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223:セントラルキャンプへの帰還

 『蜘蛛糸の森』から脱出した私達は、丁度戻って来ていたカナエさんを拾いあげてからセントラルキャンプに向かう事にしたのですが、いくら体調が戻り(卵嚢が解除されて)おもいっきり動けるようになったと言ってもドレス翼を使えばMPを消費しますし、全力移動でのスタミナ消費も馬鹿には出来ません。


 それにカナエさんを左手と尻尾で抱きかかえていてはまともに戦う事も出来ず、襲い掛かって来る蜘蛛達やその辺りに居る通常モンスターから逃げ回るので精一杯だったのですが、それでも何とかMAP上にセントラルキャンプが見えて来る所までやって来て、私達は一度大木の陰に隠れてMPポーションとスタミナポーションを飲んで呼吸を整えました。


「もう少しですよ」

 第二エリアは立体的なジャングルのような地形になっているのでまだキャンプ地は見えてこないのですが、ここまで来たらもう目と鼻の先ですね。


「わか…ってる…けど…」

 正直カナエさんについては何度も体調不良で強制ログアウトを受けているので日を改めた方が良いような気がするのですが、PT行動の和を乱したくないと思っているのか、それとも私達に置いて行かれると単独で森を突破をしなければならないという恐怖に怯えているのか、落ちた後も律儀に繋ぎ直してきて、そして『レナギリーの卵嚢』の責めを受けて喘いでいました。


「頑張ってください」

 私が囁くようにそう言うと、カナエさんは身体を震わせるのですが……辛そうですね。


 治療薬である『精霊樹の葉』については入手した事とその効果について移動中に説明しておいたのですが、使うと暫くの間動けなくなるので今は逃げる事を優先し、未使用です。


「じゃあ…せめ……っ、動いて…」

 時折卵嚢が蠢きカナエさんが身を捩り、助けを求めるように私の背中に回されている腕に力が入るのですが、その度に敏感になった胸が押しつぶされて、グニグニと乳首が刺激されて、息があがってしまいます。


「カナエさん…ッ」

 私はそのお返しという様に尻尾を使って股の間を優しく擦りあげてあげたり、服とハードレザーの軽鎧の間に尻尾を潜り込ませてグニグニと乳輪を広げるように刺激してあげるのですが、カナエさんは何か言おうとしながら面白いようにピクンピクンと身体を震わせます。


 こんな事をしている場合ではないと思うのですが、セントラルキャンプの近くまで戻って来る頃にはこっそり擦りつけていた尻尾が糸を引くほどカナエさんは濡れていて、軽くいってしまうたびに抗議するように潤んだ目で見つめてきていて……その視線を無視するようにゴワゴワした布の感触と、カナエさんの柔らかさと滲む汗の匂いを堪能していると、頭の奥がクラクラしてくるような暗い感情が浮かび上がってきます。


「くふぅ…ぅう…」

 カナエさんも私に酷い事をされているという事は分かっているのだと思うのですが、魅了の効果のせいでどこか夢心地のような表情を浮かべたまま身を蝕む気持ち良さを甘受しているようで、その様子がとても嫌らしくて、脳天が痺れました。


「ぷい~」

 このまま押し倒してもいいですよね?なんていう事を考えていると牡丹が呆れた様子で注意してきて少し冷静になったのですが、確かにこの辺りまでくると他のプレイヤー達の気配もチラホラとありますし、人に見られるかもしれないという事を考えると別の意味で身体が火照ってしまうのですが……私は『ベローズソード』を持つ右手を頬に当てて、一旦心を落ち着かせました。


 とりあえず脚の遅いアイアンハンターは『蜘蛛糸の森』を抜けた辺りで追いかけてこなくなりましたし、脚の速さが普通のフォレストスパイダーやデスサイズも途中で振り切りました。


 脚の速いダークスパイダーだけがしつこく追いすがって来ていたのですが、その殆どは他のプレイヤーの迷惑にならないように倒すか脚を斬り払って置き去りにしてきており、最後まで残った2体がしつこく追いかけてきている状態です。


「もう少しだけ我慢してください」

 キャンプ地が近づいてきたのでこのまま放置して連れて帰る訳にもいきませんし、私は安心のおまじないと言う様にカナエさんの汗で前髪の張り付いたおでこにキスをするのですが、その感触にカナエさんは真っ赤になってしまいました。


