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234:PTプレイと連戦

『ねえ、本当にダンジョンは無視するのよね?』

 跳びかかってきている緑色のウルフ……レベル22のフォレストウルフBに対して、後ろに下がりつつカウンター気味にバルディッシュを叩き込んでいたまふかさんがそんな事を聞いてきたのですが、私はモンスターを呼び寄せているフラワーラビットに投げナイフを投げつけてから、跳びかかって来ていたフォレストウルフCに回し蹴りを叩き込みながら答えます。


『ええ、先程説明した通り今のところ『ギャザニー地下水道』には行く必要がありませんし…それともまふかさんは、ゴブリン達が(ひし)めく薄暗いダンジョンを攻略したかったのですか?』

 結局私達は挑発に乗らずに街道を進み、誘導に失敗したと気づいたブッシュゴブリン達が逆上したように襲い掛かって来たのですが、バラバラのタイミングでの攻撃だったので難なく各個撃破する事ができました。


 その後も次々と襲い掛かって来るモンスターを捌き、残りはフォレストウルフが1体と、茂みの奥に隠れるマンイーターが5体と、周囲の偵察と牽制に出ている牡丹の報告ではこちらに向かってきているキラービー(25cmの巨大蜂)が1匹がいるようなのですが、流石に街道沿い(目立つ場所)はエンカウント率が高いですね。


『いや、そう言われると行きたくないんだけど…って、そうじゃなくて…』

 まふかさんは何か納得がいかないというように呟いているのですが、私もなんだかんだ言ってゲーマーの端くれですからね、まふかさんと同じくダンジョンの攻略に向かいたい気持ちはあるのですが、何せプレイしているゲームがHCP社のブレイクヒーローズですからね、ゴブリン達のダンジョンなんて碌でもない目に合う未来しか見えません。


 きっと悪辣で卑猥な罠が仕掛けられているのでしょうという変な意味での信頼がありますし、まふかさんがゴブリン達と組んずほぐれずの戦いをしたいというのなら止めはしませんが、私は出来たら遠慮したいというのが本心です。


 それにどうしても『ギャザニー地下水道』を通らないと『エルフェリア』に行けないというのなら攻略も考えますが、ネットの情報を見る限りでは巨大な亀裂(断崖絶壁)によって道が途切れているせいで通行不能になっているだけのようですからね、私の場合は空に浮かぶ【魔翼】がありますし、まずは飛び越え(ショートカット)られないかを確かめてからでも判断するのは遅くないと思っています。


『それより後ろから蔦が伸びてきていますよ?あとフォレストウルフが…』

 その辺りの考えを説明し、まふかさんも別ルートを探す事には賛成してくれたのですが、それでも残念がっているのは根っからの配信者(撮れ高を気にする)である事と、性格的なものでしょう。


『っと』

 まふかさんは私の言葉で樹上から伸びてきていたマンイーターの蔓をバックステップで回避しつつ、跳びかかって来ていたフォレストウルフDに肘打ちを入れてその体躯をいなします。


 多少ぎこちなかった斧での戦闘も、追加でスキルを取得する事で適応し始めているようで、この辺りのセンスの良さは流石まふかさんですね。


 発音しなくていいパッシブスキルをメインに取得しているのでどんなスキルを取得したのかまではよくわからないのですが、動きを見ている限りでは回避系のスキルと……【オーラ(能力上昇と威圧)】を取得したようです。


 ぼんやりと青紫色寄りの魔力光を発するまふかさんがどうやって【オーラ】を習得したのかは謎だったのですが、もしかしたら靄を固めた棒でズボズボした時に身体が憶えてしまったのかもしれないという事で、あえてその事については深く聞かない事にして戦闘に意識を切り替えましょう。


『げ…(キラービー)が…』

 花の匂いで周囲のモンスターを引きつけるフラワーラビットは率先して倒しているのですが、倒したとしても匂いは少しの間残るので、その場で戦っているとどうしても新手が次々と集まって来てしまいます。


『対処します』

 まふかさんの武器は斧なので、どうしても機動力の高い小型の敵は苦手としており、自然とこういう小型のモンスターは私が対応するようになり、まふかさんは一撃必殺とカウンターでの火力要員、警戒とヘイト管理の牡丹というPT上での役割が出来上がっていました。


『任せるわ、じゃあこっち(フォレストウルフD)はあたしが!』

 残ったフォレストウルフDに向かう前にまふかさんがウィンクをして何かしらのスキルを発動させたようで、魅了の効果で私に向きつつあったキラービーがまふかさんの方を向き、どちらを狙うべきか一瞬戸惑う様にホバリングしたところを、私はベローズソードで薙ぎ払っておきます。


(ヘイト管理関係のスキルでしょうか?)

