296:よくわからない場所
微かな頭の揺れと同時に聞こえてきたジュルリジュルリという湿った水音のようなぬめっとした音とどこか遠くでジェリーローパー達が蠢くような気配に背筋が凍り付き反射的に身体を固くしたのですが……意外とその気配が遠い事に気づいて私はドキドキする心臓を落ちつけながら息を吐き出しました。
(どういう…事、なのでしょうか?)
なすすべなくジェリーローパー達に蹂躙されて堕とされたところまでは覚えているのですが、ゆっくりと目を開けてみると拘束も武装解除もされていないという状況で、頭の中には疑問符が浮かびます。
(洞窟?いえ…通路?)
そうして気がついた時にはツルリとした石造りの通路の中に居たのですが、つい先ほどまでジェリーローパー達が居た事を示すような媚毒の霧が濃すぎてよくわかりません。
(餌認定されて、住処に連れ込まれてしまった…という事なのでしょうか?)
ジェリーローパーは名前の通りプルプルしていましたし、水場に溜まっていたように暗くジメジメした廃坑みたいな場所を根城にしているのでしょうか?
そんな風に色々と推理してみてもジェリーローパーの習性まではよくわからないのですが、気配を探ろうにも音が反響しているようでよくわかりませんし、魔力に関してもジェリーローパーの発する媚毒には魔力が含まれているのかこちらの感知に干渉してきてよくわかりませんでした。
(もう少し…探れば、わかるかもしれませんが)
とはいえ私達を捕まえたのはジェリーローパーですからね、計画性とは無縁の本能で動いているような存在だったのでたまたまここに引きずってきただけという可能性もあるのですが……とにかく放置されている理由がわからないのはやや不気味ですし、身体が怠くてまともに立ち上がる気力も無いまま混乱していたのですが、少し落ち着いたタイミングで私の疑問に答えるように頭の上で揺れていた牡丹が声をかけてきました。
(ぷーぷーぅー)
との事で、私とグレースさんは予想通りジェリーローパー達によって崖下の水場から程近い洞窟の中に連れて来られ、少し前にグレースさんはログアウトしてしまい、ローパー達も私達の事も放り出して入口側に引き返していってしまったそうです。
(ぷー…)
因みに牡丹は現在イビルストラ状態だったおかげでそれほど酷い目にあわなかったようなのですが、流石に多勢に無勢でどうする事も出来ずに隙を窺いつつ私が目を覚ますのを待っていたとの事でした。
(なる…ほど?)
説明されてもいくつか疑問は残ったままなのですが、たぶんグレースさんが消えたのは強制ログアウト判定の後に一定時間が経過してアバターが消えたのだと思いますし、それだけ時間がたっているのなら外部ネット経由で現在時刻を確認したいところなのですが……ジェリーローパーが戻ってきても厄介ですし、まずは周囲の状況を確認する方が先決でしょう。
そういう訳で漂っている媚毒をあまり吸わないようにしながら、今度こそしっかりと状況を確認しようと周囲に視線を向けてみたのですが……入り口側に大量のジェリーローパーたちが蠢いていて、反対側も点々と気配を感じますね。
(はやく、脱出しないといけないのは…わかって、いるの…ですがっ)
そうして一旦危機が去った事への安心感という訳ではないのですが、意識がはっきりしてくると媚毒の抜けきっていない身体が疼いてしまい、駄目だと思いながらも無意識のうちに私は乳首や秘部に手を伸ばして昂った身体を抑えようと指が動いてしまいました。
「指が…止まらぁ…ふぅ、んんっ、はぁ…っ、あぁああ…」
勿論こんな事をしている場合ではない事は重々承知なのですが、あまりにも強力な媚毒を内から外からと塗りたくられた後だからなのか、それともこの場所に溜まる強力な媚毒の霧の影響なのか今の私は全身の快楽神経が剥き出しにされているような状態で、呼吸をしただけで甘いきするくらいに身体が疼いてしまってどうしようもありません。
(ふくぅぅっ…本当に、こんな…事、しているばあいじゃ…)
ジェリーローパーが戻ってきたら大変な事になるのはわかっているのですが、駄目だと思っているからこその溶けるような快楽に頭の中がパチパチしました。
「ふぁあぁああっ、はひっ、あぁあ…っ!?」
そして溢れた母乳を搾り出すように根元から扱き上げるとそれだけで射精に近い感覚が胸の奥からビリビリと広がり、一搾りごとにいき続けているような連続絶頂によって身体がブルブルと震えます。
(全然…おさまって、くれ…ない)
呼吸をするだけでさざ波のように繰り返す絶頂の波にさらわれながら、媚毒と自分の愛液でネトネトになったクリ〇リスに触れるだけで脳天に突き刺さるような桁違いの刺激に身悶えし、よくわからないままあの逞しいジェリーローパーの触手とは違う華奢な指先をじゅぶっじゅぶっと挿入して指の腹でザラリとする所を擦り上げると立て続けにいってしまい、私はだらしなく蕩けた顔を晒してしまいました。
『こんな状態でも雌犬のように盛っているようだが……今のうちに逃げ出さなくても良いのか?』
そしてどんどん敏感になり昂っていく身体に危機感と被虐的な感情が昂っていってしまい、何度も何度も自分で自分の身体を慰めていると淫装さんが呆れたように呟いたのですが、私は反論したくても指を止める事が出来ずに考えもまとまりません。
(違います、これは…あぁっ)
どうやら牡丹も制御に専念する事が出来なくなっているのか淫装さんが目覚めてしまったようなのですが、そんな事をぼやきながらも『死なれても困る』云々と数日前に言っていた事は本心だったようで、ドレスの活性を最低限まで落として魔力を吸わないようにしつつ耐性は残しておいてくれたりと、私達に協力する姿勢は見せてくれているようですね。
(ありがとう、ございます…?)
