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343:霧の中の接触

※358部の『蒼色の根』にてユリエルはアルディード女王の胸に触りたいみたいな感想を追加しています、また359部の『『蒼色のサンダル』とこれから』で淫さんが言い淀んだところの会話を修正しましたので今回の会話ではそういう修正があったという事を前提にお読みください。

 昼食から戻って来た私達は細かな消耗品を買い揃えてから出発する事にしたのですが、スルリとした分厚いビニール越しのような奇妙な感触と共に何とも形容しがたい感覚が足を覆ってウゾウゾしていますし、歩いた時の押し潰された蔦が暴れている感覚がなかなか癖になりそうですね。


(改めてこのサンダルで歩くとなるとなかなか大変ですね)

 勿論【淫気】で防いでいるので笑いだしてしまう程ではないのですが、一度おもいっきり擽られた後だからなのか何となく擽られているような気がして笑ってしまいそうになりますし、ソール部が常にウゾウゾと蠢いているので歩きづらい事この上ないですし、未舗装の道にソールを適応させながら歩く事になるのでなかなか神経を使います。


(淫さん)

 なのでその辺り(ソール部)の制御を淫さんに任せようとしたのですが、頼まれた方はただただ溜め息を吐いて嫌そうな顔をしました。


『我は頭の上のスライムと違って召使と言う訳ではないのだぞ?まあ変に足でも挫かれたら面倒だから手伝うのはやぶさかではないが……それより結局どうするつもりなのだ?』

 そうして結局文句を言いながらも手伝ってくれる淫さんのツンデレが発揮されるのですが、どうするというのはどういう事なのでしょう?


『どうもこうも無いだろう…当初の目的通り蜘蛛達に会いに行くのか、それとも秘宝を持ち出した熊派とかいう連中を探すのかという意味だ』

 『やはり聞いていなかったのか』みたいにもう一度溜め息を吐く淫さんなのですが……そういえばアルディード女王達が何か言っていたような気がしますね。


(そういえば…そんな事を話していたような?)

 笑いをこらえるのに必死すぎて聞き流していたのですが、淫さんに指摘されてから改めて確認すると『アルディード女王への報告』というクエストが完了しており、代わりに『奪われた宝物(ほうもつ)』という『隠者の塔』周辺で暗躍している熊派から『エルフェリア』の秘宝を奪還するクエストが発生していました。


『お前は……いや…もういい』

 そして何か色々と諦めた淫さんなのですが、うっかり聞き逃していた事をわざわざ教えてくれるくらい淫さんとも仲良くなってきた事が感慨深いですね。


 まあその事を指摘するとへそを曲げそうだったので敢えて口にはしなかったのですが、そんな事を考えているのが伝わってしまったのかおもいっきり顔を顰められました。


『お前が危なっかしいから心配なだけだ…我も一緒に被害を受けるというのに奇妙なサンダルは履きたがるわ頭の中はピンク色のお花畑だわ、先程のエルフの女王にも飛びかかるんじゃないかとヒヤヒヤしたぞ』

 そんな事を言う淫さんなのですが、流石に同意もなくあの胸に触ったら怒られそうなので自制くらいはします。


(その辺りはちゃんと弁えていますよ?)

 犯罪を犯す(セクハラで捕まる)と捕まって監禁される(牢屋行き)可能性がありますからね、イベント(ワールドクエスト)が進んでいる時にあえて長時間拘束されたいとは思いません。


『………』


(ぷー…)

 なのですが、何故か淫さんと牡丹はいまいち信じられないというような視線を向けて来て……1対2とやや形勢が不利なので私は話題を変える事にしました。


(それよりこれからの事ですが……予定通りレナギリーの元へ行こうと思います)

 熊派から秘宝を奪還するクエストの方には期日が決められていませんし、どちらを優先するかと言われたら熊派が動く前に接触しておきたいレナギリーの説得の方が急務です。


 それに熊派はレナギリー達と小競り合いをしている訳ですからね、『臨時キャンプ地』を目指していればおのずと接触する事になるでしょうし、秘宝を奪還できるかはその時の状況やら戦況をみてから判断しようと思います。


『まあ…そうだな』


(ぷっ)

 そんなあからさまな話題逸らしに一瞬呆れたような空気を漂わせた2人なのですが、いつまでもしつこく私を責めていても仕方がないと言うように淫さんが同意し、牡丹も「問題なし」と頷いたところで私達は『クヴェルクル山脈』の麓にある『リュミエーギィニー』の林を抜けて『臨時キャンプ地(レナギリー達の拠点)』を目指す事にしたのですが、『クヴェルクル山脈』の麓辺りで熊派が何かしていたという『リュミエーギィニー』を発見しました。


(犯人は現場に戻って来ると言いますが…流石に熊派の人達は居ないようですね)

 元から枯れていた『リュミエーギィニー』から少し内側(『隠者の塔』側)に入った所の『リュミエーギィニー』が新しく枯れていたり変色したりしているのですが、いったい熊派の人達は何がしたいのでしょう?


