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324:vsキリアちゃん(前編)

 毀棄都市の最奥にある奇妙な黒い枯れた大樹の麓で対峙する事になったキリアちゃんは何かに怯えているような様子で、視野狭窄に陥っているのか言っている事がやや支離滅裂だったのですが……そんな彼女をこのまま放置しておく訳にはいきませんね。


(落ち着いて、こういう時こそ冷静に)

 木の根っこに雁字搦めにされている状態ではゆっくりと説得する事すらままならないのですが、こちらまで感情的になったら説得できるものもできないと一度深呼吸をしました。


(敵対しそうなのはキリアちゃんと、狂化ゴーストと…後は様子見のようですね)

 たぶん周囲のモンスターが襲ってこないのは私を死亡させない(リスポーンさせない)為だと思うのですが、攻撃を無理やり止めている(待機状態にしている)影響が出ているのか操作が手動(行動指示が必要)になっているような気がします。


 そこに付け入る隙があるのかもしれませんが、油断したところを一斉攻撃という可能性も捨てきれませんし……とにかくそんなキリアちゃんとの距離は約十メートル、体高五メートルの狂化ゴーストの手のひらの上に乗っているので高さ(2mくらい?)がありますし、私の搦め手を警戒しているのかそれ以上近づくつもりは毛頭無いようですね。


(だったら…まずは!)

 こうなったら細かな配慮をしている余裕がないですからね、一番最悪な事態である“そもそもキリアちゃん自体が幻覚である”という可能性を排除するためにアクティブソナーのように周囲に【オーラ】を薄く放って目の前のキリアちゃんが実体なのかを確かめてみるのですが……キリアちゃんは足場に使っている狂化ゴーストの左手を動かして放った【オーラ】をガードしました。


「なんで皆キリアを殺そうとするの!?ユリエルまでキリアをいらない子だって言うのっ!!キリアは生きてる!なのに!!」

 弾かれたので実体なのかをハッキリと確かめる事が出来なかったのですが、【看破】の結果や私の勘ではたぶん本物。


(怒らせてしまったようですが、周囲のモンスターが動かなかっただけラッキーといえるかもしれませんね)

 少し気になるのは熊派(キリア派)の人達が霧の中に潜んで隙を窺っているのかと思ったのですが、中門の前に居た黒い骸骨さん以外は誰も居ないのですよね。


「私はキリアちゃんを傷つけるつもりはありません!」


「嘘よ!だったら何で攻撃をしてくるの!?抵抗するのっ!?全てが終わるまで大人しくしていてくれるのなら、キリアがずっとユリエルを気持ちよくしてあげるのにっ!!」

 とにかく私はキリアちゃんを傷つける意図がない事を伝えのですが……怒らせてしまったようですし、この場に熊派の人達がいないのはキリアちゃんのしでかそうとしている事に関係しているのかもしれませんが、これはこれで早々にキリアちゃんの説得をしないと不味いのかもしれません。そんな事を考えていると逆上したキリアちゃんがこちらに手を向けて何か指示を出したのですが、それに合わせて私の身体に絡みついていた木の根っこが蠢き始めました。


「え…って、ッ!?はっ…ぁ、あっ、あああああっ!!?」

 きっと運搬用に力をセーブしていたのでしょう、木の根っこが放つ媚毒が濃くなったかと思うと全身からブワリと汗が噴き出し、絡みつく木の感触と微かな空気の振動だけで私の口から情けない声が漏れてしまいます。


 たぶんキリアちゃんは生かさず殺さず私を無力化する(いかせ続ける)つもりなのだと思いますが、キリアちゃんってこんなにもエッチな子でしたっけ?


『その……どうする?』

 本当にキリアちゃんの身の上に何があって()に影響されたのかはわかりませんが、激戦を覚悟していた淫さんは駄々っ子のようなキリアちゃんに対して何とも言えないというような戸惑いを醸し出しながらそう聞いてきて……。


(い、淫さん…呆れてる…んっ、場合じゃ…っ!?)

 正直にいうとキリアちゃんが操作している木の根っこの愛撫はそれほどでもないのですが、それでも滴る媚毒は強力ですし、ヌルヌルとした木肌がスカートの中に入り込んで来たかと思うと割れ目を擦り上げてきて、下着越しにクリトリスを擽られると身体が跳ねてしまいます。


 パンツの上からだからこその緩い刺激と塗り込まれて染み込んだ媚毒が時間をおいて身体を蝕んでいくのですが、これがキリアちゃんの焦らし(作戦なの)だとしたらなかなかのものですね。


(と、とにかく…相手と同じ手を…使いましょう)

