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246:持久戦(後編)

 正面から突撃して来たホブゴブリンBは私に近づいた事で魅了の影響を強く受けたのか、子供の腕くらいある凶悪なモノがそそり立ち腰布からはみ出て揺れていたのですが、こんな時に何を考えているのでしょうね。


(戦闘中だというのにお盛んな事です)

 羞恥と嫌悪感で目を逸らしたくなるのですが、余所見をする訳にもいかないので出来るだけ気にしないようにしてその動きを見据えます。


 そして周囲にはホブゴブリンBが突撃した後のおこぼれを狙おうとするゴブリン達や、どうにかして出し抜き手が出せないだろうかと指をくわえているゴブリン達が控えていたのですが、下手に乱入しても暴れるホブゴブリンの攻撃に巻き込まれるだけですからね、正面切って何かするという訳でもない疑似的な1対1という状況が生まれていたので、私は目の前のホブゴブリンの対処に集中する事にしました。


(胴体は駄目ですが…っ!!)

 【鞭】スキルが封印されているベローズソードは魔力の刃を動かしているだけですからね、ゴブリンを両断するくらいは出来ますが、ホブゴブリンを両断する力があるかはわかりません。


 いくら種族補正があると言っても倍率の元となるのが非力な女子高生の力ですからね【筋力増強(微)】のスキルは発動していないようなので、どうしてもいつもより攻撃力が下がってしまいます。


 しかもこの時私はバランスを崩して後ろに倒れかけているのを無理やり【魔翼】で固定して姿勢を維持している状態ですからね、まともに踏ん張る事も出来ません。


「これで!」

 それでも捕まえ押し倒そうと伸ばしてきたホブゴブリンの右腕を上半身の捻りと傾きで逸らし、逆手に持ち直した左の投げナイフで外側に受け流す様にして突き立てます。


 そこから更にホブゴブリンの左足にベローズソードを絡みつけ、おもいっきり引き斬りました。


「GO…BUxOuuuUOoOOOO!!?」

 【剣舞】がないので即時両断とはいかなかったのですが、ゴリゴリと(のこぎり)で引き斬る要領で左足を刎ね飛ばすと、流石に感覚の鈍いところがあるホブゴブリンも目を白黒させて叫び声を上げます。


 そして実際に攻撃してみた感想としては「意外と脆い」というもので、ストライプベアのように障壁を張っている訳でも無いので意外と簡単に切断できるようなのですが、耐久度の高さだけは厄介ですね。


 片足を失ったホブゴブリンBはバランスを崩して前のめりに転倒してくるのですが、HPバーという意味合いでは結構残っており……まあほっておけば出血ダメージで死にそうなレベルの重傷なのですが、変な悪足掻き(最後の抵抗)をされても困りますからね、私は即死させるために左手で【魔水晶】を摘みながら、崩れ落ちてくるホブゴブリンBの右目に【オーラ】の結晶で強化した貫手を突き入れます。


(止めです!)


「BU…x…!!?」

 プチュリと目玉が潰れるような感触はちょっとアレだったのですが、そのまま【魔水晶】の残りMPを頭の中で爆発させれば、その衝撃波を受けたホブゴブリンBの頭蓋骨にヒビが入り、穴と言う穴から血が噴き出し絶命しました。


(これで2体、残り1…)

 幾らホブゴブリンの耐久度が高いと言っても、簡単な魔法なら相殺できる衝撃波を頭の内部から受けてはひとたまりもなかったようですね。


 増援は次から次に来ていて油断は出来ませんが、第一波のホブゴブリンはこれで残り1体です。それを倒せば第二波まで一息入れる事が出来るかもしれません……そんな事を考えていた事が油断となってしまったのか、残り1体のホブゴブリンCの動きを探ろうとしたところで、私は自分の失策に気づきました。


