275:生きた柵
探索を始める前に改めて『エルフェリア』周辺の地形に関して纏めると、北側は東西に広がっている岩山が広がっていて、それ以外の方角には魔王軍の軍勢を退けるための結界が張り巡らされた大きな亀裂が走っていました。
正確に言うとその亀裂は北西方面から南西方向に伸びていて、その途中から枝分かれする形で『エルフェリア』の南側を通り東側まで回り込んでいるという『u』の字を伸ばして左右反転させたような裂け目が入っています。
この亀裂のある場所は事実上通行不可と言っていいほど深く『エルフェリア』から別の場所に移動する場合は南側にある『ギャザニー地下水道』を通過する必要があるのですが、北側については岩山から流れる小川と簡単な柵で区切られているだけで、その防御力は他の方角と比べると一段も二段も落ちるようですね。
勿論いざと言う場合は強力な結界を張る事は出来るようなのですが、この岩山から染み出した水をろ過して生活用水として使っている関係上完全に断ち切る事が出来ず、岩山に生えている光属性の植物のお陰でモンスターがあまり近づいてこない事もあり、今のところは簡単な柵と見張りを置くだけで対処出来てしまっているために見逃されている形となっているのだそうです。
とにかく私達はそういうエルフ達の防衛線ともいえる柵と検問所が見える所までやって来たのですが、やはりホーンラビットやマンイーター、それとコッケーだけだと大したアイテムはドロップしませんね。
更に『怨獣のボーンアーマー』はW Mで売る事が決定しているのですが、町まで戻らないと出品出来ないので拾うアイテムは厳選しなければいけませんし、もうこうなったら戦わずに走り抜けた方が色々楽なのですが……。
「はーっ…はーっ…」
「大丈夫ですか?」
「あんたにはこれが大丈夫そうにみえるの!?」
律儀に群がるホーンラビット達を蹴散らしていたまふかさんが、私の言葉にウガーってなっていました。
「まふかさん、あんまり怒ると折角作ったホーンラビットの毛皮が破けますよ?」
ここからはエルフ達の巡回もありますからね、まふかさんは大量に手に入った毛皮を縛って長く伸ばした布を体に巻き付けていたのですが、感情が爆発すると【狂嵐】の効果が強まり折角作った毛皮のブラと腰布がパチパチと燃えていきます。
「だったら怒らせないでよ!!」
「そう言われましても…」
とにかくあまり刺激してもしょうがないので引き下がる事にしたのですが、私はそのまふかさんの叫び声が巡回中の兵士達に気付かれていないかと茂みから少し顔を出し、柵の方を窺います。
(大丈夫みたいですね、後はどうやってこの柵を抜けるかですが)
私がキョロキョロしていると「ちょっと、無視しないでよ!」とまふかさんが怒っていたのですが、流石に検問所の近くで騒いでいると発見されるリスクが高くなりますからね、私は尻尾を使ってまふかさんの口を塞ぐと、そのまま茂みの中に引き倒しておきます。
「んっーーーんんーーーー!!?」
それでもまだバタバタと暴れていたまふかさんを身体を使って押さえ込んだのですが【狂嵐】の刺激も慣れると快感に変わりますし、暴れるまふかさんを組み敷いていると、何か邪な感情が湧き上がってきてしまいますね。
「まふかさん…静かに」
囁きながら、なんとなく無意識的にホーンラビット達に弄られ大洪水となっているまふかさんの股間に手を伸ばすのですが、移動と軽い戦闘でお腹が空いてしまいましたし、このまま軽く精気を頂いておいても良いのかもしれません。
「んむぅぅう!!んんんーーーッッ!!?」
そう言う事にしておいて、軽く【搾精】するとまふかさんの精気が流れてくるのですが、その美味しさと酩酊感に涎が垂れてしまい、私は慌ててこぼれた涎を舐めとるようにまふかさんの首筋に舌を這わせます。
