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109:話が進みません

「も、申し訳ありませんでした、このご無礼を反省して必ず責任を取りますので、不束者ですがよろしくお願いします!!」

 色々な事があった後、集まって来たスライム達にもみくちゃにされて、私達はリスポーンしてしまいました。

 グレースさんのリスポーン地点がアルバボッシュだったので、人間形態になりそちらで合流したところ……合流早々、グレースさんはいきなり土下座をしながら、凄い謝罪をしてきました。

 何か言っている事も変ですし、周囲の人達も何事かという顔でこちらを見てきていますし、あまり注目は浴びたくはなかったのですが、ちょっと話を聞いてくれるような状態ではなさそうですね。


「大丈夫ですよ、気にしないでください」

 確かに戦闘中に味方から攻撃を(拘束からの押し倒し)受けるというのはちょっとアレな事なのですが、グレースさんはある意味私の魅了スキルの犠牲者とも言えますからね、あまり気にやまないでくれると助かるのですが……というよりグレースさんの発言が色々と凄いのですが、どこまで本気なのでしょう?

 私が「よろしくお願いします(不束者への返事)」と言ったらそのまま嫁いできそうな勢いで平謝りしているグレースさんなのですが、町中のポータル地点でそんな事をしていますからね、周りからの視線が少し痛いです。


「で、でも……」

 やっと顔を上げてくれたグレースさんなのですが、オロオロと視線を揺らして目を合わせてくれません。


「スキルの影響ですし、それに…」

 私も最近は何かもうこういうゲームだと楽しんでいるような気がしますし……というのは言えませんよね?違いますよね?いけませんね、何かだんだんと沼に嵌っていっているような気がして少し怖くなります。


「?」

 グレースさんは言葉の途中で黙った私を不思議そうな顔で見てきていたのですが、その辺りの事は言う訳にもいきませんからね、軽く頬を押さえながら適当に誤魔化しておきましょう。


「とにかく、グレースさんのせいだけではありませんから、本当に気にしないでください」


「でも……」

 それでも申し訳ないと思っているのかグレースさんは言葉を濁すのですが、いくら町に戻って来た時に人間形態になったとはいえ、注目されていると何が起きるかわかりませんからね、早く切り替えて貰わないといけないのですが……私は何事かと見てくる周囲の人達を横目で眺めながら、軽く息を吐きます。

 グレースさんの気が逸れる様な事が何かないかと思って周囲の様子を伺っていると、人混みの中に知った姿を見かけました。


「あら~何か面白い事をやってるって思って来てみたら、ユリち~達じゃない、どうったのこんな所で?」

 とぼけた顔でトテトテとやって来たのは、スコルさんですね。最近は妖怪か何かのようにひょっこりと現れているような気がするのですが、本当にたまたまなのでしょうか?それとも本人的にはタイミングを見計らっていたりするのでしょうか?どちらでもあり得ると思ってしまうのがスコルさんの凄いところですね。


「狩り中に色々と……そういうスコルさんはどうしたのですか?」

 気にはなったのですが、渡りに船と、スコルさんに適当な話を振ってグレースさんの気を逸らしていきましょう。


「いやーどうしたもこうしたもイベント満喫中よ?一通りポイント稼いだからちょっと休憩~って戻ってきたら何か美少女が美女を土下座させてるっていうじゃない、それでちょっくら見に来たって訳」

 スコルさんもお昼ごろまではグループメンバーで行動していたようなのですが、お昼休憩辺りでキリが良かったので解散したとの事でした。


「ヴァンパイアに骨にゴーレムにオークとゾンビっていう個性豊かなメンバーでねーもうおっさんの影が薄いったらありゃしなかったわー」

 やはりスコルさんの方もレア種族PTだったようで、なかなか個性豊かなメンバーが揃っていたようですね。


「それは、大丈夫だと思います、が…?」

 スコルさんが埋もれる事はないと思うのですが、骨はたぶん我謝さんでしょうし、見た目的にウィルチェさんがヴァンパイアで?残りの人がゴーレムとオークとゾンビだと思うのですが……それだけ濃いメンバーだと、少しだけ自信がなくなりますね。


「まあそれはついでで……」


「居たぞ!おっさんだ!!」

 スコルさんが何か言いかけた所で、私達を囲む(何事かと集まった)人達(人垣)の向こう側、少し遠い場所に居るプレイヤーがスコルさんを指さして大声を上げました。

 その声に反応してバタバタと集まってくる複数のプレイヤー達は、武器こそ持っていませんが妙に殺気立っていると言いますか、喧嘩腰の様子ですね。


「…何かしたのですか?」

 「やべ」みたいな顔でその人達を確認していたスコルさんに、私の視線が細くなってしまったのですが、逆に見返してきたスコルさんには胡散臭い笑みを浮かべられてしまいます。


「いやー追われている理由はユリちーにあると思うんだけど……まっ、その辺りの理由はのんびりと話すとして、ここは一旦逃げましょうや、グレグレ(グレースさん)も早く早く!」

 そう言い、スコルさんは一足早く駆け出してしまいます。ついて行く必要性はないのかもしれませんが、おもいっきりスコルさんと話しているところを見られていますからね、このまま変に関係者と思われて囲まれるのは何ですし、この場から離れる事には賛成しておきましょう。