なので私は途切れ途切れに感謝らしきものを述べておくのですが、淫装さんはまるでお礼を言われた事に驚いたように息を呑みました。
『…礼は不要だ、我も死にたくないからな』
「んきゅッ!?」
そうして淫装さんは照れ隠しのように私の乳首を捻るのですが、これはいわゆるツンデレというものなのでしょうか?
『おい…』
ただ本人的にはそう思われるのは不服そうで何か言いたげなのですが、今は私達で喧嘩している場合ではないですからね、牡丹がぺしぺしと触手を動かすような動きをみせると黙り込んでしまいます。
「は、ぁぁああーー……」
そうして淫装さんがドレスの耐性を調整してくれたのか、それとも何度もいった事で多少は満足したのか疼きが治まってきたのですが、それで少しだけ冷静になりました。
(ぷー)
(もちろん…牡丹にも感謝していますよ?)
淫装さんに感謝の言葉を言ったからでしょうか?やや拗ねたような牡丹にも感謝の言葉を述べてから改めてスタミナ回復ポーションとMP回復ポーションを出してもらい回復しておいたのですが、【バイオアブソープ】の自動回復とジェリーローパー達から吸い取った精気で空腹度に関しては五分と五分、ポーションの力も借りてまあ何とか動けなくもないという状況ですね。
(気配から離れる方向だと……上、ですか)
ジェリーローパー達が居なくなったおかげか媚毒の霧も徐々に薄れてきて周囲が……といいますか、どうやらこの場所はかなり高低差のある階段の踊り場のような場所のようで、重く沈殿する霧は徐々に下に向かって落ちていっているようでした。
そうして私達が引きずってこられた方向が下で、奥が上……となるともしかしてという直感が閃きかけたところでジェリーローパーの気配が下から近づいてきたようなので、とにかくこのまま寝転がっているのもまずいと立ち上がり閃きを確かめるためにも壁に手をつきながら階段を上り始めたところで、スコルさんから連絡が入りました。
『ユリちー、大丈夫!?』
その声はいつもの飄々とした様子とはかけ離れた切羽詰まった感じなのですが、どうやらスコルさんにもかなりの心配をかけてしまったようですね。
『大丈夫…といいたいところですが、かなりまずい状況ですね』
そうしてお互いに簡単な状況のやり取りをするのですが、どうやらスコルさんは手こずりながらも崖を降りる事に成功し、MAPマーカーを頼りに隠れていた洞窟の入り口を発見したところまではよかったのですが、坑道からはジェリーローパーの群れが溢れ出て来ているせいで入る事が出来ず、今は距離をとりながら数を減らしている真っ最中なのだそうです。
『いやーユリちーが動けるようになってよかったわー突入したは良いけど気絶していたってなったらおっさんじゃあどうしようもないし…それじゃあすぐに助けにって言いたいんだけど、こっちはこっちで溢れてきててどうしようもないのよねーってかおっさんビンビンすぎてこの中に入るの無理なんですけど!?』
媚毒の影響で開けた所で戦うしかないという事で入り口から出た所で戦っているそうなのですが、それでも色々と影響を受けて大変な事になっているようでした。
というよりスコルさんが入り口側にジェリーローパーを引き寄せてくれたおかげでこちら側も何とかなったみたいな感じなのですが、そう考えるとスコルさん様様ですね。
『無理をしないでくださいね、こちらは…かなり数も少ないので』
奥側にまだ幾らかジェリーローパーが居るのですが、それでもスコルさんが大多数を引き受けてくれているおかげで坑道内にいるローパーの数は僅かです。
『OKOKーそしておっさんの事を褒め称えたいなら後でナデナデしてもいいのよ?』
そうしてこんな時でもふざけた事を言うスコルさんに対して、私はついこんな状況だというのに苦笑いを浮かべてしまいました。
『スコルさんって…変なところで紳士的ですよね』
スコルさんはスコルさんで媚毒の影響でかなり酷い状態になっているとは思うのですが、そんな状態でナデナデで済ませられるスコルさんの精神力の凄さを垣間見たような気がするといいますか、言動は少しアレなものの一定の距離感を守ろうとしているような気がします。
『うーん、おっさんも良い年したおっさんだからそういうのが嫌いっていう訳じゃないんだけど、どちらかというと人肌恋しいとかそっちの方が問題なのよね~』
そうして当たり前のように私が考えていた事を読み取り返事を返してきたのですが、そういう察しの良さもまた凄いですね。
『違いがよくわかりませんが……こちらはこちらで何とか脱出してみようとは思います』
セクハラ発言自体がスコルさんなりの励ましだったのかもしれませんが……とにかくポーションを使ったとはいえ身体はまだ怠いですし、薄まったとはいえ媚毒の霧の中ではまともに身体を動かす事が出来ないのですが、それでもここから移動しないとまた酷い目にあってしまいそうですからね、なんとか頑張って脱出を目指す事にしましょう。
※少し補足ですが、スコルさんがグレースさんの事に触れないのはログアウトしている事を知っているからで、ユリエルに声をかけたのはMAPマーカーが動いて生存が確認できたからです。




