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142:武装ゴブリン戦

 ガリガリにやせ細った矮小(わいしょう)体躯(たいく)と、不釣り合いな大きめの装備。目の前の武装ゴブリンが身に着けているのは、たぶん人間から奪って手直ししたと思われる皮鎧と、適当な金属片や木の板を荒縄で括り付けただけの小手や脛当てですね。

 装備を使いこなせているようには見えませんし、隙間自体は沢山あるのですが、流石に正面から攻撃を仕掛けるのは得策ではなさそうです。


「GOBU!」


「ぷっ!」

 私達は左右から挟撃したのですが、武装ゴブリンAはとりあえずちゃんと見えている牡丹の方を攻撃する事にしたようですね。鉄の剣が大振り気味に振り下ろされたのですが、牡丹はその一撃をサイドステップで難なく避けました。


 その回避で牡丹の攻撃タイミングがズレてしまったのですが、私は気にせず振り終わりの隙を狙って、武装ゴブリンAの後ろに回り込みます。


「【ダブルアタック】!」

 そのまま【腰翼】で勢いをつけつつ、振り向きざまに防具(脛当て)で覆われていない膝裏に回し蹴りを叩き込めば、『小人化』している今の私でも武装ゴブリンのバランスを崩す事くらいはできます。


「GO!?」

 色々と条件があるので漫画やアニメのように綺麗にカクンとはならなかったのですが、武装ゴブリンAがバランスを崩し膝をついたところで、サイドステップで溜を作った牡丹が突っ込んできました。


 狙いは顎。ゴッと意外と威力がありそうな一撃が入ると、武装ゴブリンAの意識が軽く飛んだようで、瞬間的な無力化に成功したようですね。


 一発一発の威力はそれ程でもないのでまだ倒れはしませんが、耐久度は武装ゴブリンも普通のゴブリンもそれほど大きく変わりません。このまま位置を調整しつつ纏わりつくように攻撃をし続ければ、同士討ちを恐れた他の武装ゴブリンからの攻撃は無いでしょうし、幾ら一撃が軽いと言っても2対1で攻撃を続ければ問題なく倒せるでしょう。


「牡丹!」

 そう思っていたのですが、私は槍持ちの武装ゴブリンCが攻撃姿勢に入ったのを横目で確認すると、牡丹に回避を指示します。


「ぷぃ!?」


「GOBU!」


「GOBYAxx!?」

 纏わりついていれば大丈夫だと思っていたのですが、どうやら武装ゴブリンは同士討ちを気にしないタイプのようですね。

 武装ゴブリンCがおもいっきり突き出した槍が武装ゴブリンAに刺さり、武装ゴブリンBがそれを見て笑っているのですが、なんていうか凄いAIですね。


 咄嗟に武装ゴブリンCの槍を回避した牡丹なのですが、槍の穂先が掠めたようで、少しHPが削られています。

 これはこれでやり辛いというか、2対3の乱戦になるとちょっと面倒になりそうなのですが、どう対処していきましょう?


 瀕死のAに止めを刺すか、槍を突き切った姿勢のCに攻撃するか、盾を構え笑っているBを攻撃するか……あと削られた牡丹のHPも気にしないといけないですね。


(牡丹はAに止めを、Cは私が止めます)

 Bは今すぐ攻撃してくるという様子はないですし、どうやら漁夫の利狙いというか、AとCが私達を攻撃した後に襲って来ようとしているみたいです。下手に盾を構える相手に手間取っても囲まれるだけですし、お望み通りAとCを倒した後に相手取る事にしましょう。


(ぷ!)

 【意思疎通】で簡単に手順のやり取りをした後、私は槍を持つ武装ゴブリンCとの距離を詰めました。


 ある程度質量(30cmの水風船位)の有る牡丹ならともかく、私の一撃はスキルを乗せたとしても微々たるダメージを与えられるかと言う程度の軽さしかありません。

 そんな一撃でも効率的にダメージを与える方法はあるにはあったのですが、効果的だとは思いつつなんとなく控えていた方法なのですが、流石にそういう事も言っていられませんね。


「GOB!?」

 武装ゴブリンCへの攻撃に切り替えると、視線が漠然と私を追ってくるのですが……はっきりと捉えられているという感じはないですね。

 何か白い布が飛んできているようなという鈍い反応で、【暗視】スキルは持っているけど動体視力自体はそれ程よくないのでしょう。

 次に私が何をするという予想もついていないようでしたので、武装ゴブリンCの懐に入るのは簡単でした。


(これ、で!)

 武装ゴブリンCは中腰で槍を突き出した姿勢でワタワタとしていたのですが、私はその曲げられた膝を足場にして跳びあがり、その勢い全てを足に乗せ……武装ゴブリンCの急所を蹴り上げ(サマーソルトキック)ました。


「G!?!!??」

 ゴッとかグニャリとかゴリッとかいう何とも言えない肉の塊を蹴り上げた感触と不快感にゾワゾワするのですが、とにかくその一撃で武装ゴブリンCは股間を押さえて泡拭いて倒れます。


 これでとりあえず1匹無力化ですね。


 靴すら履いていない状態(小人状態)でパンツすら履いていないゴブリンの股座を下から蹴り上げたので直接触れてしまいますし、人体的には急所ですが本当に(ゲームなので)クリティカルになるかと色々不安要素はあったのですが、ちゃんと効いてよかったですね。


 そんな惨状を見ていた武装ゴブリンBが股間を押さえてヒュンと青ざめた顔をしたのですが、次は貴方ですよ?


