104:スライム使い
※前回23日の6時から投稿と書いていましたが間違いで、正しくは『22時の6時に投稿してから定時更新』となります。現在は修正済みではありますが、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。
「ぷぷ~」「ぷい」「ぷっぷぷ~」「ぷぅ~」「ぷっぷ~」「ぷ?」「ぷっぷ~」「ぷ~」「ぷぷ~」「ぷぷっぷ~」
早速スライムを10匹程【テイミング】したのですが、いきなりこの量はわちゃわちゃしますね。今のところは本当にテイムしただけという感じで特に負荷はありませんが、収納する事はできませんし、テイムモンスターのステータス欄には『満腹度』の項目もありますからね、維持管理を考えると実用する場合は数匹で止めておくのが無難でしょう。
とりあえず左から青スライムAで次が青スライムBで……そのまま最後がJですね。スライム達はじゃれ合ったり転がり合ったりしているのですが、1匹1匹ならともかくこの量だと騒々しくて……。
「何て言うか、可愛いというより不気味よね…」
「ぷっ!?」
「……」
まふかさんの率直な意見にスライム達は傷ついたような表情を浮かべるのですが、私もそう思います。1匹あたり30センチ前後が10匹ですからね、実質3メートル近い軟体生物が目の前にいる訳ですし、確かにちょっと不気味なのですよね。
「そうですね」
「ぷっぷぅ!!?」
私が同意すると、スライム達はショックを受けたような顔をしてプルプル震え始めます。中には涙ぐんでいる子もいたりと、かなり個体ごとの個性があるようですね。
ちなみに角兎の【テイミング】も挑戦してみたのですが、どうやら条件が違うらしく、出来ませんでした。まあスライムはイベントモンスターですし、細かな【テイミング】条件が設定されておらず、難易度が最低になっているのかもしれませんね。
「あの…何、を、して、いるの…です、か?」
私とまふかさんが震えるスライムを眺めていると、ふらふらと風に流されるようにHMさんがやってきました。ティータさんとエルゼさんはどうしても体力消費が激しいようで、向こうのPTは小休止に入ったようですね。
「はい、ちょっと【テイミング】をしていたのですが…」
「「「「「「「「「「ぷっ!!」」」」」」」」」」
「……ッ!?」
いきなりスライム10匹分、合計20個の瞳に見つめられHMさんは言葉を詰まらせて後ずさりしました。
「そ、そう…です、か…?」
HMさんは【テイミング】がそもそも何なのかよくわかっていないようだったのですが、とにかくスライム達が襲ってこない事がわかると、胸に手を当てて息を吐いていました。
「そうですね……スライムA、HMさんの前に出て」
「ぷっ!」
私の言葉に合わせてキリッとした青スライムが1歩前に出るのですが……。
「…あなたはBですよね?Aは?」
どこかぼんやりした顔をした青スライムAが「自分の事?」みたいなとぼけた顔でコロコロと転がって来たのですが、なんて言いますか、ちゃんとテイマーの命令を聞いてくれる訳ではないというか、個体ごとの癖が強いのですよね。
「あんた、よく判別つくわね」
「よく見たら形が微妙に違いますし、それにステータスを見たら一発ですから」
Aの方が全体的に丸いですし、目がとぼけた感じなのですよね。それにステータスを開けば『青スライムA』と表示されていますし、確認すれば間違う事はないのですよね。
「そういう事も出来るのね」
名前を確認できる事を知ると、まふかさんは「褒めて損した」みたいな顔をしたのですが、まあ特に褒められるような事でもないですからね、それよりHMさん達のレベリングです。
他のプレイヤーも殆どいないので大丈夫だとは思うのですが、トレイン行為はあまり推奨された行為ではありませんからね、サクッと倒してもらいましょう。
「あ、の…?」
HMさんはまだよくわからないという顔をしながら、自分の目の前に転がり出て来た青スライムAと私達の顔を交互に見比べていました。
「【テイミング】したモンスターでも経験値は入りますので、こうやって私が捕まえたモンスターをHMさん達が倒してくれれば簡単にレベル上げが出来るかと…何かしら攻撃スキルは取得していましたよね?」
レベルが上がってからはHMさんも戦闘に参加していたようですし、何かしらのスキルは取ったのでしょう。
「あ、はい…【サイコキネシス】、を…」
種族特有のスキルらしいのですが、手のひらに力を集中して物理的な影響を与えるスキルのようですね。
今のところ手で物を掴める程度の効果しかなく、握力も通常の半分なのにかなり集中しなければいけないとの事なのですが、何もできなかった時よりかは格段の成長ですね。
「では、どうぞ」
私が青スライムAをHMさんの前に差し出すと、「えぇ~?」みたいな若干引いた顔をされてしまいます。
「ぷッ!」
青スライムAは覚悟を決めたように目をギュッと瞑り、残りのスライム達も固唾を飲みながらその様子を見ていたのですが……。
「あ、の…?」
HMさんは物凄くやり辛そうに私の顔を見てきました。
「だからそれ、絶対やりづらいって」
隣からまふかさんが呆れたように言うのですが、その言葉にHMさんはあからさまにほっとしたような表情を浮かべ、胸をなでおろしました。
「そう、です…よね?可愛い?…です、よ…ね…?」
妙に疑問符が多いようなHMさんの言葉に数匹が「ぷぃっ!?」と抗議の声を上げるのですが、まあそれは良いとして……このままだとレベル上げが捗りませんね、どうしましょう?
