264:我慢比べ
怪しげな祭壇を吹き飛ばすと辺りに漂っていたデファルセントの力が消え『ギャザニー地下水道』に居るモンスター達が弱体化して混乱したような気がします。
しかも『歪黒樹の棘』が後ずさるように縮んだ事でスキルの封印効果が弱まり、そのおかげでリンネさん達も戦えるようになったので一気に押し返せると思ったのですが、戦況を把握できていないのか不思議そうな顔をしている人が大半と、なかなか難しい状況ですね。
「まふかさん、動けそうですか?」
「え…あっ、ああ、う、うん」
とにかくまふかさんだけでも立て直ってもらおうと地面に下ろしてから各種ポーションを渡しておいたのですが、まふかさんはトロンと惚けた表情のまま私を見上げているだけで動き出す様子がありません。
「回復してくださいね?」
潤んだ目で見上げてくるまふかさんの艶めかしい四肢は魅力的ですし、そんな身体が醜いモンスター達によって汚されているというのは心が痛むのですが、ここで反撃を開始しなければゴブリン達やヒトデ達の逆襲を受けるかもしれませんからね、心を鬼にして反撃に移りましょう。
「わ…分かっているわよ、そんな事!」
言われてからやっと、まふかさんはハッとしたような顔でノロノロとポーションを飲み始めたのですが、この様子だと即時参戦は難しそうだと私は辺りを見回しました。
まあ色々と厳しい体験をした後ですからね、リンネさんのクランメンバーさん達の中には青ざめた顔で震えたままの人もいますし、中にはいきなりティベロスター達が引いて行った事に呆然としている様子の人や、不完全燃焼で身体を持て余してモジモジしている人、スキルの封印が解けた事に気付かず……その、仲間内でイチャイチャしている人が居たりとかなり自由なご様子ですね。
「皆さん、一気に畳みかけますよ!」
PT違いではあるのですが、仕方がないので私が号令をかけると皆さん驚いたように顔を上げ、それから股間に手が伸びかけていた人達は顔を真っ赤にして俯いたのですが……何とかその声掛けで動き始めてくれました。
「あ、ああ、そうだな……皆動けるか!?」
そしてここでもリンネさんが真っ先に反応して皆に声をかけてくれたのですが、そのリンネさんも艶のある軽いウェーブのかかったセミロングの女性を腕に抱えていてと、すぐに動ける状態ではないのですよね。
たぶんその人がテルマさんだと思うのですが、どこかお嬢様然としたその金髪の女性は散々いたぶられて意識が飛びかけているのかリンネさんの腕の中でぐったりとしていて、こちらもすぐに戦力になりそうな感じではありません。
まあ幾ら相手が弱体化して反撃のチャンスだと言っても、彼女達が今まで散々エトワーデメーのピンク色の霧を吸わされ、ティベロスターの媚毒を注ぎ込まれていたという事実は変わりませんし、昂った身体はそう簡単に納まりがつかないのでしょう。
当然私の身体も散々いたぶられた後ではあるのですが、種族的な耐性なのか進化による状態異常のリセットが働いているのか、むしろフワフワしながらも奇妙に冴えわたる感じで、いかにも絶好調といったような感じで気分が高揚しています。
そうしてこういう乱戦に近い戦場での全能感は変なミスを誘発するので戒めるべきなのですが、このムラムラ……ではありませんが、さっさとモンスターを倒してこの空腹や渇きの検証をしたいという事で頭がいっぱいで、とにかく皆さんがノロノロと動き出したのを確認してから、私は混乱して引いて行ったモンスターが多い中、ただ1体だけ退路を塞ぐように蠢いているエトワーデメーに向き直りました。
こうして道を塞いでいるのは別に何かの作戦と言う訳ではなく、ただ弱体化が入ったせいで動けなくなっただけのようなのですが、とにかく退路となる橋の前に陣取るのは体高は3メートルちょっと、横幅も3メートルちょっと、全長は10メートルちょっとと、サイズ感としては大型バスくらいの大きさの五方向に伸びた肉塊で、ヌメヌメした本体から触手を伸ばしてウネウネと蠢いているのは少しアレな光景ですね。
大幅に萎み、プシュープシューと煙を吐こうとしているように唇のような開口部をパクパクと動かすたびに涎のようなピンク色の液体が垂れてと、なかなか見た目がグロテスクになっているのですが……とにかくこれを排除しなければ退路の確保が出来ません。
(牡丹、行きますよ!)