そうする事でピリピリとした汗の舌触りと痙攣するまふかさんの瑞々しい身体を口一杯に堪能できるのですが、私はそれだけでは満足できずにもっと精気を溢れさせようと指先を【媚毒粘液】で洗ってからきつく締まった肉の穴を二本の指でこじ開け、毒液と溢れ出てくる愛液をクチュクチュと混ぜ合わせるとまふかさんの身体が跳ね、内側から濃厚な精気が溢れ出してきました。
「ふぅんっ、んぅぅっ…」
私は本能の赴くままにその精気を美味しくいただいたのですが、その間まふかさんは必死に歯を食いしばりながら耐えていて、色々な感情が溢れ出し混ざり合い溶け合った精気はこの世の物とは思えないくらいの美味しさで、気持ち良いですね。
「んっ…まふかさん、歯を立てるのは…」
ただ口を塞いでいる敏感な尻尾を噛みしめられるのは変な気持ちになるので止めて欲しいと思うのですが、とにかくお腹が膨れて満足したので残りをつまみ食いするように吸いながら考えるのはこの柵をどうやって突破するかという事なのですが『エルフェリア』で騒動を起こしている手前正面から堂々と通行できるかは不明ですし、手配書なんかが回って来ていたら少々厄介かもしれません。
だからと言って目の前に広がっている柵……『井』の形を横に伸ばしたような高さ3メートルくらいの木製の柵の上には青々と茂った樹冠があって、何かしらの防衛機能がありそうなのですよね。
「どうしましょう?」
「ぷはっ…はー…はぁー…ぁー…」
私はちゃんと喋れるように口枷にしていた尻尾を外しながらまふかさんにも聞いてみたのですが、トロトロになったまふかさんは身体を震わせながら深呼吸を繰り返すだけでした。
(やりすぎてしまったみたいですね)
止めておこう止めておこうと思いながら、予想よりまふかさんの反応が良すぎるせいでつい精気を吸いすぎてしまったのですが、まふかさんは『エルフェリア』の一件で野外でする事に目覚めてしまったのか、どこか満足げな表情を浮かべたまま放心状態になっていて、痙攣するように潮を吹きながら脱力しきっていました。
そんなまふかさんについては少しの間そっとしておく事にして、とにかくこの柵を越えると浅めの堀というような小川になっていて、その先は標高800メートルくらいの岩山の裾野が広がっています。
とはいえ第二エリアの岩山なので青々とした低木が生い茂っており、あまり岩山っぽくはないのですが……その硬そうな針葉樹を持つ松のような低木が魔物除けになっているという植物なのでしょう。
遠目に見た限りではその木は光属性を帯びているようで『エルフェリア』ではそんな力が染み出した小川の水をろ過した物を生活用水として使い、その排水が『ギャザニー地下水道』へ流れて長い年月をかけて固まった物が『リンニェール鉱』という流れなのかもしれませんが、まあその辺りの考察はどうでもいいかもしれません。
「ッ!?…まひゅかさん?」
そんな事を考えていると、まだどこか疲れた様子ながらも復活したまふかさんにいきなり頬っぺたを抓られてしまったのですが、種族的な筋力値や【狂嵐】の力が指先にかかってかなり痛いですね。
「いきなり何するのよ!!」
組み伏せているまふかさんは口を大きくパクパク動かしながら、それでも声量を押さえてそんな事を言ってきました。
「…つい?」
ただいきなりまふかさんから精気を奪った事を問い詰められても「その場のノリで」としか言えません。
まふかさんが魅力的すぎるのが悪いのですが、当のまふかさんは「信じられない!?」みたいな顔をしながら容赦なく私の頬っぺたを引っ張り続けているのですが……こうやってまふかさんとわちゃわちゃしながら肌を重ねているだけでも何か楽しいですし、気持ち良いですからね。その事は顔を赤らめているまふかさんもわかっている事だと思いますし、そんな状態でムラムラしてしまうというのは自然の理なのだと思います。
「そういうまふかさんの反応もいつもより良か…った!?」
ただその事を指摘しようとすると、何故かまふかさんに軽く殴られてしまいました。
