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328:『両者の狭間』とその影響

 急成長するミューカストレントの木の根から逃げ回り、何とか毀棄都市を脱出する事が出来たのはいいのですが……もう辺りはパニック状態ですね。


 ネットの情報を確認してみると『蜘蛛糸の森』で謎の爆発があったとか熊派が攻めてきたという話があったかと思えば『セントラルラ(王都)イド』や『アルバボッシ(最初の町)ュ』で大量の蜘蛛が湧き出て来て住人達を襲い始めたという情報が出て来てきたりと、時間がたてばたつほど錯綜していき騒ぎが大きくなっていくようでした。


 そんな状況の中、私も毀棄都市であった事を少し(キリアちゃん周りは)ぼかして攻略掲示板に書き込んでおいたのですが……熊派が真偽不明の欺瞞情報を流しているので信じてくれるかは不明ですね。まあ詳しく説明をする前にあちらこちらから連絡が入り書き込みどころではなくなってしまったのですが、後は検証班の人達に丸投げする事にしましょう。


『ユリちーって今第二エリアよね?何かすんごい事になっているみたいなんだけど、大丈夫だった?』


(ぷーうぷーぷー!!)


『やっと繋がった!ねえ、あんた今どこで何やってるのよ!?こっちはもう大変なんだから、さっさと戻って来なさいよ!!』


『ユリエルさん!?ユリエルさんと繋がったんですか!?大丈夫ですか!!?』


『ユリエルちゃーん、いきなりで悪いんだけど今どっち(第一?第二?)に居るのかな?』


『ねえユリエル~今すごーく大変な事になっているんだけど、何か知らない?』


『あ、あの…ユリエルさんは第二エリアにいるんですよね?何か大変な事になっているようですが、ご無事ですか?』

 というように、通信可能範囲に入った事で知り合いから問い合わせの通信が入ったのですが、安否確認のスコルさんやHMさんには無事を伝え、情報収集をしていると思わしきナタリアさんやウィルチェさんは個別に対応をしている時間が無かったので情報を攻略掲示板に上げている事を伝えました。そしてクランメンバーでありPTメンバーである牡丹やまふかさんやグレースさんには事情を簡単に説明した後に合流する事になったのですが……今は3人とも『セントラルキャンプ』()()の場所に居るのですよね。


 これまた中途半端な位置なのですが、なんでも南から蜘蛛(レナギリー)達が溢れてきたかと思えば西からはデファルセント(エリアボス)の影響を受けたモンスター達が大量に殺到して来てと、早々にキャンプ地の防衛線を抜かれてしまい他のプレイヤー達や騎士(N P C)達と一緒に退避中なのだそうです。


『よがっだ~ユ゙リエルざんが連れていかれてから私、わ゙たじーっ!!』


『だからあんたはいつまで泣いて…あーうん…そう…この子(グレースさん)も泣き止まないし…ほんと、何とかしてよ…』

 とにかく泣き止まないグレースさんを引っ張ってまふかさんも退避中らしいのですが、街道沿いまでモンスターが溢れてきているのでなかなか進む事が出来ないみたいですね。


 そういう感じで色々と情勢が動いたのですが、検証班などがワールドクエスト(『両者の狭間』)の詳細を攻略掲示板に転記してくれたり情報を纏めてくれたりしていたので、私は私で3人と合流するまでの間に情報収集をする事にしましょう。


(それにしても…色々と酷い状況ですね)

 そして色々と調べてみた結果なのですが、まず第一エリアはレナギリーの卵を植え付けられていた人達から大量の子蜘蛛達が生まれて大混乱に陥っているようで……一度植え付けられた事のある私からすると何故あんな物をそのままにしていたのかはよくわからないのですが、疑似妊娠プレイと言いますか何と言いますか、なんだかんだと言ってそのままにしていた人がいたそうです。


