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199:ポーカーフェイスと上位スキル

 『翠皇竜のドレス』の責めに耐えていると【精神対抗(微)】のレベルが上がり、少しだけドレスの呪いの効果が弱まったような気がするのですが、まだスキルレベルが低いからか、結局思うような効果は出ませんでした。


 胸の疼きは収まらず、ドレスが蠢けば気持ちよくなってしまうのですが、流石にこれ以上のんびりとスキルレベルを上げている時間はなさそうですね。


(これで…最後!!)

 そんな色々と不味い状態ではあったのですが、私は群がって来たローパーを踏み抜き、最後のローパーに向かって剣を叩きつけるように振るうと、その衝撃に耐えきれなかった鋼の剣が折れてキラキラとした破片となり壊れました。


「PYUGIGYUI!??」

 剣筋も何もなく、叩きつける様な一撃に千切れ飛ぶローパー達は奇妙な断末魔を上げながらまだその触手をくねらせていたのですが、十分な打撃を与えたので徐々にホログラムとなり崩壊していきます。


(これ、は…)

 剣を握っていた手のひらがジンジンと痛み、それすらもどうしようもない甘美な刺激として体を蝕むような状態に息が漏れ、頭が痺れます。


 大量のローパーを倒した事でレベルも上がり、周囲を一掃したころにはもう立っているのもギリギリと言った状態だったのですが、私は身体の疼きを外に出さないように呼吸を整えると、()()()()()()周囲を見回します。


「ぷっい」


「ええ……お願いします」

 スライム形態になった牡丹がローパーの素材を回収するのを横目で見ながら、私は壊れてしまった鋼の剣の様子を確かめ……根本付近からパッキリと折れた剣は破棄する事にしました。


(何とか討伐数のノルマまで耐えてくれましたが…結構、きつい)

 ドレスの力を使えば蓄えられているMPが減り、減ったMPは私から吸い出してと、戦っている最中に何度も頭が真っ白になってしまったのですが、それでも何とか誤魔化せているのは【精神対抗(微)】のレベルが上がった時に習得可能になった【ポーカーフェイス】というスキルのおかげです。


 このスキルは本来賭け事をするというような事で取得できるようなスキルで、精神的な動揺や特定の癖ともいえる肉体的な動きをON/OFFする事が可能なパッシブスキルなのですが、私は任意のパターン(喜怒哀楽など)を登録しておける事を利用して表情と体の反射を固定しました。


 対人戦などの裏の読み合いになった際に使えるのでは?といった考察がされていたお遊びに近いスキルなのですが、取り繕うには丁度良さそうだと取得したのですが……幾らスキルがあるとはいっても許容範囲(いけば)を越えれば表情に出ますし、足元がふらつきます。


「………」

 はた目からは上気した私がゆっくりと呼吸をしているだけのように見えるのですが、その内心は激しいし責めを受けたままで、この戦闘だけで何度いったのかわからず、頭の中がフワフワしています。


 軽い脱水症状と酩酊感、溢れる恥ずかしい液体は蠢くドレスでも吸いきれずに太ももを伝い糸を引き滴っていくのですが、その感触だけで火照った肌には玉の様な汗が浮かび、酷く体力を消耗します。


「ふっ……ッ…」

 そもそもの話気持ち良いという事にはかわりませんし、敏感な所がくちゅくちゅと擦れると脳がキューっとなって、私の体力と理性が奪われて行きます。


 そういうあくまで人に悟られづらくなるというスキルでしかないのですが、それでもスキルの効果のおかげか端から見ると激しい運動をしているとか、消耗の激しいスキルを使っているように見えるという範囲に収まっており、とにかく人の目を誤魔化す事だけは出来そうです……という事にしておきましょう。


(気付かれていると思ったら、私……わたし…)

 あまりの恥ずかしさにドキドキして、両頬を抑えて蹲りたくなったりと色々な問題はまだ山積みだったのですが、本領を発揮した『翠皇竜のドレス』は流石の効果で、一番感動したのは片羽が一メートル数十センチはあるというスカートを模した翼での【羽ばたき】です。


 広げて動かすとそれなりに横幅を取るので狭い場所では使えませんし、スカートを開くとその下はIラインの食い込みが激しい下半身が丸見えという恥ずかしい恰好になるという問題はあったのですが、そういう諸々の問題を無視してスカート(推進力)と【腰翼(バランス調整)】の併用で羽ばたくと、垂直跳びなら10メートル以上跳ぶ事ができました。

 落下もゆっくり落ちていくようなホバリングが可能であり、その羽ばたきを利用してスキップのように横に移動するれば、最高速はスコル(狼人外種)さんの全力疾走に並ぶ速度を出す事が出来るという優れ物です。


 ただその速さに私の認識能力が追い付いておらず、下手に森の中を飛べば木にぶつかりますし、そのままの速度で攻撃しようとすれば剣筋がブレ(タイミングがズレ)て叩きつけるような形となり剣や腕を痛めてしまったりとなかなか力加減が難しく、他にもスライム形態の牡丹がこの高速機動について来れないのでその場を離れる様な動きをする時はイビルストラ形態にして装備しておく必要があるのですが……まあその辺りはおいおい考えていきましょう。