 スキルは当たり障りのないものしか教え合っていないのですが、目立つ事が好きなまふかさんの場合、ヘイト管理系(視線を集中させる)のスキルを持っていても可笑しくはないですね。


 そうして私がキラービーを斬り払ったところで、まふかさんも肘打ちを入れてよろめかせていたフォレストウルフDに止めを刺してと、なかなか連携も様になってきたような気がします。


(これで…一段落ですね)


『ぷっい』

 一度辺りを見つつ、外周に偵察に出ている牡丹と【意思疎通】で情報をまとめて殲滅を確認すると、私は火照った身体を冷やす様に大きく息を吐きました。


 後はマンイーターが茂みの中や木の上でウネウネしているのですが、これは倒しても倒しても湧いて出てきますし、街道の真ん中にいれば(距離を稼げば)不意打ちを受ける事もなくなるのでさほど脅威ではありませんからね、全滅させる方が面倒なのでサッサと剥ぎ取りをおこないこの場を離れる事にしましょう。


「ふぅーー…」

 こうして連携も取れるようになり、第二エリアでも安定して戦えるようにはなってきているのですが『翠皇竜(すいおうりゅう)のドレス』に身体を締め付けられて責められながらだと、やはり長期戦は厳しいですね。


 呪いの効果による胸の感度上昇は【精神対抗(微)】で多少マイルドになっているのですが、それでも先端を摘まれた状態で激しく動けばその度に引っ張られてしまい、擦れてしまいます。


 痛みや刺激ならそのうち慣れてもよさそうなものなのですが、これも呪いの効果か段々と熱が溜まっていくような感じで頭がフワフワとなっていき、気を抜くとへたり込んでしまいそうになりました。


 顔が火照って汗が滲んで、スカートの中はそれ以外の汁も滴ってと酷い状況になっているのですが、そんな状態になっている事をまふかさんは気付いているのでしょうか?


(気付かれているのでしょうね)

 流石に何か可笑しいと時々私の方を見て何か言いたげにしている視線は感じていますし、その度に羞恥心に似た感情が身体の奥底からこみ上げてくるのですが、今のところは体力を消費する系のバフ(身体強化)でもかけていると思ってくれているのか、その事は指摘されていません。


「で、また魔石集め?」

 戦闘が終わって通常の会話に戻したまふかさんがそう聞いて来たのですが、フワフワしていた私は少し遅れて頷きます。


 正確には魔光剣の修理をするためのスキルを上げる為に魔石が必要なのですが、一々説明する事でもないかと大雑把に端折っておきましょう。


「…はい、剣の修理に必要で…【解体】するのでちょっと待っていてください」

 集中していなければ淫欲に溺れそうになり、まふかさんもどこか落ち着きなくモジモジしているような気がするのですが、こんなところで始める訳にもいきませんからね、冷静になりましょう、冷静に……。


「ッ、ひっ!?」

 そう思いながらモンスターの傍にしゃがみ込むとヌルリとした糸が股に食い込み、油断していた私の口から小さく声が漏れました。


 蕾が擦れるピリっとした刺激に身体が震え、無意識に腰を振りそうになるゾワゾワとした刺激に背筋が粟立つのですが、その感情は【ポーカーフェイス】で誤魔化すように押し込んで、手元が狂わないようにと自分に言い聞かせながら息を吐きます。


「……まふかさん?」


「な、何でもないわよ!それよりさっさと終わらせなさいよね!!」

 そうして集中するようにと自分に言い聞かせながら【解体】を続けようとすると、何故かまふかさんが汗でしっとりとしていた私の髪を摘んで妨害して来たのですが、その事を指摘すると顔を真っ赤にして怒鳴ってきました。


「はい」

 まふかさんも手伝ってくれれば早いのですが、こういう雑用的な事は苦手なのか手伝ってくれないのですよね。


 その事を指摘しても仕方がなさそうですし、とにかく何故か尻尾をブンブンと振って落ち着きなく横を向いてしまったまふかさんに首を傾げながら【解体】を続けていると、周囲の偵察に出ている牡丹から『ぷ、ぷ~うぅぅうい』と、フォレストウルフとフラワーラビットが数体ずつ、少し遠くでストライプベアも確認できたという報告が入って来ます。


 なかなか連戦が続きアイテムを剥ぎ取る余裕がないのですが、その中でもゴブリンシャーマンの杖を回収できなかった(耐久度切れで消滅)のが一番痛いですね。


 回収できなかった理由は自爆のせいで真っ二つに折れてしまったからなのでどうする事も出来なかったのですが、消える前に軽く調べた感じでは使い捨てのマジックアイテムと言う感じで、使用者が魔力を込めれば杖に刻まれた魔法が使えるという物でした。


 ゴブリン用に調整されていたので私達(プレイヤー)が使えたのかはわかりませんが、ヨーコ(錬金術師)さんやカナエ(職人)さん辺りに調べてもらえば量産できて攻略に役立ったかもしれませんね。


 まあ何時までも回収できなかったドロップアイテムの事を考えていても仕方がないですし、まふかさんにモンスターが近づいてきている事を伝えて、次の戦闘に備える事にしましょう。

※行かないという勇気、その理由はここまで読んでくれた方ならわかると思います。


※実はまふかさんも魅了の直射を受けているので一杯一杯です。そしてまふかさんが覚えた【オーラ】は人外系が覚えられるレアスキルレベルのもので、【翠皇竜】がないので結晶化させる事は出来ませんし、ユリエル程自由に使える訳でもありません。


※ゴブリンシャーマンの杖を研究すれば1回限りのスクロールみたいなアイテムが作れるようになりますし、応用で色々と出来る事が増えるのですが、倒した時は大体壊れているのでレアドロップ枠扱いのアイテムです。


※少し修正しました(7/14)。


※誤字報告ありがとうございます(7/15)。

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