 そしてその卵を植え付けられていたプレイヤーの数に応じて被害を受けていた住人がいるという判定(設定)になっていたようで、プレイヤー1人から数十匹の子蜘蛛が生まれると住人(NPC)から百匹近い子蜘蛛が生まれてと、溢れる子蜘蛛達によって第一エリアは阿鼻叫喚の地獄絵図になっているようでした。


 とはいえ対処不可能という訳でも無いようですし、スコルさんやシグルドさんなどのトップ層が第一エリアにも居ますからね、第一エリアは第一エリアで頑張ってもらう事にしましょう。


『いやーでも結構時間かかりそうよ?なんたってモモちーとかのベテラン勢が結構居ないし、これはちょっとおっさんも本気を出さないとまずいかな?』

 冗談のようにそんな事を言うスコルさんなのですが、まとめ役ともいえるモモさんなどのプレイヤーが第二エリア解禁からのごたごたで大量に引退してしまっていて……あそこはチームワークで頑張るタイプのクランを結成していましたからね、モモさんをトップにした男女比率の偏っていた事もあり色々とメンバー内でトラブルがあって内部分裂してしまったそうです。


 そういう戦力低下(ベテラン勢の引退)はあるものの、スコルさんが言うには『たぶん第一エリアに居るプレイヤーだけでも今日か明日には制圧が終わるんじゃない?』との事でした。そう、第二エリアに居る私達からすると第一エリアに居るプレイヤーの頑張りに期待するしかない状況になっていたのですが……というのもセントラルキャンプがレナギリー達に制圧されてしまった事もあり、現在エリア間を移動する為のポータルが使えなくなっていました。その為第二エリアに居るプレイヤー全員に向けてキャンプ地奪還のクエストが発令されているのですが……進捗は良くないようですね。


 こうなるともうポータル以外の方法でエリア間を移動した方がいいのかもしれませんが、第二エリアの東端(『イースト港』)から第一エリアの西端(『ウェスト』)の間には流れの速い海流が流れている海峡になっていて、普通の船では『海嘯蝕洞(ダンジョン)』に流れついてしまいます。


 それを無理やり突破する事が出来る魔導船(まどうせん)が『イースト港』に隠されていたらしいのですが、なんでも既定の魔力を込めた後にその力を一気に噴射して無理やり海流を乗り越えるという仕様(ごり押し)のようで……必要魔力はプレイヤー換算で500人分、種族MPにもよるのでこの人数は正確ではないですし、一致団結すればすぐに溜められる量のような気がするのですが……混乱している状況ではMP要員を確保するだけでも大変なようですね。


 因みにそれ以外の戦況なのですが、『毀棄都市ペルギィ』は巨大なミューカストレントがウネウネしている地獄と化していますし、それ以外の『歪黒樹(わいこくじゅ)の棘』があった所も軒並み壊滅状態、『蜘蛛糸の森』が魔王軍(熊派)の手に落ちるとそこに住んでいた蜘蛛達が追い立てられるように『セントラルキャンプ』までやって来て、戦力増強のためなのか手当たり次第に人を襲って卵を植え付けていたりとなかなか凄い事になっているようでした。


 そして蜘蛛達の猛攻に曝される事になった『セントラルキャンプ』周辺に居た人達はその勢いに飲まれるように押し出されてしまい、当初はそのまま『エルフェリア』に逃げ込もうとしていたようなのですが……『ギャザニー地下水(途中の通路)道』には巨大な『歪黒樹の棘』がありますからね、周辺一帯は早々に陥落しており、結界を破られてしまった『エルフェリア』の住人達は更に北側にある『隠者の塔』に逃げ込んでしまっていたそうです。


 そのため『セントラルキャンプ』から這う這うの体で逃げ出した人達は唯一の逃げ道であった北東方面に向かって撤退する事になったのですが……毀棄都市(北東の町)周辺まで行くとミューカストレントが暴れていますからね、身動きが取れなくなった後は『臨時キャンプ地』を作って周囲からの猛攻に耐えながら何とか抵抗しているようですが、ジワリジワリと押されているのが現状ですね。


