337:情報の整理と戦況とスキルの調整
アルディード女王は色々と多忙であるという事で早々に立ち去ってしまったのですが、彼女が語った情報は驚きに満ちていて私達は今後の方針について話し合う事になり……とはいえ『精霊の幼樹』関連の話を知った上で殲滅ENDを目指すというのもどうかと思うのでレナギリーとの和解を目指すルートを目指そうという事になったのですが、ただの1プレイヤーでしかない私達が勝手に方針を決めたとしても他のプレイヤーが動いてくれるかはわからないですからね、とりあえず『精霊の幼樹』の話を他のプレイヤーに伝えてレナギリー達と和解が出来る事をネット上にあげる事になりました。
「私達も知り合いに声をかけて出来るだけ動いてみる事にしよう、その代わり情報の拡散は任せていいか?」
「ええ、お任せておきなさいって、そっちはあたしがやっておくわ」
「では私も手筈通りに」
との事で、情報発信力のあるまふかさんが広めてリンネさんも知り合いに声をかけて対応してくれる事となり、アルディード女王曰く「倭東人の力をその身に宿している」という私は熊派を攪乱させる為にもレナギリーとの接触を目指す事になったのですが……たぶんこの設定はイベント前に幼樹まで辿り着いていた人へのご褒美みたいなものなのだと思いますが、上手くいけば熊派の妨害が私に向いて他の人が動きやすくなりますし、妨害が無かったら無かったらでレナギリーと接触して和解の道を探れたらという感じですね。
その上でキリアちゃんが出て来てくれたら私としては言う事が無いのですが、流石に徹底的に私を避けているようなのでこちらから追いかけなければいけないのだと思います。
とにかくそんな話し合いや打ち合わせを終えるとそれなりにいい時間になっていて……流石に毀棄都市に侵入した後にワールドクエストが発令されてから安全な場所に移動してとなるとそれなりの時間が経過していますからね、今日のところはこれくらいでという事でお開きになりました。
「それじゃあ今日あった事は編集してネットに上げておくけど…あんたは録画とかしていないの?そっち側の視点があれば面白そうなんだけど」
これから編集だというまふかさんは色々と面白い映像が撮れたからなのかホクホク顔でそんな事を聞いてきたのですが……流石に壊れたらSPを消費して修理しないといけないカメラを戦闘中に展開している余裕がないのですよね。
「すみません、流石に録っている余裕が」
「そう?あんたなら撮れそうな気がするけど…まあいいわ」
まふかさんはあっさりと引いてくれたのですが、その辺りは人外特有の問題と言いますか、私の場合は淫さんに一部を任せているとはいえ魔力感知と翼の制御とドレスの操作と【オーラ】の制御をしつつ戦闘行動をとるというアクロバティックな事を行っているのでそれ以外の事に処理能力を割く余力がありません。むしろカメラに意識を割く余裕があるのならもう少し尻尾を戦闘に活かしたいと思っているのですが……人体に無い器官を動かそうとするとそれだけで神経を使うので難しいのですよね。
「今日はお疲れ様です、グレースさんもまた」
「あ、はい…えっと…今日みたいに足手まといにならないように頑張りますから…もっと頑張るので見捨てないでくださいッ!」
そんな話をしながらログアウトしていくリンネさん達とまふかさんなのですが、話の流れについて来れなくて「私はどうすれば?」みたいなオロオロしているグレースさんに声をかけておいたのですが、そのやる気は買うのですが少し方向性が違うような気がするのですよね。
「グレースさんの場合は生き残る事を考えてくれた方が良いかもしれませんね、ヒーラーは生きているだけで安心材料になりますから」
たぶん素のスペックという意味では私以上のまふかさん並だと思うのですが、種族補正やらスキルの効果を入れた場合はどうしても私達と比べて見劣りしてしまうのですよね。それを補う経験や技術というのもまだまだですし、まずは生き残る事を優先してくれたらかなりの戦力になってくれると思います。
「そう…ですね!わかりました、が、頑張りますっ!!」
グッと両手を握り情熱を燃やすグレースさんは自分がゲームを始めた時のような初々しさがあって可愛らしいのですが……とにかくそんな話をしている間にアルディード女王から貰った通行証を持った牡丹の買い物も終わったようですし、私もそろそろログアウトする事にしましょう。そうしてリアルの用事を終わらせてから就寝し、次の日の朝、朝食を食べた後に戦況が気になって繋いでみたのですが……ワールドクエストが発令した後という事で一部の熱心なプレイヤー達が徹夜で頑張っていたようですね。
そして夜の間に進んだ情勢としては、まずキャンプ勢が無事に橋を作り終えて『イースト港』組に合流すると魔導船を動かして第一エリアに向かったそうなのですが、操縦が手動だった事もありなかなか苦労したみたいですね。その動きに合わせて蜘蛛達も『臨時キャンプ地』辺りまで進出し、熊派が『ギャザニー地下水道』までの道を確保して第二エリアの西半分が制圧されてしまいました。
ここまではほぼ既定路線に近いのでこれからどう動いていくかなのですが、流石に徹夜組もバテてきたという事もありますし世間一般的には日中の接続率が下がるのが常ですからね、プレイヤー側も熊派も一時的な小康状態となり本番は接続率が上がる夕方からといった感じなのでしょう。
因みに私達が伝えた情報と合わせてまふかさんの動画もバズっていたのですが、元からレナギリーとは和解しようという派閥が大きかったですからね、無難に『精霊の幼樹』を確保しようという動きが出来ているようでした。そうなると熊派の妨害工作が激しくなりそうなのですが……こうなるともうどこまで彼らの足止めを出来るかにかかってきているのかもしれませんね。
