100:グループメンバー
私達はグループメンバーの3人に簡単な自己紹介をしたり、色々と端折ってまふかさんと抱き合っていた事の経緯や、その格好の説明をする事になったのですが……話している最中、私の割れ目に食い込んだ蔦が湿っている事や、内腿を垂れる液体に何時気づかれるかと気が気でないですね。
そんな頭が沸騰しそうな状態だったのですが、何とかポーカーフェイスで誤魔化して、軽く頬に手を当てて息を吐きました。
まあドレスを【修復】した私より、まふかさんの方が凄い事になっていますからね、皆さんの注意はそちらに向いていたようです。
ちなみに胸をおもいっきりはだけさせ、下はびちょびちょだったまふかさんは、今は私の替えの下着を着ています。
最初は人から渡された下着を身に着ける事に羞恥心と嫌悪感がせめぎ合っていたようなのですが、こういう時に買っておいた物だと伝えると、背に腹は代えられないという感じで渋々身に着けていました。
サイズが合うかどうか心配だったのですが、どうやら大丈夫だったようですね。ただ少し大きかったようで、「何か納得できない」といった顔でまふかさんはブラの浮きをへこませていました。
「なる、ほど…」
とにかく私達が一通り説明した後、一切納得していなさそうな顔で呟いたのが、HMさんという、膝から下が靄になっている半透明の女幽霊の方ですね。少し特殊な名前については知り合いにつけられた呼び名だそうで、特に拘りがないので使っているそうです。
そんなどこかぼんやりしたHMさんは、こげ茶のボリュームのある髪を白いヘアバンドで止めた、涼し気な青藍色の瞳をもつ儚げな女性なのですが、初期装備と思われる白いワンピースの下のスタイルはなかなかのもので、ボロボロの服装から押し上げられた2つの膨らみが目を引きます。
「いいじゃないすか、それよりまふまふの熱愛スクープの方が驚き、2人はどこで知り合ったの?馴れ初めは何?お姉さんに教えてちょーだい?」
そして軽そうなノリで「そんな事どうでもいい」と言わんばかりに変な事を聞いてくるのが、エメラルドの瞳にアッシュグレーの体を持つ、10センチ程度の蜘蛛の姿をしたエルゼ・フォン・ザクセンさんですね。
アバター名がフルネームなのですが、なんでも親戚筋にドイツの方がおられるそうで、そちら由来の名前だと言われていたのですが……何か口ぶり的に嘘っぽいのですよね。ケタケタ笑っていましたし、ちょっとややこしい人のようです。
「誰がこんな奴!!」
「あらあら、フフフ…」
一々反応するまふかさんはエルゼさんに完全に遊ばれていますね。まあそれは良いとして、最後の一人なのですが……。
「ーーッ!!ーーッ!?」
こういう話にまったく免疫がないのか、顔を真っ赤にして頭を抱えてプルプル震えている20センチくらいの妖精が、ティータさんですね。
エルゼさんと同色の瞳に、腰まで届くプラチナブロンドの髪を3つ編にしているという可愛らしい妖精さんで、大きめのピンク色の花を逆さまにしたようなチューブトップのドレスから覗く背中には、直径15センチくらいの透明な楕円形の羽が見えました。
とにかくこの人は、私とまふかさんが抱き合っているところを見てから真っ赤になって固まったままで、紹介もエルザさんがしてくれたのでちゃんと話せていないのですよね。
「では…お互いの事情が分かった事、で、私達はこれで…」
HMさんが訥々と話を纏めて立ち上がると、エルゼさんから不満の声があがります。
「えー折角これだけ人外女子が集まったのだから、皆でどこかにいこーっていう話はー?」
「それは……お邪魔、かと…?」
HMさんは私とまふかさんを横目で見て、困ったように眉を寄せました。
「そんな気遣いはいらないわ!こいつとは何ともないんだから!ええ、みんな一緒に面倒見てあげるから、感謝しなさいよね!!」
「おー!」
自棄になり叫ぶまふかさんと、それに悪乗りするエルゼさんなのですが……私は魅了の事もあるので、単独行動がいいのですよね。