「ちょ…あ、え……はい」

 その初々しい反応が可愛かったのですが、とにかく今はカナエさんと『ベローズソード』を持ち直して、戦闘に備えます。


「っ…はぁ!」


「Gix!?」

 そうして私は背にした大木の右側から飛び出してきたダークスパイダーAの下腹を斬り上げるようにして『ベローズソード』を振ると、激突した衝撃で斬り上げた所が盛大に引き千切られて体液が飛び散りました。


 そうして勢いに引っ張られるように剣が伸びていくままにしながら、私は左側から飛び出してきていたダークスパイダーBの様子を窺うのですが、こちらは私達が急停止して大木に裏に隠れている事に気づくと少し進んだ先で飛び跳ねながら体を捻り糸を発射して来ており、私達はその糸を回避しながら射程距離を測ります。


 吐き出した糸が外れたのを認識するとすぐさま切断し、二発目を発射しようとダークスパイダーBの口の中がカチカチと蠢くのですが、それが発射されるよりも早く私は着地の隙を狙う様に伸ばしていた『ベローズソード』を振るい、蜘蛛の両前脚を刎ねました。


「Gt…」

 何とも言えない様子でバランスを崩したダークスパイダーBなのですが、それでも無事な6本脚で後ろに跳ぼうともがいており、私はすぐさま距離を詰め、【オーラ】を込めた靴でおもいっきり踏み抜いて止めを刺しました。


「ふふ…」


「tixi…」

 カシャリと潰れた感触が何か面白くて、テンションがややおかしくなっていた私は軽い嗜虐心に股が濡れる様な熱を下腹部に感じたのですが、すぐに冷静になるように自分に言い聞かせ、辺りを見回します。


(これで最後、ですよね?)


「ぷぃ~…」

 私の疑問に答えるように牡丹がやれやれ感を出しながら答えてくれたのですが、目視と気配の両方で周囲を確認してから、私は『ベローズソード』を引き戻して一息つきました。


 マンイーターやフラワーラビットなどの蜘蛛と関係ないモンスターはまだいるのですが、どうやらこれで蜘蛛達は振り切ったようですね。


「終わった…の?」


「そうみたいですね、落ち着いたみたいですし、早速治療もしておきましょうか」

 逃げ切ったという達成感と戦闘後の高揚で気分がフワフワして良い気持ちではあったのですが、ここからは人目を気にしないといけませんし、とにかくやらなければいけない事を先にすましておく事にしましょう。


「え、ええ…」

 やっと『レナギリーの卵嚢』が治療できるといっても、カナエさんには『精霊樹の葉』の効果を説明してあるのでだいたいどんな事が起きるのかは理解しており、治療の喜びよりも青い顔をしています。


「って、待って、よく考えたらその…下から、でるのよね?」


「そうですよ?」


「えっと、その…」

 カナエさんはモジモジとしていたのですが、そういえば私の場合はIラインの紐とスカートというちょっとずらしたら良いような格好ではあるのですが、カナエさんの場合はおもいっきり長ズボンですね。


 この状態で排出したら大惨事になる事が確定していますし、改めて人前でズボンとパンツを下ろして身構えてとなると、ちょっと抵抗感があるようでした。


「そうですね、じゃあ落ち着いてからという事で…」


「そ、そうね、そうしましょう」

 私の拾った『精霊樹の葉』で治療しても良いですし、アルバボッシュに戻ってそちらの葉っぱを検証しても良いですし、とにかくそういう事にしてあとあと改めて一人になった時に治療するという事になったのですが、とにかく最後に倒した2体のダークスパイダーは余裕があったので【解体】し、装備や蔓を仕舞って改めて【水魔法】で体を洗った後にセントラルキャンプに戻ったのですが……キャンプ地は少しバタバタしていました。


 どうやら『蜘蛛糸の森』の事は他のプレイヤー達によって報告されてしまった後のようで、キャンプ地に居た騎士団が慌ただしく動き回っていますね。


 流石に情報提供の速さと言う意味ではリスポーンできる拉致されていないプレイヤーに勝つ事は出来なかったようで、酷い目にあい苦労した分かなり悔しかったのですが、そんな事を考えていると『『苗床の間』の強制セーブポイントが解除されました、これによりセーブポイントはそれ以前に設定されていた場所に戻ります。万が一セーブポイントをお忘れの場合は再設定をお願い致します』というアナウンスが入りました。


 どうやらセントラルキャンプに戻って来た事で拉致イベントが終わったようなのですが、これでやっと戻って来れたのだと実感が湧いてきますね。


 カナエさんなんかは感極まって涙ぐんでおり、私は同意するようにその手を握ってあげるのですが……これだけ酷い目に合いましたし、もしかしたらカナエさんは引退するのかなと思いました。