(流石に今から割って調べるのもなんですし、後回しにしましょうか)

 その周辺をエルフの兵士達や調査に来ているプレイヤー達がウロウロしていなければ少しくらい調べてみようかと思ったのですが、『リュミエーギィニー』を調べていたプレイヤー達がこちらを指さしながら「天使ちゃんだ!」とか言っていたので騒ぎになる前に離れる事にしましょう。


(後は…)

 そのまま毀棄都市方面に向かう地下通路を目指すのですが、途中から薄い霧が広がっていたりと霧の範囲も広がっているようですね。


 この霧の中で調べ物や調査となるとなかなか骨が折れたのかもしれませんが、地下通路の位置はわかっているので問題はありませんし、途中ジェリーローパーが通路の裂け目から触手を伸ばして襲ってきたのですが……数も少なく断続的に襲ってくる程度なので問題はありません。


(とはいえ、すべての敵を【淫気】だけで処理するのは難しそうですね)

 相手がゴブリンだと特攻が入って絶命させられるのですが、ジェリーローパーが相手だと通りが悪いような気がしますし……装甲(防御力)以外の相性みたいなものがあるのでしょうか?その辺りは要検証なのですが、さっさと片付ける場合は『ベローズソード』か『魔嘯剣』での接近戦をしなければならず、そうなると当然被弾するリスクが増える訳で……そのあたりはケースバイケースで対応していく事にしましょう。


 まあ時間をかけて戦っていられたのも余裕の裏返しですし、特に大きなトラブルもなく地下通路を越えて毀棄都市周辺までやって来たのですが……ここから先は熊派に占領されている地域(セントラルキャンプ側)か、暴れているレナギリー達か、難易度の上がった毀棄都市か、ミューカストレントの根っこに破壊された橋しかありません。


 なので他のプレイヤーもわざわざやって来ないような場所になっていますし、ここからは見通しの悪い霧が広がっている森の中を進む事になるので一旦地下通路(警戒方向が前後のみ)で休憩してから慎重に進む事にしたのですが……そろそろ毀棄都市が霧の中に見えてくるというタイミングでまふかさんがログインしてきて連絡が入りました。


『あ、やっと繋いだのね…ほんと、何やってんのよ……アイテムを取りに行くだけなのに時間をかけすぎじゃない?で、どうだったの?使えそうなアイテムが貰えるの?』

 ログインとログアウトを繰り返していたのはまふかさんも一緒(「やっと繋いだ」)なのですが、そんな風にいきなり用件を切り出して来たまふかさんの言う「アイテム」とはアルディード女王から貰った『蒼色のサンダル』の事ですね。


『問題なく入手できましたが……』

 そして私は『蒼色のサンダル』の性能をまふかさんに伝えたのですが、どうも反応が悪いような気がしました。


『そう、やっぱり碌でもないアイテムが貰えるのね…ってなると何を願うかは厳選しないといけないんだけど、あー…もう、配信で貰うって言っちゃったから今更嘘でしたなんて言えないし…どうしようかしら』


『碌でもないって…別にそれほど悪いアイテムでもないと思いますよ?』


『あたしはあんたみたいに頭の中がお花畑じゃないの!何よ擽り続けられるサンダルって!馬鹿じゃないの!?』

 まるで自分が擽り続けられるサンダルを貰ったというように怒りを爆発させるまふかさんなのですが、ちゃんと対策(【淫気】保護)さえすればそこまで文句を言うほど酷い装備でもないような気がするのですよね。


『性能は悪くないですし…』

 淫さんが制御してくれているので細かな凹凸に対応してくれますし、霧の中という湿気た森の中でも滑らないだけのグリップ力を発揮してくれるところが魅力的だと思います。


『性能以前の問題なのよ!?てかあんたは性能を重視しすぎなのよ!何でもうちょっと見た目とか世間体とか気にしないの!?』

 との事なのですが、何を重視するかは人それぞれだと思いますし……まあその辺りの事を説明しても余計に怒られるような気がしたので聞き流しておく事にしたのですが、まふかさんは一通り文句を言ってスッキリしたのか唐突に話題を変えてきました。


『それで、サンダルを入手したって事は女王の近くにいるのよね?』


『いえ…今はレナギリーの説得をしようと毀棄都市の近くまで来ていますが』


『なんであんたはいつもいつも1人で行こうとするのよ!?』

 『なんであたしを誘わないのよ!?』みたいな事を叫ぶまふかさんなのですが、誘うも何もログインしていなかったので仕方がありません。


『連絡しようにも繋いでいませんでしたし…それに牡丹達も居るので1人じゃないですよ?』


『ッ…そいつ(テイムモンスター)は数に数えなくていいのっ!!』

 ログインしていなかった事を指摘されたからなのかグッと押し黙った後に怒鳴り声を上げるまふかさんなのですが、その言葉が何となく聞こえていたのか牡丹と淫さんが無視されたというように不機嫌になっていき……まあ2人ともまふかさんがそういう性格だとわかっているのでイラっとした程度なのですが、牡丹あたりは次会った時にペシペシと叩くくらいの悪戯はするかもしれませんね。


『あの、あまり本人達に聞こえる場所でそういう事は……』


『ぷっ!』


『おい、あそこ!』

 そんな事を考えながらプリプリと怒っているまふかさんを宥めようとしたのですが、牡丹と淫さんから強めの注意喚起が飛び、私達は武器を構えました。


『少し待ってください……あれは?』

 そうして牡丹達の示す方向を見てみると霧の中で何かが動いていたのですが、武器を構えた複数の人影と……大量の蟲?


『すみません!怪しげな人影を発見したので一旦通信をきりますね!』


『って、ちょっと何よ!?ああもう!あたしもすぐアイテムを貰って追いかけるから、そこで待って…』

 まふかさんはまだ何か言っていたのですが、私はまふかさんとの通信を切りながら近くの茂みの中に潜み、霧の中に居る怪しげな人影に近づいていきました。

※その言葉が何となく聞こえていたのか → 牡丹達はまふかさんからの通信は聞こえませんが、ユリエルの考えている事はわかるので何となく会話の内容が理解できるようになりました。


※少し修正しました(3/6)。

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