最悪の場合は、最後の6人目を確認するまでは一緒に行動してもいいのですが、それからは別行動をとりたいのですが……というよりも……。
「まふかさんはまずちゃんとした服を買いに行った方が良いのではないですか?」
私が渡した下着はビキニ的な衣装と言い張れるようなシンプルなデザインの物なのですが、サイズがあっていませんし、そもそも下着ですし、流石にその格好で町の中を歩き続けるのはどうかと思います。
「……ッ!?」
私の言葉で皆は一斉に下着姿のまふかさんを見て……流石に恥ずかしくなったのか、まふかさんは動きを止めました。
「これ着せたのあんたじゃない!そう言うのならちゃんとしたのを用意しときなさいよ!」
「それは、そうなのですが……」
そもそも私のサイズで揃えられた緊急時の一時的な衣装ですからね、改めてまふかさんにあった物を買いに行くとなると、皆さんを無駄に待たせる事になりますし、皆で一緒にショッピングとなると……MAP上に見えている、ずっと同じ場所でフラフラ動いている最後の1人が問題になるのですよね。
今のところグループメンバーは、レッサーリリムに、狼女に、幽霊に、蜘蛛に、妖精です。全員女性のようですし、種族的にもかなりの偏りがあるので、組み合わせの意図としては「同じような境遇のメンバーを集めたので、交流をはかりましょう」という感じだと思います。
そうなると残り1人も人外の可能性が高いですし、ウロウロしているのも町の中に入りたくても入れないのかもしれません。そんな人を放置して、残り5人で買い物に行くのはちょっと気が咎めるのですよね。
「そう…ですね…」
どうやら同じ事を考えているらしいHMさんも困ったように眉を下げていて、「どうしましょう」というように、お互い目配せをしました。
たぶん皆さん色々な事を考えていると思うのですが、即席PTでは意思の疎通も難しいですね。とにかく、纏め役になってしまっているHMさんに皆の視線が集まりました。
「……じゃあ…最後の1人、だけ……皆で一緒に、行く?それからは、その時、相談、で、自由行動?」
なんでもHMさん達3人は、種族的な問題で人前に出る事が出来ないので、人気のないルートを通って合流する予定だったそうで、それなら下着姿のまふかさんもついてこれるのではとの事ですね。
「わかりました」
何か問題を先延ばしにしているだけのような気もしますが、とにかく皆の意見の折衷案のようなHMさんの提案に、私は頷きます。
「ちょ、あたしの服はどうなるのよ!?」
「まあまあ、最後の1人を見つけてからでも遅くないですよ。ティータもそれでいいすか?」
「…ああ、良いよ!良いとも!もうドンと来いってんだチクショウめぇ!!」
エルゼさんに話を振られたティータさんは叫ぶのですが、ティータさんって、そういうキャラだったのですね。
可愛らしい容姿から飛び出してきた男勝りな言葉にちょっと驚いたのですが、とにかく流れで全員で移動する事になったのですが……。
「あの…流石にこのルートは…もう少し普通の道にしませんんか?」
壁をすり抜けられる幽霊のHMさん、壁をよじ登れる蜘蛛のエルゼさん、飛んでいるティータさんと、いくら人目を避けるためとはいえ、道なき道を進みすぎていますね。
レッサーリリムになっていれば十分追いかけられるのですが、PT行動中に魅了を振りまいてしまうと大惨事間違いないのですが……人間の姿だとちょっと、物理的に厳しいですね。
そして些細な事かもしれませんか、ティータさんが空を飛ぶと下からスカートの中が見えてしまうのですが……その、シンプルで真っ白なパンツが丸見えでした。
先ほどの反応を見る限り、あまりそういう話題に強い方でないようなので、見えている事を指摘していいのか悩むのですよね。一緒に行動していた2人も気づいているようなのですが、何とも言い出せずにいるようです。
