場合でも似たような状態になるようで……人前では食べられないというのが食べた人の感想なのですよね。
「ブッ…え、何?そんなに大変なの?そういえば何か気持ちよくなるとか…って、あんたは何て物を食べさせてくれたのよ!?」
「気持ちよくなるのも食べたのも私のせいでは…それより静かにしないと蜘蛛達に見つかってしまいますよ?」
「ッ…!?あんたね~…後で覚えておきなさいよっ!!』
後半をフレンド通話に切り替えながら怒るまふかさんなのですが、徐々に効果が出て来たのかお腹を押さえながらやや前傾姿勢になり……チョロチョロと膣内の内容物が溢れ出してくるのを我慢しているまふかさんは必死におしっこを我慢しているみたいで可愛らしいですね。
「まふかさん?」
少しだけ意地悪心がムクムクしてきたのでわざと素知らぬ顔で大丈夫かと聞いてみたのですが、必死に垂れ流さないように耐えているまふかさんは顔を真っ赤にしながら視線を彷徨わせていて、絞り出すように口を開きます。
『いいから、あんたは先に行くのよね…あたしもすぐに追いかけるから…って、これ本当にお腹が、ちょ、ちょっと待って…』
人前で盛大にお漏らしする訳にもいかないというように耐えているまふかさんは人気のない場所を探すように倉庫の中に戻っていくのですが、耐えれば耐えるほど絶頂に悶える事になりますし自力で止められるという物でもないですからね、ポタポタと垂れる液体が溢れて来る度に経験した事のないような快楽が通り抜けているのかまふかさんがカクカクとふらつきました。
「それじゃあ先に行っていますので」
このまままふかさんの痴態を眺めているというのも楽しいのですが、流石にそんな事をしている時間的余裕はないですし後が怖いので先に進む事にしましょう。
『え、ええ…あたしも落ち着いっ…たら、追いかける…から』
排出する時はかなり気持ち良いですからね、顔を赤く染めながら耐えているまふかさんはプルプルと震えていて……そんな可愛らしい姿を見ていると押し倒したくなるのですが、私はおもいっきり理性のブレーキを踏みながらノワールを連れてこの場から離れてくれている牡丹に声をかけておきます。
(こちらの用事は終わりましたので出発しますよ)
(ぷ!)
という事で牡丹とノワールを途中で拾ってから『隠者の塔』に向かうのですが、状況が良くわからないまま見守っていた淫さんが息を吐きました。
『何か厄介な事になっているようだな』
(そうですね)
3人からするといきなり戻って来た私から「敵が来ている」と言われたようなものですからね、よくわからない状態なのだと思いますが……まあブレイカーとはそういうものだと思っているのか特にツッコミは来ないのですが、それでも訳も分からず戦闘に突入するよりかはいいかとブレイカー同士のネットワークで熊派の襲撃を察知したみたいな事を説明しておきます。
『なるほど…そうか、あ奴らが動いたのだな』
(ぷー…)
牡丹と淫さんはキリアちゃんに会った事がありますし、我謝さんやカイトさんといった幹部クラスの人とも対面した事がありますからね、彼女達が本格的に動いた事を伝えると神妙な顔で考え込み……そんな話をしながら全速力で『隠者の塔』に向かっていると、その途中でスコルさんから連絡が入りました。
『やっほーユリちー、元気ー?』
その口調はかなり呑気なものだったのですが、このタイミングで話しかけてきたという事は熊派の動向についての情報収集なのでしょう。
『まあまあですが…熊派の事ですよね?』
なので色々な会話を飛ばして用件を切り出したのですが、スコルさんは『そうそう』と気軽な様子で話を続けます。
『おっさんも急行中なんだけど…大変なのよ、いきなり巨大スライムに襲われるわ作っていた橋は壊されるわでもうどうしようっていう感じなのよ』
そしてスコルさんが言うには魔導船に乗って『イースト港』までは来ていたようで、周囲に居たプレイヤー達と一緒に『隠者の塔』向かっている最中に巨大スライムの襲撃を受けてなかなか苦戦しているとの事でした。
(『イースト港』を出た所に居る巨大なスライムと言うと…ファントムジェリーの事ですよね?)
なにか私達のせいで多くのプレイヤー達が足止めを受けているような気がするのですが、これはもう不可抗力だという事で黙っておきましょう。
『もうほんと、おっさん達だと火力が足りなくてねー…このおっぱいボインボインのスライムちゃんがタフでタフで…ちょっとやそっとじゃ倒れないし、河の水分を補充して復活しちゃうし、どうしようってなってるのよ』
そして状況を説明してくれるスコルさんなのですが、女性に対しておっぱいボインボインのスライムが居るという事を話すのはセクハラではないのでしょうか?それともそんなスライム娘を生み出してしまったのが私の魔力だという事を超次元的な察しの良さで理解してしまい鎌をかけてきているのでしょうか?
『大丈夫よ-おっさんはユリちーのおっぱいの方が好きだから、この程度のボインには負けないわ!』
そんな心配をしているとより酷いセクハラ発言が飛んできて目を細めてしまったのですが……スコルさんはその事を私に伝えてどうしたいのでしょう?
『スコルさんの性癖は聞いていませんが?』
思いのほか冷めた声が出てしまったのですが、笑って誤魔化すスコルさんは話を変えるように熊派の動向やらネットの情報を分析した結果などを話してきて……お互いの情報を共有した後に話を締めくくりました。
『それじゃあおっさんは戦闘に戻るから…って、そうそう、向こうにグレグレも居るみたいだから、出来たら助けてあげてくれない?あと向こうは結構大変な事になっているみたいだから、ユリちーも気を付けてね』
『グレースさんが?ええ、わかりました…スコルさんも気を付けてください』
そうして通信が切れたのですが、熊派に襲撃されている『隠者の塔』にグレースさんがいるというのなら大変な目にあう前に助けに行かないと不味いかもしれないですね。
(そう思うこと自体がスコルさんの手のひらの上というような気がするのですが)
たぶんセクハラ発言自体は冗談と言いますか掴みみたいなもので、用件としては熊派の情報交換とグレースさんの救援要請が本題だったのでしょう。
そんな事を伝えるためにわざわざセクハラ発言をする必要性がよくわからないのですが、そこはまあスコルさんなのであまり深く考えても仕方がないのかもしれません。
それよりグレースさんの事が心配なので急ぐ事にしたのですが……というのもグレースさんは1対1ならそれなりに良い動きをするのですが、次の動作や周囲への気の配り方とかが素人同然で乱戦に弱いという弱点がありました。
まあその辺りの欠点を私がとやかく言っても仕方がないですし、グレースさんなりに頑張っているので褒めるべき点の方が多いのですが……とにかく私達は気合を入れなおしてから先を急ぐのですが、毀棄都市横の地下通路を抜けて坂を登った辺りで『隠者の塔』が見えてきて、戦場全体を見下ろしながら私は息を飲みます。
『これは…酷いな』
淫さんが思わずというように呟くのですが、そう呟きたくなるのも仕方がないという惨たらしい光景が眼下に広がっていて……熊派に対する反攻の一大拠点となっていた『隠者の塔』には悲鳴と罵声が溢れていて、光の消えた『リュミエーギィニー』の周囲には歪で不気味な巨大な黒い茨が蠢き夥しい数のモンスターが犇めき暴れ回っていました。
※ユリエルが『精霊樹の葉』を食べた時の反応はep.235にありますが、結構大変だったようです。
※ちょっとだけ修正しました(4/19)。




