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171:リザルトとセントラルライドへの凱旋

「多くの被害を出したが、我々は何とか翠皇竜ゴルオダスを討伐する事ができた。それもこれも君達の奮戦のおかげだ。そしてこの勝利は今ここに立っている者達だけの成果ではなく、傷つき脱落していった者達や、君達を支えてくれた者と力を合わせた上での勝利である!」

 騎士団長(N P C)の宣言と共に戦いは終わり、リザルト結果は『C+』、プレイヤーとNPCの被害が甚大でワンランク、祭壇の完全破壊で更にワンランク下がりつつ、それでも何とか倒せましたと言った感じの結果のようですね。

 なかなか辛口の評価ではあるのですが、勝ちは勝ちですし、初回のクリア報酬としてSPが3ポイント、アイテム配布は『Unique(ユニーク)』ランクの『翠皇竜ゴルオダスの魔核』と『翠皇竜ゴルオダスの怨念』、『U R(ウルトラレア)』ランクの『魔竜の牙』と『魔竜の皮』が手に入りました。


 『Unique』は翠皇竜由来の物でMVP的なアイテムだと思うのですが、魔核(魔石の上位版)の方は良いとして、怨念の方がよくわかりませんね。

 アイテムとしては手のひらに収まる大きさで、微かに黒緑色に光る欠片のような物なのですが、名前通りオドロオドロしい黒い靄を発していました。

 説明文には『翠皇竜の怨念が凝縮し形作られた欠片、特定の人物への憎しみが詰まっている』と書かれており、素材系のアイテムだとは思うのですが、何に使うのかはわかりません。

 『UR』の方はどうやら皆に配られる汎用素材のようで、翠皇竜にダメージを与えた人には等しく配布されているようで、きっと後々のエリアに出てくるドラゴンとかが落とす素材か何かが前倒しで配布されたのでしょう。


 以上の4つ以外にもワイバーンの素材が大量に手に入ったのですが、こちらはこの場で渡されても持って帰る事が出来ないという配慮からか、後日自分が倒した数に応じてブレイカーズギルドで素材を受け取る事が出来るようです。


 そしてアイテムと言えば、戦闘中に折られて飛んで行った魔光剣なのですが……見つかりませんでした。

 翠皇竜との決着を見届け、改めて探そうと思った時には翠皇竜の体から砂が溢れてきて、辺り一面に広がった大量の砂の下に埋まってしまったのですよね。

 まあこれは、ポータルを使うかリスポーンすれば手元に戻って来るのでそれほど心配はしていないのですが、それよりも心配なのは瀕死状態の牡丹です。

 今はイビルストラに戻ってもらい「ぽひゅー」と眠っている状態なのですが、スライム形態でHPが減っているとイビルストラになった時でもボロボロの状態になるようですね。

 【修復】はしておいたのですが、流石に疲れ果てたのかそのまま眠っているようですし、私は改めてロスト条件を公式に問い合わせてみる事にしたのですが、それに関しては返事待ちの状態でした。


 アイテムについてはこれくらいで、この戦闘で私のレベルが1レベル、牡丹は2レベルアップして、これで私のレベルは23に、牡丹のレベルが7/15になりました。

 結構戦っていたような気がするのですが、火力自体は翠皇竜に集中していましたし、他のプレイヤーと一緒に攻撃していましたからね、ある程度分配されてこの結果という事なのでしょう。


 とにかく、戦い終わった私達は王都セントラルライドに凱旋する事になったのですが、この時点で『上級ブレイカー』の条件は満たしているようで、この状態でブレイカーズギルドに行けばギルドカードを更新してくれるとの事で、ここから先のイベントは任意参加との事でした。


 そういう訳で、町に到着すると同時に戦闘以外にはあまり興味がない人や、リアルの用事や何やらで時間のない人、効率重視(無駄な事はしない)の人や人の多いところが苦手な人がパラパラとログアウトしていったのですが、大半の人は折角だからとこのまま王都で行われる戦勝パーティーに参加するようでした。


