122:スキルとモチモチ牡丹
イベントの交換アイテムの期限が1か月以内、緊急メンテの補填アイテムが1年以内とまだまだ交換期限が先だったので、今すぐ交換しても邪魔になるだけなので、残りのアイテムの引き出しに関しては後回しですね。
なので早速レベルアップやイベントのポイントで交換したS Pを振っていこうと思うのですが、ここまでくると目ぼしいスキルは取得してしまっているので、何を取得するかは悩みますね。
今私の取得可能なスキルは耐性関連と体術関連と装備関連が主で、『サルースのドレス』やP Sでカバー可能な範囲です。
ポイントが余っているから盾でも取得しようかなというくらいで、今のところ取り急ぎ取得しようというスキルがありません。
一応イベント中にヨーコさんのアイテム作りの手伝いをした事で、幾つかの生産系のスキルも取得可能になっているのですが……今のところ何か思いつくまでは保留ですね。
新規スキルの追加は無く、イベント中にレベルが上がったスキルは【看破】【魔人の証明】【腰翼】【片手剣】【収納/展開】【筋力増強(微)】【飢餓耐性(微)】【見切り】【魔力視】【鞄】【ランジェリー】【投擲】【高揚】【隠陰】【尻尾】【短剣】【アピール】【ダブルアタック】【扇動】【テンプテーション】【魅惑】【スタミナ増強(微)】【感覚上昇(微)】【テイミング】【鞭】【魅了】【蠱惑】【意思疎通】【秘紋】ですね。
そろそろスキル管理も大変になってきている気がするのですが、この中で大きく伸びたのが魅了関連とテイミング関連ですね。
魅了は常時発動しているので経験値が入りやすく、人の多いところでは更に経験値が沢山入りますからね、イベントで一気に伸びていました。
テイミングに関しては300匹のスライムを【テイミング】した事が大きく影響したようですね。
レベルの上がったスキルの中で2レベル上がったのが【隠陰】【扇動】【意思疎通】で、3レベル上がったのが【テイミング】と【秘紋】です。
【魔人の証明】が成長した事で新たな種族スキルを取得できるようになっていたのですが、今取得できるのが【腕】と【爪】で、剣や短剣の投擲を多用する私からすると取得するか悩みますね。
【収納/展開】のレベルが上がっているのでそろそろ大丈夫のような気がしますが、念のためもう少しレベルが上がるまで待ちましょう。
あと【秘紋】はテイムモンスターにスキルを付与できるスキルなのですが、どうやらスキルレベルが付与できるスキルレベルの上限のようで、イベント中にスライム達に付与した【ルドラの火】はMP効率の良いレベル2の【ルドラの火】ではなく、燃費の悪いレベル1が付与されていたようです。
そのように微妙に説明不足なところもあるスキルが多いので、取得するのはしっかりと考えないといけないのですが……今は牡丹のスキルをどうするかの問題もあるのですよね。
牡丹のSPは2ポイント、取得できるスキルは種族的なスキルと、後は私が取得可能なスキルや取得しているスキルが取得できるようです。
これは種族スキルが自分で覚えるスキルで、私のスキルは教えて覚えるスキルや、一緒にいるうちに覚えたスキルと言った感じなのでしょうか?
そのあたりの設定はよくわからないのですが、テイムモンスターのレベルはプレイヤーより上がりづらいようですし、イベントでのSP取得もないようなので、プレイヤーより厳選しないといけないのですよね。
「ぷーぷーぃ」
私がステータス画面と睨めっこをしていると、牡丹は構って欲しそうに足に擦り寄ってきていて邪魔なのですが……。
「牡丹は何か取得したいスキルはありますか?」
一応本人に確認してみると、牡丹は「ぷっ!」と一声鳴き、反復横跳びをしながらプルプル震えるという不思議な動きを見せました。
よくわからない動きだったのですが、何と言いますか……シャドーボクシング?みたいな動きにも見えるので、きっと戦いたいという事なのでしょう。
牡丹は興奮したみたいに「ぷーい!ぷーい!」とびよんびよんと上下に伸びて何かを表しているのですが、【意思疎通】も万全でなく、曖昧な情報は伝わってこないのですよね。
誰に似たのかわかりませんが牡丹は意外と好戦的なようですし、戦闘補助が出来るようなスキルツリーにした方が良いかもしれません。
「では……」
スライム特有のスキルはイベント中に使っていた【仲間を呼ぶ】というスキルや【連携】や【合体】というスキルがあったのですが、イベントが終了し、スライム自体がいなくなってしまった今では死にスキルでしょう。
分裂するみたいなスキルがあれば便利そうなのですが、流石に初期スキルの中にはないようですし、そうなると種族スキルに目ぼしいものはありません。それなら私が取得可能なスキルの中から選ぼうと思うのですが……無難に戦闘が出来るとすれば、戦闘面では【腕】や【鞭】、利便性なら【腰翼】や【ドレイン】あたりでしょうか?
