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200:誘引効果

 それから何事もなくアルバボッシュに戻ってきて……といきたかったのですが、戻る途中、私達は妙にワラワラと湧いて来るゴブリン達や角兎達の襲撃を受ける事になりました。


「GOBU…YBA!?」

 私はゴブリンL(12匹目)が振り下ろしてきた剣をサイドステップで躱しながら、そのままノタノタとバタつかせる足を尻尾で払い、バランスを崩し倒れるその側頭部へ投げナイフを突き立てた後、その横でゲタゲタと笑っていたゴブリンMに投げナイフを投げつけ黙らせておきます。


(数が…)

 最初はメイン武器が壊れた後だからという事もあり、戦闘は牡丹に任せて経験値稼ぎをしていたのですが、幾らも進まないうちに処理が間に合わなくなり、あれよあれよと言う間に、のんびりと牡丹のレベル上げをと言っていられる状況ではなくなってしまいました。


「GOBUGOBU!」


「GOYUAA!!」

 ざっと見渡した範囲に見えるモンスターは20匹近く、種類はゴブリンと角兎の混合なので大した強さではありませんし、同時攻撃してくるという事も無いので気は楽なのですが、これだけの数に囲まれると圧迫感がありますね。


 そういう何かの(大量発生)イベントかと思うような数が集まって来ていたのですが、これはモンスターの出現率が変わったというより『レッサーリリム』になっている事で魅了の効果が強く出てしまっているのかもしれません。

 というのも元から『レッサーリリム』だとモンスターに狙われやすい(好意をもたれやすい)という効果があったのですが、色々なスキルを取得しレベルが上がった結果、何か碌でもないシナジーが働いてモンスターを引き寄せているのだと思います。


「ぷ!」

 そんな事を考えていると、牡丹から右後方の茂みから飛び出してきたゴブリンに対する注意が飛び、私は下卑た笑いを浮かべながら跳びかかって来るゴブリンNの側頭部にスキルを乗せた回し蹴りを叩き込み、それから食い込みを直すようにスカートや胸元を整えました。


(アルバボッシュに戻るまでに身体を落ち着かせたかったのですが)

 経験値稼ぎや素材回収にと色々と便利そうな効果ではあるのですが、この辺りのモンスターの素材はそれ程お金になりませんし、戦うのも牡丹のレベル上げ以上の意味はありません。


 だったら逃げればいいのですが、この辺り(初期地点MAP横)はまだ始めたばかりという新人プレイヤーも多いですし、ここまで集まったモンスターを放置して逃げるとなると対処できない人が轢き潰される可能性があり、余りにも酷いと通報案件になりそうなので考えものです。


 こうなる事がわかっていたらモンスターが集まる前に走り抜けるか、牡丹だけに戦闘を任せずサッサと間引いて進むべきだったのですが、今から言っても後の祭りですね。


「GOBU!!」


「はっ…」

 ゴブリンの執拗な攻撃に息が上がり汗が流れるのですが、まるでその消耗が楽しいという様にゴブリン達は「GOBUGOBU!」と盛り上がり、馬鹿にしているような態度で喝采を上げていました。


 そんなゴブリン達の顔面に投げナイフを叩きつけ、足を払い、それでも襲いかかって来るゴブリンは一種異様な光景で、下卑た笑いを浮かべて股間をそそり立て襲い来る姿には嫌悪感しかわかないのですが、その腰巻を押し上げるモノの大きさにはゾクリとしてしまいます。


 【ポーカーフェイス】で誤魔化していますが、散々ドレスに擦られて敏感になった個所は風が吹くだけでも体に震えが来るほどで、ネバついた繊維にシコシコと扱かれると腰が砕けそうになるのですが、へたり込んでしまえばゴブリン達に押さえ込まれ大変な事になりますし、遠巻きに見える他のプレイヤーの視線も気になり、私は挫けそうな気合を入れ直しました。


(また…く、ぅぅぅ…んっ!!?)

 ゾクゾクする快感に耐えようと思えば思う程気持ちよさに追い詰められ、恥ずかしい液体がポタポタと落ちるのですが、とにかくさっさと倒して進もうと、牡丹に【短剣】を付与(【秘紋】使用)して火力を上げつつ殲滅に入ります。


 そんなこんながあって、ただ戻って来るだけでやたら大変だったのですが、【精神対抗(微)】を上げる時に一緒に上がったスキルは【魔人の証明】【腰翼】【片手剣】【ランジェリー】【キック】【高揚】【アピール】【テンプテーション】【魅惑】【スタミナ増強(微)】【感覚上昇(微)】【テイミング】【魅了】【蠱惑】【意思疎通】【跳躍】【オーラ】【羽ばたき】です。