「それとあたしからの忠告だけど、コイツにあんまり近づかない方が良いわよ、すぐ変な事してこようとするんだから」
「そう、なん…です、か?」
「どういう事ですか?」
何かまふかさんがいきなり変な事を言ってHMさんが信じそうになっているのですが、どういう事でしょう?
「そりゃあ…って、あんたも色々と心当たりがあるでしょ!」
まふかさんは赤面しながら「言わせるな!」みたいな感じで大声を出すのですが、私からするとまふかさんに無理やり走らされたり、尻尾でぐりぐりとしてきたり、まふかさんがスライムで1人だけ気持ちよくなっていた事くらいしか心当たりがないのですよね、それともスコルさんの件でしょうか?
「それは、私と言うよりスコルさん…あの狼の方に原因があると思うのですが」
「いや、その件じゃなくて……ああ、もう、あんたと話しているとペースが崩れる、いい?とにかく変な事はしないでよね!」
そう口では文句を言いながら一緒にいるまふかさんは律儀と言うか、ややこしいと言いますか、十分変な人だと思うのですが……何か一方的に私だけが悪者にされているような気がしますね。
「2人、は…仲が、いい、の…です、ね」
「違うわよ!どうしてそうなるのよ!!」
クスクスと笑うHMさんにまふかさんが「うがー!」と怒っているのですが、そんな賑やかなやり取りを聞きつけたのか、他の皆が何事かとやって来たようですね。
「ねえねえ、何の話をしているんすか?それにここにいるスライム……襲ってこないすね」
「そうだな…」
「まふまふぅ~私頑張りましたぁー褒めてくださぁ~い」
「あんた、一々絡まるのやめなさいよね!」
エルゼさんが恐る恐る距離を取り、ティータさんが本当に動かないか木の枝でつつくのですが、スライム達はプルプルと震えているだけですね。そしてノナさんはまふかさんに絡みついてと平常運転です。
「この子達と戦ってもらおうかと思って、【テイミング】しておいたので触っても大丈夫ですよ」
話をレベリングに戻して、私がスライム達を【テイミング】した事を話すと、3人から「おー」という感嘆の声が漏れます。
「ブレヒロで【テイミング】って出来たんすかっ!?」
「へぇーじゃあ殴り放題なんだぁ~」
ノナさんの発言に何匹かのスライムが蛇に睨まれたカエルのように「ぷっ!?」と鳴いたのですが、とにかくそういう感じですね。
「はい、私が集めるので皆さんには倒していってもらおうと」
とはいえ流石に棒立ちだと戦いづらいようですからね、【テイミング】の様子を見るためにも、スライム達にも戦ってもらう事にしましょう。
「まあ練習だと思って……ではティータさん、いいですか?」」
ノナさんに轢き潰していってもらうのが一番効率が良いのですが、ティータさんが戦いたそうにしていますし、私もモンスターを戦わせた場合どうなるか知りたいですからね、まずはティータさんに戦ってもらいましょう。
「え、俺…?…こほん、っと……よし、来い!」
ティータさんが改めて木の枝を構えたのを見てから、私はスライム達に指示を出します。
「では1匹ずつ、ティータさんに軽く攻撃をしかけてください」
「ぷいっ!!」
私の指示のもと、一番好戦的な青スライムGが「我こそは」という勢いでティータさんに突進していきます。といっても、私の「軽く」という指示が守られているらしく、比較的ゆっくりな突進ですね。
「くっ…」
地面に立っていたティータさんは迎撃しようと木の枝を構えたのですが、流石にその巨体を止められないと思い直したのか、途中から飛びあがったのですが……判断が遅いですね。青スライムGは「ぷっ!」と一声鳴くと飛びあがり、空に逃げようとするティータさんに体当たりを入れました。
「うぉぉぉおおあああああ!!」
諸共ズデーンと落下して来た1人と1匹は地面に叩きつけられ、青スライムGがマウントポジションを取ります。人間ならそこから顔面パンチかもしれませんが、青スライムGは別にティータさんを倒す意思はないようで、ただ体重をグリグリとかけているだけのようですね。
ティータさんが窒息しないように頭が出るように抑えこんでいますし、反撃できるように肩から上が出ているので本当に手加減してくれているのでしょう。
「いけぇーティータちゃーん負けるなぁー」
「がん、ば、れぇー…」
皆さんティータさんの戦いに集中しているようですし、今のうちに戦闘訓練用のスライムと、ノナさんに轢いてもらうためのスライムを集めておきましょう。
「ぷっぷぷー」
そう思い、私はまだテイムしていないスライムを探すために辺りを見回したのですが、足元に1匹の青スライムがやって来ていました……このどこか眠そうな目をしているのは、青スライムCですね。何でしょう?と首を傾げているともう一度「ぷっぷぷー」と一声鳴きます。
「ぷーぃ?」「ぷぷ?」
その声に反応したように、近くの茂みから新しい青スライムが顔をだします。どうやら「青スライムCは仲間を呼んだ。青スライムKと青スライムLが駆けつけた」といった感じなのでしょう。
「ありがとうございます」
お礼に青スライムCの頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに「ぷぷぃ~」っと蕩けた顔を見せました。撫でると微かに指先からMPが抜けて、どうやらそれで青スライムCの空腹度が回復したようですね、満足そうな顔はそれはそれでいいのですが……。
「ぷ?」
それを見ていた他のスライム達が、一斉に反応しました。
「え、ちょっと、待ってください…」
何かいきなりどの子も目を輝かせてジリジリと距離を詰めてきているのですが、どうしたのでしょう?私の制止も聞いてくれないのですが……何故?
