186:状況把握と迫るピンチ
ただでさえ怨念の影響で身体がおかしな事になっているというのに【意思疎通】で気持ち良さが伝わった牡丹が興奮してしまい、スカートの中に入って来るので大変な事になりました。
くちゅくちゅと水音を立てながら出入りする牡丹が中から直接吸ってくるのは危険の一言で、何度も気持ちよくなってしまいました。
というよりキリアちゃんの頃から思っていたのですが、いつの間にか内部構造まで完全再現されるようになっていたのですが、誰得の機能なんでしょうね。
「ぷぃ~~…」
そういう訳で牡丹は食事を終えて満足しきった顔をしているのですが、私は足腰が立たずその場に力なくへたり込んでいました。
汗と涎と恥ずかしい液体まみれの身体は丸洗いしたくなるのですが、意識が朦朧としていてただただだらりと脱力した姿勢のまま、ゆっくりと呼吸を整える事に全力を尽くします。
こうなった原因である『その身を蝕む試練』だかなんだか知りませんが【翠皇竜のドレス】は効果を発揮するためのMPが無くなるか、私が少しでも平静さを失うと媚毒が流されたように胸の感度が何倍にも膨れ上がり、弱い所を舐り吸い付いてくるというおかしな機能がありました。
このドレスに込められたMPというのは防具の防御力や耐性を維持するのに使われているようで、一部でもドレスを脱げば減り始め、次に着用した時に再度吸収が開始されるという仕様のようですね。
一応満タンまで貯まると小康状態で安定するのですが、それでも摘まれ食い込んでいる状況にはかわりはないですし、ゴム紐で括られ揺すられているような甘い刺激が続いている状態で変な気持ちになるなというなかなか厳しい装備でした。
平静を欠けば柔軟性のあるトロリと撚られた繊維が一本一本隙間に入り込み、極上のブラシで扱きあげるような刺激で磨きあげ、上と下からMPを吸おうとしてきます。
大事な所が外から見えないように繊維で固められているのは良いのですが、それは逆に繊維から逃れられないという事で、何時までたってもその責め苦が終わらない事を意味しました。
この絡まる繊維は『サルースのドレス』の蔦と同じなのかもしれませんが、自分の意思で動かすのと他人に無理やり気持ちよくされるのは全然違い、無理やり高められた快感に流されてしまえば意識が飛ぶまでの無限ループが待っています。
今回はお腹を減らした牡丹が途中から参戦したので酷い結果となってしまったのですが、もう少しで干からびるところでした。
碌でも無い装備と言うのは確かですし、この快楽に耐える事が『翠皇竜のドレス』の試練なのかもしれませんが、最悪の場合は脱げばいいだけなので対策は簡単ですね。
それに他に丁度良い装備がありませんし、性能だけ考えると『翠皇竜のドレス』はとても優秀な体装備でした。
勿論それは装備者が平静を保って完全にドレスを支配下に置いている場合であればの話なのですが、ボスクラスの攻撃すら耐えられるかもしれない防御力と強耐性、HPを消費するものの自己修復可能で、MPを使ってスカート部分を翼のように使う事も出来るという優秀な装備です。
まあ体だけ守っても両手両足や頭部がやられたら元も子もないのですが、それでも一番被弾面積が大きい場所の防御力が並みはずれて良いというのは安心材料ですね。
これで変に露出が高くどうしようもないデザインだったというのなら悩むのですが、端から見れば黒緑色をしたプリンセスラインのチューブトップドレスという見た目で、どこか生物的な質感を持った軽鎧風のドレスでした。
胸を覆うのは金属製に見える黒色の繊維で、ドレス全体に施された刺繍や縁取りも相まってドレスアーマー風の見た目なのも【ランジェリー】制限がかかっている私からすると嬉しいポイントですね。
ただまあ繊維が蠢く以外のデザイン上の欠点もあり、足元まで届く大きく広がったスカートはお尻の辺りから伸びた一対の羽が下半身を包んだもので【腰翼】の補助翼として使えそうな動きができるのは良いのですが、スカートを広げた場合は下半身の様子が丸見えです。
胸の下から伸びた布地は下腹部までしかなく、そこから下は黒い糸で編まれたレースのパンツと言い張るのはちょっと無理のあるデザインの、殆ど紐のようなIラインがお尻の方まで伸びているだけでした。
しかもきつく食い込んだIラインによって割れ目はかろうじて隠れているのですが、はみ出た大陰唇が見えてしまっているのですよね。
確かにちょっとエッチなゲームだとそういう見た目のキャラもいますし、スカートでちゃんと隠れているのですが、自分がそんな恰好をしていると思うと身体が火照ってしまい……いけません、平常心です平常心。
変な事を考えると胸の感度がおかしくなりそうになり、羞恥心と軽い刺激で顔の表情筋がヒクつくのですが、私はその気持ちよさを必至に仕舞い込みます。
絶対に顔が赤くなっているとわかるくらい火照った感じでホワホワするのですが、私はゆっくりと深呼吸をすると、湧き上がりそうになるモヤモヤに蓋をしました。
落ち着き平常心さえ保てば効果の高い装備なのですが、流石にこんな状態ではまともに動けませんね。
流石に今度こそ【感度低下(微)】を取得しようかと本気で悩んだのですが、このスキルはあまり評判が良くありません。
普通こういう何とも言えない効果のスキルはネットに情報が上がらない事が多いのですが、ゲームの内容が内容だからか多くの人がこのスキルを取得しており……その情報を見る限りでは、効果はいまいちのようでした。
というのも感度以外にも多くの感覚器官が遮断されてしまうようで、プレイヤーからすると全体的なデバフとなってしまうようですね。
