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147:ワールドクエストまでの時間の潰し方

 グレースさんとケーキ作りをした次の日、深夜3時ごろに王都攻略イベントのクエストが達成されたようで、本日20時にワールドクエスト(王都攻略戦)が開始される事が告知されていました。


 朝から攻略掲示板はその話題で盛り上がっており、モブワイバーンと戦った時の経験からこう戦うべきだという話や、公式が出しているフィールド情報からどう戦おうなんていう作戦会議のようなものが開かれていたようですね。


 私は朝食を食べた後、ネットの情報に目を通してからゲームに繋いだのですが、ワールドクエストまでリアル時間で10時間以上ありますし、もう少し【錬金術】のレベル上げでもしていようかと思ったのですが、何かしらのサプライズイベント(突発的なクエスト)がある可能性がありますからね、まずは出来る範囲の準備をしておく事にしました。


 まずは減っていた消耗品の補充で、各種通常ポーションを3本になるように買い足し、食べかけの携帯食料を食べたあと四箱まで買い直しておきます。

 後は忘れないうちにスライムイベントで配布されていた初心者ポーションを10本ずつ引き出しておきました。

 これ(初心者ポーション)は牡丹回復用で、本人(牡丹)にも自己判断で使っていいと伝えておきます。


 他に買った物は毒消しの薬草を3つ、『サルースのドレス』があるのである程度の耐性はあるのですが、『小人化』したり何かあったりした時の為に持っておく事にしました。


 『火傷』や『凍結』などの状態異常も考えられるのですが、あまりアイテムを持ちすぎていても重くなるだけですからね、それらはP S(プレイヤースキル)でカバーできるかもしれませんが、『毒』だけは気合でどうにかなるものではないので念のためという感じです。


 出来れば『魅了』関連の対策アイテムが欲しかったのですが、まだ制作素材が足りないのか出回っていないのか、これはWMで検索しても見つける事が出来ませんでした。

 ヨーコさんが作っていた媚薬のような相手を魅了するというアイテムは稀に売り出されていて、在庫の動きを見る限りではそこそこ売れているような気がするのですが……品質的に効果は微妙そうですし、そもそも私が欲しいのは相手を魅了するアイテムではなく対策アイテムの方なのですが、そちらの情報は今のところありません。


 とにかくポーション類や回復アイテムはそれくらいで、後は投げナイフを20本まで補充しておけば最低限の消耗品の補充は完了です。


 そして追加で購入したのは『携帯用錬金釜』という【錬金術】に使う手乗りサイズの釜と混ぜるための棒で、これらは『N(ノーマル)』ランクで品質は『C』という本当にただの市販品なのですが、一緒に【錬金術】関連の道具を入れるための大きめのショルダーバッグを購入しておきました。


 戦闘寄りの私が肩掛けのバッグという事に牡丹が「ぷい?(大丈夫?)」と聞いてきたのですが、これは戦闘時は手放す事を想定しているといいますか、最悪の場合はそのまま破棄する事を前提とした選択ですね。


 素材はアンギーフロッグの皮を使った耐火耐水性のある素材が使われているそれなりに良い物なのですが、マジックバッグ化されていないので、たぶん誰かが素材がどんな物か試した時の試作品なのでしょう。

 そんな物が捨て値価格でWMに出品されていたので、これなら気兼ねなく投げ捨てられると思い購入しました。


 とはいえ【錬金術】関連の道具や素材を購入しているとそれなりに貯金が減ってしまったので、集めていた素材やアイテムを整理する事にしました。


 まずいらないのが武装ゴブリンから剥ぎ取っておいた装備で、これは盾以外全部売り払っておきます。

 残りの拾っていた装備や素材類もギルドに納品したり売り払ったりしたのですが、『砂の十字架』や『幻獣種の毛皮』あたりは私も【錬金術】を始めた事ですし、何かしらの素材として使えるかもしれませんので取っておく事にしました。


 扱いに困ったのは作りすぎた『リリスのポーション』なのですが、効果不明の物をWMで流すのもなんでしたので、品質が『C+』未満の物はギルドの通常買取で処分しておく事にしました。

 売る時に受付の人にビックリされたのですが、まあただの瓶を売るより良い価格で売れたので良かったという事にしておきます。


 品質が『C+』以上の物は6本あったのですが、これはとりあえず錬金術関連という事でアンギーフロッグのバッグの中に入れておきます。


 あと処分に困ったのは人間になってから納品しようと思っていた『グリーンベリー』なのですが、ワールドクエストの開催が決定した事でウミル砦の納品クエストがいったん打ち切られているようで、大量に余ってしまったのですよね。

 一応ワールドクエスト終了後にまた受付が開始されるようなのでそれまで持っていればいいのですが、果物をただ普通に持っていると段々と品質が劣化していきますし、嵩張りますからね、なのでW M(時間経過の無い)に適当な価格をつけて流しておく事にしたのですが……意外と『グリーンベリー』の需要があったのか、すぐに売り切れていました。

 武装ゴブリンやボアと戦う事が出来ない純生産職の人が買い占めているのでしょうか?

