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189:マジックバッグの中のマジックバッグ

 さっそく牡丹のスキルを試すのに丁度いいマジックバッグが売っていないかとW M(ワールドマーケット)を覗いてみたのですが、丁度良い物はなかなかありません。


 良いなと思う物は軒並み値段が高く、最悪の場合上手く行かなくてそのまま破棄すると考えた場合なかなか手が出しづらい価格の物が殆どです。


 こうなったら粗悪な物でも良いかとレアリティや品質の検索フィルターを外すと、今度は玉石混合のゴチャゴチャした画面になってしまい、この中から丁度良い物を選ぶのは大変そうですね。


(最悪の場合、適当な品質の物でも良いのですが)

 それはそれで無駄遣いのような気がしてしまうのですが、とにかく私は時間を気にしながら画面をスクロールしていくと、少し下げた辺りで同じようなデザインの何とも言えない性能の物が大量に売りに出されている事に気がつきました。


 どうやらスキルの経験値稼ぎのために大量生産した物を纏めて放出したという感じで、そこそこの性能で妙に画一的なデザインの物が並んでいたのですが、そのシンプルな作りが何か良いですね。


 製作者の名前は『カナエ』さんと言うようで、一瞬何か記憶に引っかかりを覚えたのですが……そういえば戦勝会の時にトーチカ製造部門で表彰されていた人がそういう名前だった事を思い出します。


 こういう小物も作っているんですねと妙な関心のしかたをしたのですが、性能的にはいかにも練習用と言った感じで、内部容量の増加は二倍から四倍程度、時間停止や重量軽減も無いという割り切った性能をしていました。


 その分値段がかなり抑えられていたのですが、そういう物にありがちな大量生産品らしい手抜きはなく、レアリティは『UC(アンコモン)』から『N(ノーマル)』で、品質は最低でも『B』以上と中々の高品質の物が揃っていますね。


 因みに現在の主流は背中を覆う巨大なバックパック(収納力重視)タイプで、それをサポートする形でポシェットか吊り下げ式のベルトポーチを使用するという組み合わせが殆どです。


 レアリティで言うと『R(レア)』ランクの『A』品質の物が多く、性能でいうとだいたい五倍前後の容量に軽度の時間停止と重量軽減がついている物が一定のラインとなっており、それ以下だと投げ売られており、それ以上の物となると制作者に直接依頼して追加効果をつけてもらうという感じですね。


 あとこういうマジックバッグは基本的に戦闘中も身に着けておく物なので、魔獣の皮で作られた強度の高い物が多いのですが、今回私が見つけたカナエさんのマジックバッグは少し頑丈な布で作られた巾着といった簡易な作りの物が大半で、時々市販の革を使った物が混じっているという感じでした。


 大量生産に向いたシンプルなデザインや素材の簡易さに練習作っぽさが残っているのですが、高い物を買ってから効果がありませんでしたとなったら大変ですし、素っ気ないともいえる様なシンプルなデザインは実用性重視で気に入りました。


「ぷ?」

 画面のスクロールを止めていると、牡丹が肩によじ登ってきて画面を覗き込んできました。

 こういうウィンドウ画面は閲覧可能設定にしない限り他の人には見えない仕様なのですが、テイムしているモンスターはどうなのでしょう?


 一応画面操作に合わせて視線を動かしているようなので見えているのかもしれませんが、牡丹は眉を寄せる感じで同じデザインのマジックバッグが並ぶ画面を見つめており、意味がよく分かっていなさそうな顔をしていました。


「牡丹」

 まあその事は一旦横に置いておくとして、種族補正や筋力増加スキルで相殺されているとはいえ、五キロ前後(成猫くらい)の重さがあるプニプニした物体が肩に乗っているのは少し邪魔です。


 しかも【鞭】スキルが上がってからプニプニした弾力が強くなり、ずれおちないようにと時折足踏みするような動きや、首筋にしがみ付くように伸ばされた小さな触腕が肌を撫でてとても擽ったいです。


「ぷぅ~」

 咎めるように少し肩を動かしてみたり、首を傾げるように押してみたりするのですが、牡丹は遊んでくれていると思っているのか「ぷっいぷっい」とはしゃぐだけですし、もうほうっておきましょう。


 そういう感じで若干牡丹に邪魔されながらだったのですが、とにかく私はカナエさん制作の『革のベルトポーチ』という動物性の革を四角く加工しただけのようなシンプルなポーチを購入しました。


 レアリティは『N』で品質は『A』、容量で言うと350ml程度で、倍率は4倍ですね。


 小物入れ程度にしか使えないような代物なのですが、私の場合一戦分のアイテムを入れておく事が出来れば牡丹から補給を受ける事が出来るので、緊急用のポーションと投げナイフが何本か入れば良いという感じです。


 本来はベルトに通して腰につける物なのですが、私の場合は【ルドラの火】の爆炎に巻き込まれた時に燃え尽きないようにしないといけませんからね、レッグリングで右太ももの外側辺りに止めようと思います。


 重さで落ちてくるようならガーターベルトで固定しないといけなくなるのですが、まずはサイズの合う二重ベルトで固定できないか試してみる事にしました。


 問題はこの太もものポーチを使用する際にスカートの中に手を突っ込まないといけない事と、金属製のボタンでしっかりと留められているので若干出し入れがし辛い事、ナイフを引き抜く時に腰回りを斬ってしまわないように気を付けないといけない事など色々あったのですが、そこはまあ良い感じにスカートを動かし隙間を開けて技術で補いましょう。


