299:誰が何て言おうと合法的な治療です
グレースさんと一緒にジェリーローパーが蠢く通路から無事に脱出したところまでは良かったのですが、媚毒に侵されたまま触手に弄られた身体は火照ってしまい、甘い痺れは遅効性の毒のように身体を蝕みました。
特に媚毒耐性が私より低いグレースさんは湧き上がる肉欲に疼きに苛まれながら媚毒塗れの服の上から胸やクリ〇リスのある辺りを押さえていたのですが、そうして押さえつけているせいで敏感な部分が媚毒に侵されてしまい余計に窮地に陥ってしまっているようですね。
「ッ…ぁあ、はぁ…っ、はぁ…っ」
無意識に気持ち良くなろうとする指先を蕩ける理性の力で押しとどめ、私が居なければすぐにでも1人で初めてしまいそうになるくらいのギリギリのラインで踏みとどまっているグレースさんは健気で可愛かったのですが、それがどれだけ苦しい事なのかは私も体験済みですからね、一刻も早くその苦しみから解放してあげたいという気持ちが沸き上がってきます。
(だからといって、焦ってはいけませんね)
因みに私も同じくらいの媚薬を浴びているのですが、これに対しては耐性装備の有無が大きいといいますか、身体に付着していた媚毒は淫装さんが拭き取ってくれましたからね、途中少しだけスッキリしたのでまだマシな状態です。
そんな私と比べるとジェリーローパーの沼で媚毒塗れになった後に一度ログアウトしたグレースさんは身体を鎮めている余裕がありませんでしたし、その後にジェリーローパーを倒した時に出る濃いめの媚毒の霧も浴びた事も合わさって色々と大変な事になっているようでした。
(グレースさんを助けるためにはまず媚毒を落とさないといけないのですが)
これは100パーセントの善意であると自分に言い聞かせると牡丹と淫装さんがどこか胡乱げな目で見てきているような気配を感じたのですが、とにかくまずはグレースさんの媚毒塗れの服装を何とかしないといけません。
「グレースさん、もう少しだけ我慢してください」
媚毒をしっかりと洗い流すためには服を脱いでもらう必要があるのですが、流石に開けた広場で脱いでもらうのは酷ですね。
だからといって通路に引き返すというのもジェリーローパーが追いかけてくる可能性がありますし、危険性を色々考えた後……とりあえず今出てきた通路の蓋はしておく事にしました。
(増援が来たら大変ですし)
万が一スコルさんが通路を突破して来た場合は問題になるのかもしれませんが、スコルさんならきっと何とかしてくれるでしょう。
そういう事にしておいて、続いて私達は周囲にモンスターがいないかを確認しながら身を隠すのに丁度よさそうな場所が無いかと遺構が広がる広場を見回してみたのですが……『隠者の塔』から東西に広がる『クヴェルクル山脈』の切り立った崖と高さ1メートル程度のL字の建物跡の後ろがよさそうですね。
そこなら『隠者の塔』側から来たプレイヤーからは見えないようになっていますし、ある程度周囲が拓けているのでモンスターの奇襲も防ぎやすそうです。
まあ逆方向はおもいっきり開いているのですが、そちら側から人が来る事はないので無視しても良いでしょう。
(牡丹)
(…ぷー)
そんな半分だけ隠れられる場所を確保してから牡丹に声をかけると「しかたないなー」という返事を返してきたのですが、渋々ながら建物跡の上に乗って周囲を警戒してくれるようです。
(後は…)
【魔水晶】も防衛用として上げておき、媚毒塗れになっているグレースさんを壁にもたれかけさせながらローブを脱がしにかかったのですが……。
「ふぁひ…えっ、あ…?ちょ、ちょちょっと待ててください!」
流石に媚毒塗れで頭の中がお花畑になっているといっても服を脱がされ始めたら抵抗するようで、グレースさんは涎と汗を垂らしながらワタワタと自分のローブをギュッと掴みました。
「このローブにも媚毒が染み込んでいますからね、まずはそれをしっかりと洗い流そうと思います。それとも媚毒塗れの方が良いですか?」
多少混乱しているようですし、説明口調でこれからやる事とやらない時のデメリットを考えてもらうと、グレースさんは視線をおもいっきり彷徨わせながら汗をダラダラとかき始めます。
「……わか、り…ました」
少し考えてから持ち前の純真さが出たのか、グレースさんはコクリと頷いて私に身を任せるように力を抜きました。
それでもどこか恥ずかしそうに視線を彷徨わせ、指とかをモジモジさせながら羞恥心に顔を火照らせていたのですが……とりあえずこれで本人からの了承も得る事ができましたね。
『チョロすぎないか?』
(そんな事を言わないであげてください)
相変わらずグレースさんに当たりのキツイ淫装さんが酷い事を言っているのですが、こうやって純粋に人を信じる事が出来る事はグレースさんの美点のうちの一つだと思います。
(それにこれはただの治療行為なのですから照れる方が変なんです、傷口だって水で洗いますよね?それと同じですよ)
『いやまあ、それはそうだが……いや、そうか?』
自問自答する淫装さんは放っておき、そんな会話を聞いていた牡丹が遠い目をしながら「ぷい~…」とため息を吐いていたのですが、とにかく2人ともグレースさんを治療するという方向では納得してくれたようですね。
「それでは、失礼します」
