249:まふかさんの秘策
何とか『エルフェリア』に到着した私達なのですが、ゴブリンに捕まってしまった女性PTの事が気になってしまい、結局様子を見るために引き返す事になりました。
一応軽い休憩とアイテムの補充をしたのですが、流石にこれから救出に行くというタイミングで他の町にポータルで移動してとなると時間がかかりすぎてしまうので、アイテムの補充は『エルフェリア』にある道具屋の市販品で妥協ですね。
内訳としては牡丹の収納ポケットにポーションを十本ずつ、毒消しと麻痺治しを五個ずつ、後は投げナイフを合計三十本になるように補充しておき、それから私の太もものポシェットにもポーションを一本ずつと投げナイフが五本、それと念のための毒消しと麻痺治しを一個ずつといういつも通りのアイテムを購入しました。
逆にまふかさんは色々と買い込んでいたのですが、見た目的に大きく変わったのは壊れかけていたレザーアーマーを新調した事で『エルフェリア』に伝わる特殊な染料で染め上げた薄緑色の簡素なハードレザーに変わっています。
なんでもその染料で染めた物は多少の魔法防御力が付与されるそうで、結構値が張る物らしくまふかさんのお財布事情がピンチになっているのだそうです。
まあまふかさんの場合はクランメンバーやファンの人達からの貢物が主な収入源でしたからね、クランや集まりを解散させた事で収入が激減してしまい、手元にあったお金もクランホームの売却時にある程度分配してしまったのでもともとあまり持っていなかったとの事でした。
そういう訳でこれからは自力で稼ぐ必要があるので剥ぎ取り用のナイフを購入しており、武器としては鉄製の手斧を二挺お買い上げで、二挺ともコルセットのような大型のベルトに吊り下げる形で携帯しています。
両手斧にしなかったのはこれから相手にするモンスターが小柄なゴブリン達である事や、大型の武器だと振り回されてしまう可能性があるからという配慮らしく、二挺買ったのは二刀流の方が格好いいからという理由らしいです。
まあその辺りの武器のチョイスは人それぞれですからね、ツッコミを入れるのは野暮というものなのかもしれませんが、小型とは言え手斧が二挺となると少々邪魔じゃないでしょうか?
そんないらぬ心配をしてしまったのですが、とにかく私達は色々と準備してから『ギャザニー地下水道』の階段まで戻って来たのですが、障壁のある付近まで近づくとゴブリン達に気づかれる可能性がありますからね、階段を少し降りた所で自信満々に腕まくりをしているまふかさんにこれからの事を聞いてみる事にしました。
「まふかさんには何か作戦があるようですが、これからどうするのですか?」
見下ろした障壁の向こう側には何とか破ろうとした道具の残骸が散らばっているのですが、流石に破られてはいませんね。
どうやらゴブリン達は障壁の突破を諦め離れたようなのですが、それでも障壁の向こう側にはゴブリン達がワラワラと何かしている気配がありますし、無策でその中に突っ込むのはちょっとアレだと思い私達は足を止めます。
「ふふん、そりゃあ幾つか考えはあるけど…まずはコレね」
そう言ってまふかさんが取り出したのは木の枝にも見える、ゴブリンシャーマンの杖ですね。
「回収していたんですね」
乱戦時に倒していたのは知っていたのですが、武器を回収していたというのは今知りました。
「ええ、三本あるけど、一つはあんたに預けるわ」
「ありがとうございます」
という訳でゴブリンシャーマンの杖を一本受け取りアイテム情報を見たのですが……どうやらこれは魔力を込めると火属性の初級攻撃魔法が使えるようになるアイテムのようですね。
ゴブリン用に作られているので大した火力は出ないですし、一回使い切りの消耗品になっているのですが、この辺りは杖を乱獲したら無双できるなんて事にならないように調整されているのだと思います。
まあ使用者の魔力値によって火力が変わるようなので、私の場合はもしかしたらそこそこの火力が出るのかもしれませんが、上手くいっても3発魔法を撃ったら打ち止めで、下手をしたら魔力を込めた時点で自爆して終わりという物が切り札というのは流石に心もとないですね。
「勿論これはオマケね、本命はというと……とうとうあたしも進化する事にしたの!どう?さっきはあんたに良いところを持っていかれたけど、今度はあたしが活躍する番ってわけよ!」
何でもつい先ほどの戦いでレベルが上がり、今まで選べなかった特殊進化先が選べるようになり一気にパワーアップが出来るという事なのですが、本当にボス戦の前に進化なんてして大丈夫なのでしょうか?
というのも私も先程の戦いでレベルが上がり、スキルレベルがMaxになっているものがあるのですが、これからゴブリンの集落に再突入というタイミングで使用感が変わっても嫌なのでそのままにしているくらいです。
(もしかしてですが…)
まふかさんが救出に戻りたい理由というのは進化して無双したいだけなのかもしれませんが、ゲームをする理由は人それぞれですからね、配信者が映えを気にするのは当たり前の事かもしれませんし、最終的には好きなように楽しんだら良いのかもしれません。
「それじゃああんたはそこであたしの真なる姿を見て…っひぃッ!!?」
まふかさんはやっと進化出来るとウキウキした様子でステータス画面を弄っていたのですが、進化を選んだ瞬間いきなり服が弾け飛び、お腹を押さえながら崩れ落ちました。
「まふかさ…っツ!?」
「ぷい!?」
流石にちょっと予想していなかった出来事に私は慌ててしまい、崩れ落ちるまふかさんを支えようと手を伸ばしたのですが……ピリッとした電気的な痛みに驚いて手を引っ込めてしまいました。
(電気系と風系の…魔法?)