(ぷっ!)
全体的には弱体化の影響に戸惑っているような動きを見せているモンスター達なのですが、それでも混乱するゴブリン達が態勢を立て直して反撃して来れば大変な事になりますし、エトワーデメーが水中に逃げてティベロスター達と合流したら厄介な事になりますからね、可及的速やかに排除して退路を確保するべきでしょう。
なので速攻撃破といきたいところなのですが、一斉攻撃しようにも皆さんの足並みは鈍く、弱体化して萎んだと言ってもその巨体は今もなお脅威である事に変わりありません。
事実、私達がベローズソードの範囲まで近づこうとすると細い触手を伸ばして抵抗するようなそぶりを見せ続けていますし、試しに触手を数本斬り飛ばしてみたのですが……あまりダメージを与えている気がしないのですよね。
触手では埒が明かないと【魔翼】とステップで振り回される触手を掻い潜り、間合いを測りながら何度か本体に攻撃をしかけてみるのですが、一撃二撃とベローズソードで撫で切りにしてみても致命傷には程遠いですし、これ以上死にかけのエトワーデメーに時間をかけていると態勢を立て直されかねません。
(【剣舞】が入れば良いのですが…仕方ありませんね)
スキルが戻って来ているので撫で切りにすれば良いだけなのかもしれませんが、下手に長時間刃を当てていると刀身ごと取り込もうとするように触手を伸ばしてきて、連続攻撃が止められてしまいます。
たぶん近づく者や武器を取り込もうとする習性があるのだと思いますが、連撃を入れたい私からすると少々厄介な特性ですね。
(こうなったら…)
弱体化しているのでエトワーデメーが振り回す触手はどれも単純で単調な物のようですし、下手に時間をかけて数百匹のゴブリン達が襲い掛かって来たら折角ここまで押し返した形勢がひっくり返されかねませんからね、少々危険ではあるのですが速攻で蹴りをつける事にしましょう。
(ぷっい!)
そうして私が突撃のタイミングを見計らっていると、援護するように牡丹が最後のゴブリンシャーマンの杖を構えて、発射して、振り回される触手を吹き飛ばしてくれたのですが、その炎が納まる前に私達はエトワーデメーとの距離を一気に詰めました。
(これで…終わりです!)
私は貫き手の要領で牡丹の魔法攻撃で焙られた肉塊の根元に左手の投げナイフを突き刺し、そのまま内部にめり込ませるように抉り込み……相手の体内で【ルドラの火】を発動させました。
「ーーー・-----!!」
いきなり体内から燃え上がったエトワーデメーは音にならない叫び声をあげながら身もだえし、久々にクリーンヒットしたような気がする【ルドラの火】は私の魔力が上がっている事もあり大ダメージを与えるのですが……流石にこれだけの巨体となると耐久度は高く、なかなか削りきる事が出来ません。
(予想以上にタフですね…これは…)
ゴブリンシャーマンの杖と貫き手の一撃からの【ルドラの火】で削ったぶんは半分にも足らずと、一撃必殺のつもりで繰り出した攻撃が膨大なHPで受け止められてしまったのですが、まふかさんやリンネさん達の助力が得られない現状ではこのまま一気に【ルドラの火】で削りきるのが最速で……私はそのまま攻撃を続行しました。
「ふっ…ん…っ」
ただそうなると、当然のように密着状態の私達を排除しようとエトワーデメーの体から大量の触手が伸びてきて、集中力を削ごうという様に私の身体に細かい触手を絡みつかせ、ほじくり回すようにぷっくりと膨らんだ乳輪を弄り回し、硬く尖った先端をカリカリと別の触手が弄り回してと、嫌らしい攻撃を仕掛けてきます。
そんな弄ぶような刺激に対して、進化の影響で一回り大きくなってしまった胸からは母乳がタラリと垂れてきたのですが、それを吸い取ろうというように触手が乳首をカミカミしてくると身体がビクンと跳ね、身体が喜んでしまい力が抜けてしまいそうになりました。
「そ…んな、ところばかり…ぃ」
母乳をチューチューと吸われると射精後に残った精液を無理やり吸い取られるような奇妙な爽快感が広がり、中途半端にもどかしい刺激に私は歯を食いしばって耐えるしかありません。
そうしてエトワーデメーに突き刺した左腕を奥へ奥へ押し込んで、魔力を送り込み続けるのですが……こうなったらもうただの我慢比べですね。
「ぐっ…あっ…ひっ…そんな所、引っ張ったら…ふ…ん゙ッう」
弱体化した影響でそれ程凶悪な触手は無いと判断したのですが、ここが弱点であるという事を如実に表してしまっている下品な勃起乳首は私が思っているより弱くなっているようで、じっくりしつこく丁寧に弄られるだけで股間から恥ずかしい液体がとめどとなく溢れ、その匂いに釣られるように他の触手が集まってきました。
(集中、しないといけないの、です、が…ん、ぁああ…)
触手に拘束される事は想定しておくべき事柄であり、短期決戦に持ち込んでも大丈夫というのは私の判断ミスともいえるのですが、そんな事とは裏腹にフワフワしてゾクゾクした口元は緩んでしまい、涎が垂れます。
ここでいってしまえば【ルドラの火】の炎が消えて反撃のチャンスを一つ失うのですが、その事を自覚すると一種の被虐性ともとれる昏い欲望が体の奥底から湧き上がってきて、このまま負けてもいいのでは?なんて囁くもう一人の私が居るのですが……ここで私が負けたら皆さんが蹂躙される事になりますからね、この耐久戦に負ける訳にはいかないので歯を食いしばって必死に触手の動きに耐えました。
(ぷーい!ぷー!!)