「うーん、でもねーこういうルートでもないと、ぼく達が人前に出ると大騒ぎになるんすよね」
ちょっと別の事に気を取られかけていたのですが、エルゼさんが言うには、どうやら余りにもモンスター寄りの種族だと人間化する事が出来ないようですね。なので人間の姿で普通の道を進むという案は却下されます。
ちなみにまふかさんは人間化出来るそうなのですが、能力が下がるから基本的に人間になるつもりはないそうです。まあまふかさんの場合、目立つのが仕事ともいえますからね、その方が都合がいいのでしょう。
流石にギルドカードを入手するまでは人の姿になっていた事もあるそうなのですが、入手してからはずっと狼娘の姿をしているそうです。
特に他者に影響を与えるようなデメリットもないようで、まふかさんは周囲に気兼ねする事なくピョンピョンと飛び跳ねて皆さんについて行っているのですが……「あんたはついてこれないの?」とか「のろまね」みたいな顔をしていました。
「それより、天使ちゃんが羽を生やした方が早くないすか?」
特にその辺りの事は説明していなかったのですが、『天使ちゃん』呼びをすると言う事は、エルゼさんは掲示板を見ている人のようですね。そちらには魔人やレッサーリリムの姿の画像や動画があげられていますし、私が人間の姿のままでいる事に疑問を感じたようです。
「すみません、色々と都合が悪くて…」
他の3人は首を傾げていたので知らないようなのですが、魅了を振りまいてしまうのでレッサーリリムになれませんと言うのも……というより、レッサーリリムです!と名乗るのもちょっとアレなので、その辺りは誤魔化させてもらいましょう。
「残念、じゃあ気が向いたらその辺りの事情をお姉さんにコッソリ教えてねー」
エルゼさんはもとから根掘り葉掘り聞くつもりはないようで、そこで会話が途切れたので私はホッと息を吐きました。
さて、それより移動の問題ですが……誰かに運んでもらうにしてもHMさんは幽霊ですし、エルゼさんとティータさんは小さいですし、とにかくもう一度助けを求めるようにまふかさんを見て……。
「…変身してもいいですか?」
先ほどのようになるかもしれませんよ?という意味を込めて、事情を知っているまふかさんの耳元でそう囁くと、その顔色がみるみるうちに真っ赤になっていきました。
「わかった、わかったからそれだけはやめて!!?あたしが運んであげればいいんでしょ!!」
どうやらまふかさんは快く私を運んでくれるようですね。
「ありがとうございます」
ニッコリと笑う私と、赤面するまふかさん。そんなやり取りを見ていた3人の目が冷めた目だったりニヤニヤとした生温かい物だったり固まっていたりするのですが、魅了を振りまいてしまうよりかはマシだと思う事にしておきましょう。とにかく私はまふかさんに抱きかかえられるようにして、最後の6人目のもとに向かう事になりました。
※説明中のユリエルの様子がおかしい事は他の皆にも気づかれていましたが、照れているのだと思われていました。
種族の件も、これだけ偏ったPTですからね、何かしらの人外種だろうという事はバレていますが、言いたくない種類のものなんだろうなーって思われていました。
エルゼさんがつっこんだのは、流石についてこれない状況になってもそのままだったからですね。
※ユリエルのブラをまふかさんがつけられるのかという問題ですが、設定上の2人のアンダーは同じくらいで、トップは5センチ程ユリエルが上です。パンツに関しても数センチだけユリエルが上なのですが、こちらはゴムの伸縮範囲ですね。きっちりつけることは出来ませんが、隠す事くらいなら出来るという範囲に収まっていると思っていただけると幸いです。
※妖精に詳細な裁縫技術?と思いましたが、流石にパンツくらいは初期装備で配られているだろうと、諸々11/18修正しました。
※エルゼさんの名前を盛大に間違い続けていたのを修正しました(2/16)。