 途中で取得した【ポーカーフェイス】はレベルが低かった事もあり、早速レベルが上がってスキルの効果が全体的に増えました。


 これでスキルレベルが9(M A X手前)になったスキルは【腰翼】と【片手剣】の二つで、それ以外ももう少しでMAX付近と言う感じですね。


 とにかく町の近くまで来た頃には疲労困憊で、汗とか色々な液体とかでべとべとだったのですが、覚えた【水魔法】で身体を丸洗いしてから、私は『レッサーリリム』を【収納】しておきます。


 一度『翠皇竜のドレス』との接続を切ってしまうと、最初にMPが吸われる時がなかなかきついのですが、流石にこれだけ誘引効果がある状態で町の中に入る訳にもいきませんし、町の中で(PCやNPCに対して)どういう効果が出るのかもわかりません。


 一つ解決すると一つ問題が持ち上がってと言う感じがしないでもないのですが、とにかく今考えても仕方がない事は横に置いておき、ログアウト可能圏内に戻ってきたところで私は一旦休憩するために落ちる事にしました。


*****


 そうして戻って来た私の部屋なのですが、ごちゃごちゃした刺激の多いゲームの中と比べると何もなくて物足りなくなるのですが、その何もなさがホッとしますね。


 最近はゲームばかりしているので運動不足ですし、体の感覚をリセットするためにもストレッチや体操をしてから、シャワーを浴びて汗を流しておきました。


 それだけのんびりしても夕食にはまだ少し早い時間だったのですが、カナエさんとの南の森の探索にどれくらい時間がかかるかわかりませんし、寝る前にご飯を食べるよりかは早い方が良いだろうと、夕食を軽く食べてから私は再度ブレイクヒーローズにログインしました。


*****


 そうして繋いだアルバボッシュの壁の外、ドレスの締めつけや装備の重みが心地よく、時間をおいた事でモンスター溜まりも解消されていますし、ぽよんと跳ねる牡丹が元気よく出迎えてくれました。


「ぷい」

 ふと私がログアウトしている時の牡丹はどうなっているのか気になったのですが、牡丹も「よくわからない」という事なので、もしかしたら一緒にゲームからはログアウトしている(存在していない)のかもしれません。


 とにかくその辺りの仕様は考えてもわかりませんし、カナエさんとの約束の時間まではまだ余裕はあるのですが、早速準備を始めてしまいましょう。


 まずはアルバボッシュでローパー討伐の報告と素材の納品をして、それから新しい武器を買おうとセントラルライドに移動したのですが……武器を買うのは確定しているとして、ピンスパイクの長靴はどうしましょう?


 もとの耐久度が高かったのでそれなりにもってくれたのですが、私のスキル構成だと補正が乗らず、高速移動時の反動で(スパイク)がガタガタになったのですよね。

 そろそろ買い替えた方がいいのですが、『翠皇竜のドレス』の広がったスカートでは蹴り技は出しづらいのでそれほど攻撃力を求めなくても良いですし、むしろ第二エリアはグリップ力より長時間の歩きやすさの方が重要な気がします。


 少し考えた後、私は結局シンプルなアウトドアシューズを買う事にして、それから細々とした消耗品を補充したまでは良いのですが、後は武器をどうするかですね。


 市販品である『R(レア)』ランクのシルバー(軽度の魔力付与)シリーズや、『N(ノーマル)』ランクの鋼シリーズ、それから値段の桁が一つか二つ上がったW M(ワールドマーケット)にあるプレイヤー産の武器も見てみたのですが、これという一品は流石に売れてしまっているのか出回っていないのか、あまりピンとくる物はありませんでした。


 それでも武器は必要ですし、結局また鋼の剣でも買おうと武器屋に戻ってきたのですが、そこで知り合いの姿を見つけて私はつい商品棚の陰に隠れてしまいました。


(ぷ?)


(それは…)

 一緒にソロリと棚の陰から様子を窺う牡丹は「何で隠れるの?」と尋ねてくるのですが、こんなドレス姿で会うのが恥ずかしかったといいますか、流石にちょっとその、あれです。


「こんな所で会うとは奇遇だね、君も武器の新調かい?」

 ただ相手が悪く、隠れている私の事に気づいたシグルドさんは爽やかな笑みを浮かべながら、話しかけてきました。

※本来【翠皇竜】や【オーラ】などのスキルはモンスターを威嚇するために使うスキルなのですが、ユリエルの場合は魅了寄りのスキルが強いので効果が反転して統率者側みたいな判定となり敵が寄って来ています。

 ブレイクヒーローズの世界だと単純なデメリット効果のように感じますが、モンスター関連のイベントが起きやすくなりますし、経験値稼ぎや素材集めには便利ですし、ある意味主人公らしいスキルになったのかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なにこの自動調教 このゲーム酷い [気になる点] ほかの人外がとても気になりますね [一言] まあ普通に考えるとレベ上げ的にかなり便利である それだけの能力なら…
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