298:通路からの脱出
ログインすると同時にジェリーローパーCに殴りかかったグレースさんの攻撃で絡まりついていた触手が緩んだのですが、流石にヒーラーの物理攻撃だけでは倒す事が出来なかったようですね。
「はひっ…え?」
そしてグレースさん的にもその行動はかなり衝動的なものだったのか、それともゲームに繋いだ瞬間の僅かなラグが働いていたのかはわかりませんが、杖を振り切った瞬間に媚毒の影響を受け始めたようでそのままフラついて膝をついてしまいます。
「グレースさん!?ッ!?こ…のっ!」
グレースさんは沼地であれだけジェリーローパーにいたぶられた後だというのに勇気を振り絞ってログインして来てくれましたからね、私もその勇気に応えられるように緩んだ触手の拘束を振りほどこうと藻掻くのですが……絡みついた触手が乳首を摘まみ上げ、お尻のお肉を揉みしだくように撫でられただけで媚毒塗れの身体が反応してしまって、パチパチと目の前が真っ白になって『ベローズソード』を取り落としそうになりました。
(集中…しないとっ、いけない、のにっ……んっ、くっ…押さえているのに、そんなところ…ぁ、ぁあッ!!?)
膣内に侵入しようと伸びてきた触手を掴んで何とか阻止しようとするのですが、暴れる媚毒結晶混じりの触手が股間の割れ目をなぞるだけで身体が震えてしまい、魔力操作で動かせる筈の『ベローズソード』の軌道が歪んで力が抜けてしまいます。
『しっかりしろ、このままだとあの娘と一緒にまた蹂躙されるだけだぞ!?』
(わかって…いますがっ!?)
淫装さんの言葉で触手に嬲られる感覚を思い出してしまい背筋がゾクゾクしたのですが、そんな邪な欲望を振り払うように絡みつく触手を【ルドラの火】で燃やして無理やり行動の自由を取り戻しました。
「KYURURURU!!?」
そうして【ルドラの火】をくらって焼き切れた触手を振り回すジェリーローパーCに『ベローズソード』の追撃を入れて止めを刺すと、私は震える足を叱咤しながら何とか立ち上がります。
「牡丹…今、行きます!」
「ぷー!!」
まだ媚毒塗れで身体が上手く動かないのですが、それでも何とか牡丹に攻撃を続けていたジェリーローパーDに攻撃を入れると……その攻撃に気を取られたジェリーローパーDの隙をつくように牡丹が肉薄し、そのまま止めを刺してくれました。
(これで、なんとか…当面の敵は…)
敵が集まってきているのでまだまだ気は抜けないのですが、今すぐ攻撃してきそうなジェリーローパーは倒しましたし、少しは休憩できるかと呼吸を整えているとグレースさんがログインしてきた事に気がついたスコルさんからPT経由で連絡が入りました。
『何か大変な事になっている予感がするんだけど、とにかく2人とも大丈夫!?一緒にいるのよね?』
『なん、とか…グレースさんも無事です…ただスコルさんと合流するのは難しそうなので、反対側に抜けれないか試してみようと思います』
こちらに這い寄って来ている数は少ないとはいえ、スコルさん側の出入り口にはジェリーローパーが溢れていますからね、グレースさんを庇いながら脱出するのは難しいでしょう。
『ん、了かーい、じゃあおっさんもこいつら振り切ってから合流できないか試してみるわ!』
向こうは向こうで戦闘中ですからね、お互い短く行動を確認した後に連絡は途切れたのですが、私は軽く息を吐きながら改めてへたり込むグレースさんの方に視線を向けました。
「グレースさんも…それで良かったですか?」
「私…ちがっ、あっ、えっと……その、ユリエルさんに、お任せ、しましゅ」
グレースさんはへたり込んだまま上目遣い気味にアワアワしながらローブの裾を引っ張り股間と太腿の辺りを隠していたのですが……どうやら特濃の媚毒を浴びてしまった影響で身体が発情してしまい大変な事になっているようですね。
「立てそうですか?」
そんな恥ずかしがっている姿は可愛くもあったのですが、ジェリーローパーが迫ってきている状態なのでのんびり観察している余裕はありません。
「い、いえ…ちょっと…すみませ…って、ユリエルさん!?」
申し訳なさそうに顔を伏せるグレースさんに手を差し伸べてみたのですが、腰が抜けているのか粗相をしているのか、近づこうとすると微かに後ずさりされたのですが……こうしている間にもジュルリジュルリとジェリーローパー達が近づいてきていますからね、ここは問答無用で抱きかかえる事にしましょう。
「ッひっ」
それだけでグレースさんは身体をビクンビクンと痙攣させて軽くいってしまったようなのですが、そんな甘い吐息がすぐ近くから聞こえて来るのは結構辛いものがありますね。
「すみません、急ぐので担ぎ…すっ、ぁ…ッ!?」