 あと気をつけないといけない事としては、ドレスの機能を発揮させていないと耐久度が高くないので、幾らスカートの下に隠しているとはいっても【ルドラの火(左手発動)】の爆炎に巻き込まれる可能性がある事なのですが、太ももの右外側につけたポーチが燃え尽きるくらいの炎に巻き込まれた場合、それはもう何処に着けていても燃え尽きるという事なので諦めましょう。


 まあ値段が値段なので燃え尽きてもいいかと思う事にして、とにかくまずはベルトポーチと固定用の二重ベルトを購入し、試しに投げナイフを一本入れてから牡丹の中に収納してもらいます。


(上手くいってくれれば良いのですが)

 これで牡丹の中に入れても中の物が出てこなければ、マジックバッグの中にマジックバッグが入る事の証明となるのですが……。


「ぷーー……ぷい!」

 モゴモゴと口の中にポーチを入れた牡丹が「大丈夫そう」と言うのを聞いて、私は息を吐きだしました。


「いけそうですね」

 意外とあっさりといけた事に拍子抜け感があったのですが、これで収納問題について一定の目途が立ちました。


 太もものポーチは小物入れとして私がそのまま使うとして、同じくカナエさん制作の粗布(そふ)で作られた1メートル四方で厚さ30センチのズタ袋を二つ購入して、こちらは牡丹に渡しておきます。


 こちらのレアリティは『UC』で品質『B』、増加容量は4倍で、他の機能は一切無いという本当にただよく入るだけの大きな袋ですね。


 口の部分を紐で縛るだけの簡単な構造の物で、正直に言うとあまり実用的とは言えませんし、運搬にも適しているような形でもないので売れ残っていたのですが、値段は性能相応です。


 まだ牡丹の収納スペースに余裕があるので、出来ればあと一つか二つ購入しておきたかったのですが、幾ら安いと言ってもマジックバッグはマジックバッグですからね、色々買った事でこれまで細々と溜めていた貯金が目減りしていました。


(これは一度ちゃんとした金策をした方が良いかもしれませんが…)

 活動費としては十分な金額があるとはいえ、魔光剣の修理費がどれくらいになるかわかりませんし、大きな買い物をするとなると不安が残りますので今回の買い物はこの辺りで止めておきましょう。


「大丈夫そうですか?」

 金策に関してはまた後で考えるとして、まずは複数個入れてもちゃんと【鞄】スキルが機能するかですね。


「ぷい!」

 牡丹は袋の効果を試す様に口の中をモゴモゴとさせていたのですが、投げナイフを出したり引っ込めたりしてみせました。


 それはまあいいのですが、いったい体内でどういう風に出し入れしているのか少し気になったのですが……牡丹が言うには体内の方に触手をにゅっと出してモゴモゴと動かしながら袋の中に仕舞ったり出したりしているとの事なのですが、想像すると変な感じですね。


(そんなのに吸われたら大変な事になってしまいそうですが…)

 私は牡丹の口の中で無数の触手が蠢いているところを想像してしまったのですが、その辺りはあまり気にしない方が良いのかもしれません。


 とにかく牡丹が言うには収納しているマジックバッグの中身を出し入れする場合はモゴモゴする必要があるとの事で、そちらに仕舞う場合はあまり緊急性の高くない素材などを収納しておいた方が良いのかもしれないとの事でした。


 まあその辺りの采配は牡丹に任せる事にして、私はポーションを一本ずつ、投げナイフを5本だけ受け取り太ももポーチに移しておきます。


 これで牡丹と離れていても投げナイフが使えるようになりましたし、実際に物を入れてもズレ落ちてこない事が確認できました。


 これで準備は完了なのですが、残り時間でギルドの売店で牡丹側のポーションを五本ずつ、投げナイフが20本になるように購入してから、私は時計を確認しながら【水魔法】の講習があるという7番講習室に向かう事にしました。

※ユリエルの現在の所持金は色々と増減していて300万ちょっとくらいあり、今回のマジックバッグ(WMにあるちゃんとした物の3分の1程度の価格から5分の1程度の価格)を3つ購入した事で100万フランほど減ったので、残り200万フランくらいが所持金となります。


 正直に言うと結構残っている方なのですが、第二エリアでの必須装備を買い揃える必要があるかもしれませんし、魔光剣の修理費用の事もありますし、場合によっては第二エリアにホームを作るかもしれないとなるとお金が足りません。

 まあマジックバッグを2つ追加するだけでもかなり変わりますし、第二エリアに行ってからまた考えましょうという感じでした。


 因みに第一エリアの町から町に普通に歩いた場合の成果は数万フラン前後で、ちゃんと剥ぎ取れば2~3倍程度ですね。

 こう聞くとなかなか効率がいいような気がしますが、ガチの戦闘をくり広げてその金額なので費用対効果はあまり良くありません。

 ユリエルの場合は時々WMに流した物が高値で売れたからと、ローパー特需に乗っかった事があるからそれなりにお金を持っていました。


※追記ですが、ずっと剣を手に持っているのも大変なので鋼の剣は牡丹に収納してもらっています。

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