「ぷっぷー!」「ぷぃ!」「ぷぷー!!」
そして全匹一斉に、飛びかかってきました。いえ、全匹というか、あからさまに野良の子達まで混じって……仲間が仲間を呼んで一気に数十匹、その数十匹が更に仲間を呼んで100匹近くと、大量のスライム達がこの場所に押し寄せもみくちゃにされます。
「ちょ、何これ、あんた何し…っ!?」
「わかりまっ、ぁ…ん…この、子…た…ふンッ」
文字通り足の踏み場もないスライム達に押し倒され、尻もちをつきかけたのですが……どの子かはわかりませんが、クッションになってくれたようですね。
ぽよんとした感触で痛みはなかったのですが、そのお尻の下の子がいきなり突き上げてきて……私は口を押えて、飛び出しそうになった声を抑えこみます。
あまりの出来事と羞恥心に顔がみるみる赤くなるのが自覚できたのですが、どうやら皆さん押し寄せて来たスライムの対処に精一杯で、私の事は眼中にないようですね。
「【ライフぅぅんなん……ひッ…んンン゙…ッ!!?」
とりあえず私の周囲に居るのだけでも倒そうとスキルを使用しようとしたのですが、スカートの中に入り込んだ1匹が一番弱い所を絞り上げると、強制的にスキルが中断されました。
「それっ…ぁッ…だッ…ズルぃ…っ!!」
隙間なく絡みついた蔦の下着もこの子達には意味がないようで、その柔らかな体を隙間に潜り込ませ、そのひんやりと湿った体で摘まれるだけでも力が抜けるのに、いやらしい音をたてながら吸われ、緩急をつけて激しく扱きあげられると、もう何も考えられなくなります。
「ぷいっ」
どこか満足そうなスライム達の呑気な声に反して、私の方は全然余裕がありません。オートスペルで発動した【ルドラの火】すらこの子達にはご馳走のようで、私の左手にはスライム達が群がります。
あちこち刺激されながら啄むように指先をしゃぶられると、それだけで何か気持ち良さが広がって来て、ゾクゾクしました。
次々と送られてくるテイムの要求と、群がってくるスライム達。
「はッ…っーーーッ!!!??」
体中をあちこちを吸われ、転がされ、私のMPが尽きるまでスライム達によるその責めは続きました。
※ブレヒロのテイミングモンスターは本当にただモンスターを連れ歩いている状態に近いのでちゃんと経験値が振られていたりしますが、無限レベル上げが不可能なように死んだらそれっきりです。一応スキルレベルや内部データの愛情度が色々と影響してくるのですが、この辺りはまだまだ先になると思うので秘匿です。
※【テイミング】の負荷が増えるのはスキルレベルが上がって他のスキルが取得できるようになってからで、今は単純に仲間になったくらいの感覚です。普通はまともに命令できないのですが、ユリエルの場合は魔族属性持ち(スライムより上位)なのでいう事を聞かせられるだけです。【意思疎通】や【以心伝心】【感覚共有】などを憶えていくとテイマー側の操作できる範囲が増えますし、負担が増えていきます。
ちなみに角兎のテイム条件は『愛情値が一定以上である事』や『餌を与える』です。愛情度の方は実は結構振り切れているのですが、餌を与えた事がないのでユリエルは今のところテイム不可です。
※ティータさんの素の一人称は「俺」ですが、流石にちょっと女子力低いなと思っているので誤魔化しています。中身は可愛い物に憧れるガテン系女子です。