 値段は他の人と同じくらいにしておいたので適正価格で売れただけなのですが、他の人の物は買い占められていないので少し不思議に思いましたが……まあこれも売れて良かったという事にしておきましょう。


 これだけ売れるのならモブワイバーンと模擬戦(ボスワイバーン対策)をしながら、金策がてらに『グリーンベリー』集めをするのも良いかもしれませんと思っていると、まふかさんから連絡がありました。


『今暇?というよりこんな時間に繋いでいるんだから暇よね、手伝って欲しい事があるんだけど、いい?』


『…良いですけど、どうしたのですか?』

 若干暇だと決めつけられている事が気になったのですが、平日の午前中にゲームをしている身としては「暇でしょ?」と言われると「そうですね」としか言いようがないですね。


『………て』


『すみません、よく聞こえませんでした』

 よく聞こえなかったので聞き返して、少しの間まふかさんの言葉を待ったのですが……どうも言いづらい内容のようで、まふかさんは黙り込んでしまいました。


 そのまま数十秒、まふかさんは呼吸を整えてから、一気に用件を切り出します。


『海嘯蝕洞に行くから手伝ってって言っているの!!』


『流石にそれは……厳しくないですか?それに…』

 発見しておいて何ですけど、どう考えてもレベル帯や必要装備が第一エリアレベルではありません。

 話しぶりから「攻略したい」とか「ボス討伐を目指したい」とかでも無いようですし、初回(島に閉じ込められる)なら特にワールドクエスト前に行くような場所ではないような気がします。


 それに海嘯蝕洞と言えば触手とか色々と大変な目にあった記憶がありますからね、そういう場所に誘われるというのはちょっとどうかと思ってしまうのですが、まふかさんには引くに引けない事情があるようでした。


『仕方ないでしょ、そうなったんだから!とにかく行ったっていう絵があればいいの、後はあたしが編集するから!あんたは四の五の言わずに手伝いなさい!!』

 勢い込んで話すまふかさんの話を要約すると、あのユニークモンスター&中ボスラッシュ企画はリアル時間で30時間くらいした辺りで限界が来て、まふかさんが倒れてしまい中断してしまったそうです。


 リアル時間で30時間となるとゲーム内は2倍加速なので体感60時間と、2日以上貫徹でゲームをしていた事になるのですが、体を張っていますね……とにかくそれはそれで大盛り上がりだったようなのですが、達成できなかった時の罰ゲーム的なノリで海嘯蝕洞行きが決定したようですね。


 これが簡単な場所でしたらまふかさんも鼻で笑って嬉々として向かったのかもしれませんが、色々な情報から1人で行くのは流石に無謀と感じたのでしょう、そこで助っ人として白羽の矢が立ったのが私だったという訳です。


 何故そこで私なのかは色々と謎なのですが、そういえばまふかさんと出会ったのもローパー溢れるミキュシバ森林でしたし、リスナーさんがどういう展開を求めているのかがわかりそうな場所の選択なのですが……流石に海嘯蝕洞を配信するのは無謀ではないでしょうか?


 私はまふかさんから話を聞いた時にそう思ったのですが、流石に生配信はしないようで『何かあったらちゃんと編集するわよ』との事なので安心?なのですが……。


『ワールドクエスト前ですし、リスクが大きいのでは?』

 間に合わないとそれこそイベント配信に響きそうなのですが、まふかさんはその辺りはあまり心配していないようでした。


『大丈夫よ、流石に今日1日あれば戻ってこれるでしょ?それに最悪の場合あんた1人戻れば(リスポーンすれば)いいだけじゃない。それより「やる」と言った事を「やらない」事の方が問題なの、こういうのは早く終わらせておかないと馬鹿にされるか呆れられるわでだんだんと気まずくなるし、ある事ない事言われるし、事あるごとに『海嘯蝕洞まだですか?』とか言われるのよ!?それって悔しいでしょ!?そう思わない?』


『よくわかりません』

 私は動画配信した事はないですし、掲示板や情報サイトに情報提供している訳でもないので、その辺りの情報発信者の苦労というのはよくわかりません。


『あんたねーそこは嘘でも「そうですね」とか言うもんでしょ!っー…まあいいわ、で、あんたも用意しなさい、いい?』

 まふかさんの中ではすでに私が協力する事が決定しているようですし、そもそも断ったとしてもこの調子ならまふかさん1人で突撃しそうな感じです。

 それでまふかさんに何かあって帰ってこなかったら気まずいといいますか、見捨てた感じで寝覚めが悪いですね。


 それに前回は『小人化』してまともに戦えない状態でしたから、ちゃんと戦える状態で行ったらどうなるかという事が気にならないといえば嘘になります。


 ネットの情報では一度クリアしたら普通にリスポーン出来るようですし、いざとなったら戻ってくる事は出来ますね。


『わかりました、準備してからウェスト港集合で良いですか?』

 行くのなら鉱石を採掘したい事や、行ったという事実だけが必要なら目的は脱出である事を念押しして、私はまふかさんの海嘯蝕洞行きに同行する事にしました。

※またまた寄り道ですが、ユリエルはリベンジは早めにしておきたいタイプです。


※媚薬的なアイテムはローパーを素材にして作られていたりしますが、可笑しな使い方をするとすぐにアカウントがBANされるので、使用用途としては自分達で楽しむ用なので安全です。


※誤字修正しました(3/27)。

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― 新着の感想 ―
[良い点] このゲームはとても健全で安全です [一言] しかし配信者(女)には いろんな意味で暑いゲームだなあ
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