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24:装備を整えようとしたらクエストを受けました

 まずは食料確保ですね。ブレイクヒーローズの食料事情が他のゲームと違うところは、他のゲームのようにインベントリ(アイテムボックス)にストックするという事が出来ないので、その場で食べるという事が主流になっている事です。

 一応外で食べるように纏められたお弁当や携帯食はあるのですが、町から町の移動時間は平均数時間と、わざわざモンスターが襲ってくる場所で食べる必要がありません。それならいっそ、食事は町で取ればいいという考えですね。

 そのため商店街の一角がレストラン街のようになっており、業務提携している有名チェーン店が入っていたりと、ちょっと不思議な光景が広がっています。ゲーム内容に配慮した外観をしてはいるのですが、純ファンタジーの世界の中に、某道化師がマスコットをしているお店が入っているというのはなかなかシュールな光景ですね。まあその辺りは大人の事情(広告収入)も絡んできているのでしょう。

 HCP社はこの辺りは結構ドライな考えで、他社との業務提携をよくしており、有名ブランドの物が結構入っていたりします。「餅は餅屋、本職に任せよう」という方針があるらしく、データに落とし込む努力(技術)は必要になりますが、任せられるところを他社に投げる事で、ゲームの質を上げようという考え方です。後はまあ単純に、時代考証を突き詰めすぎた(悪い癖が出た)凄い料理(ゲテモノ料理)が出てきても困りますので、これはこれでいいのかもしれません。皆が食べ慣れた物があるというのは安心できますからね。

 食事の仕様に関して現実と違う点をあげるとすれば、水分補給は状態異常(『渇き』)を回復するものなので飲まなくてもいい事と、空腹度に応じて食事をとるという人が大半なので、時間による混雑がない事でしょう。ゲーム内時間ではそろそろ夕方に差し掛かるくらいの時間になっているのですが、夕食を求める人達で混雑しているという事もありません。

 とりあえず、満腹度もそこそこ減ってきていたので、(まば)らに()いているフードコートのような場所でハンバーガーセットを食べました。お値段は800F。いつもならこの手のファーストフードは食べないのですが、折角ですしね。


 その後、雑貨屋で携帯食を買い込みました。買った携帯食も某ブロック型栄養食品と酷似しており、味はプレーンにチーズにフルーツにチョコにメープルにバニラと、そのままのラインナップですね。全種類試してみたかったのですが、食料を入れておくベルトポーチに4箱までしか入らなかったので、プレーンとチーズとフルーツとチョコの4種類を選んでおきました。

 残り2箱はナップサックに入れておけば良いのかもしれませんが、中でぐちゃぐちゃになっても嫌なので、また今度にしましょう。


 値段は1箱300Fです。1箱4本入りで、レアリティは【N】(ノーマル)の、品質は【C】でした。1本の満腹度回復は20%と結構効率が良いですね。まあ他社との提携品でもありますので、この辺りの効率が良いのは大人の事情なのかもしれません。


 雑貨屋ではレアリティが【UC】(アンコモン)の初心者ポーションと【Co】(コモン)のポーションも売っていたので、通常のポーションの方を2本買っておきました。品質に関しては両方【C】で、店売り品はだいたいこれくらい(【C】)なのでしょう。

 お値段は1本5千Fと消耗品にしては高かったのですが、回復手段が他にないので必要経費だと割り切りました。


 食料品と回復アイテムが確保が出来たので、続いては装備ですね。金角兎の攻撃を受けたあたりからスコルさんの剣の耐久度が不安なのですが、買い替えるかどうかは、修理の仕様や他の剣を見てから判断する事にしましょう。

 次に防具ですが、こちらのお店は大きく分けると2種類あり、『防具屋』と『服屋』に分かれていました。『防具屋』の方は鎧や盾などいかにもファンタジーといった物が売っており、『服屋』の方では布で作られた服全般が売られていました。性能面では断然防具の方が上なのですが、服の方は有名ファッションブランドが多数入っており、それが売り場面積にも直結しています。防具屋の方には武器屋も一緒に入っているのですが、売り場面積としては大体同じくらいの大きさがありますね。私が求めるのは見た目より性能ですし、まずは武器・防具屋の方に行ってみましょう。