 淫さんの『どうする?』には『攻撃するか?』という意味が含まれていたのですが、私はキリアちゃんを攻撃するつもりはありません。


『構わないが…』

 そうして私の考えを読んでいる淫さんと素早く作戦の内容を確認するのですが、あまりにも投機的すぎる作戦だからなのかあまり乗り気ではないようで……それでも穏便にキリアちゃんを無力化するにはこの方法しかないと思います。


『いや、そういう意味で躊躇っている訳ではないが…ええい、どうなっても知らんぞっ!』

 いつも通りグチグチとぼやく淫さんは『また禄でもない作戦を考えたな』みたいな感じなのですが、このままただいたぶられるだけではこちらの負けですからね、反撃に出る事にしましょう。


「ふー…っ!」


「…ッ!?」

 そうして私は軽く息を吸って瞬間的に集中すると、キリアちゃんの視線が私に向いた瞬間を狙って【オーラ】の刃を飛ばすのですが……狂化ゴーストを操ったキリアちゃんによって【オーラ】の刃は簡単に弾かれてしまいます。


 そんな私の明確な攻撃に対してキリアちゃんの瞳に涙が浮かぶのですが、ギリッと奥歯を嚙むようにしてその思いを封じると私に対して本物の敵意を向けて来て……。


「……え?」

 そうして冷静さを失ったのがキリアちゃんの敗因ですね。


『捕まえた!!だがこの程度だとすぐに(ほど)かれるぞっ!?』

 イベントバフが完全になくなっているキリアちゃんの反応速度は私でも対処可能ですし、行動を読む事も出来ます。


(だからこうやって足元をすくう事が出来るのですが…ステータスの暴力が無くなった後の動きはどこか素人臭いのですよね)

 狂化ゴーストの手のひらに乗っているキリアちゃんの足元には当然死角が出来ていますからね、意識を上に向けた瞬間に限りなく細く延ばした淫さん(視認しづらい糸)で右足を拘束するという目くらましからの拘束という私達が中門で食らった方法をそのままお返ししてあげたのですが、一瞬とはいえ頭に血が上ってくれたので上手く嵌ってくれました。


「これでキリアの動きを止めたつもり?今のキリアでもこれくらいの拘束なら!…ッ!?なんで切れないのっ!?」

 キリアちゃんは狂化ゴーストに指示を出して指の隙間(足場)を縫うように伸びてきた糸状の『翠皇竜のドレス(淫さん)』を引き千切らせようとするのですが……反応が遅いですね。


『ぐぅぅ、ッ!?気軽に言ってくれるが…そう長く持たんぞっ!!』

 足に絡みついた後はすかさず糸を太くして強度を高めてもらいましたし、【オーラ】で補強してキリアちゃんの攻撃に耐えたのですが……正直に言うと余裕ぶっていられるほど有利な状況ではないですからね、振りほどかれるのは時間の問題です。


(お願いします!!)

 でもここで慌ててもしょうがないですからね、一手一手しっかりと詰めていきましょう。


『ああもう、破れかぶれだ!!』

 そうしてキリアちゃんの足に絡まりついていた紐状の淫さんは先端を更にバラけさせると繊維状になり、そのままキリアちゃんの()()()()()食い込みました。


 ドレス状態の『翠皇竜のドレス』は淫さんですし、スカート翼を広げた翼の先端も淫さんですし、紐状に伸ばした先端も当然淫さんです。ではそんな淫さんが絡まりついて布として一体化した先にある(スカート)は……布を羽織っただけで発動する【淫装】の範囲はどこまで適応されるのでしょうね?


「ひぃうっ!?」

 スキルが発動するかは賭けだったのですが、いきなり着ている服が触手(【淫装】)化したキリアちゃんはその気持ち悪さに肩を竦めるように可愛らしい声を上げると、涙目のまま私の事を睨みつけてきました。


「ッ!?」

 そうして布面積が一気に倍近く(2人分)になった事で【淫装】の効果が強まりフィードバックが返ってきましたし、ドレスの大半をキリアちゃんの拘束に使っている今の私は半裸の状態なので直接的な刺激が増えてしまったのですが……ここで負ける訳にはいきません。


 一度でもキリアちゃんがいったら【呪印】を入れる事が出来ますし、そうなるともう無力化したも同然です。


 後は集中力を切らさない(いかないように)ように我慢しながら【媚毒粘液】混じりの愛撫でキリアちゃんの弱い所を攻めるだけなのですが……ワナワナと震えるキリアちゃんのプニプニとした感触が淫さん越しに伝わって来て、これはこれで良いものですね。


『おいっ!こんな時に何を考えている!?いいから集中しろ!!』


(わかっています、大丈夫です)

 怒鳴って来る淫さんに渋々返事を返しながら、私は絡めとったキリアちゃんの事を考えながら口角を上げました。

※次回、激闘の行方。


※少し修正しました(1/24)。

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