 因みにこのパーティーはゲーム内時間で2週間、リアルで1週間となかなか長期間開催されるのですが、これは国民にしっかりと勝利を知らしめるとかそういう意味合いがあるようで、『上級ブレイカー』の称号を持っているプレイヤーであれば、何度でも自由に参加可能だそうです。


 プレイヤーが参加する場合は専用のドレスや正装を着用し、城内と庭園での立食パーティーが行われていて飲食が自由、ダンスパーティーも開催されているようなのですが、一般的な日本人が急にダンスパーティーに参加して、どれくらいの人がまともに踊れるのでしょう?

 まあパーティーの内容からして何か特殊な効果があるというものでもないようですし、お遊び的な要素だと思うのですが、戦勝会の様子は公式のヒストリーに載るとの事で、時間がある人はご参加くださいといった感じでした。


『翠皇竜ゴルオダス討伐における特定の条件を満たした人に向けて、このメッセージは送られています』

 そしてセントラルライドに戻る途中で運営からこんなメッセージが送られてきたのですが、どうやら色々な条件に該当するプレイヤーに送られてきているようで、要は『MVPとして表彰式がありますが、どうしますか?』という内容でした。

 私の場合は『一番ダメージを与えた人』という分野で選ばれていたようで『これから王様の前に出て報労の言葉がありますが、その式典に参加しますか?』というものですね。

 この時の映像は公式のヒストリーにも使われるようで、私は折角なので<はい>を選びます。


 そんなこんながありながら、初めて足を踏み入れたセントラルライドなのですが、この町は3重の城壁に囲まれた城塞都市で、町の周囲にはモンスターと戦うための野戦陣地が築かれており、多くの兵士達が守りについていました。


 城壁の上には弩や投石機などが無数に設置されていてなかなか物々しい感じで、一見すると軍事要塞のような感じなのですが、一番外周側にある城門を通り抜けると広がっているのは中世ヨーロッパ風の街並みで、魔法の力によって光るランタンが軒先に吊り下げられていたり、一目見て何の用途があるのかわからない物や意匠があったりと、異世界情緒のあふれた景色が広がっていました。


 とはいえ今までは飛来して来ていたワイバーンによる被害を度々受けていたようで、あちこち倒壊した建物があったり、壁が崩れていたりと酷い有様です。


 ここからはクエストやら何やらでセントラルライドに入った事のある人が集めたネットの情報も含むのですが、町の構造としては一番外周部にあるのは市民街で、武器や防具屋などの商店街、ブレイカーズギルドや生産施設などの各種施設もあるのですが、今までは被害を受けて休業していた店舗も多いようですね。

 これから再建して利用出来なかった施設も使えるようになるのですが、本格的な復旧作業が始まるのはこれからなので、今はまだドアや窓には木の板が打ち付けられていたり、大通りにバリケードが張られていたりと戦闘仕様のままで、どこか物々しい雰囲気が随所に漂っています。


 討伐の結果も『C+』なので騎士達の中には怪我人も多く、町には負傷者が溢れ少しバタついた空気があるのですが、私達がセントラルライドの大通りをパレードよろしく進んで行けば歓声が湧き、ブレイカーを称える言葉が口々に上がり、戦い戻って来たプレイヤーの皆さんも鼻高々と言った様子でした。


「いやーなんていうの、こういうふうに称えられるのっていいわよね」


「そうですね」

 10メートル近い分厚い石壁で作られた一番外側の城門を通り抜けながら、ひょっこひょっこと呑気そうな顔で辺りをキョロキョロしているスコルさんなのですが、何でも翠皇竜の視線を一番長時間集めていたとか何とかで、陽動関連のMVPに輝いたそうです。