 並ぶ鎧兜に、並ぶ武器。アルバボッシュにある武具屋は金属の香りが漂うどこか工場を思わせるシンプルなお店で、店の裏手から鎚で金属を叩く音が響いていました。

 私と同じような、いかにも初心者装備といったプレイヤーの方々が自由気ままに店内を見て回っているようですね。鎧兜を前にして、目を輝かせている人達が見えます。

 接客用の店員をプレイヤー一人一人に配置する訳にもいかず、といって私達(プレイヤー達)は武具の目利きが出来る訳ではありません。そのあたりを考慮したのでしょう、商品の説明()わりに店売り品はレアリティや品質などが見れるようですね。種類ごとにまとめられた同じようなデザインの武具も、品質や効果が一つ一つ違っていて、見て回るのも楽しいですね。

 ただ、最初の町だからかもしれませんが、全体的に質の低い物が多いような気がしますね。作りの甘い物が多く、高価な物も置いていません。ゲームの仕様(最初は弱い)と言われればそうなのかもしれませんが、何か少し気になりますね。とはいえ流石の私でも「この店品揃え悪いですね、何故ですか?」と口にするのは憚られましたので、黙っておきましょう。

 まずは武器からと店内に飾られている剣を見てみたのですが、スコルさんの剣よりも品質の良い物は置かれていないようですね。となれば修理一択です。


「すみません、修理についてお聞きしたい事があるのですが」

 私は武具屋の前に出ていた看板のマークと同じ模様が描かれたエプロンを着たドワーフの男性に声を掛けます。


「ん、おお、何だ?」

 品出しをしていたのは、髭面のドッシリした体型の、いかにもドワーフと言う見た目の男性です。男性は手の汚れをエプロンで拭いながら、私に向き直ります。


「この剣なのですが、修理する事はできますか?」

 私がスコルさんの剣を見せると、ドワーフの店員さんは難しい顔をしました。


「うーむ、出来る、と言いたいところだが、今は難しいな。これは鋼の剣だろう?今ウチで取り扱えるのが鉄製までだからな」

 なんでも突如仕入れ先の鉱山から魔物が溢れ出てきたそうで、今は材料となる鉱石が入ってこないとの事でした。スコルさんの剣を直すのにはその鉱石が必要で、今は修理する事が難しいとの事でした。どうやら品揃えが悪いのもその(魔物の)せいだったようですね。


「なるほど」

 イベントですね。わかりやすいフラグに、少し胸がときめきます。


「ちなみにその鉱山と言うのはどの辺りにあるんですか?」


「ん?もしかして見に行くつもりか?やめとけやめとけ、言った通り魔物が溢れていて危ないぞ。一般人が行くところじゃない」


「大丈夫です。こう見えてもブレイカーですから」

 私がギルドカードを見せると、ドワーフの店員さんは目を大きく見開いてから、笑います。


「ちとランクが低いが、まあどんな様子か見てくるくらいはできそうか。ギルドの方にはもう連絡しているから、くれぐれも無理はせんようにな」

 ドワーフの店員さんが笑いながらそう言うと、アナウンスが入りました。


 クエスト、『『(New)北の鉱山を解放しよう』が発生しました、受注しますか?<YES><NO>』


 選択は勿論<YES>。開放しないと修理が出来なさそうですし、せっかくのクエストですからね、お受けしましょう。「ギルドの方にはもう連絡している」との事ですから、もしかしたらギルドのクエストボードの方にも張り出されている物なのかもしれないのですが、こういう風に直接受ける事も出来るようですね。


「わかりました。お任せください。それでは、鉱山の事を詳しく教えてもらっても良いですか?」


「おう、何でも聞いてくれ」


 ドワーフの店員さんに詳細を聞いてみたところ、どうやらその魔物が溢れてきた鉱山と言うのは、はぐれの里(亜人達の村)の北、ムドエスベル山脈の中程にある鉱山のようですね。