 そしてこれらの勢力図の変化に伴いセーブ地点が強制的に変更されたのですが、私のように毀棄都市周辺から東側に居た人は『イースト港』に、牡丹達のように『セントラルキャンプ』や『蜘蛛糸の森』周辺に居た人達は『臨時キャンプ地(臨時拠点)』に、『エルフェリア』周辺と『ディフォーテイク大森林』辺りに居た人達は『隠者の塔』がセーブ位置になったようです。


 システム(仕様)的な話をもう少しすると『セントラルキャンプ』が突破されてしまった事でクラン(ユリエルユニオン)の活動拠点がなくなってしまいましたからね……まあ流石にワールドクエストの影響なのですぐさまクランの解散とはならないのですが、自動解散される前に再設定をする事にしましょう。


 とにかくそういう訳で、第二エリアに居る私達ブレイカーの活動拠点はその三つ(臨時拠点、塔、港町)に集約される事となり、各地を結ぶポータルも使用不可になってしまったのですが……一番の問題は購入できるアイテムの数に制限がつけられてしまった事ですね。


 W M(ワールドマーケット)にも制限がついてしまい、今はエリアごとに管理されているので第一エリアで出品された物は第二エリアから買えなくなってしまいました。


 そういう物流の滞りもあり、もしかしたら【錬金術】持ちの私にもそのうちポーション制作の依頼がくるのかもしれませんが……それは情勢を見て判断する事にしましょう。


(後は…)

 最初の数十分はバタバタとしながら情報を収集するだけだったのですが、落ち着いてくるにつれて熊派の情報も出てきて……私が調べてみた限りでは、キリアちゃんへのヘイトが思った程でもなかったのが唯一の救いですね。


 というのもキリアちゃんは大半の人からイベントNPCと認識されているようで、怒りの矛先がキリアちゃん本人よりもこんなワールドクエストを仕組んだ運営側に向いているようでした。まあ幼女ペロペロ勢という訳の分からない人達が生まれているのですが、その辺りは私も似たようなものなので気にしない方がいいのかもしれません。


 とにかくキリアちゃんに対する評価はそんな感じなのですが、逆に多くのプレイヤーから恨まれる事になったのがいわゆる熊派といった寝返ったプレイヤー達で、こちらは中身のあるれっきとした人間ですからね、明確な裏切り者としてヘイトが向けられているようでした。とはいえ熊派に所属している人の大半は人外系ですからね、人類側でプレーするには色々と制約があったりPKも辞さないという人達が多かったりでヘイトを向けられてもといった感じらしいです。


 とにかくそんな熊派主要な人物の情報が出ていたのですが、まず熊派筆頭と目されているのがハイオークのカイトさんで、真面目な良識派なのだそうです。熊派(事実上のPK集団)に所属していながら良識派?という事に疑問符が付きますが、所謂熊派のブレーン的な存在なのだそうです。


 2人目は四メートルもの巨体を持つレッドジャイアントのギガントさんで、この人は熊派の先鋒なのか嬉々として『蜘蛛糸の森』に攻め込んでいる動画がネットにあげられていました。


 3人目は人間ながら愉快犯的に熊派に参加しているレイブンさんで、わかりやすいPKプレイヤーの人ですね。


 そして4人目がアイアンスケルトンの我謝さんなのですが、彼らは熊派四天王なんて言われており、大量のモンスターを率いながら人類に襲いかかっているのですが……これからそんな人達と戦いながら第二エリアを何とかしていかないといけないですが、まずはどこから手を付けていきましょう?

※少しだけ魔導船の補足です。ネットゲームで500人チャージだとすぐに集まりそうなものですが、そもそも第二エリアに居るプレイヤーの数はアクティブユーザーの約半数程度で、その内訳は『臨時キャンプ地』に6割、『隠者の塔』に3割、『イースト港』には1割程度とそもそも『イースト港』に到達しているプレイヤーの数が物凄く少ないです。明確な一例をあげるとするとユリエルですら未到達であり、数少ない到達者も防衛戦の真っ最中なのでまだまだ動く気配はありません。

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