「……で、どうすんのよ、まさか普通に通過するつもり?」
それからまふかさんはまだまだ殴り足りないといった顔をしていたのですが、あまりその話を進めていくと碌でも無い目にあいそうだからという様に、会話の内容を目の前の問題にすり替えました。
「それでも良いような気はしますが…」
制御しようとしていても、ちょっとした感情の揺らぎで【狂嵐】の出力が上がってしまうようですからね、取り調べ中にひょんな事で慌てたまふかさんの服がいきなり弾け飛ぶという姿も見たいような気はしますが、大変な事になりそうなので止めておいた方がいいでしょう。
「…もう強行突破でも良いのでは?」
不測の事態を考えると押し通る事が一番無難な選択肢のような気がしますし、岩山に生えている植物のおかげで北側からの魔王軍の進攻が無かったおかげか、エルフの衛兵さん達も念のためというくらいの見張りしか置いていないのですよね。
これなら見回りの隙をついて飛び越えるのが一番後腐れない方法であるような気がしてくるのですが……私のそんな意見に、まふかさんはどこか呆れたようにため息を吐きました。
「やっぱり、そうなるのね…」
「では他に何かいい作戦がありますか?」
「……いや、ないけど」
という事で柵を飛び越える案が採用される事になったのですが、あまり同じ場所に居るとモンスターの襲撃を受けますからね、悩んでいても仕方がないので私達は一旦検問所の近くから離れます。
「では、次の巡回が通り過ぎたら行きましょう」
そうして見回りの兵士が通り過ぎたのを確認してから、私達は見張りの少ない柵にこっそりと近づいたのですが……組まれた木々の隙間はギリギリ大人が通過できるくらいの大きさだったりと、本当にこんな物でモンスターの襲撃を防げるのかと首をかしげたくなる代物ですね。
(それでも何事もなく通過……とはいかないようですね)
私のそんな心配は杞憂だという様に、私達が近づいた瞬間いきなり柵がニュルリと動き出したと思うと、それに合わせて検問所のほうからカーン!カーン!と不審者を発見した事を告げる鐘が鳴り響きました。
「ちょっと、見つかったわよ!?」
「ええ…って、くっ!?」
とにかくこうなったらもうまごまごしていられません、私は不審者を捕らえようとするように伸びて来る枝葉を躱しながら、何故か足腰が震えているまふかさんを担ぎ上げると【魔翼】とスカート翼を広げて動き出した柵を飛び越えます。
すると蛇か何かのように柵が私の足を絡めとろうと上方向にも伸びてきたのですが……まふかさんを抱えている状態では『ベローズソード』を取り出している余裕はなく、私は伸びて来た枝葉を【オーラ】で覆った足で蹴り飛ばし、それでもなお破片を撒き散らすように襲い掛かって来る木々をスカート翼の一部を分離させて弾き飛ばしながら、翼を羽ばたかせて柵を乗り越えます。
「ぷっ!」
そうして着地と同時にピュゥッ!!という風切り音と共に飛んできた矢を牡丹が盾で弾いてくれたのですが、意外と早くエルフの衛兵さん達が駆けつけて来たようですね。
「捕まっていてください!」
「え、ええ!」
私はギューッと抱きついてくるまふかさんの体温を感じながら、そのまま逃げるようにして小川を飛び越え山の中に逃げ込みます。
(弓矢の射程を越えれば大丈夫だと思いますが…)
私は後ろからの攻撃やエルフ達の叫び声を気にしながら全力で岩山を駆け抜けるのですが、町の中に侵入してくる不審者ならともかく、外に出て行く不審者を何時までも追いかけて来るとは思えません。
それに開けた岩山とはいえ障害物となる木々が生えていますからね、矢の届かない位置まで逃げてから木々の後ろに滑り込めば、それ以上エルフ達からの追撃はありませんでした。
※人外種の基本スペックは高いのですが、人外化が進むと徐々に人里に居るのが厳しくなっていきます。