 安全圏のギリギリ外周部分という立地のせいか、度々魔物の襲撃を受けており、住人の安全だけを考えるのなら放棄したいところですが、この付近で採掘できる鉱山がそこしかなく、魔物が溢れてきて困っていたとの事でした。


「占拠したのはピットというツルハシを持った悪霊でな、それほど強くないんだが、流石に俺らだけだと手に余ってな」

 モンスターを倒す場合は、ブレイカーが持つ“加護”の力が無ければ難しいのでしょう。


「わかりました。確約は出来ませんが、何とかしてみます」


「おう、無事鉱山が開放されたらその剣直すのにちょっと色をつけてやるよ。ただ、その恰好で行くのは流石に無謀じゃないか?」

 私の格好は破れて穴の空いた服ですからね、どう考えてもこれからダンジョン(鉱山)に挑もうという恰好ではありません。「ちゃんとした防具を買っていきな」という営業トークかもしれないのですが、単純に心配されているだけという可能性が高いですね。


 防具はスキル別に分けると【重鎧(じゅうよろい)】【軽鎧(けいよろい)】【服】【ランジェリー】【大盾(おおたて)】【小盾(しょうたて)】に分ける事ができました。商品の並び方もその分類別に分けられていますね。


 フルプレートアーマーなどの防御力重視の【重鎧】。部分的な個所を守り能力の上がる【軽鎧】。布製品やローブ等を指す【服】。そして、その……ビキニアーマーやハイレグアーマーなどのちょっと装備としてどうなのだろうという物を指す、特殊な効果や耐性が上がる【ランジェリー】ですね。【ランジェリー】の効果が妙に高いのはHCP社の趣味でしょう。

 盾に関してはだいたい80センチ~100センチ以上が【大盾】で、それ以下が【小盾】ですね。違いは体をすっぽりと隠せるかどうかと言うところにあるらしく、使う人がしゃがんで隠れられる大きさがあれば【大盾】という分類になるようです。

 頭や腕なども専用のスキルがあったりするのですが、一応これらのスキルで代用可能です。大きくてゴツイ物なら【重鎧】、レザー系は【軽鎧】、布製なら【服】、装飾品やアクセサリーは【ランジェリー】といった感じですね。


 残金は4万3千F。本格的な装備を買い揃えるのはお金が貯まってからとして、当面の装備をこの資金内でどうするかですね。


 まず最初に考えていた【大盾】ですが、少し持ってみた限りだと厳しい物がありますね。魔人のパワーアシストがあれば持ち上がるのですが、これを持って数時間行軍するとなると厳しい物がありました。予算も足りていませんし、戦闘の幅も狭まりそうなので、一旦保留です。

 【小盾】の方は試してみてもいいかもしれませんね。木製の安い物なら予算内に納まりますし、一度使ってみてから、スキルを取得するか検討してみましょう。


 体装備に関してですが、私の戦闘スタイルを考えると防御をある程度固めたうえでのカウンター戦法というのが一番適しているのですが、腰翼があるので【重鎧】は装備できませんね。無理やり背中側の装備を外すという選択肢もありますが、前後のバランスが悪くなってしまいそうです。【服】系統は魔法のローブ等の高級品を除けば防御力は無きに等しく、見た目装備に近いですね。となると候補に挙がるのが【軽鎧】か【ランジェリー】なのですが……。


「すみません、もう一ついいですか。おすすめ防具ってありますか?」

 折角武具屋の店員さんが目の前にいるのですから、聞いてみましょう。


「ん、ああ、そうだな……」

 ドワーフの店員さんは、専門家らしい難しい顔で顎髭をなでながら少し考えた後、売り場の方に案内してくれます。


「あんたに勧めるのなら、まずはこれだな」

 そして勧められたのが、所謂スリングショットとか、極細紐水着とかいう【ランジェリー】系の防具でした。

※誤字報告ありがとうございます(10/16)訂正しました。

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― 新着の感想 ―
[一言]  盾に関しては80センチ~100センチ以上が【大盾】で、それ以下が【小盾】ですね。違いは体をすっぽりと隠せるかどうかと言うところにあるらしく、しゃがんで隠れられるのなら【大盾】です。 の…
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