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182:戻されました

 一回で無理なら二回、それでも無理なら三回と、最悪の場合はキリアちゃんと百連戦するくらいの覚悟を決めていたのですが、五回目くらいでキリアちゃんが泣き出してしまい、十二回目で早々に負けを認めてしまいました。

 これで良いの(私の勝ち)かと思っていると急に周囲の空間が歪み、私はポイっと捨てられるように異空間から排除されてしまいます。


 勝敗が決したので戻されたのだと思いますが、何度も気持ちよくなっていたので足腰が立たず、そのまま石畳の床の上にべしゃりと落下してしまいました。


 出来たらもう少し優しく通常空間に戻して欲しかったのですが、今はそれよりも長期戦を覚悟していた気持ちの矛先がはぐらかされたという思いが強く、スタミナが溢れて身体がポカポカして、欲求不満が溜まっています。


「…キリア、ちゃん?」

 何とか気持ちを切り替えて顔を上げるのですが、どうやらこちらに戻ってきたのは私だけのようで、キリアちゃんの姿はありません。


『お姉ちゃんなんて嫌い、大っ嫌いなんだからぁああ!!!』

 脳内には泣き叫ぶキリアちゃんの声だけがキンキンと響いてきたのですが、その声にまた脳がキューっとなりそうになるのですが、キリアちゃんが目の前に居ないので撫でてあげる事も出来ません。


「私はキリアちゃんの事が好きですよ?」

 何かほっておけない感じがしますし、キリアちゃんとはもっと仲良くなりたいのですが、この様子だとわかってもらうのはなかなか難しいのかもしれませんね。


『………』

 私の言葉に対して、キリアちゃんの返事はありません。


 こちら側の言葉(音声)が聞こえていないのかキリアちゃんが無視しているかのかはわかりませんが、進めば封印の解除やら4神の復活などでプレイヤーの前に立ち塞がって来ると思いますので、そのうちまた会えるのかもしれません。


(次ぎ会った時は…)

 それまでに私も色々と鍛えておかないといけないと決意を新たにしながら、私は改めて周囲を見回しました。


 瀟洒(しょうしゃ)な壁紙と磨き上げられた石畳、人に見せる事を想定していないのか装飾は最低限で、灯りの数も少なく薄暗い場所だったのですが、物自体はシンプルに纏められていて、掃除は行き届いていました。


 どうやらここは本来の壁の向こう側と言いますか、謁見の間の横に通っている使用人用の通路のようですね。

 通路の端には謁見の間やお客様用の通路に繋がるドアが見えたのですが、ここを本来使用する人達(NPC)は避難してしまっているようで、人の姿は見えません。


 お城の警備という形で騎士の人達が詰めかけていてもおかしくはない状況(襲撃を受けている)ではあったのですが、モンスターが相手ではNPCだと荷が重いですからね、熊のぬいぐるみに関してはブレイカーに任せようという判断なのでしょう。


 そして肝心の熊のぬいぐるみの襲撃なのですが、壁を一枚隔てた謁見の間での戦闘は終了したようで、雄叫びやら振動が響いてきて、とても賑やかな様子でした。


 このまま戦勝会を続けるのかお開きになるのかはわかりませんが、私も一旦皆と合流して……といきたいところなのですが、今の私はほぼ全裸に近いのですよね。


 スタミナが溢れているせいかテンションが上がってしまい、寛容(まあいいか)な気分になってしまっているのですが、溶けて固まったドレスはぼろ雑巾のようになっており、冷静に考えると人前に出れるような恰好ではありません。


 新しいドレスを借りればいいだけなのですが、流石にこの格好のままドレスホールまで戻るのも難しいですし、まずは牡丹に服を持って来てもらいましょう。


(牡丹、居ますか?)


(ぷ!?ぷーい、ぷー!)

 私が【意思疎通】で連絡をいれると、牡丹からは間髪入れずに反応が返って来ました。


 どうやら牡丹は上手く逃げ回っていたようで、私が謁見の間の隣の通路に居る事を伝えると、元気よく「了解!」と返事が返って来ます。


(べとべとなのも何とかしたいのですが…)

 汗や色々な液体で凄い事に(ムワっと)なっているのですが、お城の人にシャワールームでも借りられないのでしょうか?