そうしていつ襲われるかわからない状態で両手を塞ぐ訳にもいかなかったので、左手でグレースさんの上半身を支えながら下半身に尻尾を絡めて固定したのですが……尻尾が汗と媚毒で濡れた黒タイツに触れて擦れた瞬間脳がショートしたように腰が抜けてしまい、足がガクガクと震えました。
(スベスベしたタイツが尻尾を擦って…)
媚毒に侵された身体がゾクゾクと疼いてこのまま太腿の隙間に尻尾をこすりつけて気持ちよくなりたくなってしまうのですが、目をギューッと瞑って身をゆだねるように任せてくれているグレースさんの信頼を裏切らないためにもぐっと堪えるしかありません。
「ひっ、ひっ…ふーっ、ひっ、ひっ、ふー…」
そうしてグレースさんも何故かラマーズ法で媚毒の誘惑に耐えていたのですが……相変わらずのよくわからない行動に頬が弛んでしまいますね。
ただやっている事はどこか冗談じみているとはいえ、私より媚毒耐性の低いグレースさんは結構大変な状態のようで、甘い吐息を吐く度にタイツのシミは大きくなりますし、切なそうに身を捩る度に身体を大きく震わせていたのですが……そんなグレースさんを抱きかかえて肌の温もりと甘い吐息を聴いている私にとってもなかなかの地獄ですね。
「牡丹…」
「ぷ!」
そんなグレースさんを抱きかかえながらでは歩くだけでも精いっぱいで、集中力が散漫になっているので牡丹に先行してもらったのですが……それにこれは牡丹が先に接敵したらそのままターゲットをとってくれるかもという考えがあり、牡丹が攻撃を引き受けている間に火力の出しやすい私が攻撃してという役割分担を考えた索敵陣形です。
『それにしても、お前の知り合いは変態しかいないのか?』
(…どういう意味ですか?)
そうして淫装さんからするとわざわざやられに来ただけにも見えたグレースさんに対してそんな酷い事を言っているのを聞きながら、通路内に残っていたジェリーローパーを牡丹に引き付け倒しておいたのですが……そんな感じで媚毒の霧の中を300メートル程度進んだ辺りで徐々に道幅が狭くなったかと思うと、急勾配の階段が石造りの天井に続いていました。
「ぷっ、ぷーぅ、ぷー」
そんな行き止まりまで先行していた牡丹がピョンピョン跳ねていたのですが……どうやらその天井には細長い穴が空いているようですね。
(行き止まり…じゃ、ないですね……外?これを開けるための仕掛けは?)
身体が疼いて集中力を欠いていたというのもあるのですが、よくよく見てみると星明りが隙間から差し込んでいて、少し遅れて空気の流れがある事に気がつきました。
(わかりやすいスイッチでもあればいいのですが)
こういう暗い場所での調べ物はグレースさんの方が適任なのですが、今は媚毒に侵されていてそれどころではないですからね、涙とか鼻水とか涎でぐちゃぐちゃの顔をしながら私にしがみついたままなので調べてもらえるような状態ではありません。
なので牡丹と協力して天井とその周辺を調べてみたのですが……特に仕掛けらしい仕掛けはありませんでした。
(って、ああ…わかってしまえば単純な事ですね)
一瞬行き止まりかと焦ったのですが、駄目もとで天井が動かないかと手を当ててみると意外と軽い物質で出来ているようですし、そのまま隙間に指を引っ掛けて動かす事が出来そうです。
(これを、横に…)
まあわざわざ鍵をかける必要があるのかわからない場所ですし、出入口の偽装を見破ればどちらからでも入れる造りになっているのだと思いますが……そんな通路に大量のモンスターを潜ませているところに運営の悪意を感じたものの、あまりその事については考えないようにしながら階段の先を塞いでいる石壁を横にスライドさせると、私達は晴れてジェリーローパー達が蠢く通路から脱出する事に成功しました。
「はぁーーぁああああ…」
出入り口の先に広がっているのは満天の星空で、私は媚毒塗れでない新鮮な空気を堪能してから周囲を見回したのですが……今のところモンスターの気配はありませんし、安全なようですね。
(出た先についても予想通りですね)
通路の先は「何かあるのでは?」と思っていた『隠者の塔』から南東に向かった先にある遺構跡ですし、移動距離的にも予想通りといえば予想通りの結果です。まあ【魔翼】とスカート翼を使えば崖下に飛び降りる事が出来る私からするとそれほど意味のあるルート開拓でもなかったのですが、それでもボス戦をせずに『エルフェリア』と毀棄都市を行き来できる通路を発見したというのは一つの成果として誇ってもいい事でしょう。
(後は…)
媚毒と触手の愛撫によって火照る身体と、私の腕に抱かれたまま媚毒に侵され苦しんでいるグレースさんをどうするかという問題が残っているだけですね。
※『それにしても、お前の知り合いは変態しかいないのか?』 → まふかさんの事を言っていました。
※少し修正しました(11/30)。