 まあ多少の速度的な問題より、スカートを常に動かしているのでMPがドレスに吸われ続ける事と、速度を出すとドレスが風圧を受けてプルプルと振動して、敏感な所まで容赦なく揺すられ手元が狂う事の方が私にとっては一大事かもしれませんが、こちらは耐えるしかありませんね。


 そして【ポーカーフェイス】の詳細を調べるためにネットでスキルの情報を見ていた時に気がついたのですが、前線組の中にスキルレベルを最大(レベル10)まで上げた人が出て来たようで、上級スキルの情報が出ていました。


 予想通り上級スキルを取得するためには再度SPを振る必要があるようで、効果もなかなか面白い物があるようなのですが、とにかくスキルレベルを10にするとMAXとなり効果が激増、これは単純にスキルを極めた恩恵という意味があるのかもしれませんが、間違えてSPを振ってしまったスキルも極めたら何かしら凄い効果がありますよというような「鍛えたら無駄なスキルはないですよ」という運営からのメッセージが込められているのかもしれません。


 とにかくそれくらい劇的に効果が変わるようで、このMAXになったスキルに上位スキルがあった場合は上位スキルを取得可能になり、SPを振る事で下位スキルと上位スキルが統合され、上位スキルのレベル上げが始まるという感じです。


 ただ上位スキルの経験値テーブルは下位スキルと比べてかなり大変なようで、検証中の体感では10倍以上の経験値が必要ではないかと言われていました。


 まあ必要経験値が増えようと、中途半端なところで止めるようなゲーマーは居ないのかもしれませんが、このMAXの恩恵を得たままにするか上級スキルに変えるかはプレイヤーの判断にゆだねられており、上級スキルを取った人の話しでは汎用性が高まり効果も伸びていきそうなのですが、MAXの下位スキルの効果を上回るのはかなり先になりそうだという話ですね。


 スキル関連は結構複雑怪奇な混ざり方をしていて検証は進んでおらず、この手の有限のリソースを割り振ってのスキル構成となると特化させるかバランスよく取得させるかという議論があるのですが、ブレイクヒーローズの場合はボスやユニークモンスターを倒すと追加でSPが貰えますし、それほど深く考えなくていいでしょう。

 というのもレベル上限が100だとしたら貰えるSPは99で、全て上級スキルにしたとしてもレベルアップだけで50個以上のスキルを取得する事が出来ますからね、運営としてはある程度試行錯誤して覚えていく事を前提にしているような気がします。


 今回の【ポーカーフェイス】のように他のスキルから派生して習得可能になるスキルがあったりしますし、スキル同士のシナジー効果も馬鹿に出来ませんからね、多少の無駄遣いは気にせず色々な事に挑戦してくださいという事なのでしょう。


 因みにこの上級スキルの発見でカメラを壊したり(修理にSP1)何かしらの理由でSPを無駄に消費してしまった人達から嘆きの声があがり、SP枯渇の問題が浮き彫りになったのですが、一応精霊からの試練と言う物凄く面倒で時間のかかるクエストをクリアするとマイナス分は戻って来るようですね。


 あとSPが戻って来る条件としては、人外系の種族で姿が大きく変わりすぎてスキルが使用不能になった場合などは振っていたSPが返ってくる事もあるそうなのですが、この辺りはよほど大きく変わらないと引き継ぐらしいので、稀に戻って来る可能性があるという程度の話で期待はしない方がいいでしょう。


 他にも色々な条件でSPは返ってくるのかもしれませんが、その辺りは要検証ですし、SPが有限のリソースであるのには変わりはありません。

 そういう訳で残りSPの少ない私も上級スキルの為にそろそろも温存していかないといけないというのはあったのですが、カナエさんとの南の森の探索もありますからね、急いで克服しないといけないので【ポーカーフェイス】を取得したのですが……ふと気になったのは、なぜ私はここまでして頑張っているのかという疑問です。


 今から約束を破るというのは確かに悪い事ですし、質の良いゲームだというのもわかるのですが、それ以上に色々と酷いゲームなので何時でも()めるという選択肢はあり、現に今もスキルで色々と誤魔化していますがドレスに責められて……()()()()()()()()()()()()


「ぷい!」


「ッ!?」

 素材の回収が終わったという牡丹の声にはっと顔を上げた私は、ぽよんぽよんと飛び跳ねて来た牡丹の顔をみて、少し表情を緩めます。


「そうですね、そろそろ戻りましょうか」

 何か気づいてはいけない(性癖)があったような気がするのですが、私は努めてその事を考えないようにして、その思いを仕舞いこみました。


 とにかく討伐ノルマも達成しましたし、武器も壊れたので町に戻ろうと広げていたスカートを畳み……ぐしょぐしょの下半身が隠れた事にホッと人心地つき、私達は何食わぬ顔でアルバボッシュ(最寄りの町)に戻る事にしました。

※ユリエル着々と進行中。

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