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132:ヌルヌルとヌメヌメと合流

 私は裂け目の中に密集しているイソギンチャクの中に隠れながら、巨大なタコ足が逃げ遅れたモンスターを捕まえていくのを眺めていました。


 聞こえてくるモンスター達の断末魔と、飛び散るホログラム。


 予想通りあの触手に掴まるとあまり愉快な事にはならないようですが……もしかしてこれは、掴まって死に戻った方が早く戻れる(脱出できる)のでしょうか?

 いえまあ、それはそれで何か負けたような気になりますし、そもそもここは隔離MAP扱いですからね、死んだからと言ってちゃんとリスポーンされるかわかりません。

 最悪の場合は死ぬ体験だけをして振り出しに戻る(島の北端)という事も考えられますので、無難に正規の方法で脱出するのが良いのでしょうけど……試してみるべきでしょうか?


 何故そんな短絡的な事を考えていたかと言うと、物音を立てないように口元を塞ぎ、静かに触手の塊が通り過ぎるのを待っていたのですが……イソギンチャクが嫌らしくウネウネしているのですよね。


「ふ……ッ…」

 特に攻撃といった事はしてこないのですが、プレイヤーの動きを邪魔するように絡みついてくるイソギンチャクの無数の細い糸のような触手には、シリコンのような弾力の繊毛がびっしりと生えており、それが肌の上を撫でるように動くたびに身体が跳ねてしまいます。


 【高揚】で更に敏感になった脇や脇腹、首筋や足の裏といった場所も容赦なく責められ、タコ足の触手に見つからないように、静かにしないといけない状況ではかなりキツイですね。


 声が出そうになるのを必死に我慢し、隣の通路を触手の塊が通過するのを待っているのですが……ほんの数分の時間が永遠に続くように思えるくらいの苦行で、無心でいようとしてもどうしても笑えてきますし、笑うのを我慢しすぎて何を考えているのかわからなくなってくるくらいで、酸欠気味に苦しくなってきます。


「ウ…っ…ッ!?」

 早く通り過ぎてくれないかと、祈るような思いで通路一杯に広がるタコ足の触手を横目で見ていたのですが……触手に絡めとられ、ぐったりと運ばれるウィルチェさんを発見して声が出そうになりました。


 どうやらウィルチェさんはあの触手の津波を回避しそびれ、掴まってしまったようですね。体中にウィークスラグがくっつき、ゲッソリした様子で引きずられて行くのが見えました。


 服の中に潜り込んだウィークスラグもいるようで、見えない所でスラグがぐちゃぐちゃと蠢くたびにウィルチェさんが苦しそうに体を震わせているのですが、デバフ漬けにされた体では取り除く事もできないようですね。


 私はそんなウィルチェさんが触手の塊に引きずられて行くのを見ている事しか出来なかったのですが、声をかけられる状況ではないですからね、PT申請を送ってそちら(PT通話)経由で連絡を取ろうとしたのですが……反応がありません。


 微かに顔を上げたような気もするのですが、それ以上の反応は返って来ず、ウィルチェさんはそのままタコ足の触手に引きずられて行ってしまいました。

 その後どうなったのかはわかりませんが、そんな風に別の事に気を取られた瞬間、晒や褌の隙間に入ったイソギンチャクの無数の触手が、掴みやすく、敏感な突起を探り当ててしまいました。


「くひッ!??」

 油断していた事もあり声が出てしまったのですが、どうやら波が引いて行くように島の中央に戻っていくタコ足の触手には気づかれなかったようですね。


 触手の塊は十分な獲物を捕まえたからなのか、それとも単純に伸ばせる距離の限界が来たのか、いつの間にか島の中央に引き返しており、揺れが収まりつつありました。

 その様子を横目で確認しながら、私は静かに絡みつくイソギンチャクを振りほどきにかかったのですが、抵抗しようにも私の体を撫でていた無数の触手にはデバフ液がたっぷりと付着しており、擦り込むようにくちゅくちゅされると、その抵抗する力すら奪われてしまいます。


「ま……ッ……ぅーー……」

 全身を(くすぐ)られながらあちこち刺激されると体が震え、腰が浮きました。今や色々な所と感覚が繋がっている尻尾を(しご)かれると、強引に後ろを穿(ほじく)られているような刺激が広がり、思考がパチパチします。


 オートスペルの【ルドラの火】が発動し、絡みつくイソギンチャクを少しだけ焼く事ができたのですが、狭い裂け目の中で腕を絡めとられた状況ではそれ程大きく動けませんし、そもそもデバフ液を大量に擦り込まれた体はまともに言う事をきいてくれません。

