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188:対応策と牡丹のスキル

(これで…10体目ッ!)


「GOBYAx!?」

 私は嫌らしい笑みを浮かべながら襲い掛かって来た武装ゴブリンを踏み抜いてから、弾んだ息を整えるために大きく息を吐き出しました。


 散々だった初戦の後、牡丹のサポートを受けながら何とかセントラルライド付近まで戻り、それから小川で水浴びをする事が出来たのですが……大回りルートで移動しているせいか度々武装ゴブリン達の襲撃を受けているのですよね。


 まあ襲撃自体は討伐クエストを受けているので丁度良いのですが、それより問題だったのが『翠皇竜のドレス』の方で、色々と試行錯誤してみた結果分かった事は『レッサーリリム』を全部【収納】しておけばドレスの効果も無くなるという事でした。


 たぶんこれは【オーラ】が……というより【翠皇竜(補正諸々)】のスキルが消える事でドレスとの接続が切れて変な動きをしなくなるのだと思うのですが、こうなるとドレスの防御力はちょっと頑丈な布程度で耐性も無し、スカートも動かせずに【修復】も出来ないと散々な性能になってしまいます。


 勿論レッサーリリム状態を解除しているので感覚強化も入っていませんし【腰翼】もなくなるのでまともに動く事が出来ないのも問題です。


 それに幾らスカートが大きく広がっているとはいえ、動かす事が出来なければ足捌きに影響が出てしまい、膝から上が蹴り辛いという構造上の欠点もありました。


「ふーー……」

 とはいえ武装ゴブリン程度なら武器を持ち換えて攻撃してくるという事もありませんので、武器を持つ手の反対側に抜けるように動き、足を払ってから踏み抜けば勝負がつきます。

 つかなくても牡丹が追撃をかけてくれるので、これくらいなら今の私でも何とか大丈夫ですね。


 まあドレスの固定されている場所が嫌らしい場所(乳首)である事や、スカートの中の食い込みは相変わらずなのでフワフワとした火照りと適度な緊張感に身が引き締まる思いなのは変わりないのですが、あの変な疼き(試練)さえなければ何とか我慢する事が出来ました。


「ぷっい」


「ありがとうございます、これでクエストも無事クリアですね……それはまあ、置いていきましょうか」

 私は()()()のスタミナポーションを差し出してきた牡丹にお礼を言いながら、今しがた倒した2体の武装ゴブリン達は【解体】せずにこのまま放置しておく事にしました。


 武装ゴブリンの魔石でも落ちていれば回収したのかもしれませんが、ドロップアイテムは持っていた武器くらいのようですし、武装ゴブリンを【解体】しても大したアイテムは手に入りません。


 本当なら小銭稼ぎ(ポーション代)的な意味で素材の回収をするべきなのかもしれませんが、つい先ほど戦ったボア(大猪)の肉を回収したので収納自体が一杯なのですよね。


 これで討伐数の把握のための証明部位の剥ぎ取りなどがあればまた違ったのですが、流石のHCP社もそこまで不便な仕様にはしていないようで、自動的にギルドカードに討伐数がカウントされていくようでした。


 この辺りはゲーム的な面白さの追求と言いますか、下手にリアル寄りにしすぎても不都合しかないのでデジタル的な処理にしたのでしょうけど、リアル寄りを追求したがるHCP社としては珍しい采配ですね。


(それはまあ良いのですが)

 何とかまともに動ける方法が分かった事は良い事なのですが、色々と不便であるという事には変わりありません。


 まず一番不味いのが【腰翼】がある事を前提に取得した【跳躍】で、このスキルは両足が地面についている状態だと問題ないのですが、踏み切るタイミングでスキルの効果が発揮しました。


 この()()()()タイミングというのがなかなか厄介で、走ったり踏み込んだりすると容赦なく発動し、ピョンピョンと飛び跳ねてしまうのですよね。


 しかも私の場合は身体的な特徴(Kカップの巨乳)として前の方に重心があるので、下手に飛び跳ねると前方宙返り気味のジャンプとなり、頭から地面に落下する事となりました。


 それだけならまだ良いのですが、左右の重心のかかり具合やつま先での踏切の微妙な力加減で捻りが加わり、本当に制御が大変なのですよね。


 大きく上下に跳ねれば引っ張られて痛いですし、必然的に移動は摺り足気味にならざるを得ず、下手に動けないので戦い方が待ちの姿勢のカウンターオンリーになってしまいます。


 これで【腰翼】だけでも使えたらよかったのですが、一部でも人外化するとドレスの方も力を取り戻すようで、激しめの責め苦に戦うどころではありません。


 残念ながらあの責めは耐えられるものではないのですが、どうやらドレスに嬲られている時は【精神対抗(微)】が入っているようなので、もしかしたらスキルレベルが上がっていけば試練にも耐えられる精神力を身に着ける事が出来るのかもしれません。


(だから、仕方がないですよね?)

 時間当たりの精神対抗の経験値の伸びも良いようなので、定期的に人外化してスキル経験値を貯めていこうと思ったのですが……あの蠢くドレスの刺激を思い出すと頬と下腹部が熱くなってしまいます。


「ぷー…?」


「な、何でもありません…それより行きますよ!」

 そんな事を考えていると牡丹が胡散臭そうに顔色を窺ってきたのですが、私は誤魔化す様に先を促すと、クエスト報告のためにセントラルライドのブレイカーズギルドを目指す事にしました。


 そうして私達が()門を越えて大通りを進んでいると、通り過ぎる人が「おや?」というような顔でチラチラと見てきているような気がします。


 【隠陰】スキルが発動しているのでこちらを見てくるのは感知系持ちのプレイヤーばかりなのですが、やはり装備が大きく変わった事が影響しているのでしょうか?