体当たりがメインの攻撃のようですし、体捌き系のスキルも使えなくもないのかもしれませんが、牡丹の動きを見ている限り運動面では問題ないような気がします。
イビルストラの耐性が働いているのか属性に対する耐性もそこそこありそうなので、やはりそれ以外の所を対策した方がよさそうなのですよね。
因みにこの4つを候補に選んだ理由ですが、【腕】はあると便利だからで、【鞭】は牡丹の体が鞭のように撓るようになれば汎用性が増しそうだからですね。
【腰翼】は単純に私が使っていて便利なスキルで、テイムモンスターはロストしたらそのままいなくなるので【ドレイン】で相手のHPを吸い取れるようになれば死亡率を減らせるかもしれないと考えたからです。
延命と言う意味では自動回復スキルや、ガッツのようなHP1で耐えるスキルがあればいいのですが、牡丹の種族スキルにはありませんし、私も種族の特性上、回復系スキルを覚えないのですよね。
そう考えると『レッサーリリム』が【ドレイン】を覚えているのは少し不思議な感じがするのですが、回復スキルと言うより一種の攻撃スキルと考えられているからでしょうか?
【ドレイン】は『レッサーリリム』になった時に覚えたスキルですし、何かしらの意味があるのかもしれませんが……今は牡丹のスキルをどうするかですね。
「やはり、【腕】でしょうか?」
「ぷッ!?…ぷ~?ぷーーぅぅぅっっ!!!」
何をするにしても【腕】がないと始まらないですしと私が考えていると、牡丹は自分に腕が生えたところを想像したのでしょう、少しのあいだ間の抜けた顔をした後、全力でプルプルと震えて拒否してきました。
「便利だと思うのですが?」
可愛さはなくなりますが、腕があれば剣を持つ事も出来ますし、細かな作業も出来るようになるので良いと思ったのですが……。
「ぷーぅ!!!」
牡丹には全力で拒否されたので、ここは本人の意思を尊重して【腕】を生やすのはやめておきましょう。
そうなると【鞭】は決定で、後は機動力の【腰翼】か、持久力の【ドレイン】かなのですが……腕が生やされるかもしれないと心配そうに足元に擦り寄ってくる牡丹を眺めてから、もう一つのスキルは【ドレイン】にしておく事にしました。
ここまで来たら出来るだけ長生きして欲しいですからね、【ドレイン】を使って体力を回復できるようにしておきましょう。
私はテイム画面を操作して牡丹に【鞭】と【ドレイン】を取得させようとしたのですが……HP回復方法について確かめておかないといけない事がある事に気がつきました。
「牡丹はポーションを使えますか?」
使えるのなら【ドレイン】を止めて【腰翼】をとってもいいかもしれませんが、牡丹は「ぷ!」と口の中からHP回復ポーションを吐き出し、えっちらおっちら瓶を傾けたり回したりしているのですが、流石にスライムがポーションを即座に使用するという訳にはいかないようですね。
瓶の蓋を口で食み「本当に開けていいの?」という眼差しをしてくる動きを見た限りでは使用出来そうなのですが、回復までに結構時間がかかってしまいそうです。
まあ時間があればアイテムを使う事が出来るレベルではあるので、ポーションを持たせておく事に意味はあるのかもしれませんが、この速度では緊急時に使えるようなレベルではありませんし、やはり【ドレイン】の方を取得しておきましょう。
「大丈夫です、仕舞っておいてください」
「ぷっ!」
私がそう言うと、牡丹は蓋の開きかけていたポーションをパクリと収納し、定位置に収めようとしているのか「ぷいぷい」と伸びたり縮んだりの運動をし始めました。
とにかくそういう訳で、【鞭】と【ドレイン】を牡丹に取得させておく事にしたのですが、【鞭】スキルを習得すると牡丹の動きが少ししなやかになったような気がしますね。
柔軟性が増したような感じと言いますか、何かモチモチした感じで、何気なく牡丹を引っ張ってみると……。
「ぷぃ~~~」
手触りはまさしくスライムなのですが、摘んで持ち上げようとするとその体は、焼きたてのお餅か何かのように伸びました。