 そんな事を考えながら牡丹と情報を交換して、熊のぬいぐるみ(襲撃事件)の事を聞いてみたのですが……牡丹が言うには途中からあからさまに熊のぬいぐるみの動きが鈍ったようで、その不調に乗じてプレイヤー達が押し切ったそうですね。


 痙攣したようにビクンビクンしている熊のぬいぐるみは不気味だったとの事なのですが、まあ操作していたキリアちゃんが途中から大変な事になっていましたからね、その影響が出ていたのでしょう。


(その時のキリアちゃんはとても可愛かったですが…)

 思い出すと頬が緩んでくるのですが、あまりその時の事を思い出しているとムラムラしてきそうなので、ゆっくりと息を吐きました。


「ぷ!」

 いけないいけないと頬っぺたをマッサージするように撫でていると、器用に通用口の扉を開けた牡丹がポヨンポヨンと駆け寄ってきます。


「ぷ、ぷい!?ぷ!!」


「大丈夫ですよ、お騒がせしました」

 「大丈夫だった!?」と言う様に私の周囲を跳ね回る牡丹なのですが、色々と心配をかけてしまったようですね。


「ユリエルさん、大丈夫ですか!?」

 そして興奮気味に飛び跳ねる牡丹の頭を撫でていると、バーン!!と扉を叩き壊す勢いで入って来たのは、グレースさんでした。


 その手には何故か長めの燭台が握られていたのですが、どうやら小熊戦で武器(鈍器)として使っていたようですね。


「はい、色々ありましたが何とか」


「よかっ…って、その格好………ふあっ!!?」

 私はとりあえず無事だという事を伝えるのですが、ホッと胸をなでおろしたグレースさんが数歩通用口の中に入り、改めて私の姿を見ると……みるみるうちに顔を真っ赤にしていき、いきなり後ろにバターンと倒れました。


「え…グレースさん?グレースさん!?」


「どうったのグレグレ、牡丹がこっちに来たんでしょ?ユリちーが……おっほ」

 戦闘後の疲労とか緊張感が抜けたとかも重なったのだと思いますが、その反応があまりにも大げさすぎて驚いてしまったのですが、その倒れたグレースさんを跨ぐようにヒョッコリヒョッコリ入って来たスコルさんが私の姿を見て鼻の下を伸ばします。


 気分が高揚していてうっかりしていたのですが、そういえば今の私はほぼ全裸でしたね。


「ぷーいっ!!」


「ちょ、これはおっさん不可抗力じゃない!?助けに来ただけよ?やめて、乱暴しないで!?おっさんも疲労困憊で瀕死っほうぅ!?」

 デレデレしたスコルさんのお腹に容赦なく牡丹の体当たりがめり込み、スコルさんは押し返されていきます。


 いつもなら躱せるはずの牡丹の一撃をおもいっきり受けているようですし、疲労困憊と言うのは嘘ではないようですね。


 まあ100体以上の小熊のぬいぐるみに襲われ続けていたようですからね、流石のスコルさんでも体力の限界なのでしょう。


「牡丹、待ってください、今はそれよりドレスを出してもらっても良いですか?」

 若干羞恥心が麻痺しかけていましたが、改めて2人にそんな反応をとられていると恥ずかしくなってきますね。

 魅了の事もありますし、出来るだけ早く服を着た方がいいのかもしれません。


「つふ…ッ!?」

 そうして私は牡丹に『サルースのドレス』を出してもらい身に着けたのですが……スルリとした蔦の刺激だけで軽くいきそうになってしまい、変な声が出てしまいます。


 どうやらキリアちゃんとの一件で尋常じゃない程感覚が鋭くなっているようで、胸と股の食い込みに足が震えてへたり込みそうになりました。

 刺激しないように動かさないようにと思いながらも無意識に快感を求めてしまっているようで、ゆっくりと蠢く蔦に身体が跳ねます。


 何とかその衝動を鎮めようと思うのですが、刺激された事でまた身体の火照りがぶり返してしまい、トロトロと滑りがよくなってしまいます。


「ぷい?」


「だ、大丈夫です、なんでぇ、も……んッ、つぅ!?」

 グレースさんが鼻血を流しながら倒れていて、スコルさんは部屋の外、いつ人が来るかわからない使用人の通路の中、私は口を押さえながら体を覆うコリコリとした蔦で1人気持ちよくなってしまいました。

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