227:まふかさんのホーム
灯りをつけていない玄関ホールは天然の採光だけを頼りにしているのですが、そのおかげで逆に光量が絞られ複雑な陰影を描き出していて、中央に飾られているクリスタルガラスのシャンデリアがキラキラと輝いていました。
壁は繋ぎ目のないオフホワイトの石材を削り出した物で、床はザラリとした見た目の千歳茶色の大理石をツルリと加工した物が使われており、磨かれすぎているのかボンヤリとスカートの中が反射しているのが少し気になりますね。
そしてまふかさんは本当にクランを解散させようとしているのか何時ものファンの人達の姿はなく、広がっているのは奇麗な廃墟のような空っぽの豪邸なのですが、インテリア関係は先に売り払ったのか色々と購入する前に館を売り払おうとしているのか、本来なら色々な絵画や彫刻が飾ってあってもいいような場所には何も無く、シンプルな内装は殺風景さに拍車をかけているので余計に寂しく思ってしまいます。
因みに時間を潰している間に少しだけまふかさんのサイトを見にいったのですが、案の定炎上していました。
まあそれでもブレイクヒーローズの事情が分かっている人達からは「仕方がない」という意見が出ており、その辺りの事情がよくわかっていない人達からは「配信停止?」とか「構わん行け!」とか色々勝手に騒いでいる感じなのですが、まあ無理難題を吹っ掛けられる事や、炎上しているのはいつもの事かもしれませんね。
(2階に来いとの事ですが…)
とりあえず玄関を入った正面の突き当りには、左右に分かれる形で枝分かれしたT字の大階段があるのですが、左右のどちらに向かったら良いのでしょう?
『とりあえずどちらに……2階に来たのですが、どちらに向かったら良いのですか?』
自分の足で進みたいと、ピョンピョンと階段を昇って行く牡丹について行く形で私は階段を上がりながらまふかさんに聞いてみるのですが、どうやら階段の先に繋がっているのはどちらから登っても同じ場所のようで、リビングのような小ホールに繋がっていました。
ただ母屋が凵という形をしているのでそこからは左右に分かれているのですが、どちらに向かえばいいのでしょう?
『あー…あたしの部屋は左よ、左右に部屋があるとおもうけど、右側20個目の部屋に来て』
『左に進んで、右の20個目…ですか』
外観を見て十分広いとは思っていましたが、なかなかの部屋数ですね。
出迎えて欲しい……とまでは言いませんが、案内くらいはして欲しいのですが、そもそも部屋まで勝手にあがって来てというのは、何かビックリさせるような仕掛けでも用意しているのでしょうか?
『五月蠅いわね、あたしももう少し階段近くの部屋にしとけばよかったって思っているわよ、適当に奥から決めていったんだからしょうがないでしょ!』
との事で、2階は他にもクランメンバーが使っていた部屋やリビングがあるのですが、まふかさんは特に利便性を考えたりせずに一番奥から使う事にしたようです。
因みにこの豪邸なのですが、渡り廊下で隣接した離れには倉庫や使用人の居室があり、各種機材を入れたら工房に使える建物や裏庭には畑に出来る様な農耕地が広がっていたり、はたまた厩舎や牧場という本当に使えるのかわからない施設まであるようで、かなり自由にハウジング出来るみたいですね。
この辺りの生産設備はプレイヤーが使う事は勿論、ホームであれば賃金を払う形でNPCを雇う事もできるようで、使用人を雇い入れれば本当に豪邸に住んでいるというR Pが可能だそうです。
勿論そういうNPCを雇う事やオート製造に関しては豪邸だけの特権という訳ではなく、工房を持っていれば弟子を取るという形でNPCを雇い入れたり、反対にNPCに弟子入りしたりして、アイテムを作って貰ったり作ったりする事が出来ます。
色々と金銭的な格差やトラブルが生まれそうな仕様なのですが、実害があった場合はブレイカーズギルドに異議を申し立てれば打ちこわしを仕掛ける事が出来るようで、あくどい事をしているとしっぺ返しを受けるという仕様になっているようです。
まあそれならそれで難癖を付けて襲撃してくる人も出てきそうなのですが、そうなると襲撃される側も用心棒を雇ってと……まあこの辺りの対応は鼬ごっこですし、敵は運営だけであるという事でプレイヤー間では仲良くしたいものですね。
(っと、この部屋ですね)
(ぷっい)
ホームの仕様について考えているとまふかさんの部屋に到着し、牡丹が「ま、いっちょ部屋の中を見てやるか」みたいな顔をしていました。
「ユリエルです、入っていいですか?」
一応の礼儀としてノックをしてから入る事にしたのですが……まふかさんからの返事がありません。
「……どうぞ、開いてるわ」
と思ったら、少したってから意を決してというようにまふかさんからの入室許可がおりたのですが、本当にトラップとかがしかけられていませんよね?