 市販されていない新装備なので物珍しいのは仕方がないのかもしれませんが、あまり人に見られていると火照った身体に気づかれないかが心配です。


(露出は減っているので大丈夫だと思いますが…)

 通り過ぎようにも走ると痛いので努めて顔に出ないようにしながら何食わぬ顔で歩くだけなのですが、意識すると食い込んだ箇所が湿り気を帯びてきてしまっているような気がします。


 裸の上にコートだけを着込んでいるような感覚と言いますか、少しフワフワとして足取りが覚束なくなってしまったのですが、何とか平常心を保ったまま私達はブレイカーズギルドに到着しました。


 相変わらずプレイヤーは数えるほどしかおらず、その大半は新人……初めて王都にやって来たという恰好のプレイヤーや、ゴルオダスクエスト用の納品や討伐イベント報告のようで、一線級と言えるプレイヤーは大体第二エリアに向かっているようですね。


 そんな新人達はドレスを着たスライム連れの私に対して奇異の目を向けて来たのですが、ザワザワとザワついただけで特に絡んでくる事もなく、受付の順番が回ってきたので私はさっさと武装ゴブリンの討伐の報告をして【水魔法】の講習をやっているか聞いてみました。


「水魔法ですと直近の講習は30分後になりますが、いかがいたしますか?」


「それでお願いします」

 私は受付の女性にギルドカードを見せて討伐数の確認をしてもらい、その報酬をスライドする形で講習の料金を支払ってから、部屋番号の書かれた木札を受け取ります。


 この木札を持ってギルド内の小ホールにいけば良いそうなのですが、講習の時間までもう少しあるので必要のないアイテム(ゴブリン系素材)を恒常クエストに納品し、それから私はW M(ワールドマーケット)を覗いてみる事にしました。


 これは牡丹のスキルにも関係あるのですが、喫緊(きっきん)の問題として浮上している収納力不足を何とかしないといけないと思ったからですね。


 というのもマジックバッグの中でマジックバッグを機能させる方法がないかと考えていたのですが、牡丹(イビルストラ)に【鞄】スキルを覚えさせてみるというのはどうでしょう?


 私がイビルストラのマジックバッグの機能を発動させ、イビルストラの中に収納したマジックバッグを牡丹が発動させていけば、もしかしたらマジックバッグの中でマジックバッグを使用可能にする事が出来るのかもしれません。


 そうなれば収納力は数倍に膨れ上がりますし、金策や諸々も捗るはずです。


 まあこれは捕らぬ狸のなんとやらで、実際にはどうなるのかはわかりませんが、折角なのでお試し用の安いマジックバッグを買ってみようと思います。


(残りのスキルですが…)

 【鞄】を取った場合の残りSPは1ポイントで、候補としては基礎能力を上げる【短剣】か【投擲】か【ステップ】か【体捌き】か【跳躍】で、効果面だけを考えた場合は【ルドラの火】と【オーラ】と【翠皇竜】辺りを候補に挙げていたのですが、取得したいスキルが多すぎるのですよね。


 一つ一つ考えていくと、まず【短剣】は単純な攻撃力の強化で、【投擲】は良く物を投げてもらっているからという戦闘スタイルからの取得です。

 【ステップ】と【体捌き】と【跳躍】は牡丹の体当たりの性能や機動力向上を目指していて、【ルドラの火】は決定打の強化で【オーラ】と【翠皇竜】は人外種なら取得していても損がないからという考えなのですが、どれも魅力的なスキルであるような気がしてしまいます。


 因みにすでに取得していたスキルの方も順調に伸びており、【鞭】スキルが4レベルになった事でほんの少し(10センチ程)だけ体の一部を触手のように伸ばせるようになり【ドレイン】が3レベルになった事で【スタミナドレイン】を、【大楯】が4レベルになった事で【シールドチャージ(盾攻撃)】【ガードアップ(基礎防御力UP)】【大障壁(前方障壁)】【ハードロック(ノックバック防止)】などの盾由来の基本的な派生スキルを覚えられるようになりました。

 後は【筋力増強(微)】が3レベルになっているのですが、これは単純なステータスの強化ですね。


「牡丹は何か取得したいものはありますか?」

 取得するのは牡丹ですし、何か取りたいものがあるのかと話を振ってみたのですが、牡丹は首を傾げるように傾きます。


「ぷ~…いっ!」

 との事で、あえて言うと【投擲】が良いらしいですね。


 理由は私を支援しやすそうだからとの事で、逆に【ルドラの火】は燃費が悪いから嫌だそうです。


(便利だと思うのですが…)

 【ルドラの火】は私の切り札でもあるのですが、翠皇竜化できるレッサーリリムのMPとイビルスライムのMPの差というのもありますからね、その辺りの種族差による燃費の違いも考えて取得するスキルは考えていかないといけないのかもしれません。


 まあ必要になれば【秘紋】で付与する事も出来ますし、本人の希望もあったので【鞄】と【投擲】を取得させる事にして、後は牡丹が使うのに丁度いいマジックバッグが売っているかどうかを祈るばかりですね。

※合法的なデバフをかけられるユリエル、三本目のスタミナポーション = 極度の疲労状態になった時に一本目ずつ飲んでいます。何故極度の疲労状態になったのかは秘密です。


※ユリエル達が出発したのは東門ですが、北門から戻ってきたのは小川に寄るために北回りで戻って来たからです。

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