「BGOBUUuxxxAAaa!!」

 ホブゴブリンBの後ろに隠れていたホブゴブリンCが、左足と右目をを失ったホブゴブリンBを蹴り飛ばして私に押し付けてきたのです。


「なっ…」

 崩れ落ちるホブゴブリンBに巻き込まれないよう余裕を持って対処するつもりが、いきなり身長2メートル近いブクブクと太った300キロ前後の物体が圧し掛かってくる事になったのですが……【魔翼】で位置(体勢)固定していた事もあり、回避が間に合いません。


「くっ!?」

 それでも何とかギリギリのタイミングで気付けたという事もあり、若干左に逸れる事が出来たので直撃は免れたのですが、回避できたのはそこまでで、ホブゴブリンBのダランと脱力した右腕と右半身がラリアット気味に私の胴体をとらえました。


「ッ…うぅっ…」

 【魔翼】の力でもホブゴブリンBの巨体を支える事は出来ずに押し倒され、背中から落ちた衝撃で意識が飛びかけたのですが……こんな状態で意識を失ったら一巻の終わりです。


『ぷっい!?』

 何とか意識を繋いでいると、体の上にホブゴブリンBの腕があるので挟まれる形となったイビルストラ形態の牡丹も前垂れ(両腕?)を動かす事が出来ないのですが、それでも盾を押し当て少しでも支えてくれましたし、フードの中から『HP回復ポーション』を取り出し打った頭にかけてくれました。


『大丈夫…です』

 何とか押し潰される事は免れましたし、ポーションの力で多少は意識を取り戻したのですが、やっと捕らえる事が出来た私に対してゴブリン達は大はしゃぎの大合唱です。


 そうして私の動きを止めた事で「GOBUGOBU」と舌なめずりして跳びかかって来るゴブリン達がいたのですが、まるで「これは俺の獲物だ」とでもいうようにホブゴブリンCが他のゴブリンを殴り飛ばしており、ついでだというように私の上に圧し掛かるホブゴブリンBごと踏みつけてきました。


「GOxBBUUuu!!」


「ぐっ…」

 ミンチにしたら楽しむものも楽しめませんからね、多少の手心もあるようですし、持ち前の種族補正で耐えたのですが、容赦のない踏みつけに息が詰まり骨が軋みます。


 そういう単純な痛みもあるのですが、私の右太ももにはホブゴブリンBのアソコが押し付けられていて、先走ったモノやら血が抜けた途端にフニャフニャになっていく感覚と悪臭が気持ち悪すぎて……涙と嘔吐がこみ上げてきそうです。


「GOBUxu、GOoo!!」

 そんな私の表情を楽しむようにニタニタと笑うホブゴブリンCは意外と知恵が回るのか、右手に持っているベローズソードを警戒した動きをみせていますし、そもそも右手が下敷きになっている状態だとまともに振るう事ができず【鞭】スキルも封印されている状態では伸び縮みがいまいちで、射程がたりません。


 それでも万が一の反撃を考えてか、ただいたぶりたいだけなのか、ホブゴブリンCは手近なゴブリン達の方を向いて粗末な木の槍を奪い取り……。


(今、です!)

 ホブゴブリンCが後ろを振り向くという明確な隙をみせたところで、私は結晶化させた【オーラ】を使ってベローズソードを掴みホブゴブリンの下から押し出すと、その無防備な首目掛けて魔力操作の刃を伸ばしました。


 止まっていれば【オーラ】の精密動作も可能ですし、糸状にする事も出来ますからね、乱戦中に精密操作なんてやっていると遠距離攻撃の良い的になってしまうのですが、動けない今だったらあまり関係ありません。


 右手から伸ばした【オーラ】を紐状に伸ばして数メートル、私の魔力が流れていればベローズソードは操れるようですし、強引にそれだけ延長すればホブゴブリンCまで届きます。


「GOBt!?」

 そしていきなり首に絡まりついてきたベローズソードを引き千切ろうとするホブゴブリンCなのですが、私は首の血管に突き刺さるように力を込めた後……おもいっきり魔力を込めながら刃を引きました。