「失礼します」
キョロキョロと辺りを見回しながら、不審な痕跡がないかと恐る恐る部屋の中に入ってみたのですが……部屋の中には透かし彫りのレースとシースルーの布地を組み合わせた白いベビードールを着たまふかさんが居て、どこか不承不承というように腕を組んで佇んでいたのですが、その恰好がまた凄いですね。
窓辺に居た時と服装が変わっているのでどうやらこの服に着替えるための時間が欲しかったようなのですが、まず単純にその布地が薄いというより半透明で透けており、うっすらと筋肉のついた四肢が丸見えどころか、反らすようにして強調された胸の先端がピンと立っているのが丸見えです。
下は辛うじてパンツを履いていたのですが、こちらも前から後ろまで回り込むような大きなスリットをリボンで軽く止めているだけというエッチな物を履いており、見えてはいけない所が見えているのですが……まあ見なかった事にしましょう。
頭には狼耳に干渉しないように白薔薇のコサージュで飾られたヴェールのような薄い膜を被っており、レースのロング手袋やガーターベルト、手は【収納】のスキルのレベルが上がったのか人間のままなのですが、踝から下は靴選びが面倒なのかデフォルメされた狼のモフモフした足で、そんなまふかさんの魅力的な肢体がレースのリボンで飾り立てられています。
全体的にはエッチなウェディングドレスといったレースとリボンが多用された服装をしていたのですが、いつもは凛々しいはずのまふかさんが恥ずかしそうにそんな物を着ていると、何かこちらまで赤面してしまいそうですね。
私としては部屋の中に入ったらいきなり殆ど裸の痴女が居たというような虚を衝かれたような感じなのですが、母も家にいる時はよく裸で過ごしていますし、実はまふかさんもそういうタイプの人なのでしょうか?
その割に恥ずかしいのか頬が赤くなっていますし、瞬きの回数が多いいですし、羞恥心に耐えるように口元がピクピクと動きながら尻尾が不安そうに揺れているのですが、もしかしたら私と同じように何かしらの新しい装備を手に入れて、それを見せるために嫌々着ているのかもしれません。
その割に服装に特別な魔力というのは感じませんし、もしかしたらドッキリ的な配信か何かの罰ゲームなのかとカメラや看板を持った人が部屋の中に潜んでいないかと見回してみたのですが……そういう人もいませんね。
そもそも部屋の中にあるのが館の売却処理に残っていたまふかさんが寛げるようにと置かれている片方だけが傾斜したアームのあるシェーズロングだけで、特に人や物が隠れられるような場所がありません。
一応その横には運搬用のマジックバッグが置かれているのですが、流石にそんな物の中に潜んでいないでしょうし、後はドア一枚を挟んでクローゼットルームやバスルームなどにも続いているようなのですが……そちらにも人の気配はないですね。
「って、せめて何か言いなさいよ!こんな格好までしているあたしがまるで馬鹿みたいじゃない!!」
どういう事でしょう?と考え込んでいると、とうとう耐えきれなくなったというようにまふかさんが吠えながら詰め寄って来るのですが、私の方も反応に困ってしまいます。
「えっと…綺麗ですよ?」
「何で疑問形なのよ!?笑いたいのなら笑えばいいでしょ!」
罰ゲームですか?と言うのもなんだったのでとりあえずまふかさんを褒める事にしたのですが、見た目を指摘された事でまふかさんは更に真っ赤になってしまい恥ずかしさで目が潤んでいて、何て声をかけたらいいのかわかりません。
とりあえず誰かが見張っているという訳でもないですし、実行したという証拠を残すためにカメラを回している訳でも無く、罰ゲームでもないとするとこの格好は完全にまふかさんの趣味と言う事になるのですが……顔を真っ赤にしながらなので何か違うような気がします。
「いえ、別に笑うような事でも、それに綺麗なのは本当…」
そんな事を考えていると、まふかさんに手を引かれ、いきなりソファーの上に押し倒され、唇を塞がれてしまいました。
「ん…」
ヌルリと入って来るまふかさんの舌の感触に驚いたのですが、逃れようにも背中に手を回され抱きしめられては逃げる事ができません。
「まふか、さん…?」
それでも何とか体の隙間に手を入れて少し顔を離したのですが、潤んだ瞳の美女のドアップというのはなかなか破壊力がありますね。
「あんたがいっつも変な事するから、身体が疼くのよ…この格好も恥ずかしいのに頑張って着たのに…」
「そういわれ……」
たぶんまふかさんは私と仲良くなりたくて、でもそれが納得がいかないというような顔をしているのですが、私の手の力が緩んだ隙にもう一度唇を重ねてきました。
上から巨乳に押しつぶされて乳首がグニグニと弾かれ押し込まれるたびに息が上がり、腰が浮きそうになるのを押さえつけられているとお腹もどんどん熱くなってきて、子宮がキューっとしまるような感じがするのですが、そんな熱をもった部分をお互い擦りつけあうように押しつけあうと、じわりと体中に幸せが広がっていくような感じがします。
もしかしたら魅了が何かしらの形で暴発してまふかさんが暴走しているのかもしれませんが、心臓の鼓動と息遣いと唾液が混ざりあい、汗ばみ湿った下着はまふかさんも気持ち良くなっているのだという事を伝えてきて、色々と受け入れてしまうと頭の奥がゾクゾクと痺れました。
「ぷいーーっ!!!」
ただまあ牡丹が物凄く怒ってまふかさんに跳びかからんばかりだったので、私はとりあえず攻撃しないように言い聞かせておいて、もう流れに任せる事にしました。
※毎回酷い目にあわせてくるのに本人は平然としていて、今度はこちらから仕掛けようとして色仕掛けをして失敗、強行策に移りました。
モンスターの攻撃やつり橋効果的なドキドキによって人間関係がゴチャゴチャしていて、急にイチャイチャが始まるのがブレイクヒーローズです。
※少しだけ修正しました(6/30)。