(そういう訳ですので)
繋いだ後にやって来たのは『隠者の塔』からやや西に進んだ先にある岩山の中で、レナギリー達や熊派との接触を目指す前にスキルの調整をしておこうと思います。
(ぷー)
(そうですね)
今回は牡丹のスキル調整もあるのでサクッと進めていきたいのですが、まず新しくスキルレベルがMAXになったのが【看破】【ドレイン】【鞭】【オーラ】【羽ばたき】【ポーカーフェイス】の6つで、すでにレベルがMAXだったのが【魔人の証明】【見切り】【魔力視】【鞄】【尻尾】【扇動】【感覚上昇(微)】【テイミング】【魅了】【蠱惑】【意思疎通】【精神対抗(微)】の12個です。
レベル9が【収納/展開】【暗視(弱)】【短剣】【収納術】【跳躍】の5つ。
レベル8が【解体】【ダブルアタック】【目利き】【魔力増強(微)】の4つ。
レベル7が【秘紋】【魔水晶】の2つ。
レベル6が【人外化】【水魔法】【呪印】【搾精】の4つ。
レベル5が【翠皇竜】【媚毒粘液】の2つ。
レベル4が【ルドラの火】【夢魔】【淫装】【発情】【神隠し】【絶倫】の6つ。
レベル3が【召喚言語】【錬金術】【剣舞】【魔翼】【魔力創造】【エナジーパワー】【蹴撃】【フェロモン】【催淫】【籠絡】【電撃】【マジックミサイル】の12個です。
レベル2が【輪唱】【バイオアブソープ】の2つとなり、この中でレベルが上がっていないのが【召喚言語】【ダブルアタック】【錬金術】の3つとなります。
そして新しくレベルがMAXになったスキルの上級スキルについてなのですが、【看破】は【慧眼】となりやや【鑑定】寄りの能力が付与されるようなので、取得していると何かと便利なスキルなのかもしれません。
【ドレイン】は【吸精】となり精気を奪えるのは【搾精】と似ているのですが、あちらが空腹度の回復だととすれば【吸精】はMPの回復に特化しているという感じで、ついでのようにHPとスタミナが回復するというスキルのようでした。
【鞭】は【蜿々長蛇】となり、本来の意味では行列などがウネウネと続くというような意味なのですが、スキルレベルによってある程度任意で動かせるようになったり得物の射程を自由自在に伸ばせるようになったりするスキルのようですね。
そして【オーラ】は【淫気】となるのですが……これはどうなのでしょう?【オーラ】がかなり使えるスキルなのでその上級スキルは取得しておきたいと思うのですが、説明的には空間に作用する広範囲のスキルのようですし、固めて攻防一体の戦闘に使えるスキルだったら取得も有りだと思います。
続く【羽ばたき】は【飛行】となり翼を動かさなくても空が飛べるようになるのですが……これも取得するか少し悩みますね。魔力で飛べるようになるので【魔翼】に近い感じなのでしょうか?余裕があれば取得しようとは思うのですが、現時点では【飛行】に割くSPがありません。
最後の【ポーカーフェイス】は【泰然自若】となり、どのような状況に陥っても落ち着いて対処できるようになるスキルという事なのですが……下手にレベルMAXの【ポーカーフェイス】が崩れても大変な事になりそうですし、これも状況を見ながら取得してみる事にしましょう。
そういう訳でスキルレベルがMAXになっているスキルは18個で私の残りSPは6、後々取ろうと思っていた【魔人の証明】の上位スキルである【淫魔の証明】は魅了関連のスキルを上げる効果がありますからね、スキルを一つ一つ上げていくのはSP的に難しいので基礎となるスキルを上げて全体的な底上げをするのは良い考えなのかもしれません。
【鑑定】系の能力も付与される【慧眼】も単純に便利そうですし、HPやMP管理用の【ドレイン】も上げておいて損はないのかもしれません。攻撃の主軸となっている【鞭】も上げておきたいですし、【オーラ】もまあ……取得しておきましょう。これで残りSPが1になるのですが、流石に全部使い切ってしまうと何かあった時に怖いですからね、今回はこれくらいにしておこうと思います。
「ぷー」
そして牡丹のスキルに関してなのですが、現在のスキルは【鞭】がレベルMAX、【ドレイン】が6、【大盾】が8、【筋力増強(微)】が9、【鞄】が6、【投擲】が5、【跳躍】が5、【搾精】が2、【隠陰】が3となります。
気が付けば牡丹の【鞭】スキルもレベルがMAXになっているのですが……最近はロープを振り回すのが気に入っているようですし、このまま【蜿々長蛇】まで上げてしまっても良いのかもしれませんね。
そうなると残りSPは1ポイントなのですが……【鞭】スキルを使い込むようになる前までだったら【短剣】か【片手剣】で火力アップを考えていたのですが、今回は後回しにしておきましょう。そして魅了関連のスキルも私程使用する機会がありませんし、下手に牡丹が人目を惹くようになったら買い物やら細々とした雑用にも支障をきたしてしまいますからね、出来たら戦闘寄りのスキルを取得させようと思います。
(何が良いでしょう?)
(ぷー?)
そして牡丹と一緒に考えてみたのですが……そうですね、最近は敵の数も多くなり囲まれる事も増えてきましたので【電撃】あたりを取得しておきましょうか。
(これで良いですね)
結果、私は【淫魔の証明】【慧眼】【吸精】【蜿々長蛇】【淫気】を取得し、牡丹は【蜿々長蛇】と【電撃】を取得をしておく事にしました。これで後は新しいスキルの使い心地を確かめてからアルディード女王にアイテムを貰いに行き、それから自 炊をしてお腹が膨れたらレナギリーの元へと向かう事にしましょう。