伸ばしても特に痛みはないようで、牡丹自身伸びる自分の体を楽しんでいるようにぷいぷいしていますね。手を離せばパチンと元の姿に戻りますし、何か不思議な生物になったような感じです。
一応本人の意思でも体を伸ばしたり触手のような物を出したりする事は出来るようなのですが、スキルレベルはまだ1ですし、私の手で伸ばした時のような伸縮性はないようですね。
まあその辺りは徐々にレベルを上げてもらうとして、これで牡丹のSPは全部振り終えましたし、次にする事は……忘れないうちに、魔光剣の修理の事をドゥリンさんに相談しておきましょう。
ドゥリンさんとはフレンド登録をしていないのでスコルさん経由で連絡を取らないといけませんし、そもそもドゥリンさん自体が毎日繋いでいる訳ではないですからね、アポイントではないですが、剣の耐久度が危なくなる前に話をしていた方がいいのかもしれません。
そんな訳でまずはフレンド欄からスコルさんが繋いでいるのか確認してみたのですが……ログインしているようですね。時間が時間なので、スコルさんが寝てしまう前に連絡を入れておきましょう。
『すみません、今大丈夫ですか?』
『おーユリちー、いやー……何々、寂しくなっちゃった?今すぐ温めに行ってあげたいんだけど、ちょっとおっさん所要が立て込んでいて』
どうやらスコルさんは戦闘中だったようで、時折会話が途切れます。しかも途中で何か言いかけたような気がするのですが、その辺りを話す気はないようですね。
『もーこき使われてこき使われて…』
なんでもまふかさんにペナルティーとしての労役を科せられていると冗談めかして言うのですが、早い話がセクハラしたお詫びにこき使われているようですね。
因みに手伝っている内容は結構大変で、『ぷるぷるスライム』のイベントでまふかさんがあまり活躍しなかった事をファンの人に責められ「あたしの実力みせてあげるわよ!」と売り言葉に買い言葉で、ユニークモンスターや中ボスの討伐に向かっているようですね。
一応ファンの人と一緒との事ですが、スコルさんが言うには殆ど野次馬のようなもので戦力としては微妙との事です。
『忙しいようですね、それではまた今度…』
『あー大丈夫大丈夫、適当に手を抜くのがおっさん流、ユリちーの声をこうして聞けるだけで癒しになるから』
からかっているのでしょうけど、よくもまあ風船より軽いセリフがポンポンと出てくるものです。
『そういうのはいいですから』
とりあえず私はスコルさんの冗談を受け流し、手短に剣の修理の事でドゥリンさんに聞きたい事がある事を伝えます。
『OK~丁度おやっさんもポイントアイテム交換でハッスルしているみたいだし、直接会いに行った方が早いんじゃない?連絡しておくから、行くのなら今から行ってみたら?』
ドゥリンさんの繋ぐ時間はやはり不定期だそうで、繋いでいるうちに会いに行った方が良いとの事ですね。
会いに行くのは何か面倒ごとの予感がしますが、口頭での連絡だと「ああぁん!?ブツも見てねぇのにアドバイスできるかよ!」とか言い出しかねませんからね、何時もはこんな時間まで繋いでいないようなのですが、ポイント交換で新しい生産道具や材料を手に入れてアイテム作りに熱中しているとの事なので、確かに中途半端に連絡を入れるより直接会いに行った方がいいのかもしれません。
『ほら、おやっさんって結構歳だから早寝早起きなのよね、この時間まで起きているのはレアよレア』
それは一々言わないでもいいような気がするのですが、スコルさんはいらない事を付け足しながらも、きっちりドゥリンさんに連絡は入れてくれたようですね。
『わかりました、今から行ってみます』
冗談に関してはスルーする事にして、私ははぐれの里のレンタル鍛冶場の番号をスコルさんに聞いてから、牡丹と一緒に移動する事にしました。
※スコルさんが言い淀んだのは「いやー色々炎上したみたいだけどユリちー強いねー(繋いだんだねー)」みたいな事を言いかけたのですが、下手にその辺りの事を突っついてユリエルが引退したら面白くないなと思い口を噤みました。多分この事をユリエルに伝える事はないと思います。