「xBUxtt…x!!?」

 流石に丸太のような太い首を両断する事は出来なかったのですが、それでも首の骨と動脈を断ち切る事には成功したようで、ホブゴブリンCは大量のホログラム()を撒き散らしながら糸の切れた人形のようにその場に落下しました。


 そうして凄惨な様子で(血を噴き上げながら)崩れ落ちたホブゴブリンCに対して周りが一瞬唖然と静まり返ったのですが、その隙をつくようにして、私はまずは自分の上に圧し掛かってきているホブゴブリンBの巨体を押し退けにかかります。


「んっ…くっ…」

 あまり物事を深く考えていないゴブリン達ですし、これだけの重量物が乗っていればそう簡単には脱出できないだろうと高を括っていた(無理攻めしなくていい)のかもしれませんが、種族値と封印されていない人外系スキルのお陰で筋力値はそれなりにありますからね、ゴブリン達が何かおかしいと騒ぎ始めるまでに何とか這い出る事には成功しました。


(牡丹!)


(ぷっ!)

 恐る恐る襲撃を開始したゴブリンくらいなら【オーラ】越しのベローズソードで何とかなりましたし、私はゴブリン達に掴まれないように気をつけながら【オーラ】で強化したスカート翼で打ち据え弾き飛ばし、ベローズソードで追撃し、矢と魔法は牡丹に任せて体勢を整えます。


 嫌な思い(押し付けられ)はしましたが、何とか第一波の強敵を排除したところで、私達はホブゴブリンBとホブゴブリンCとその辺りに転がっているゴブリン達の死体を土嚢代わりに簡易な障害物を作ると、その後ろに隠れて一息入れました。


(めちゃくちゃ痛いです…)

 即時に死亡する怪我という訳ではありませんが、流石に押しつぶされた時にアチコチ痛めましたし、最悪骨に罅くらいは入っているのかもしれません。


(ぷい)

 なのでとりあえず内臓回復用に1本服用し、後は痛みのある個所に『HP回復ポーション』をかけて治療しておいたのですが、だんだんと残りポーションも心もとくなってきていますね。


(そうも言っていられませんが)

 この状態で動けなくなる訳にはいきませんからね、治療用アイテムをケチる訳にはいかないのですが、それでも持久戦の残り時間もまだまだあるので少し不安にもなります。


 ただでさえ今隠れている障害物(死体の山)は正面からの弓矢くらいしか防げないものですし、簡単に横に回り込まれますからね、ここからはもっと集中して、負傷しないように立ち回る必要があるでしょう。


 そう集中力を高めていったのですが、ホブゴブリンという突撃隊長を失ったからか、それとも流石に被害を出しすぎて魅了の力でも二の足を踏むようになったのか、残りのゴブリン達はおっかなびっくり攻撃を仕掛けてくるようになり、やや攻勢も小康状態になってきたような気がします。


 それでも断続的に攻撃してくる気概は凄いと思うのですが、数が揃わないと攻撃を躊躇うようになり、落ち着いて対処する余裕が生まれてきたので、隙を見てゴブリン達を積み上げていきましょう。


(後は…)

 数が揃えばまた襲撃が始まるのですが、それでも第二波を蹴散らした辺りで慣れて来たのか周りを観察する余裕が生まれ、どうやら遊撃に出ているまふかさんも無事なようですね。


『まふかさん、あまり無茶はしないでくださいね』


『わかっているわよっ!っと、いまちょっと、忙しいからっ!!』

 声をかけると怒鳴り返すようなまふかさんの叫び声が返って来たのですが、私がゴブリン達のヘイトを稼いでいる(魅了を振りまいている)事もあり、上手く立ち回って数を減らしているようですね。


 追加のホブゴブリンは他のゴブリン達と押し合いへし合いしながら集落の正門側から押し寄せて来ているのですが、ボスゴブリンの姿はまだ見えませんし、攻め手がこの調子なら何とか制限時間まで耐えきる事が出来そうでした。

※少し修正しました(8/8)。


※誤字報告ありがとうございます(8/9)。

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