「ぷぃぃ~~」

 武装ゴブリンAの方は同士討ちで瀕死でしたし、そのゴブリンにくっついて【ライフドレイン】する牡丹によって止めが刺されていました。


 牡丹がプルプルと震えながらHPを吸う様は、何か奇妙な生き物に寄生されているような何とも言えない絵面だったのですが、ちゃんとHPは吸えているようですね。


 ただスキルレベル(レベル1)のせいなのかHP変換効率はあまりよくないようで、高めに見積もっても与えたダメージの何パーセントかと言う所でしょう。

 まあそのあたりはスキルレベルを上げていけば改善するかもしれませんし、それまでは補助的(ポーションメイン)に使っていけばいいですね。


 そういう訳で武装ゴブリンAを倒し、Cは無力化、残った武装ゴブリンBは私達がほぼ無傷の状態で2体を倒した事に戸惑っているようで、まるで「話が違う!」というように怒り狂い始めたのですが、ここまで来れば消化試合ですね。油断せず行きましょう。


「GOBBUx!!」

 武装ゴブリンBは粗末な木製の盾を前に突き出し、左右からの挟撃の姿勢をとる私と牡丹を牽制するのですが、矢鱈目(やたらめ)ったら振り回しても本当に牽制にしかなりませんね。

 むしろ構えた盾のせいで私達の姿を時々見失っているようで、何がしたいのかよくわかりません。

 ただ流石に木製の盾を突き破るような攻撃をしかけるという火力も素手では出せませんし、少し様子を見つつ、盾を向けられていない()が攻撃をかけて……みるフリをして、武装ゴブリンBの攻撃を誘発して、盾が動いたタイミングで牡丹に攻撃させてみましょう。


「GOBU!……GOBUxU!?」

 何故か武装ゴブリンBは私がかけたフェイントに自信満々にひっかかり「馬鹿め、盾の無い方から攻撃してくるのはお見通しだ!」というような大振りの攻撃をしかけきたのですが、私はその攻撃を難なく避け、ゴブリンの意識が攻撃()側に向いた瞬間、盾側にいた牡丹が死角から足元へ潜り込み体当たりを入れました。

 それでもう完全にバランスを崩した武装ゴブリンBがもんどりうって倒れたので、追撃を入れていきましょう。


「【ダブルアタック】」


「ぷ!」


「【ダブルアタック】」


「ぷぃぃ!」


「【ダブルアタック】」

 とりあえずそのまま武装ゴブリンBが動かなくなるまでボコボコにしておき、完全に沈黙させておきました。


「ぷ!」

 2匹撃破、1匹無力化と一段落つきかけた所で、牡丹の警告とナイフが飛びました。


 動いているのは急所を蹴り上げ泡を吹いていた武装ゴブリンCですね。まあCにはまだ止めを刺していませんでしたし、地面に倒れながら腰辺りに手をやり何かゴソゴソしているのですが……その醜悪に歪められた顔にはもう、()()()()()()()()()()()()()()しか見ていませんでした。

 こんな痛みと屈辱を与えた奴に一泡吹かせようと、涙とか鼻水とか涎とかを垂らした酷い顔で腰の袋に手を入れて何かしているのですが……。


「残念ですが…」

 私は牡丹が投げ渡してきたナイフを蹴り飛ばすと、武装ゴブリンCの右肩に投げナイフが突き刺さります。


 H C P社(変なゲーム会社)のゲームですし、あからさまに何かしている(罠を張っている)モンスターに近づくのは少し怖いのですよね。そしてある程度大きさのある地上の制止目標くらいになら、ナイフシュートを命中させる事は出来ます。


「GOBUUUXTT!!?」

 とはいえ流石に飛ばして命中させるのが精一杯ですし、一発で致命傷という訳ではないですね。ただナイフの着弾と共にボッフとピンクの煙のような物が辺りに広がり、武装ゴブリンCが最後に用意していた罠が誤爆していました。


「Go、B…GO…」

 煙が収まると何故か恍惚の表情でビクンビクンと体を震わせる武装ゴブリンCが居て、その下半身が直視しづらい事になっていますね。

 失禁なのか何なのか、白濁した液でべちゃべちゃになっているのですが、これは……毒か目くらましかと思ったのですが、もしかして媚薬か何かだったのでしょうか?

 確かヨーコさんがそういう物を作っていたような気がしますが、ゴブリンがそんな物を持っていた事に驚きます。というより運営はどういう意図をもってゴブリンにこんな物を持たせていたのでしょう?

 色々と言いたくなり目を細めてしまったのですが、今は戦闘中ですからね、切り替えていきましょう。


「牡丹」


「ぷ」

 牡丹は武装ゴブリンCから漂う異臭に眉をしかめながらも、私の合図に頷きます。


 媚薬まみれのゴブリンなんて触りたくないですからね、私達は武装ゴブリンCが死ぬまで永遠と遠距離攻撃(ナイフシュート)を叩き込み、戦いが終わった後には無数の投げナイフでハリネズミのようになった無残な武装ゴブリンCが生まれました。


 こうして私達は武装ゴブリン達に勝利し、『グリーンベリー』と媚薬まみれのC以外の装備を剥ぎ取り、しっかり足を洗ってから帰路につく事となりました。

※残念ながら勝つ時はちゃんと勝ちます。そして今回のゴブリン達はユリエルに媚薬をかける事が出来ませんでしたが、また次回諦めずに頑張ってもらおうと思います。


※誤字報告ありがとうございます、訂正しました(9/20)。

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