まあA S M Rで気持ちよくなる人もいますし、色々な快感を防ごうとした場合はどうしても五感が鈍くなってしまうのかもしれませんが、その低下具合が結構酷く、明らかにデバフとわかっているスキルを取得するのはどうなのでしょう。それに……。
「ふっ…ぅんん…」
変な期待をしてしまった私を責めるようにドレスが蠢き、私はスキル画面から指を離します。
この件はもう少ししっかりと考える事にして、改めて他のスキルに目をやってみるのですが、【オーラ】を、というより【翠皇竜】を取得した事で取得可能スキルが幾つか増えていました。
一つ目は【羽ばたき】というスキルで、風を巻き起こしたり簡単な飛行が出来るようになるスキルです。
羽ばたかせるものは羽でも手でもいいようなのですが、発生した風圧によって効果が変わるようなので、必然的に羽の方が効果が高いようですね。
二つ目が【咆哮】というスキルで、これは魔力を振動させる事で大きな音をたてて相手を威嚇するスキルなのですが、魔力を振動させて飛んできた矢や魔法を弾く事も出来るようです。
このスキルと【羽ばたき】を合わせて使う事でゴルオダスが作り出したような暴風を作り出す事も出来るようなのですが、あそこまでの効果を発揮させるにはかなりスキルレベルを上げる必要がありそうですね。
そして最後の三つめが種族スキル枠なのですが【ブレス】を憶える事が出来るようでした。
これはワイバーンが使っていたブレス攻撃を再現するスキルで、魔力を圧縮して放出という切り札ともなりえるスキルのようですね。
どれも魅力的なスキルなのですが【咆哮】と【ブレス】は条件が揃っていないのかまだグレー表示で、この辺りは何かしらの条件があるのか【翠皇竜】のスキルが上がっていけば覚えられるのかもしれません。
とにかく【羽ばたき】だけ取得する事にしたのですが、これで残りSPは4ポイントです。
【水魔法】を憶えようと思っているので実質的なSPは残り3ポイントですし、スキルレベルがそろそろ10レベルに達しそうな物もありますので、上級スキルが解放される可能性があるので残りは一旦保留にしておきましょう。
因みに検証が後回しになっていた【翠皇竜】と【オーラ】についてなのですが、【翠皇竜】は全体的なバフになっているようで、なんと『MP』と『STR』と『VIT』と『LUK』の種族値がワンランク上がっていました。
この上がり方は【人外化】の影響も受けているのかもしれませんが、これで翠皇竜化したレッサーリリムの種族値はHP:B、MP:S、空腹:E、STR:B、VIT:B、INT:B、DEX:B、AGI:D、LUK:Cと、レッサーと名のつく種族にしては強すぎますね。
【オーラ】の方はレベルが低い事もあり実感は薄いのですが、微かな魔力光を放つ靄に包まれているような感じです。
意識すればその靄を集めて拳や武器に纏わせる事が出来るようなのですが、今のスキルレベルだと拳一つに纏わせる量のオーラしかなく、その量の靄を全身に纏っている状態なので効果は無きに等しいですね。
更に圧縮していけばゴルオダスが纏っていたような鈍い色をした水晶の欠片を作り出す事が出来たので、極めていけば棘にして相手を貫いたり、体に張り付けて防御力を上げたりと汎用性が高そうなスキルなのですが、今のところは指先程度の大きさの水晶しか作れないのでまだまだ改善の余地がありました。
それにしてもこの辺りの操作は意識しただけで可能なパッシブスキルなのですが、【腰翼】やら【尻尾】やら羽のスカートやら【オーラ】やら、普通の人間についていない感覚器官で動かす物が多すぎて脳が混乱しそうです。
INTとDEXの補整値が高く素の状態より処理能力が上がっているのかもしれませんが、それでも脳の負担が大きすぎて慣れるまで色々と苦労しそうなのですが……ちゃんと補整されていますよね?
ブレイクヒーローズの場合は人力任せなところがあるので若干怪しいのですが、ここまで来たら頑張るしかありません。
あと【翠皇竜】の影響だと思うのですが、角や腰翼や尻尾の見た目が変わっており、深緑色のちょっとゴツゴツした竜っぽい物に変わっていました。
ゴツゴツといっても生物的な柔らかさがあり滑らかに動きますし、硬そうな見た目に反して感覚神経が繋がっているので撫でていると変な気持ちになるというのは変わりありません。
(尻尾が性感帯と繋がっているというのは変わらないんですよね)
撫でているとお尻と骨盤から痺れるような刺激が伝わり身体がキュッとしてしまうのですが、それでドレスの感度上昇が入ってしまい、私は慌てて手を離しました。
「ぷ~?」
そんな私を見て牡丹がワクワクとした目を向けてくるのですが、その期待するようなキラキラしたピンクの瞳から目を逸らします。
そういえば牡丹のスキルも割り振らないといけないのですが、町を出た時とは色々と状況が変わりすぎているので一度整理した方が良いのかもしれません。
事前に考えていた通り基礎能力を上げるスキルを取得するのか翠皇竜関連のスキルを取得するか考えないといけませんし、そもそもこんな状態でモンスターに襲われたらひとたまりもありません。
一旦落ち着ける場所にという事で町に引き返そうかと考えていると、嫌らしい笑みを浮かべる武装ゴブリンが4体、こちらに向かって歩いて来ているのが見えました。
※もう少し、いつか、きっと、めいびー。
※【オーラ】の結晶化は【翠皇竜】の効果で、普通の【オーラ】はもう少し単純なバフ効果だったりと、【翠皇竜】のスキルは結構多岐にわたり影響を与える有能なスキルだったりします。
※最後の方をちょっと書き換えました、情報的な意味では特に大きな違いはありません(4/6)。