 勿論お祭り騒ぎが好きなスコルさんは式典に参加との事で、他にも私が名前を知っている人でMVPを取っていたのが、一番モブワイバーンを討伐していたのがシグルドさん、一番プレイヤーを回復していたのがグレースさん、一番人に指示を出していたのがモモさん、一番翠皇竜の攻撃を受け止めていたのがダンさんと、結構な数の知り合いが各分野のMVPに輝いていました。


 戦果という意味では、口内弱点を発見したまふかさん辺りも受賞していてもおかしくなかったのですが、こちらは惜しくも受賞ならずで崩れ落ちて(悔しがって)いました。

 後はナタリアさんも翠皇竜に遠距離攻撃()を当てていたのですが、トーチカの攻撃の方がダメージソースが良かったようで、別の人が遠距離攻撃のMVPに選ばれており、他にも戦闘に参加していない生産組の人からチラホラと受賞していたりと細かく賞が分けられているようで、結構な人数が式典に参加する事になりそうでした。


「勇士達のお帰りだ!よくぞあの憎き竜を倒してくれた!」


「きゃー素敵ー!こっち見てー!!」

 私達は騎士達に先導される形で大通りを通って王城へ向かっていたのですが、徐々に翠皇竜討伐の噂を聞きつけたらしい人々が集まってきており、激戦を潜り抜けた勇士達の姿を一目見ようと詰めかけた人が鈴なりになっており、渋滞をおこしていました。

 それ(渋滞で足止め)自体はまあいいのですが、不特定多数のNPCに囲まれていると、何故か物凄く見られているような気がしますね。

 どういう事でしょうと周囲の人達の視線の先を追ってみると……どうやら私の角や翼や尻尾をジロジロ見られているようでした。


 うっかりそのままの姿(レッサーリリム状態)で来てしまったのですが、初めての場所で、しかも今までモンスターと苛烈な戦いをしていたセントラルライドの市民達の前では、少し悪目立ちしてしまっているようですね。


 視線が集まると自然と他の人もつい見てしまうもので、余計に視線が集まってきているような気がしますし……自由行動をしても問題ないようなので、魅了の効果が出る前に隠れておいた方が無難かもしれません。


「スコルさん、ちょっと離れますね」

 人前で仕舞ってもよかったのですが、急に人間になった事で変に騒ぎになっても嫌ですし、魔光剣もいつまでもほったらかしと言うのも不味いような気がしたので、一度行列からは離れる事にしましょう。


「およ?トイレ?」

 ゲーム内なのでトイレに行かなくてもいい事をわかっていながら聞いてくるスコルさんに目を細め睨むのですが、いつもの胡散臭い笑顔で流されました。


「冗談よ冗談、魔光剣でしょ?すっ飛んで行ったままだからね、式典に間に合わなければ不参加扱いになっちゃうけど、こっちのパレードはもうちょっとくらい続きそうだし、良いんじゃない?」


「わかっているのなら変な事を言わないでください」

 相変わらずの察しの良さには感心するのですが、とにかくまあ、私は注目が集まり騒ぎになる前に一度この場を離れる事にしました。

※モモさんPTで言うとレミカさんの影が薄かったですが、彼は獲物的(ナイフ)にも今回は完全に裏方に回っていたので目立っていませんでした。

 モモさんとダンさんがMVPを受賞して自分は受賞できなかった事も、モモさんが受賞出来ていたからいいやと言う人なので特に気にしていません。

 むしろダンさんの方がハブったみたいでという感じで気にしていました。


※『翠皇竜ゴルオダスの魔核』は総合MVPに送られる物で、『翠皇竜ゴルオダスの怨念』は特定条件を達成した場合のみ生まれるアイテムで、使い方によりプラスの効果とマイナスの効果があります。

 これは魔王軍全体の敵と認識される程のプレイヤーに送られる物なのですが、今回の場合は単純に砂を使い溺れさせてきたユリエルへの恨みや苦しみが込められているだけなのかもしれません。

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