一応脱がす前に一言断ってからローブの裾を捲りあげにかかるのですが……人の服を脱がせるというのはなかなか大変でした。
こういう場合は脱いでいる人の協力も必要なのですが、カチコチに固まってしまったグレースさんはギュッと目を閉じたままで、なかなか脱がす事ができません。
それでも一番上のローブ、それから鎖帷子を何とか脱がせて、最後のアンダーシャツを脱がす時に再度抵抗するそぶりを見せたのですが……。
「大丈夫です、任せてください」
私がグレースさんを安心させるように呟くと、グレースさんは顔を真っ赤にしながらコクコクと頷いてくれたのですが、その仕草がなかなか可愛いですね。
見つめ合った時の吸い込まれそうな虹彩がキラキラしていて、そのままキスの一つでもしたくなるのですが……いけませんね、今は治療中なので集中しましょう。
そうして黒タイツにブーツだけというなかなかマニアックな姿になったグレースさんなのですが、まず目に飛んでくるのはほんの少しだけ垂れたFカップ……でしょうか?プニプニした身体は余り鍛えていない事がわかる標準体型寄りのやせ型で、こういう所まで作り込まなかったのかそれともチケットを使用した時にリアルの体型を反映するように設定したのかグレースさんはかなりリアル寄りの身体をしていました。
(それでも前より胸が膨らんでいるような気がするのですが)
そこまでまじまじとグレースさんの身体を見る事がなかったので確証はないのですが、身長を弄る前の胸はもう少し小さかったような気がしたのですが……外気に触れた肌寒さなのか羞恥心なのかピンと立った乳首も合わさりワンサイズくらい大きくなっているような気がします。
まあ動きやすいように胸のサイズを下げていたのを戻しただけといいますか、身長をリアルに寄せる時にうっかりそのままにしてしまったというのが真相なのかもしれません。
「あの…?」
そんなどうでもいい推測をしていると上半身裸のグレースさんが胸を隠しながら恥ずかしそうに声をかけてきたのですが……確かに今はそんなどうでもいい推測より治療の方が優先ですね。
「すみません……思ったより媚毒塗れですね」
私は誤魔化すように一言謝罪してから、改めて媚毒の様子を見てみたのですが……たぶんジェリーローパーの沼で服の中を弄られた時に媚毒を塗りたくられたのだと思いますが、身体が強制的に発情させられた時の汗と混じってムワッと甘い香りが漂ってきていて息が詰まりそうなくらい媚毒がべったりとついていました。
しかも媚毒の結晶に撫でられた時についたと思われる赤い痕が所々に残っていて、その身体はなかなか痛ましい有様ですね。
「まずは衣類から水洗いしていきたいと思います」
出来たら全身を丸洗いしたいのですが、いきなりグレースさんを丸裸にする必要はありませんからね、まずは服と上半身についた毒から対処していく事にしましょう。
「循環せし命の源よ…」
私は【水魔法】で作り出した水の塊の中に脱いでもらった防具を入れ、それを【オーラ】と【魔力創造】で回転させて揉み洗いをしていく事にしました。
「わっ、わ~…」
その洗濯風景を見ていたグレースさんは瞬間的に媚毒の苦しみを忘れて瞳をキラキラと輝かせていたのですが……ブレイクヒーローズだと魔法を主軸に戦っている人が少ないですからね、こういう魔法を見る機会があまり無かったのかもしれません。
(ぐっ…ッ…)
そしてやっている事は水を回転させているだけととても簡単な事なのですが、それを魔力でやろうとするとよくわからない負荷がありますね。
まず一般的な現代人の私からすると魔力を“回転させる”という感覚がよくわからないのですが、そこは種族的な補正と気合と集中力で乗り切る事にして、洗い終わった防具は水を切った後に遺構の上で見張りをしている牡丹に投げ渡しておきます。
「ぷーぷーぷーいー」
そうして渡した防具はそのまま天日干しするように広げて伸ばしてくれているのですが、その作業は牡丹に任せて私はグレースさんの身体を洗っていく事にしました。
「次はグレースさんの番ですね」
上半身の処置をした後なら絞ったアンダーシャツを着てもらう事も出来ますし、媚毒を洗い流した後なら傷の手当ても出来るでしょう。
「え…あっ…はっ……いやいえ!めめめ滅相もない!水を出していただけたら自分で洗いますから!!」
そうして私がグレースさんの方に向き直ると、顔を真っ赤にしながら胸と股間を押さえながら後ずさりされたのですが……ここまで来てお預けをくらうというのはトンビに油揚げではないですが辛いものが……って、いえ、これは誰が何と言おうとただの治療行為なので決して邪な考えがある訳ではありませんし、丸洗いしたいというのもイチャイチャしたいからというよりグレースさんの媚毒を完全に抜いてあげたいという90パーセントくらいの善意しかありません。
「駄目ですよ、背中とか見えない場所に毒が残っていたら大変ですから」
なのでその事を信じてもらうために私は真面目くさった顔をつくりながら、グレースさんを説得するべくにじり寄る事にしました。
※すみません、予定より脱がすのに時間がかかってしまい中途半端になるより前後編にしようと切る事にしました。次回、改めてグレースさんが丸洗いされます。