 それに最初から目立っていた(土下座騒動)せいか、これをきっかけに話しかけ(ナンパし)ようという人達も居るようですし、スコルさんの件とは関係なく、一旦離れた方がいいかもしれませんね。


「一旦ここから離れますよ」


「え、え?」

 事情がよく呑み込めないグレースさんは走り去るスコルさんと追ってくる人達を見比べていたのですが、絡まれるまでにここを離れたい私はグレースさんの手を取り立ち上がらせます。


「は、はい…?」

 よくわかっていなさそうだったグレースさんの手を引いて、私達はスコルさんの逃げた方向とは()()路地に逃げ込んだのですが……。


「ちょいちょーい、おっさんユリちーに用事があって来たんだから、なんで反対側に逃げるの!?」

 シレっとスコルさんが追いついてきますね。


「さっき、は…土下座を、見に来たって、言って、いませんでしたか?」

 レッサーリリムでおもいっきり動いた後ですと、人間での動きにかなり違和感がありますね。胸が揺れてバランスが崩れますし、【腰翼】でバランスが取れないのが地味にきついです。

 私は短距離ダッシュで弾む息とピリピリした甘い刺激を整えながらツッコミをいれるのですが……スコルさんはそういう時だけは「へっへっへっ」と舌を出して犬のフリをしながら、だらしない顔で揺れる胸を眺めていました。


「そ、それより、ユリエルさんに理由とか、用事があるとか言っていましたが、どういう事ですか?」

 そしてその話題に食いついたのは、私よりグレースさんの方でした。


「いやーそれはむしろおっさんの方が聞きたいんだけど…何かまふまふが生配信中におっさんに懸賞を懸けたみたいでね、ユリちーとまふまふがどっか行った後でしょ?何か知らないかなーって……もしかしておっさんの事、売った?」

 何でも生配信に戻ったまふまふさんが「スコルさんを捕まえてくれたら色々してあげる!」みたいな事を言ったらしく、目の色を変えたまふまふファンの人達に追いかけられているとの事でした。


「売ったといいますか…元凶がスコルさんだと伝えただけです」

 ローパーに絡まれるのを覗きに行ったのも、それを本人の前でばらしたのも、私の方が被害者ですからね、ただ売ったと言われれば売った事になりますし、正直に話すとスコルさんが怒り出すかと思ったのですが……。


「うわーユリちー酷~い、その配信からもう色んな人から狙われまくり、心のよりどころがないおっさんに優しくしてくれてもいいんじゃなかな~?」

 スコルさんはウソ泣きをして、ゴロゴロと転がり始めます。どうやら怒っているという訳ではないようですが、これはこれで鬱陶しいですね。

 かなり余裕がありそうですし、そもそも本気で逃げるつもりならゲームに繋がなければいいだけですからね、人の多い(見つかりやすい)アルバボッシュに来ている時点で色々と確信犯なのでしょう。


「楽しんでますよね?」


「へっへっへっ…ワンッ!」

 私が軽くスコルさんを睨みながらその点を指摘すると、犬のフリをして誤魔化されました。


「あ~でもおっさんにも憩いが欲しいなーっていうのは本当よ?頑張って逃げているおっさんに癒しを~具体的に言うとお腹とか、もうちょっと下の方を撫でてくれるとおっさん頑張れるんだけどな~?」

 チラチラと胡散臭い笑顔を浮かべながら見てくるスコルさんに、私の視線も険しくなってしまいますね。何時かは「撫でてあげないと」なんて思った事もあった気がしますが、今撫でたら何か調子に乗りそうで嫌ですね。


「……」


「ぷッ!!」

 スコルさんのセクハラ(撫でて)発言に、今まで心配そうに見ていたグレースさんも視線が険しくなり、人前だからか静かにしていたフードの中の()()()()も抗議の声をあげました。


「お、何々?スライム?」

 そういえば【テイミング】関係の話はスコルさんにしていませんでしたっけ?フードの中から聞こえて来た声に起き上がると、スコルさんは興味深そうにのぞき込もうとしたようなのですが……。


「ぷぅーぃ!!」

 バタバタと暴れるスライムと、無言でスコルさんを引き剥がすグレースさんの2人に邪魔されていました。


「いや~何かおっさん確保されているんだけど?そりゃ~っちょと体格差でよじ登るのにおっぱいとか触るかもって、イタイ痛いよ!?いだだだ!!!」

 そのままグレースさんに摘まれるスコルさんに呆れながら、私は軽く肩をすくめます。


「馬鹿な事をやっていないで…人が来る前に行きますよ」

 あまりふざけているばかりでも時間の無駄ですし、騒いでいたせいで人が集まって来そうな気配があります。厄介ごとに巻き込まれる前にもう少し移動する事にしましょう。


「お、どこ行くの?おっさんもついて行っていい?」

 スコルさんはどうやらついてくるようなのですが……おもいっきりグレースさんとスライムは胡散臭そうに見ているのですよね。ただまあ、スコルさんの戦力が必要かもしれないルートを通る予定ですし……。


「いいですけど、変な事はしないでくださいね?」

 まだグレースさんのポイントを稼げていないですからね、まずは稼いで貰う事を優先しながら、話を進めていきましょう。

※誤字報告ありがとうございます、12/17に修正いたしました。

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