崩れ落ちたまふかさんを中心に電気と空気が動いているような気配があるのですが、風と電気の混合属性でしょうか?そんな物をいきなり纏ったものですから『エルフェリア』産のレザーアーマー以外の耐性の無い装備が弾け飛んでしまったようなのですが、何とか原型は留めているのでリュックの中身などは大丈夫そうですね。
たわわなバストをもったスッキリとした裸体が直接ハードレザーの鎧に押し付けられているというのはなかなか艶めかしい恰好ではあったのですが、そんな事よりまふかさんが電気を纏っているという事の方が問題でした。
進化に伴う魔力の暴走と呼ぶべきでしょうか?自分の魔力なので自傷ダメージを受ける事は無いのですが、痛みがない分刺激だけが届いている状態のようで、まるで神経を直接弄られているような電撃を受けているまふかさんははしたない嬌声をあげて苦しそうに悶えているのですが、あまりにも強い刺激はそれだけで身体に毒ですからね、電気がバリバリするたびにまふかさんの身体が跳ね上がり、HPが緩やかに削られていきます。
(何とかしてあげたいのですが…)
先程まふかさんに触れた指先はまだ痺れていますし、よく見てみると火傷の痕がありますね。
そんな状態なので素手で触るのはかなり危険だと思うのですが、魔法防御力のある『エルフェリア』のレザーアーマーはボロボロになりながらも耐えているようですし、何かしらの魔法防御を施せば触れる事が出来るようになるのかもしれません。
「ンおっ、オ゙、オ゙、オ゙、オ゙、オ゙、ッ!?」
私がそんな考察をしている間にも、まふかさんは魔力の渦に翻弄されるように全身をビクンビクンと痙攣させながら悶えているのですが、ビリビリした電撃が乳首や下の蕾に容赦なく襲い掛かり、風の魔力によって全身を丁寧に弄られ股間からは恥ずかしい液体がとめどめなく流れ落ちています。
効果としてはストライプベアの風の膜のような物なのでしょうか?バリバリッと音が聞こえてきそうな電気がはじける度にまふかさんがはしたない獣のような声をあげており、私は少しでもその刺激が軽くなるかと思いポーションをかけようとしたのですが……HP回復ポーションが電気と風の膜によって弾かれてしまったので、回復は諦めざるを得ませんでした。
「ッ…まふかさん、頑張ってくださいっ!」
まふかさんはビクンビクンと身体を震わせながら、身体が作り替えられていく奇妙な感覚と電撃と風の愛撫によって身体を蝕まれていたのですが、無意識なのか助けを求めているのか私に向かって手を伸ばし……私は少しでも力になろうと手のひらに【オーラ】を込めて魔法防御力を上げた後にまふかさんの手を掴んだのですが、それでもかなりピリピリしますね。
「ま、まってぇ…いまそんにゃ、さわらなっ、ゆび、からめたぁっ…あひゃま、おかっ、おかしくぅっ、ゆり、ユリエ…イクッ、いっ…あっ、ああぁあっ…ッゥーーーー!!!?」
まふかさんは私の手を握り返して指を絡めてきてくれたのですが、その動作は本当に無意識だったようで、掴まれた事によって耐えようと歯を食いしばっていた最後の堤防が決壊してしまったようでした。
「あひぃっっ、おほおおぉおおっっっ!!?」
追い打ちをかけるようにバリバリバリッッ!!と全身に纏わりついた電撃と風の渦が弱い所を集中的に攻め続け、まふかさんは私の手を掴みながらビクンビクンと仰け反りいき果てたのですが、進化というのは本当に大変な事なのですね。
「ぷぃー…」
そんな感想を抱いた私をよそに牡丹だけがなんともいえないような雰囲気を醸し出していたのですが、そんな私達に見守られながらガクガクと身体を震わせ色々な物を噴き出したまふかさんはだらしない顔を晒していたのですが、とにかくそれで何とか無事に進化が終わったようでした。
※特殊進化の条件は獣系の人外種であり、レベルが20以上(進化確認はレベルが上がったタイミング)かつ『狂乱』と『火種(何かしらの魔力的なバフや燃料となるモノ)』を概念的な理由やスキル的に満たす事です。
まふかさんの場合はユリエルの手によって乱れ狂う事があり、魔力的なベースともなり得る【オーラ】を覚えていた事もありその条件を満たしました。
詳細は次話でやる予定で、ある意味ユリエルが関係してきている進化先なのでちょっとアレなのですが、まともに動く事さえ出来れば近距離短期決戦においてはかなり強力なスキルを持つ種族ではあります。