 まあ人は人、私は私ですね。


「えっと、ごめんなさい、私は一旦ここで落ちるわ」


「わかりました、じゃあアイテムだけ渡しておきますね……牡丹、出してあげて」


「ぷ!」

 流石に疲れたという事でカナエさんはこのままログアウトする事になったのですが、その前に一応『精霊樹の葉』とアイテムだけは半分に分ける事にしました。


 カナエさんは受け取ったアイテムを見ながら何か考え事をするような表情をしていたのですが、特に何か言う事もなくそのまま落ちて(ログアウトして)いきます。


「さて」

 時間も時間ですし私の精神的疲労もかなりのものだったのですが、これ以上他の人に先を越されても悔しですからね、『騎士団への報告』のクエストだけでも済ましておこうと詰め所に向かう事にしたのですが、すでに対策委員会のようなものが立ち上げられており、情報提供だと告げると専用のカウンターに案内されて、そこで簡単な口頭質問を受ける事になりました。


 すでに何人もの報告を受けているからなのか、かなりシステマチックな聞き取り調査のようなものだったのですが、この辺りはコミュニケーションが苦手な人向きの質疑内容で、「はい」と「いいえ」が言えれば問題ないように組み上げられているようですね。


「なるほど、そのような本殿があり、白いアラクネとコーンサキュドゥ……繭と糸の化け物か…」

 とにかくその手順に従い受け答えをする事になったのですが、折角なので応対してくれた騎士にこちらからも色々と聞いてみる事にしましょう。


「はい、あと何か重要そうな物があったのですが…『精霊の幼樹(ようじゅ)』と『歪黒樹(わいこくじゅ)の棘』について何かわかっている事はありませんか?」

 レリーフに描かれている歴史関連の事は蜘蛛と戦うつもりの騎士達に聞いても仕方がないと思いましたし、受付カウンターのような場所で会話をしているので他のプレイヤーが聞き耳を立てているようなので、最奥という意味深な場所にあったという事や、レリーフに描かれていた事はあえて伏せたまま謎の樹木という形で聞いてみたのですが……受付の騎士は首を傾げます。


「いやぁ、初めて聞く単語だな……すまない、たぶん何かしらの植物だと思うが…そういう知識はエルフェリアに居るアルディード女王なら何か知っているかもしれないな」

 との事なのですが、クエスト欄を確認するといつの間にか『騎士団への報告』が『アルディード女王への報告』に代わっており、たらい回しのお使いイベントが始まってしまっていますね。


 これは『蜘蛛糸の森』についてエルフェリアに伝えようという親書系のクエストのようで、私の場合は知っている情報をアルディード女王に伝えて対策を練ろうみたいな内容になっています。


 因みにこのアルディード女王というのはこの地に昔から住んでいるハイエルフの女王の事で、魔王軍の侵攻により国交が断絶するまでは色々と自然や歴史について教えてくれていたとの事で、人類とも友好的な人だという事です。


 まあ数百年生きているとの事ですし、レリーフに描かれていた歴史について聞くとすればアルディード女王に聞いた方が早いかもしれませんが……一番の問題はまだエルフェリアに向かうための道が開拓されていないのですよね。


 一応そうじゃないかと言われているのは『ギャザニー地下水道』という場所があるのですが、この地下水道はエルフェリアの生活用水を流す所謂下水施設であり、魔王軍の襲来と共にその地下水道も閉鎖されたのですが、水脈が枯れた様子もないのでまだどこかが繋がっているのだろうという感じらしいです。

 

 ただ今はゴブリン達の住処になっているので調査がなかなか進んでいない事と、そのゴブリン達も何かしているとの事で憶測が色々と入り乱れているのですが、今の所考えられているのはゴブリン達がエルフェリアに攻め入ろうと地下を掘っているのではないかと言われていました。


 そういう地道な手段をゴブリン達が取るというのは少し違和感があるのですが、強固な城を落とすために地下から侵入というのは使い古された手ですし、ゴブリン達は今でもせっせと地下水道の壁を掘りながら、様子を見るために侵入して来たプレイヤー達に襲い掛かったりしているようですね。


 まあ私の場合はエルフェリアとの間にある渓谷を飛び越える事も出来るかもしれないのでわざわざゴブリンの巣となっている『ギャザニー地下水道』を通る必要は無いですし、クエストの流れに逆らって他の場所に行ってもいいのですが……とにかく今日はなかなかハードな一日だったので、騎士団への報告を終えた後はもう休もうとログアウトする事にしました。

※これでカナエさんは数日間だけリタイアです。


※誤字報告ありがとうございます(1/20)修正しました。

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