 無数のイソギンチャクにもみくちゃにされると荒い息と共に涎が垂れるのですが、私の意志ではどうしようもないですね。


「くっ…う……こ、の…!!」

 足がカクカクと震え、腰が動いて、ゾクゾクとした刺激で頭の中が真っ白になりそうなのですが、一度でも気をやってしまうとそのまま(なぶ)られ続けてどうしようもなくなってしまいますからね、イソギンチャクの嫌らしい攻撃に歯を食いしばって耐えながら、私は少しずつ絡みつくイソギンチャクの触手を焼いていき……。


「ッ、はっ…はー…はー…ッ…」

 まともに動かない体を必死に動かし、汗と色々な液体にまみれたまま何とかイソギンチャクの魔の手から抜け出した私は、裂け目の中から脱出する事に成功しました。


 外の空気が美味しいですね。タコ足の触手はちゃんと島の中央に戻って行ったようで、きっとあれがこの島に封印されているというギガントモンスターの一部なのでしょう。

 あまりしっかりと封印されていないようなのですが、とにかく私は高ぶった身体を静めようと、新鮮な空気を肺一杯に吸い込んでいたのですが……気配を感じて顔を上げました。


「PUGYxiII!!」


「ぁ…?」

 ウィークスラグの、跳びかかり。どうやらあの触手の塊から逃げ回っていたウィークスラグが穴から這い出てくるタイミングと、私が裂け目から出てくるタイミングが重なり、鉢合わせしてしまったようですね。呂律すら回らない状況では、その単調な攻撃すら避ける事が出来ません。


 私は緑色のドロドロした液体を滴らせる大口が迫ってくるのをただただ見ている事しかできず、そのまま頭から……丸呑みされる事となりました。


「ッ…はっ、ぅあ゙ッ…やっ…これ…」

 ウィークスラグの内部はドロドロしたデバフ液を作る器官と、獲物に吸い付くための吸盤と言いますか、口と言いますか、そんな(器官)が無数にあり、私のあらゆる場所に吸い付いてきました。


 スッポリと覆われてしまえばまともに呼吸すらできず、吸い込む空気には『弱体化』が乗り、身体が弛緩してなすすべなく全身をしゃぶられ尽くされてしまいます。


 イソギンチャクにあれだけ責め立てられても耐えていたのですが、一度気を緩めてしまったところをじゅぶじゅぶと音を立てながら吸われると、お預けを食らっていた私の身体はあっさりと限界を迎えました。


「ッッ!?…ぅ゙…ツーーーーーーーーっッ!!?」

 弱点になるまで開発された尻尾をあらゆる角度から吸われ、一番横幅があるので強く押し潰されてしまっている胸をグニグニとこねくり回され、同時に先端を絞られ、吸われ、弾かれて、まるで玩具のように扱われる私の身体はその刺激に合わせて反応を返してしまいます。


「ッふ…う~~ッーーふーっふーっ……ん゙んッ…ゔっ…」

 限界を迎えたとしても責めが終わる訳でもなく、ウィークスラグは更なる執拗な動きで全身を嬲ってくるのですが、もう腰の中がじんじんと痺れて、頭の中がふわふわしてよくわかりません。

 頭が変になりそうで、ただただウィークスラグに与えられる刺激に身体が跳ね、甘く情けない声と涎だけが私の口から溢れ出してきていました。


 丸呑み判定(即死判定)でもされれば死亡扱いでリスポーンする事が出来たのですが、この様子ではウィークスラグに丸呑み判定は無いようですね。


 意識が飛ぶたびにHPが減っているようなのですが、完全になくなるまでどれだけ時間がかかるのか、絶望的な気持ちと、それを上回る強制的に与え続けられている快感に嬌声をあげていると……。


「ぷぃぃぃぃっ!!」

 いきなり牡丹の声が聞こえたかと思うと、全身に鈍い衝撃が走りました。


 どうやら牡丹が私を飲み込んでいるウィークスラグに体当たりを仕掛けたようで、その攻撃で一緒に吹っ飛ばされた私は……地面に叩きつけられました。


「ユリエルさん、大丈夫ですか!?」

 

「ふぁ…ぃ…」

 ウィークスラグに止めを刺し、引き抜かれた私のチカチカとした視界に映るグレースさんの金髪が、まるで天使のか何かのように輝いて見えました。

※無事合流(1名除く)!

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