勿論こうして私がエトワーデメーと激しい持久戦をくり広げている間にも牡丹は頑張ってその触手を弾いてくれているのですが、流石に数十本の触手が相手となると多勢に無勢ですね。
押し切られて絡めとられ、媚毒の残り香のようなヌメヌメシした触手が何本も私の身体に絡みつき、肌を撫でられるだけでたまらなくなってしまい、身体が震えます。
(気持ちいい…じゃなくて…んん…っ)
そうして触手に絡めとられて動きを止めた私に向かってくるのは男性器を模した一本の触手で、まるで最初から女性を喜ばせるポイントを知り尽くしているかのように愛液滴る股間に伸びてきていたのですが、恥ずかしい事に私の身体はもう迎え入れるように腰が動いてしまいました。
「うっ、ん…あっ、ああぁぁあああ…んんっ、んーー…」
そうして大き目の返しがついている触手がピッタリと閉じた大事な所を押し開き容赦なく入って来たのですが、それはゴブリンジェネラルのように凶悪な形状をしている訳でも、人外の動きをする訳でも無くて、ただただ普通で、常識的で理解可能な刺激を与えてくるのが逆に制御可能な範囲すぎて、お腹の中で前後するその形を強く意識してしまいます。
(これは逆に…ちょう、ど…っ、よすぎ…でッ)
腰を動かせば私の思ったとおりの場所を突いてくれますし、ゆっくりゆっくりと襞の一つ一つを掻き分けるように挿入された肉棒が子宮口に優しく口づけするようにクチュクチュと押し当てられると、ゾクゾクが背筋を通り抜けて頭の中が真っ白になりかけました。
(そ、それでも…エッチな事には、まけ、ませんっ!!)
「ーーーーー!!-----!!!?」
私は歯を食いしばり、残りの魔力をすべて【ルドラの火】に変える勢いで力を込めると青白い炎が燃え上がり、エトワーデメーは奇妙な叫び声を上げながらグズグズと煮え滾る肉塊へと姿を変えていき……溶けるようにして動きを止めました。
「はぁー…はぁー…」
股間から抜けた触手がボトリと地面に落ちるのに合わせて足元がふらついたのですが、昂った身体を持て余しながらも何とか燃やしきったエトワーデメーを見ながら息を吐き、私は突き刺していた左手をその触手の塊から抜いたのですが……ヌトヌトした液体が糸を引いて気持ち悪いですね。
『『ギャザニー地下水道』に現れたエトワーデメーがブレイカー達の手によって倒されました。初回討伐者達にはSPが3ポイント進呈され『エトワーデメーの討伐者』の称号が授与されます。再度エトワーデメーが召喚される場合がありますが、条件及びエトワーデメーについての情報は最寄りのブレイカーズギルドにてご確認ください』
そうして何とも言えないムラムラした感情を持て余しながら討伐報告のワールドアナウンスを聞いていたのですが、少し遅れてこれで本当に『ギャザニー地下水道』を攻略したのだという達成感が膨らんできて、本当にこんな行き当たりばったりで何とかなった事に胸をなでおろしました。
※誤字報告ありがとうございます(1/22)修正しました。




